第112回:いい加減にしろ〜 税金が高すぎる!(松本哉)

 最近、「出国税」なる訳の分からない謎の税金が登場した。どうやら国を一回出ると1000円かかるらしい。わかりやすく言うと小学生のクソガキが「この線超えたら100円だからな~」とか言ってるあれが本物の税金になった感じ。なんと来年早々に適用されるとのこと。しかも3月の確定申告の後で多くの事業主が殺気立ってるこのタイミング。税だかなんだか知らないけど、よくいろんな手を考えるもんだ。なんだか国境を出入りするのが悪いことみたいだし、観光振興のために使うとかなんとか言ってるけど、そんなものわかったもんじゃない。ま、結局なんだかんだ言って金が欲しいだけなんだろうけどね~。
 しかし、ふと忘れがちだけど、よく考えたらいろんな税金が高すぎる。住民税やら所得税みたいにわかりやすく徴収されるものだけでも「そんなに面倒みてもらってるかね~」と腹立つぐらい。その上、タバコを吸えば半分ぐらいはタバコ税がかかっており、コンビニで缶ビールを買っても酒税がガッポリ取られてる。車に乗ってガソリンを入れても半分ぐらいはガソリン税だ。
 「車なんて金持ちのものでしょ? うちら貧乏人はガソリン税なんて払ってないし」と思う人、甘い。バスに乗った運賃はバス会社が払うガソリン税の分だけ上乗せされているので、我々乗客が払ってるのと同じだ。あるいは「いやいや、バスもタクシーも乗らないし、金がなさすぎて家からほとんど出ないから関係ないよ」と言ってもダメ。ネットで買い物をして送られてくる宅配便の送料には当然運送会社が払うガソリン税の分が入ってる。それにガソリン税以外にも自動車税や自動車重量税の分も追加されてる、チキショー。
 そしてさらに、微々たるものでも資産があればもう一大事。親が死んじゃえば相続税がかかり、土地でも転がり込んだら固定資産税を取られ、資産なんか持ってたらとんでもないことになると思い「バカヤロー頭にきた! こんなものイラネー。その辺のやつにくれてやる!」と全財産を人にばら撒いても贈与税がかかる。で、その一方で本当の大金持ちがたくさん税金を払ってるのは確かだけど、やつらは不労所得で生活してたりするので、実はその金持ちが持ってる物件に住んでる貧乏人が払った家賃を使って納税するので金持ちにとっては屁でもない。っていうか、結局その税金、やっぱりうちらが払ってるってことじゃねーか、コノヤロー!! 
 その上、続々と新税が登場してくるのでたまったもんじゃない。もう何かチョロっと動いたら課税されるということ。さらに年金や健康保険もお金を差し出す代わりに面倒見てもらうって意味では準税金みたいなもの。とは言っても真面目に働いてればなんとか生活はできるので、一瞬忘れがちだけど、よくよく考えたらちょっと取りすぎだろ、おい! 「今の日本は豊か」みたいに思いがちだけど、実は江戸時代の水呑百姓級に巻き上げられてることはどうも間違いない。コンチキショー、少し返せ!

 さて、それでニュースなんかを見てみると、もう皆さんご存知の通りで今の政権やばいことになってる。勝手なことばかりやってて、バレて来たらウソばっかりつくし、挙げ句の果てには「よく知らない」とかごまかして逃げたりする。国が大赤字だっていうのにムダ使いばっかりやってるし、大事な国の財産を勢いで激安で人に売っちゃったり…。しかも赤字だってあれほど言ってるのに親分(トランプ)を気遣ってミサイルとか買っちゃう。う~ん、完全にボンクラ社長率いるダメ会社だ。ヤバいヤバい、あんなやつらにまんまと金渡してて大丈夫なのか!?

税が上がれば街の風景が変わる

 さて、国や政治の文句ばかり言ってるだけだと焼き鳥屋でくだ巻いてるオッサンと同じなので、そろそろ具体的な商店街の話もひとつ。
 商店街で店なんかやってると、他の商店主たちとの交流が盛んだ。もちろん成功した老舗などもあるけど、高円寺の街は若いやつらががどんどん店を開いているので、そんな店をやってる若いやつらと飲んだりすることもよくある。カフェやBAR、古着屋やら雑貨屋などいろんな店があるけど、みんな店舗は賃貸だし、他の資産や副収入などなく店一本でやってるやつがたくさんいて、ギリギリでやってる店が大量にある。何十年もやってても常に自転車操業でやってる古い店もある。そんな時にたまに出る話が「消費税がやばい」ってこと。あれはなかなかの強敵で、事業主は一年に一回ドサッと払わなきゃいけないので死にそうになる。そういえば、あれ今どうなったのかわからないけど、また上がって10%になるって話もあった。この2%がまた効くんだねー、これが! なんでかというと、小さい個人店などはキリがいいようにみんな内税で値段つけてることがほとんど。なので2%上がったって商品の値段を2%上げるのは難しいから、結局値段はそのままで結局店主が払うことになる。そうそう、5%から8%になった時も同じでみんな死にそうになった。おまけに一年に一度のドサッと来る波がでかくなるのでギリギリでやってる店なんかはここでトドメを刺される。恐るべし消費税(対抗手段は増税時にこのマガ9に書いたのでそれを参考にしてほしい)。増税案復活して10%なんかになろうもんなら、ただじゃ済まされない。店やってる人は全員わかると思うけど、日々の売り上げによって気分がすごい左右される。売れない日が続くときはイライラしがちになるし、売れてる時期はなんだか気が大きくなったり、仏のように温厚になって不気味がられたりする。権力を持ってる人や頭のよさそうな仕事してる諸君、売り上げが悪い時の商店主の殺伐とした機嫌の悪さを甘く見てはいけない! 我々は常にギリギリなのだ。どうだ、まいったか!

