【レポート】それ、南部さんに聞いてみよう! 市民(みんな)のための「国会・憲法・国民投票」講座

講師:南部義典さん(シンクタンク「国民投票広報機構」代表)
2018年4月28日(土)14時~16時(開場13時半~)@マガ9サロン

なんぶ よしのり:1971年岐阜県生まれ。京都大学文学部卒業。衆議院議員政策担当秘書、慶應義塾大学大学院法学研究科講師(非常勤)を歴任。現在、シンクタンク「国民投票広報機構」代表。専門は、国民投票法制、国会法制、立法過程。国民投票法に関し、衆議院憲法審査会、衆議院・参議院の日本国憲法に関する調査特別委員会で、参考人、公述人として発言。主な著書に『図解 超早わかり国民投票法入門』(C&R研究所、2017年)、『Q&A解説 憲法改正国民投票法』(現代人文社、2007年)、『広告が憲法を殺す日 ――国民投票とプロパガンダCM』(共著、集英社新書、2018年)、『18歳成人社会ハンドブック ――制度改革と教育の課題』(共著、明石書店、2018年)、『18歳選挙権と市民教育ハンドブック[補訂版]』(共著、開発教育協会、2017年)、などがある。(2018年4月現在)

参加者もじっくり話せる「マガ9サロン」

 これまで行ってきた「マガ9学校」とは別に、20名以下で、講師・参加者・スタッフが交流しながら意見交換できる場=「マガ9サロン」が新しくスタートしました。初めての試みとなる今回は、マガジン9でもおなじみの南部義典さんが講師の「国会・憲法・国民投票」講座。この日の参加者は、偶然にも女性ばかり。親子での参加もあり、いつもとはちょっと違う少人数のアットホームな雰囲気です。

“究極の首相案件”といえば……

 これまでも、連載「立憲政治の道しるべ」や「南部さんの国民投票法講座」を通じて、国会運営や国民投票法の課題などを取り上げてきた南部義典さん。文章は「ちょっと硬め」という印象があるかもしれませんが、実はとても気さくで面白い方。一人ひとりの質問に耳を傾けて、ユニークなたとえ話を交えながら丁寧に説明していきます。

 「今日はサロン形式ですから、話しているときでも『それどういう意味?』『わたしはこういう意見』と、なんでも自由に発言してください」と南部さん。用意された資料を見ながら、レクチャーはまず国民投票法の課題から始まりました。

 この一年、高い関心を集めてきたのは、やはり「9条改憲」の問題。南部さんは「これこそ、まさに“究極の首相案件”ではないか」と言います。

 急ぎ足で進められているように見える改憲の議論ですが、連載「南部さんの国民投票法講座」でも指摘されてきたように、憲法改正の手続き法である「国民投票法」には課題がいくつもあり、発議のあとのことがきちんと準備されていないと南部さんは言います。「レールのないところには鉄道を走らせることができません。そのレールとなる手続きについての議論がいまの国会では抜けているんです」

 もし改憲発議がされれば、そこから投票まで最長で半年。その間、どんな国民投票運動が展開されるのか、自治体が負担する費用の根拠法はどうするのか、お金がある人がCMを多く流せば投票運動が偏るのではないか……一見、細かいことのように思うかもしれませんが、最近の国会運営が引き起こしている問題の背景には、こうした手続きの無視・軽視があるように思います。万が一、このまま発議されることがあれば、さまざまな矛盾を抱えたまま国民投票が実施されることになりかねません。

「いまの政府は、レールがなくても暴走しそう!」

 それに対して「レールがなくても、いまの政府なら暴走していくのではないか」という不安の声も参加者から上がりました。しかし、南部さんはそもそも発議ができる要件である各議院での3分2以上の賛成を集めることも、いまの状況では厳しいと考えています。

 「改憲勢力が多いといっても、それぞれに違うのでひとくくりにはできません。複数政党で合意していかないと3分の2以上は集まらないのに、自民党内でもまだ意見がまとめられていない状況です。改憲発議は複数政党による3人4脚でフルマラソンを走るくらいハードルが高いもの。誰かのペースが落ちれば、もうゴールまでたどり着けないんです」

