第38回:重大な出来事が多発、日本列島が揺れている…(鈴木耕)

「言葉の海へ」鈴木耕

沖縄へ行ってきたけれど…

 沖縄へ行ってきた。1年ぶりの沖縄。
 カミさんの母が今年2月に亡くなった。97歳になってすぐだった。むろん悲しかったけれど、4年間に及んだカミさんの苦労を思えば、少しはホッとしたのも事実だった。ようやく落ち着いたので、ふたりで久しぶりの長い旅をすることにした。カミさんも大好きな沖縄行に決めた。
 今回のこのコラムは、その旅日記にしようと思っていた。
 ちょうど1年前に亡くなった大田昌秀元沖縄県知事には、ぼくはずいぶんお世話になった。昨年の「県民葬」にも参列した。
 今回の旅の目的のひとつは、久米島の大田さんのお墓参り。大田さんのご子息のケンさんにお墓の場所を問い合わせたら、なんと、ケンさんの手配で空港に久米島町の大城総務課長さんが出迎えてくれて「お墓の場所は分かりにくいので、案内しますよ」と言ってくれたのだ。恐縮の極みだったが、案内をお願いした。山道の中腹、静かな瞑り場所、蝉しぐれが降っていた…。
 そのことも詳しく書こうと思っていた。本島へ戻ったら、台風の直撃。なんとか辺野古へは行ったけれど、台風対策でテントを片付けている最中だった。邪魔をしてはいけないので、少々のカンパをおいて退散した。
 「絶対晴れ男」を自認していたぼくも、さすがに台風にはかなわず、ホテルの窓から暴風の凄さを1日中見ていたことも、まあ、なかなか稀有な体験だった。首里城も美ら海水族館も臨時休館…。

大量死刑、大災害、原発、官僚腐敗、沖縄、地震……

 そんなことを書こうと決めてはいたのだが、自宅へ戻ってきて1週間分の新聞を整理していたら、気分が変わってしまった。
 ぼくらの沖縄行は6月27日~7月3日。この間に、いったい何が起きていたか? 1週間を新聞記事で見渡していたら、ぼくの個人的な旅日記なんかどうでもいいという気分になってしまったのだ。しかも、6日にはオウム事件死刑囚の7人にも及ぶ大量死刑執行。さらに、追い打ちをかけるように、未曾有の大水害!
 7日には、千葉で震度5弱の地震。だけど、日本列島は地震以外でもグラグラと大揺れが続いている気配。しかもその揺れを抑えるべき国会がとんでもないデタラメぶり。ここしばらくの出来事を、新聞から拾ってみようか(なお、カッコ内は、ぼくの個人的感想です)。

6月29日

◎政府が北朝鮮のミサイル警戒を緩和
(あのバカ騒ぎはいったい何だったのか?)

◎東京電力の小早川社長が、建設を中断中の青森の東通原発の地質調査再開を言明。建設へ向けてのゴーサインといえる。だが、隣接する東北電力の東通原発の敷地には活断層が走っているとされている
(衣の下から鎧。福島第二原発廃炉の表明は、こちらを動かすための目眩ましだったのだろう。新潟県知事選での柏崎刈羽原発容認派の花角知事誕生で、東電は図に乗ったようだ)

6月30日

◎高速増殖炉もんじゅ(福井県)の核燃料取り出しを、7月から開始
(取り出し完了までの期間を約30年、費用を約3750億円と見積もっているが、専門家は期間も費用もとても足りないと見ている。これまで投入した1兆1千億円のカネは、結局、ドブに捨てたようなもの。だが、誰も責任をとらないまま)

7月1日

◎メキシコ大統領選挙で、左派のロペスオブラドール氏が圧勝
(対米強硬派と見られ、トランプ米大統領と軋轢も?)

7月3日

◎今秋の沖縄知事選で自民党県連は、現宜野湾市長の佐喜真淳氏を擁立。だが、若手実業家の安里繁信氏も立候補表明。保守分裂へ
(だが、翁長現知事の体調がすべてを左右する)

◎自民公明の与党は今国会での「国民投票法」成立を見送りへ
(そんなことより、自民党に有利なように参院の議席増を目論むデタラメ改革に必死であることが重大だ)

◎埼玉県所沢市の米軍通信基地に、オスプレイが事前通告なしに着陸
(ほとんど米軍のやりたい放題。日本は独立国なのか?)

