“ともに生きる場”を考える「ビッグイシューカフェ」(マガジン9編集部)

“ともに生きる場”を考える「ビッグイシューカフェ」(マガジン9編集部)

東京でも台風の影響が心配されていた週末。出かけるのはやめておこうと思っていたのですが、どうしても行きたいイベントがあって参加してきました。

何のイベントかというと、練馬区の古民家で開かれた一日限りの「ビッグイシューカフェ」。NPO法人ビッグイシュー基金と、その理事である料理家の枝元なほみさん、NPO法人BONDプロジェクトが一緒になって、9月17日(日)に開催されたものです。

“ともに生きる場”を考える「ビッグイシューカフェ」(マガジン9編集部)

“ともに生きる場”を考える「ビッグイシューカフェ」(マガジン9編集部)

すごく素敵な場所だったのですが、雨で外観が撮れず……


ホームレス状態にある人が販売する雑誌『ビッグイシュー日本版』は、一冊(350円)を売るとそのうち180円が販売者の収入になる仕組みで、ホームレス状態の人たちに仕事の機会を提供してきました。NPO法人ビッグイシュー基金では、こうしたホームレス状態にある人たちの自立応援、問題解決のネットワークづくりなどの活動に取り組んでいます。そして、NPO法人BONDプロジェクトは、渋谷区を拠点に街頭で声をかけながら、居場所がない10~20代の女の子たちの相談にのり、保護などを行ってきた団体です。

年配の男性販売者が多いビッグイシューと渋谷をさまよう10代の女の子……一見、接点がないように思えますが、「居場所がない」「偏見やイメージで見られてしまう」「支援制度からこぼれてしまう」など、抱えている困難にはたくさんの共通点があります。

“ともに生きる場”を考える「ビッグイシューカフェ」(マガジン9編集部)

入り口では販売者さんが来て「ビッグイシュー日本版」を販売。BONDプロジェクトのブースも。

イベント会場である「けやきの森季楽堂」は、築150年ほどの古民家を改装した素敵なスペースでした。自然豊かな庭や和室もあり、くつろいだ雰囲気。日中のイベントは、ランチとカフェの営業がメインです。ランチタイムのメニューは、枝元さん特製の「ガパオライス」。BONDプロジェクトに相談に来ている女の子たちやスタッフが、キッチンで一緒に作ります。同じ部屋では、ビッグイシュー販売者さんが「潮の路」の無農薬フェアトレードコーヒーを売っていました。

“ともに生きる場”を考える「ビッグイシューカフェ」(マガジン9編集部)

ホームレス状態を経験した人が焙煎する「潮の路」コーヒー


“ともに生きる場”を考える「ビッグイシューカフェ」(マガジン9編集部)

雨にもかかわらず、広いスペースが埋まってしまうほどの大盛況。温かい飲み物を片手に、NPO法人の活動紹介パネルを眺めたり、冊子を手に取る人の姿を見かけました。枝元さんのファン、子ども連れの人など、さまざまな人が集まり、ビッグイシューやBONDプロジェクトのブースでも自然と会話が弾みます。貧困やホームレスの問題をテーマにしたイベントは来る人が限られてしまうという印象をもっていたので、こうした試みはとても新鮮でした。垣根を越えて人をつなぐ、そんな「食」の力を感じます。

「温かいものを食べることはとても大事。ほっとするし、話しやすくなりますよね。私たちも出張面談に行くときは、『ご飯でも食べよう』と女の子を誘うんです」とBONDプロジェクトの方が話していました。

夕方からのトークイベントでは、枝元なほみさん、BONDプロジェクトの代表・橘ジュンさん、そして作家の中島京子さんの3人が、「ともに生きる場をどう作るのか」というテーマで話し合いました。事前の打ち合わせもないままのトークだったそうですが、それぞれが経験してきたエピソードから浮かんできたのは、「マニュアルではない多様なつながり方」、「知らないふりをしないこと」、「一対一のフラットな関係を築き、それを広げていくこと」の大切さ。

「私たちは、必要以上に相手に声をかけないことを正当化してきたけど、困っている人を助けるという気持ちを思い出してもいいのでは」「スーパーマンではないから何でもできるわけではない。一人ひとりができることをシェアしていけばいい」という話を、会場もうなづきながら聞いていました。

“ともに生きる場”を考える「ビッグイシューカフェ」(マガジン9編集部)

笑いあり、怒りあり……どれも身近に感じられる話ばかりでした

さまざまな人たちが集まって、ともに温かな時間を過ごした「ビッグイシューカフェ」。法律や支援制度を改善していくこともとても大事ですが、一方でこうやって立場の違う人たちが、「支援する/される」の関係だけではなく、同じ一人の人として出会い話し合う機会を増やしていくことが、「ともに生きる場」を広げていくためには必要なことだと感じます。

(中村)

“ともに生きる場”を考える「ビッグイシューカフェ」(マガジン9編集部)

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