第109回:高円寺一揆2018!(松本哉)

 早くも2018年。2011年の原発事故と当時の反原発運動からもう7年も経とうとしている。ここ数年は、ひたすら海外の大マヌケな連中との結託を進めているが、これはあの原発事故とその反対運動を通して思い立ったという側面が多い。何度も触れてるかもしれないが、たまには少し振り返っておさらいしてみよう。

復習! 反原発運動と東アジアマヌケ革命

 一挙に海外作戦を開始した理由は大きく分けて二点ある。
 まず一つは、腰を据えすぎた場所づくりの危うさだ。2005年に素人の乱を高円寺にオープンしてからひたすら店を増やしたり、各種イベントや騒動を巻き起こしてきた。もちろん当時も各地に知り合いや仲間は大量に増えてきていたけど、基本的な生活の基盤は高円寺。そんな時、原発が大爆発して、大パニックになり、こりゃ、東京も超汚染地帯になって住めなくなるんじゃないかっていう恐怖があった。その時「一つの場所だけで場所作りをするのはやばい!」というのを強烈に感じた。もちろん原発のみに限らず、各種天変地異やら戦争などの人災など世の中何が起こるかわからないし、国の制度が変わって何もできなくなることだって外国ではよく聞く話。町とともに全て失うなんてまっぴらごめんだ。仮に別の街に移動したとしても、その先で何かあったらこれまたおしまい。何があっても潰れない地下文化を築くには他の都市、特に海外との協力関係を作っておくのが大事だ。と言うのがまず一つ目。
 そしてもう一つは、日本社会の暗さというか、せせこましさ。原発っていう誰がどう考えても「ヤベーだろこれ!」って言うものが明らかになったにもかかわらず、利権やら金もうけやら、いろんなものが絡んで、当時政治家はみんな「原発はよくないね〜」とか言いつつも、しばらく経ったらなんだかんだと原発を復活していってしまうような権力者たち。何度も戦争とか起こしておいて、結局うやむやのままロクに反省もせずに元に戻ってるのと完全に同じじゃねーか。
 その一方で反対運動の側も日本独特の謎の予定調和みたいなものが蔓延していた。最初の混乱状態の中の反対運動は、デモ初参加者の人ばかりで誰が何をやってるのかよくわからないぐらいの勢いで、いろんな人が勝手なことばかりやっててすごい力があった。ところが時間が経ってくると「運動はこうやってやるべきだ」みたいな意見が各所から続々と出てきて面白くもなんともなくなってきた。
 権力者は権力を持っている。民衆は権力を持っていない。この不平等な状態で戦うのであれば、混乱状態の中で一挙に畳み掛けるしかない。混乱状態を一日でも多く長引かせ、政府には「やばい! なんだか知らないけどみんな怒ってる! これ以上怒らせたらやばいんじゃないの!?」と言う恐怖感を与えまくって、早々に「まいりました!」と言わせるしかない。そう、世の中に怒ってる人たちは個々人なので、本来姿はない。ないはずの姿を見せたら負けなのだ。
 もちろん、やり方だってどんなやり方が正しいなんてあるわけない。全部のやり方をやるのが一番いい。もちろん社会運動に限らず、スペースの運営にしても、面白いイベントのやり方にしても、海外には無数の新作戦が山ほどあり、ヒントがたくさんある。それを全部ごちゃまぜにしてみたら、すごい力になるに違いない。
 そう、我々の最大の敵は予定調和なのだ。

 さてさて、なんだか話は逸れた感じがするが、そんなこともあって、移動できる場所づくりをしないといけないというのと、日本に根付いた謎の停滞感を全部ぶち壊すしかないってことで、海外との交流を開始したわけだが、実際海外に行ってみるとこれがまた面白いことに、どこの国でも同じ悩みを抱えていた。それぞれの国はそれぞれでお決まりのパターンができすぎて飽き飽きして限界をみんな感じてた。なんだ、悩み同じじゃん! よっしゃー、やっぱりこれは世界の大バカたちでみんな結託して各地にあるくだらない予定調和を全部ぶち壊してやるしかないね〜、ってことで始まったのが東アジア圏の大バカ作戦の数々。なぜ東アジアかというと、近所だから。3〜4回飲み会我慢したらチケットが買えるぐらいの距離間なので、簡単に結託ができるはずだと言うこと。
 で、このマガ9連載を読んでくれてる人なら、もうよくわかってると思うけど、2012年ごろから開始したこの計画、初期はひたすら飲み歩いたり遊びに行きまくったりしてとんでもない量の飲み友達が増えまくる。で、さらに徐々に共同イベントとかをやり始めたり、何か問題が起きた時の連帯イベントをやってみたり、皆さんもご存知の「NO LIMIT 東京自治区」で各地の人が大集結してみたりという流れに行き着いた。今や、各地の地下文化圏が一体どういうことになってるかが、お互いよく把握できるようになってきている。
 この流れでひたすら続けてきた海外との交流と結託。ヨーロッパなんかでは国境を越えても、お互いのアンダーグラウンドの文化圏のことを色々知ってたり、何かあったらすぐ駆けつけたりしまくってて楽しそうだと常々思ってたけど、これからアジア圏もそんな感じになっちゃうだろうから、これは楽しみ!!!! しかも欧米とアジア圏では交流の仕方がまたちょっと違うから、これまた独自な謎のスタイルの交流が始まるはずで、面白くならないわけがない!!!!

