「みだりに」好きなだけ街を歩き回りたい(西村リユ)

 「森友問題」などをめぐって、混乱が続く今国会。その陰で、東京都でもなんだか、とんでもない条例が制定されようとしているようです。
 「東京都迷惑防止条例改正案」。正式名称では「公衆に著しく迷惑をかける暴力行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例案」だそう。
 「公衆に著しく迷惑をかける暴力行為〜」といわれると、「そりゃ防止しなきゃ」という気になってしまいそうなのですが、今回の「改正案」で新たに取り締まりの対象になるとされているのは、以下のような行為。

・みだりにうろつくこと
・Eメールの連続送信、SNS等への連続送信
・監視していると告げること
・名誉を害する事項を告げること
・性的羞恥心を害する事項を告げること

 特に「みだりにうろつく」「連続送信」あたりは、誰でも当てはまる行為を日常的にやっていそう。処罰の対象になるのはそれが「特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的」による場合──だというのですが、その行為が「悪意の感情によるものではない」なんて、誰がどうやって証明できるのでしょうか。
 まず思いつくのは、すでにいろんなところで指摘されているように、デモや抗議行動への規制につながりそう、ということ。官邸前や国会前を「みだりに」歩き回った、首相や政治家を批判するスピーチをした、SNSに政策に疑問を呈する内容の投稿をした…何でも「悪意の感情」による行為だとこじつけて、規制や逮捕の理由にしてしまえそうです。
 もちろんそれだけではなく、ジャーナリストが取材のために政治家の自宅そばで張り込んでいたとか、労働組合や消費者が企業に批判的な発言をしたとかも、規制の対象になる可能性が出てきます。もっと言えば、「街のあちこちを意味もなくふらふら歩いていた」ことを口実に、権力にとって都合の悪い発言や人物を押さえ込む、なんてこともできてしまうのでは…(まさに共謀罪と同じ)。

 「共謀罪」法成立のときもそうでしたが、この条例が成立したから突然、次の日から逮捕者が大量に出る、なんてことはもちろん、ないでしょう。でも、たとえばデモに参加するときに、SNSに投稿するときに、多くの人の脳裏に「大丈夫かな」「やめとこうかな」という思いがよぎるようにはなるかもしれない。それは、間違いなくこの社会を息苦しいものにしていくでしょう。そして、いざ為政者にとって都合の悪い事実が発覚して、抗議の声が高まったなんてときに、こうした条例が利用されないわけがありません。
 「みだりに(=これといった理由もなしに)」街を歩き回ることさえ、好きなようにできない社会。それが、生きやすい社会だとは思えないのです。

 このままいけば、「改正案」は今月29日の都議会本会議で採決の予定、とのことですが、それまでになんとか反対の声をあげていきたい。東京法律事務所のブログなどで、都議会各派へのFAXによる抗議が呼びかけられています。22日(木)には都庁前での抗議行動もあるようですので、お近くの方は、ぜひ!

(西村リユ)

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