第13回:ぼくの「おなら」の話から…(鈴木耕)

「言葉の海へ」鈴木耕

 少し前から『うんこ漢字ドリル』という小学生向けの漢字学習帳(?)が大ヒットしているそうだ。ぼくも、書店の店先でペラペラとめくってみた。うん、こりゃ面白い。なかなか考えている。売れるわけだ。
 幼い子はほとんどが「うんこ」や「うんち」が大好きだ。汚いなんて、あまり思ってないのだろうし、お母さんが(お父さんも)優しくうんちの処理をしてくれて、気持ちよくなった記憶が残っていることもあるだろう。
 そういえば、ぼくの娘たちも幼いころ『みんなうんち』という五味太郎さんの絵本が大好きだったな。
 「おおきいぞうは おおきいうんち ちいさいねずみは ちいさいうんち…。いろんなどうぶつ いろんなうんち…」なんて、ぼくはよく読んであげたものだ。むろん、娘たちも大喜び。
 大人だって、うんちの話やおならの話は、けっこう好きだ。ぼくも好きだ。ということで、ぼくのおならの話。

ぼくの大失敗、ぶーっ!

 ある小さな会合を終えた。少しだけお酒が入っていた。夜、だいぶ遅くなってから駅に着いた。ぼくの利用駅は、急行も特急も停まらないとても小さな駅で、商店街なんかないに等しい。少し歩けば、すぐに人通りがなくなって、道もやや暗い。典型的な郊外の小さな駅。
 電車の中でぼくはおならを我慢していた。さすがに、乗客がたくさんいる中でおならはできない。駅を降りてそろそろと歩きながら、薄暗くなった辺りで回りを見てみたが、人影はない。よしっ、というわけで、我慢していたおならを、ぶーっ! と一発。
 「きゃっ!」と後ろで声がした。わっ大失敗! ちゃんと確かめなかったぼくが悪かったけれど、視界の死角に、黒い服装の女性が歩いていたのに気がつかなかったんだよ。それに、スニーカーを履いていたらしくて、足音も聞こえなかったんだもん。
 「あ、失礼っ」と思わずぼくはお詫びした。そうしたらその若い女性が「いいえ、どういたしまして」と言ったんだ。
 「どういたしまして」ってのもなんか変だけれど、ぼくは思わずへへッと笑ってしまった。女性もフフッと口を押えていた。
 ぶーっ! 失礼! どういたしまして………考えてみれば、かなりシュールな光景ではある。
 と、ただそれだけの話なのだけれど、なんだか妙におかしくて、ぼくは笑いながら家へ帰ったのだった。女性は途中で角を曲がって行ったので、その後も笑っていたかどうかは分からない。
 みなさんも、おならをするときは、周囲をよく確かめてからにしたほうがいいですよ。

 東京新聞では一面に「平和の俳句」というコーナーがあって、毎日それを読むのがぼくの楽しみのひとつ。これは、いわゆる「季語」などの制約もないということなので、かなり自由な俳句が投稿されている。そこで、ぼくも下手な句をひとつ。
 屁をひって へへっと笑う 平和なり

ウソと失言と差別の年末大バーゲン

 でもさ、「うんち」とか「おなら」って、なんとなく可愛いからいいよね。これが「クソ」になると、ちょっと厄介だ。
 ツイッターをやっていると、この「クソ」にしょっちゅうお目にかかる。やたら連発する人、けっこういるんだ。ことに政権批判や沖縄のことなんかを呟くと、その手のリプがどんどんついてくる。なんで見知らぬ人に対して、意見が違うからと言って「クソ」だの「クズ」などと躊躇なく使えるのか、そこがよく分からない。
 多分、そんな人だって、普通に会えば普通に挨拶してくれる普通人なんだろうと思うけれど、ツイッターになると性格が豹変するのだろうか? それとも、普段からそんな性格の人なのだろうか? 他人を平気で誹謗中傷できるという性格…。
 でも、こんなことがSNSの世界の中だけならまだしも、政治の中枢の国会議員たちなんかにも連発されたんじゃ、笑い事ではなくなる。もうすぐ師走というせいでないだろうが、ここにきて、ひどい例が早めの歳末大安売り。