 さてさて、せっかくだから最後にどれだけ街が殺気立っているかを紹介しておこう。心して読んでほしい。血で血を洗う世にも恐ろしい高円寺北中通り商店街のお話。
 先日、「北中夜市」というイベントがあった。これは毎月一回開催されているフリマと飲食屋台が集う商店街主催のイベント。春から冬にかけての開催なので、今年の第一回目が4月15日にあった。ところが、北中通り商店街の重鎮中の重鎮、元商店会長の長老、藪そばのオヤジ(通称やぶじい)にその情報が行き届かなかった。うっかり忘れてしまったのか、連絡が行き届かなかったのか、それは謎に包まれている。ここでまず直前に知ったやぶじいは「なんだよ、俺は聞いてねえよ、ケンカ売ってんのか」と、早くも雲行きが怪しくなる。普段は店の前に巨大な鉄板を出し焼きそばを売りまくる史上空前のビジネスチャンスだ。群雄割拠の商店街の店主としてはここは外せないタイミング。普段なら手下の店(うちの素人の乱5号店や古本BARのコクテイルなど)に雷を落として回るところ。しかし不機嫌になるものの、ここは1円でも多く稼いでおかないと生き抜くことができないシビアな世界。さすが老練やぶじい、動きは俊敏だった。大鉄板が間に合わないとなると急遽焼きそばパンに変更し大急ぎで作り始める。80代半ばとは思えない職人技であっという間に大量の焼きそばパンが完成。ここでひとまずみんなホッと一安心。…ところが! その北中夜市の終了時間が近付いてきた頃、「大変だ!藪さんところのパン、まだたくさん残ってる」という情報が街に回り始め緊張感が高まる。これで大量に売れ残ろうもんなら、真っ先に手下(気づいたらそういう扱いになってた)であるうちの店に怒鳴り込んできて「テメー、殺されてえのか!」となるに違いない。これはやばい!!!! 危機を感じ、さりげなくその辺の知り合いなどに「焼きそばパンおいしいよ、あっちで売ってるよ?」などと勧めてみるが、みんなすでに食べ歩いたりしてるので効果は薄い! やばいやばい、殺される。

 そして、その日の北中夜市は静かに終了。万事休す。戦々恐々として最高レベルの緊張感に包まれた北中通り商店街は、気のせいかいつもに増して静まり返る。我が5号店もその日のアルバイトの二人も定時で早々に帰り、自分一人で店番をする。店内から見える商店街の道はいつもに増して黒い。完全にホラー映画のワンシーンのようだ。さすがに次のシーンを見たくないばかりに、こっそりといつもより早めに店を閉め、闇夜に紛れて戒厳令下の北中通りを脱出。フーッ、なんとか命拾いをした~。
 さて翌日。まだ警戒心を持ちつつ店を開けると、まもなく古本BARのコクテイルさんがゲッソリした顔をして現れ、「藪さんにちゃんと日にち教えといてよ~。おれ、今朝ものすごい勢いで怒られたよ」と言いにきた。よし、そっちに行ったか!! 危なかった〜!!! そしてうなだれて帰っていくその後ろ姿には哀愁の二文字。ま、確かにコクテイルさんは藪そばの隣なので、餌食になりやすいのだが、これも運命と思って諦めてもらうよりない。

 みなさん、この緊張感と殺気、わかってもらえるだろうか。みんながものすごい儲かってるのならこんな緊張感が走ることはないはずだ。今、日本中で商店街や個人店が滅びつつあり、じり貧の中せめて高円寺はとみんな頑張ってる。そう、海抜ゼロメートル地帯における温暖化のような感じ。ここでさらに税金が上がれば、さらに恐ろしいことに。下々のこともわからず困ったら増税みたいに考えてる謎の政治家とかその一味には「お前は藪そばの隣で店をやる勇気はあるのか!」と問いたい。
 そしてこれ以上苦しくなったら潰れる商店だって必ず増える。そうなると結局チェーン店や大型店が増え、街の特色も地域のコミュニケーションも薄くなっちゃう。それは結果的に街を滅ぼすことにもなる。ちなみによく性格悪いやつとかは「だったらもっとうまく商売やればいいんだよ」と言う。そう、うまくやって生き残ればいい。でも、うまくやってない店があるから街は面白いのだ。
 これ以上くだらない税金が増えたら、もう裸一貫、四畳半にふんどし一丁で大あぐらかいて「取れるもんなら取ってみやがれ! 逆さまにしたって何も出てこねえからな! さあ、かかってこい!」と開き直る第二第三のやぶじいが無数に登場して世界が大混乱に陥ることは間違いない。政府の諸君! 無駄な抵抗はやめて税金を取りまくるのをやめよ! 第二第三のコクテイルさんを生んでからでは手遅れなのだ!!!!


松本哉
まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、『世界マヌケ反乱の手引書:ふざけた場所の作り方』(筑摩書房)編著に『素人の乱』(河出書房新社)。