「国際家族農業年」の10年延長が決定!(マガジン9編集部)

「国際家族農業年」の10年延長が決定!

 先週、世界の食料・農業政策にとって画期的な出来事がありました。2017年12月20日、国連総会で「家族農業の10年間」(the Decade of Family Farming)の議案が国連加盟国104ヶ国の賛成で可決され、2019~2028年が家族農業の10年間になることが正式に決定されたのです。

 これは、2014年に国連が定めた「国際家族農業年」を10年間延長するというもので、世界各国・各地域で小規模・家族農業を関連政策の中心に位置づけようとする国際的流れがあらためて重視されていることを示しています。

 ところが、日本ではこれとは全く逆行するような動きが起きています。TPP11や日欧EPAといった貿易自由化の流れの中で、農業改革・農協改革が推し進められ、種子法の廃止や市場法の改革、輸出強化・農村所得倍増など、新自由主義的な政策が目立っているのです。

 日本のニュースなどではあまり話題にあがることのない、「小規模・家族農業」のこと。しかし、これからの暮らしを考えるうえで大きな鍵を握っている存在です。そこで今回は、10年延長キャンペーン活動「国際家族農業年+10」のサポーター組織として日本で設立された「小規模・家族農業ネットワーク・ジャパン」(SFFNJ)事務局の方に原稿を寄せていただきました。

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 みなさんは、「家族農業」に、どんなイメージを持つでしょうか? なかには、封建的な家父長制のイメージをもつ人もいるかもしれません。確かに、こうした問題は過去にも現在にも存在していますが、国連では「小規模・家族農業」を「農業労働力の過半を家族労働力が占めている農林漁業」と定義しています。人のつながりによって成り立つ農業のことで、多様化する家族のあり方に伴って時代と共に変化していく存在です。

 また、小規模・家族農業に、「時代遅れ」「非効率」「儲からない」といった印象を持つ方もいるかもしれません。

 では、近代的な農業は「先進的」で「効率的」で「儲かる」のでしょうか。近代的農業による負の側面、すなわち環境汚染、枯渇性資源への依存、水資源の枯渇、食の安全性、気候変動等も次第に明らかになってきました。また、近代的農業モデルの下で進んだ国際農産物・食品市場への過度の依存は、地域の食料主権を脅かしており、世界的食料危機(2007〜08年)以来、ますます疑問視されています。さらに、遺伝子組み換え作物など、近代的農業の発展の中で生み出された技術による環境・社会への悪影響も指摘されています。

 こうした中で、時代遅れだと思われていた小規模・家族農業が、持続可能な農業の実現という目標に照らして、実は最も効率的だという評価がなされるようになりました。2014年、国連食糧農業機関(FAO)事務局長は、「家族農業以外に持続可能な食料生産のパラダイムに近い存在はない」「国や地域の開発において、家族農業を中心とした計画を実行する必要がある」と述べています。

 統計的に見ると、世界の農業の約73%が1ha未満の小規模農業です。小規模・家族農業は、世界の農家の9割を占め、食料の8割を生産しています。飢餓や食料安全保障を語るときに、小規模・家族農業抜きには語れないのです。生物多様性や環境保全、雇用創出、経済活性化のほか、貧困、飢餓の撲滅にも貢献する能力があると見られています。

 FAOなど国際機関は、これから支援すべきは小規模・家族農業だということを2010年頃から訴え続けてきました。国連の持続可能な開発目標(SDGs: 2016〜30年)の中でも、家族農業の役割が位置付けられています。

 その一方で、市場のグローバル化、国際価格の乱高下、多国籍企業などによる土地収奪、種子の囲い込みなどに直面し、小規模・家族農業は危機的状況に置かれています。世界でも日本でも、政策的な支援を十分に受けてきたとは言えません。

 国連は、2014年を「国際家族農業年」(International Year of Family Farming: IYFF)と定め、小規模・家族農業の役割と可能性を再評価し、支援に乗り出すための啓発活動を展開しました。しかし、小規模・家族農業の置かれた状況を考えると、この活動はまだ十分とは言えません。

 世界では、この国際家族農業年をさらに10年間延長しようと、キャンペーン活動「国際家族農業年+10」(IYFF+10)が展開されてきました。世界約60ヶ国にキャンペーンのサポーター組織があります。日本でも、2017年6月に、初のサポーター組織として「小規模・家族農業ネットワーク・ジャパン」(SFFNJ)を立ち上げました。

 そして、嬉しいことに、2017年12月20日に国連総会で、2019~2028年を家族農業の10年間にすることが正式に決定されたのです。

 10年間の延長は決定しましたが、SFFNJでは、農業者や消費者・市民団体の関係者、研究者などの有志が呼びかけて、活動の主旨に賛同する個人・団体を募っています。これから全国各地での学習会や映画の上映会などを呼び掛けながら、日本でも小規模・家族農業の役割と可能性を再評価し、農業・食料政策の中心に位置づけることを求めていきたいと考えています。(SFFNJ事務局)

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 これは、私たちの日々の食べ物はもちろん、それを支える農業や地域社会、環境をどう守っていくべきなのか、という問題でもあります。関心を持った方は、ぜひSFFNJのホームページやフェイスブックをご覧になってください。

●小規模・家族農業ネットワーク・ジャパン」(SFFNJ)
HP: https://www.sffnj.net/
フェイスブック: https://www.facebook.com/sffnj2017/

SFFNJ設立集会にて。〈右から〉呼びかけ人の関根佳恵さん(愛知学院大学)、吉澤真満子さん(NPO法人APLA)、斎藤博嗣さん(一反百姓「じねん道」)