 「きちんとした手続きを定めたうえで、現行憲法よりよくなるなら国民投票をしたいという動きが国民のなかから起きてくるのは自然な立憲主義」という南部さんの言葉に、「そのためには、みんなが納得できる形で進められることが大事ですね」と参加者もうなずきます。


 国民投票法についての話が続くなか、あっという間に前半の1時間が経過。休憩のティータイムの間も、参加者からの質問は止まりません。お菓子を楽しみながら、リラックスしたムードで参加者同士での会話も弾みます。

南部さんならではの「国会事情」

 さて、後半は、話題を変えて「野党の役割ってなんだろう」という問いかけから始まりました。参議院と衆議院で野党第一党が異なる「野党ねじれ」がどんな問題を引き起こしているのか、どんな国会改革が必要なのか、自民党による「国会の慣例やぶり」など、国会事情に詳しい南部さんならではの話に、参加者も「知らなかった!」「わかりやすい」と熱心にメモをとります。

 多岐にわたるレクチャーが一通り終わったあとも、まだまだ参加者からの質問は尽きません。「内閣と政府の違い」といった素朴な疑問から「内閣人事権のメリットとデメリット」まで、国会や憲法についてのさまざまな質問に南部さんも一つひとつに答えてくれます。

自衛隊が憲法に明記されたら?

 たとえば、ある参加者からは「自衛隊の存在が憲法に書き込まれた場合」についての質問があがりました。

 そこで、南部さんが「いま憲法に明記されている存在は、天皇、国民、国会、内閣、裁判所、弁護士、検察官、地方公共団体、会計検査院だけ」と話すと、「警察は書かれていないの?」と驚く声も。防衛省すら憲法に書かれていないと考えると、憲法に自衛隊の存在を明記することの意味の大きさが実感されてきますよね。

 「じゃあ、『いまの自衛隊と変わらない』という政府の話は、やっぱり違うんじゃないの?」

 「主権者である私たち国民が国民投票で認めることにどれだけの重みがあるのか、その覚悟があるのかをちゃんと意識しないと」

 「『いまのままで変わらない』の『いまのまま』を、私たちは漠然ととらえているけれど、それって安倍さんのなかでは集団的自衛権を認めた閣議決定後の解釈のものですよね。それを憲法で認めることになる」

 ……など、参加者からも活発な意見が飛び交っていました。

 ときには笑い声もまじりながら盛り上がり、気づけば終了予定時刻を1時間半もオーバー! 話題はどんどんと広がっていき、大盛況のうちに「マガ9サロン」は終了です。

 普段は聞けないような質問も気軽にできるのは少人数ならではの魅力。初めての「マガ9サロン」の試みに、実はスタッフも少しドキドキしていたのですが、参加者のみなさんからはとても好評だったようです。私たちも、普段はなかなか会えないマガジン9読者のみなさんと、じっくり話し合える貴重な機会をいただきました。

 今後もさまざまなテーマで「マガ9サロン」を企画していきたいと思っていますので、今回は参加できなかったという方もぜひ遊びにいらしてください!

※今回の講師・南部義典さんが、2018年5月8日に日本記者クラブで行った会見「「国民投票法の成り立ち、その課題と展望」の動画が、日本記者クラブのサイトで公開されています。あわせてご覧ください。

参加者の声

(アンケートに書いてくださった感想の一部を掲載いたします)

・来て、本当に良かったです!! 濃~い学びのサロン、開いて下さってありがとう!

・わからないところを直接お聞きできてよかったです。日々の政治もTVなどで見つつ、よくわからないことがたくさんあったのですが、テーマにとらわれず聞きたいことを聞けて楽しかったです

・レクチャー プラス 知りたいことを伺うこともでき、参加してよかったです。とくに国民投票の手続きの実状、原発ゼロ法案が止まっている理由、なるほどでした