第133回:“出席点”だけ稼ぐ与党議員を何とかしたい(南部義典)

 小泉進次郎さんが中心メンバーとなる議員連盟が立ち上がったことで、「国会改革」の行方に注目が集まっています。「党首討論を2週間に一回、開催する」「議員、政府に対するスキャンダル追及は、特別委員会で行う」など、およそ内容的には反対のしようがない、大きなテーマをいくつか掲げているようです。

 しかし私は、こうした大きなテーマを提案する前に「すぐに出来る、もっと初歩的なレベルの改革」こそ、地道に実行していくべきであると考えます。まず何より、与党側に「空席」が目立つ現在の委員会室状況を変えることです。

実は、空席だらけの委員会室

 テレビ、インターネットなどで、普段から国会審議をご覧になっている方も多いことでしょう。画面は質疑をする議員をアップで映すため、委員会室の全体の様子はよく分からないのですが、実際はかなり空席が目立っています。酷い時には、全委員の3分の1の出席数くらいで(残り3分の2は空席のまま)議事が進んでいることもあります。

 国会法49条は「委員会は、その委員の半数以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。」と定めています(これを定足数といいます)。委員数40名であれば20名、45名であれば23名の出席が無ければ、委員会を開会することができません。例えば、衆議院厚生労働委員会は、自民28、立憲6、国民5、公明4、共産1、維新1、無1(計45)という配分になっています。このうち、23名の出席がなければ定足数を充たさず、厚生労働委員会は開けません。また、野党議員だけが出席しても定足数を充たさないことは言うまでもありません。

常態化している「定足割れ」

 ここで問題となるのが、定足数だけ充たそうとして委員会の冒頭だけ出席し、開会後に退席してしまう与党議員が少なからずいるということです。国会の実務では「定足割れ」と言いますが、開会時は定足数を充たしているものの、出席議員が段々と減っていき、ついに定足数を下回ってしまうことが常態化しています。

 さすがに、冒頭の一瞬だけ出席するという与党議員はいないように見受けられますが、与党議員が質疑を行っている間は委員会室の自席に座っているものの、野党議員の持ち時間になったら退席するとか、法案の採決の時刻が近づいてきたら戻ってくるとか、色々な行動パターンがあるようです。委員会室で居眠りをしたり、読書をしたり、スマホをいじったりと、議事に集中できない姿は小学生からも笑われますが、委員会室を抜け出してしまうといったより深刻な問題行動が後を絶ちません。まさに、“出席点”だけ稼ごうとするわけです。この点、定足割れを起こしたのであれば、その時点で委員会の議事進行を止めるべきと考えるのが常識的ともいえますが、衆議院、参議院いずれにおいても、往々にして議事は粛々と続行しています。

 また、2017年5月9日の衆議院国土交通委員会では、開会予定時刻になっても与党議員の集まりが悪く、開会そのものが20分程度遅れました。この件で、与党側の理事は野党側に平謝りだったと記憶していますが、与党議員が委員会の開会を妨げるような「珍事」がいつ起きてもおかしくないのが、今の国会の状況なのです。

同僚議員を注意する覚悟と気概はあるのか?

 小泉さんらが呼びかけた議員連盟の会合(6月28日)には、自民党、国民民主党、日本維新の会といった主要政党の議員が100名集ったと報じられています。

 それでは、この会合に集った議員に尋ねますが、委員会の定足割れの日常(問題)をいったいどのように受け止めているのでしょうか。深刻な問題だと受け止めていないのでしょうか。委員会室を退こうとする同僚議員がいた場合には、その場で注意するだけの覚悟と気概を持っているのでしょうか。

 また、品位を欠く野次をどう考えるのでしょうか。先日、委員会に出席した参考人(民間人)に対して暴言を吐いた議員がいましたが(本来なら衆議院における「懲罰事犯」として扱うべきでしたが、委員長の注意で済んでしまっており、この点も改革のテーマに上がるはずです)、今後そのような場に居合わせても、見過ごすだけでしょうか。同僚議員を注意、叱責する覚悟がないのに、「国会改革」を声高に叫ぶのは明らかに、議論の順番を誤っているとしか言いようがありません。

 所属する委員会に出席するのは議員として当然の義務であって、欠席するのは職務放棄に他なりません。そして、委員会室における言動には、品位と礼節が伴っていなければなりません。この点を全議員に周知徹底することが、国会改革の第一歩です。大きなテーマは二の次なのです。

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私からは、今回成立した「18歳成年法」の意義と課題についてお話させていただきます。関心のある方は、ぜひご参加ください。
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南部義典
なんぶ よしのり:1971年岐阜県生まれ。京都大学文学部卒業。衆議院議員政策担当秘書、慶應義塾大学大学院法学研究科講師(非常勤)を歴任。現在、シンクタンク「国民投票広報機構」代表。専門は、国民投票法制、国会法制、立法過程。国民投票法に関し、衆議院憲法審査会、衆議院・参議院の日本国憲法に関する調査特別委員会で、参考人、公述人として発言。主な著書に『図解 超早わかり国民投票法入門』(C&R研究所、2017年)、『Q&A解説 憲法改正国民投票法』(現代人文社、2007年)、『広告が憲法を殺す日 ――国民投票とプロパガンダCM』(共著、集英社新書、2018年)、『18歳成人社会ハンドブック ――制度改革と教育の課題』(共著、明石書店、2018年)、『18歳選挙権と市民教育ハンドブック[補訂版]』(共著、開発教育協会、2017年)、などがある。(2018年4月現在)(写真:吉崎貴幸)