「『生きさせろ』から10年。自己責任社会との決別」雨宮処凛さん出版トークイベント報告

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 先月「こちら編集部」でお知らせした雨宮処凛さんのトークイベントが4月18日に行われました(@下北沢・本屋B&B)。マガジン9の連載コラム「雨宮処凛がゆく!」をまとめた『自己責任社会の歩き方 生きるに値する世界のために』(七つ森書館)の出版記念イベントです。当日は、雨宮さんの友人である韓国人の青年たちも飛び入りゲストとして参加。彼らは、徴兵制や朝鮮半島情勢についてリアルに語ってくれました。

■雨宮さんとマガジン9との12年間の歩み

 イベントの前半は、雨宮さんのトーク。マガジン9のスタッフで、雨宮さんの担当でもある塚田壽子が聞き役となって、雨宮さんとマガジン9との出会いから今に至るまで、社会の変化もからめながら振り返りました。
 雨宮さんが初めてマガジン9に登場したのは、12年前にマガジン9が「マガジン9条」として立ち上がって間もない頃。1990年代に右翼団体で活動していた雨宮さんは、憲法の前文を読んで「右翼なのにうっかり感動してしまった」ことも契機となって、リベラル派に転じていました。2005年、そんな雨宮さんに改憲をテーマにインタビューをし、2007年3月21日からコラムがスタートしたのでした。

 2007年は、雨宮さんの著作『生きさせろ!――難民化する若者たち』が刊行された年でもあります。この年、第1次安倍政権になっていましたが、その前の小泉政権が進めた新自由主義的なさまざまな経済・雇用政策のひずみがあらわれていました。
 コラムをスタートするにあたって、雨宮さんは「憲法25条に関する問題を書きたい」と希望。雨宮さんが、国民の生存権を保障する25条に関心を持ったのは、2006年の「自由と生存のメーデー06 プレカリアートの企みのために」というイベントに参加したのが大きなきっかけだったそうです。

 「当時は小泉構造改革における労働者派遣法の改悪によって、フリーターの若者がどんどん追いつめられていました。すでに全雇用者の3人に1人は非正規雇用になっていて、働いているのに貧しく、うつ病になったり、自殺する人がすごく増えていた。ネットカフェ難民といわれる住所不定無職の若者が逮捕される事件が起きたのもこの頃です。なのに、それはフリーターの若者の心の問題みたいな文脈でしか分析されず、政治とか法律とか労働の問題として語られていなかった。そんなときプレカリアートのイベントで社会学者の方の話を聞いて、あっ、この生きづらさは自分たちのせいじゃないんだ、雇用破壊に原因があるんだ、だったら25条を武器に闘うしかないって気づいたんですよ」(雨宮さん)

 以来、雨宮さんは貧困・労働・雇用の問題に取り組み、マガジン9のコラムでは現場の状況をつぶさに伝え続けてくれています。その間、政権交代や3・11を経て、2012年に第2次安倍内閣が発足。今回の著書のタイトルにもなっている「自己責任」論は、いろいろな立場の弱者や若者をますます苦しめています。

 「10年間で社会は何が変わったかというと、大きな変化は、子どもの貧困が認知されて、子どもの貧困対策法ができたことくらい。小泉政権時代に若者だった人たちも年をとって、あらゆる世代に生きづらさが広がっているんです」(雨宮さん)

 雨宮さんのこうした言葉に説得力があるのは、現場に足を運び、当事者の声をていねいに拾っているから。この10年間を振り返って、なぜ社会は息苦しくなってきたのか、実際に何が起きているのか、雨宮さんのコラムから教えられることも多かったなと、あらためて実感しました。

■韓国の青年が語ってくれた徴兵制の実態

 さて後半は、韓国人の4人の青年がゲストとして飛び入りでトークに参加してくれました。今回のイベントのために韓国から来日したというアン・アキさんのほか、日本に住む社会人や留学生などです。彼らは、韓国の徴兵制に反対し、良心的徴兵拒否の実現のための活動をしている仲間です。

 韓国の男性は18歳になると徴兵検査を受け、2年間の兵役が義務づけられています。しかも韓国の場合、国連で認められている良心的徴兵拒否も代替服務制度も導入されていません。拒否をしたら、刑務所行き。雨宮さんは、ヤンさんから徴兵の実態を詳しく聞き、「そんなにひどい制度なのかと知ってびっくりした」と言います。韓国の軍隊は訓練が過酷であるだけでなく、いじめが常態化していて自殺者も少なくないそうです。さらに「兵役中にケガをしても、それこそ自己責任で治療は自費なんですよ」と教えてくれました。そして韓国でも若い世代の人口が減っているため、近年は重度の障害者でないかぎり、心身の状態が良好ではない人でも徴兵されるそうです。「それでいじめられて錯乱状態になって殺人事件につながったり、銃乱射事件が起きている。実は韓国軍は、旧日本軍のやり方をかなり取り入れているんです」

 このトークイベントの日は、ちょうど北朝鮮情勢の緊張が高まっているさなか。日本ではワイドショーなどが、連日、煽るように危機を報じていました。「韓国の様子はどうなの?」と尋ねると、4人はいたって冷静。「韓国人は、北朝鮮がミサイルを飛ばしたとか、金正恩がこう言ったとか、ああ、またか、みたいな感じで慣れているんですよ。一触即発の危機は以前もあったし、でも最後の最後は交渉になる。北朝鮮が挑発するのは、いつも経済支援などの狙いがあってやっていることだから」、「東アジアでもし有事が発生するとしたら、アメリカも含めてそれぞれの国の軍需産業が関わってくるので、経済的な面からも考えたほうがいいですね」などと口々に話してくれました。韓国の報道は、むしろ間近にせまった大統領選一色とのこと。

 現在、4人は日本、韓国、海外にいる仲間と連絡をとりながら、活動を続けています。留学生の2人は、日本の大学を卒業して日本での就職をめざしているところ。アン・アキさんは、韓国で法律の専門家と団体を設立して、徴兵拒否者のための相談窓口になり、海外亡命の支援と助言をしています。マガ9に掲載されていた「イェダりんの〝リベルテ〟を探して!」でもおなじみのイェダりんは、仲間の手助けもあって無事フランスに亡命を果たしました。

 雨宮さんは「兵役は嫌だ、人を殺す訓練なんかしたくないっていうのは根源的な願いなんですよね。ヤンさんたちの話を聞けば聞くほど、徴兵制は人権を踏みにじる制度だと思う」と言います。東アジアはいまや、何かがひとつ間違えば危機に陥る状態に。しかし、熱心に語ってくれる4人の話に耳を傾けて、二度と隣国の若者と戦うような事態にしてはならない、との思いを強くしました。

 トーク後の質疑応答の時間では、会場から韓国の若者たちに「徴兵制」についての質問が多数寄せられました。「こうやって直に本音の話が聞けたのは、とても貴重だった。韓国の徴兵制は、自分には関係のないことだと思っていたが、ちゃんと考えてみたい」と語った参加者の声が印象に残りました。

(柳田茜)

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