決行! 高円寺一揆!!

ついに一揆が勃発! フライヤーの雰囲気怖いけど、実際は怖くないよ〜

 さて、交流は大事なんだけど、ただいろんなところに行って見聞きして遊んでるだけだったら、自分探しの旅をして世界を放浪してる人と変わらない(もちろんそれはそれでいいけど)。重要なのは、自分たちのやってることや作っているものを持って交流に出かけ、それを自分の場所に持って帰ってまた還元することが大事なのだ。と、いうわけで! ここ数年の海外の交流や結託の合間に、ここはひとつ我がお膝元の高円寺でなんかやるしかないね〜、ってことで始まったのがこの「高円寺一揆2018」! もともと仲のいい店やスペースもあるし、いつも高円寺で飲み歩いてる時に遭遇する仲間なんかも大量にいる。これはなんかできそう! しかも、高円寺というのはまた謎の街で、よく外からは「ダメ人間の集まる街」「高円寺から出たら成功する」などと言われ放題だ。ま、確かに間違ってはいないかもしれないけど、高円寺にはいろんな人たちがいて、いろんな文化を作ってきていることも確か。しかも、そう簡単に世の中に役立つ人間なんかにならないのがまた高円寺のいいところのひとつ。今の世の中、謎の効率を追求させられたり、ウソくさいモラルの押し付けも半端ない。そんなしょうもないものは放っといて、勝手なことをやりまくって、独自の祭りをやっちゃうのが一番だ。
 そう、誰がなんと言おうと、自分たちの力で自分たちの文化や社会を作って行くのが最高。ということで、インディーズのミュージシャンやアーティスト、自力で営業する謎の店やスペース、ただの飲んだくれなどなど、訳のわからないやつらが集結して強力な祭りをやってしまおう。高円寺の大バカたちが本気で遊び出したらどういうことになるか!? これこそまさに現代の一揆! 理不尽なことには一切いうこと聞かず、独自に勝手なことをやってきた偉大な先人たちによる一揆の火を絶やしてはいけない!
 ということで開催されるのが、来たる2月2日〜4日まで開催される「高円寺一揆2018」だ。前夜祭のパーティに始まり、ライブハウスでのイベント、オールナイトのDJパーティ、なんと「NO LIMIT 東京自治区」のドキュメンタリー映画、いろんな人がリレー式に開ける48時間連続BARなどなど、目白押しだ! 皆さんも是非遊びにきてみてもらいたい!

なんと、「NO LIMIT 東京自治区」のドキュメンタリー映画も上映!
詳細はこちらを参照!!!!
高円寺一揆2018公式サイト
http://koenji.manuke.asia/

