テレビはなぜ入管のプロパガンダを無批判に放送するのか(仲松亨徳)

 10月6日、フジテレビとその系列局で『タイキョの瞬間! 密着24時 〜出て行ってもらいます! 〜 強制退去を捉えた緊迫のリアルドキュメント』という番組が放送された。入管当局を英雄視し、外国人への排外感情を煽る、最悪の番組だった。

 6月6日に放送されたNHK『クローズアップ現代+』「自称“難民”が急増!? 超人手不足でいま何が…?」でも、事実と異なる入管の主張が一方的に放送されたが、今回は午後7時からというゴールデンタイムにプロパガンダをエンタメとして放送したことは、公共の電波を預かるキー局とは思えない。さらに、9月5日のTBSテレビ系『ビビット』「対決・不法滞在者の雇用主VSGメン」や、20日のテレビ朝日系『全国犯罪捜査網2018秋 スーパーGメン』でも同じような内容が放送されていたというし、10日放送予定のテレビ東京系列『密着! ガサ入れ』も同様だという。

 労働環境が破綻している外国人技能実習生制度や、人権を無視した入国管理局の対応の問題点がさまざまに指摘されていたが、番組がこうも続くとこれらへの対抗措置と考えられる。東京入国管理局は自らのツイッターアカウントで、こうした番組の宣伝をツイートしているのだから、恐らく「普段見られないところを見せてやる」バーターとしてこのような番組を放送させているのだろう。

 中でも、傷んでいたり虫が入っていることがままある食事や、痛みを訴えても放置されるなど被収容者への不適切な処遇が問題になっているにもかかわらず、収容施設が自由であり食事などにもこれだけ費用が掛かっていると麗々しく強調するのには、驚きを通り越して開いた口が塞がらなかった。

 コンビニでも飲食店でも働く外国人の姿を見ないことはない昨今、ここまで彼らに労働力を頼りながら、彼らが潜在的に犯罪者であるかのような内容。「便利に」使い、都合が悪くなれば「犯罪者」扱い。なぜ摘発され収容される人が「不法」になったのか、入管の言い分を鵜呑みにする番組制作者には考えが及ばないのだろうか。

 私は悲しみでいっぱいになり、うちのめされる思いだったが、7日夜東京・渋谷駅前で抗議のスタンディングがあると聞いて参加した。静かな怒りをもって佇む数十人の前に張られた、紙で急いで作ったのだろう、横断幕にはこのように記されていた。「フジテレビさん 外国人は人間です 日本人が人間であるのと同じく。」

(仲松亨徳)

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