◎政府は「第5次エネルギー基本計画」を閣議決定。やはり原発を重要な基幹電源と位置付けている
(新計画では2030年の電源構成で原発を22%~20%程度に減らすという。だがこれは、約30基の原発稼働がなければ達成できない。40年廃炉をなし崩しにして、さらに原発新増設が必要になる。ムチャクチャである)

7月4日

◎文部科学省科学技術・学術政策局の佐野太局長が、息子の東京医大への裏口入学を大学幹部へ依頼したとして収賄容疑で逮捕
(もう官僚制度は崩壊寸前。だがこれも、官僚人事を首相官邸が一手に握ってしまったことに起因する。官僚はもう、安倍首相の顔色をうかがうことが仕事の第一になっている)

◎奄美空港に不時着していたオスプレイCV22が、1カ月ぶりにようやく東京の横田基地へ帰還
(修理に1カ月以上もかかるというのは、そうとう異常。エンジン交換だけでは済まなかったのか…?)

◎原子力規制員会は東海第二(茨城県・日本原電)を審査適合と判断
(今年11月には稼働40年を迎える老朽原発。これを動かすためには膨大な修理費用がかかるし、周辺30キロ以内には100万人近い住民がいる。この周辺自治体の了解をとらなければならないし、再稼働はかなり困難。だが、日本原電はほかに動かせる発電所を持っていないので、生き残るにはこれしか手段がない。会社を存続させるための暴挙)

◎大飯原発(福井県・関西電力)差止めの住民訴訟で、名古屋高裁金沢支部は逆転で住民請求を棄却。再稼働を認める判決
(下級審でいい判決が出ても、上に行くにしたがって住民不利の逆転判決に変わる。あの袴田さんの裁判もしかり。日本の司法も崩壊…)

7月6日

◎トランプ大統領がついに高関税措置を発動。中国も対抗措置を発動。世界は貿易戦争に突入
(アメリカファーストというトランプ政策。日本にも相当な影響が出るのは必至だが、安倍首相はトランプ氏にきちんと抗議できるわけもない)

◎カジノ法案、参院で審議入り
(バクチのアガリがアベノミクスか、ほんとうに情けない。しかも、ほとんどのアガリはトランプ氏の友人の米カジノ王らが持ち逃げしそうだという。国富をアメリカに売って嬉しいか、アベよ)

◎九州北部から広島にかけて、大雨が降り、被害が出始めた

◎オウム真理教事件の7人に死刑執行
(1日に7人もの大量死刑執行は前代未聞。欧米などの先進国からは深刻な憂慮が示された。あらためて死刑制度の是非が問われる。なお、この前夜に、安倍首相を囲む50名もの自民党議員の大宴会が開かれており、死刑に判を捺した上川陽子法相も楽しげに参加。しかもそれを嬉々としてツイートやブログに後悔した自民議員がいて物議をかもしている)

7月7日

◎米国のポンペオ国務長官が北朝鮮を再訪。金委員長と会談。両国の受け取り方に食い違い
(米国は進展があったと言明し、北朝鮮は米国の要求は一方的だと不快感。両国の交渉は一筋縄ではいかない様相)

◎西日本に数十年に一度という大雨による大災害
(9日になって判明しつつある被害は拡大の一方で、死者行方不明者は200名弱になったという。日本列島の災害に対する脆弱性が改めて明らかになったといえる。武器を買うより、防災に予算を割くという財政政策の根本的な変革が必要ではないか)

◎千葉県で午後8時すぎ、震度5弱の地震
(千葉ではこのところスロースリップという現象による地震が多発しており、厳重な警戒が必要とされている。ここでもまた災害対策は必要不可欠となりつつあるのだが)

7月9日

◎安倍首相が11日から予定していた、フランス、ベルギー、中東などの外遊を取りやめたと発表
(例の5日夜の自民党大宴会への批判が激しい。大量死刑の前夜であり、しかも大雨で大災害が発生し始めているその夜に何を浮かれているのか、との批判はSNSに溢れた。さすがにこれを考慮したようだ。人々の批判が、安倍政治に一矢を報いたといえようか)

 目についた事実だけを書き出してみた。
 こうやって見てくると、日本列島は地震だけではなく、政治も経済も含めてすべての面でグラグラと大揺れに揺れているとしか思えない。
 その揺れの震源地はやはり安倍内閣だ。

 ほんとうに、安倍氏にはそろそろご退陣いただきたい。もう、いい夢はたっぷり見たんじゃないですか? 我らにとっては悪夢だったけれど…。

大田家のお墓、セミの声が降っていました…。

*記事を読んで「いいな」と思ったら、ぜひカンパをお願いします!

       

鈴木耕
すずき こう: 1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレイボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。1999年「集英社新書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライターに。著書に『スクール・クライシス 少年Xたちの反乱』(角川文庫)、『目覚めたら、戦争』(コモンズ)、『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出版)、『反原発日記 原子炉に、風よ吹くな雨よ降るな 2011年3月11日〜5月11日』(マガジン9 ブックレット)、『原発から見えたこの国のかたち』(リベルタ出版)、最新刊に『私説 集英社放浪記』(河出書房新社)など。マガジン9では「言葉の海へ」を連載中。ツイッター@kou_1970でも日々発信中。