高円寺一揆四十七士が集結

 さて、最後に一つ紹介しておかなければならないのが、最近新たに編み出した前代未聞のシステム、四十七士だ。何かというと、腹を切る覚悟の同志。いよいよなんのことかわからない。
 つまり、イベントをやる時、大きなイベントになるとどうしても資金が必要となる。自分らで財力がある場合はいいけど、ない場合はなんとかしてお金を集めなきゃいけない。いろんな手はあるが、なかなかどれもしっくりこない。例えば、企業の協賛をとってスポンサーになってもらうというのも手だけど、これは当然宣伝に使われる上に一応こちらとしてもスポンサーに気をつかってしまう。行政などから補助金をもらうという手もあるが、これは報告書や会計報告などやたら面倒な上に「これはしてくれるな」的な注文も付きがちだ。一方で純粋に募金を集めるという手もある。ネット上でクラウドファンディングなどは最近みんなよく使う手だ。しかし、これもどうもあまり面白くない。いくら出してくれたらその対価としてこれをあげますよ、みたいな感じになるので、なんだか消費者みたいな感じになっちゃうし、お金を出す側と実行する側の距離感はどうしても否めない。
 かといって、完全DIYで自分たちでプレイベントをやって稼いだり、物販などで資金を集めるという手もあるけど、これはこれで超大変。それに思うように資金が集まらなかったらどうしよう、などと考えちゃうと何もできなくなっちゃう。あるいは大きく勝負に出たとしても、もし大きな赤字を出してしまった時に中心人物やその周辺などの数人が借金を抱えることになる。これは覚悟の上なのでいいと言えばいいんだけど、どんどん面白いイベントが続くためにも、個人に大きな負担が行くのは極力避けていきたい。
 そこで、編み出されたのが「いざとなった時は一肌脱ぐよ!」っていう腹を決めた強力な同志を募ること。お金の面で言えば、イベント終了後、赤字を出した場合にその赤字額を47で割るのだ。ただ、無限だと怖いので一応上限は1万円と設定。47人もいると意外と心強く、仮に47万円赤字を出したとしても一人一万円だ。それに幾ら何でも47万円も赤字になるわけないので、赤字になったとしても出して数千円ってところだろう。とりあえず、結構大きく出ることができるようになる。ま、お金を負担する人って言ってしまえばそれまでだけど、クラウドファンディングの場合は、事前に一定の額を払って、「あとは見返りをもらおうか」ということになるが、四十七士の場合はイベントが成功するか失敗するかによって負担額が変わることもあるので、単なる消費者でもないし、しかも腹を括ってる感があるので「金出すからあとは好きにやって」という他人行儀な感じでもない。そう、一緒にイベントを作る完全な同志なのだ。なので、その四十七士を集める時も、結構丁寧にやる。直接会って話す場合は「実はこういう計画があって、一肌脱いでもらえないだろうか」と相談し「よし、乗った。それだったら一枚噛もう!」と乗ってくれる。ネット上で宣伝して募ったのに応じてくれる人もたくさんいたけど、これも気合いの入ったメールや電話がかかってきて「今回の騒動、一枚噛ませてもらいますよ! なんでも言ってください!」と、みんなやたら心強い! あともう一つ大事なのは、イベントを決行する中心メンバーも四十七士には入ること。みんなにお金などの腹を括ってもらって、「こっちは執行部です」じゃ、みっともない。ともに腹をくくるのが大事。
 こうして募集から数日で47人が見事に揃って、準備は万端! ちなみに四十七士って名前はあの忠臣蔵の討ち入りの義士から勝手に取ったんだけど、まあ別に深い意味があるわけじゃない。7人の侍だと負担が多すぎて死んじゃいそうだし、101匹のわんちゃんだと、なんだかあまり気合いが入らなそうだからダメだ。人数的にも手頃で討ち入りっぽくてなんかいいってことで、とりあえず四十七士ということに。
 そして、四十七士入りを果たすと、スポンサーではなく同志なので、「なんとか今回の一揆、成功させましょう!」と、手伝ってくれたりもする。これはありがたい。さすが四十七士! 四十七士の諸氏には、まず缶バッジを進呈。一見わけわからないバッジなんだけど、これを付けてると、わかる人が見たら「あ! こ、こいつは今回の一揆で腹を括ったのか!」と一目瞭然。これはやばい。あと、おまけとして、四十七士全員の名前を公式Tシャツにプリントする。まあ、これも特に意味はないけど、神社に寄付した人が石に名前が書かれてるようなそんなもんかな。
 この四十七士制度、何かことを起こす時にかなり有用なシステムなので、同志集めの際には試してみて欲しい。ただ、あまり四十七士に頼って適当なイベントとかやったら、次回から四十七人が集まらなくなってくるので、同志を募る際は失礼のないようにそれなりの覚悟でやってもらいたい。

これが四十七士の徽章だ。
街でこれを付けている人を発見したら、そいつが義士だ!!!

 というわけで、2月2〜4日は高円寺で大バカの一斉蜂起「高円寺一揆2018」。これは参加するしかない!!!!! お楽しみに!!!!

松本哉
まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、『世界マヌケ反乱の手引書:ふざけた場所の作り方』(筑摩書房)編著に『素人の乱』(河出書房新社)。