◎自民党の竹下亘総務会長が「同性パートナーは宮中晩さん会には招待すべきじゃない」
◎山本幸三前地方創生相が「なんでそんなに黒いのが好きなのか」との黒人差別発言
◎大阪市の吉村洋文市長が、慰安婦像問題をめぐってサンフランシスコ市との姉妹都市解消を表明
◎自民党の神谷昇衆院議員が、衆院選直前に選挙区内の市議らに現金10~20万円を配っていたことが判明
◎加計学園問題で、会計検査院が値引きの根拠不十分との報告書を提出したが、安倍首相は「これまでも丁寧に説明して来た」
◎国会では自民党が「質問時間は与党分を増やせ」と主張して混乱
◎岸和田市長が2013年の市長選の際に、自民党関係者に200万円を渡していたことが発覚

 まさに「開いた口が塞がらない」ほどの呆れ返ることばかり。
 どれをとっても政治の(政治家の)劣化を嘆くしかないことばかりだが、中でも大阪市の場合は深刻だ。大阪市とサンフランシスコ市は1957年に姉妹都市協定を結んで以来、高校生の交換留学等の交流を続けてきたのに、それを一市長の一存で止めてしまうというのだ。自ら孤立化を選ぶのは、中国包囲網などと口走って、結局、逆効果しか生まなかった安倍外交とそっくりだ。
 他国とのつき合いや外交には、それなりの長い努力が根底にあるはずなのに、一時の感情でそれをぶっ壊してしまう。政治家としては最低の部類に入るのが、この吉村市長である。
 「60年間のサンフランシスコとの伝統的文化的交流を、つまらん若造がぶっ壊しやがって!」と、歴代市長は怒り心頭だろう。

自民党の思い通りの国会審議

 まあ、特に自民党は、安倍晋三首相を筆頭に、麻生太郎副首相以下、放言暴言失言妄言のエキスパートぞろいなのだから、ほかの議員たちがそれに倣ったとしても仕方ないけれど、どいつもこいつも何の責任も取らないのだから、政治がうまく回っていくはずがない。
 かつて「責任者出てこい!」という漫才ギャグがあったけれど、出てきたって、いけしゃあしゃあと「誤解があったならば取り消します」で済ましちゃうのだから始末に悪い。とにかく早急に、暴言や失言した連中をひとりひとり問い詰めて責任をとらせていくしか、真の政治を取り戻すことができない状況にまで来てしまっている。
 それこそがマスメディアの存在意義、役割であるはずなのだが、スシローさんを筆頭に、どうもなあ…。

 27日からようやく始まった国会の予算委員会を少しだけ見ていたが、とてもまともに見ちゃいられない。「政治の言葉が軽くなり過ぎた」と、ぼくはたびたびこのコラムでも書いてきたけれど、もうそんな悠長なことを言っている場合じゃなくなった。
 与党の質問は「よいしょ」の連続で何も中身がないし、野党の質問は短い時間に制限されてやっぱり尻切れトンボ。ようやく核心に迫りそうになると時間切れ。
 自民党がまたも数の力で押し切った与野党の質問時間の配分が、その効果を示している。(注・これまでは与党2、野党8の配分だったが、今国会では与党5時間、野党9時間と改悪された)。
 それにしても、安倍以下の閣僚たちの応答ぶりのひどさと言ったらないね。そろいもそろって「蛙のツラに…」なんだから。
 結局、安倍首相の思い通りに国会が“壊されて”いるのだ。

 たまには、うんちやおならの話で、オチャラけたいと思ったのだが、やっぱりこんなところへ行き着いてしまった。
 ごめんなさい…です。

お隣の庭の柿がこんなに見事に実りました。仲良しなので、ときどき持ってきてくれます。美味しいです。ご近所さんとは仲良くしとくといいよ
鈴木耕
すずき こう: 1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレイボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。1999年「集英社新書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライターに。著書に『スクール・クライシス 少年Xたちの反乱』(角川文庫)、『目覚めたら、戦争』(コモンズ)、『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出版)、『反原発日記 原子炉に、風よ吹くな雨よ降るな 2011年3月11日〜5月11日』(マガジン9 ブックレット)、『原発から見えたこの国のかたち』(リベルタ出版)など。マガジン9では「言葉の海へ」を連載中。ツイッター@kou_1970でも日々発信中。