第53回:2018年、ぼくのニュースファイルから その1(鈴木耕)

「言葉の海へ」鈴木耕

 もう1カ月ほどで、今年も終わる。
 ぼくは新聞3紙(朝日、毎日、東京)を購読していて、毎朝1時間以上をかけて気になった記事を切り抜く。それは、あの「3・11」直後から始めた習慣で、もう8年近くになる。他にも、ネット上で見つけた記事や週刊誌など雑誌で目をひいた記事も、その時々でチェック、買ってきて切り抜く。
 もうすぐ終わる2018年は、いったいどんな年だったか。ぼくの記事ファイルから、出来事を思い返してみる。ぼくのファイルだから、ぼく流の取り上げ方になっていることを断っておく。

1月4日
 まず新年は、伊勢神宮での安倍首相「今年こそ新しい時代への希望を生み出すような憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示」との改憲発言で幕を開けた。新年早々、見たくもない田舎芝居を見せられた思い。
1月2日
 立憲民主党の「原発ゼロ基本法案」の骨子が明らかになった。「速やかに全ての商用原発を廃炉に」と。
1月8日
 米軍ヘリが沖縄・読谷村のホテル付近に不時着。1月6日にも、うるま市伊計島の浜辺に不時着しており、新年に入って早くも2度目の不時着。しかし、9日にはもう、同型機の飛行再開。沖縄県の要請を米軍は無視。なお、1月23日にも米軍ヘリは渡名喜村に不時着。防衛省によれば、17年1年間に米軍機トラブルは25件に上る。危険が頭上に日常的に存在する沖縄。
1月10日
 韓国の文在寅大統領が「慰安婦合意は受け入れ困難」と、2015年12月の慰安婦問題に関する日韓両政府の合意について強い不満を表明。これが尾を引くことになる。
 同日。英アングルシー島原発2基建設の総額3兆円を、日英両政府が投融資することで大枠合意。日立を側面支援する日本政府。もし損失が出れば、日本国民の負担も。アベノミクスの断末魔。
1月18日
 米軍機の窓が落下した普天間第二小学校上空を米軍ヘリが飛行。だが、米軍はそれを否定。さすがに小野寺防衛相が不快感を示し反論したが、米軍は無視。翁長沖縄県知事も「米軍は良き隣人ではない」と批判。
 同日。東芝は経営破たんした米原子力子会社ウェスチングハウス(WH)の関連資産をすべて手放すと決定。WHとの関係は完全に終わる。原発にのめり込んだツケが回った。
1月20日
 海上自衛隊の護衛艦「いずも」を戦闘機の発着可能な空母に改修する案が浮上。もはや安倍政権の軍事力増強は歯止めを失った感じ。日本の国是であった「専守防衛」から完全に逸脱する。これに関しては、3月2日の参院予算委で、小野寺防衛相が、最新鋭戦闘機F35の搭載も視野に入れていると答弁。
 同日。トランプ米大統領が就任してからちょうど1年。全米で反トランプデモ。参加者は100万人を超えた。とくに女性の参加が多かったという。
1月24日
 中国科学院の研究チームが、猿の体細胞から遺伝的に同じ情報を持つクローン猿2匹を誕生させることに成功と発表。不気味なクローン人間の誕生まであと一歩。これはそうとうヤバイ研究ではないか。
1月25日
 安倍首相は国会代表質問で、長距離巡航ミサイルについて「憲法上保有が許されない兵器であるとの指摘は当たらない」と発言。もはやとどまるところを知らない戦争屋の本性。
1月31日
 自民党憲法改正推進本部は、緊急事態条項について「政府への権限集中や個人の権利の制限を含んだ案を検討する」という方向。ほとんど独裁政治への道。
2月1日
 森友問題がまたも国会を揺さぶる。廃棄したはずの交渉関連記録が発覚。昭恵夫人の関与が明らかになっても、政府は昭恵氏の喚問招致には応ぜず。
2月4日
 沖縄県名護市長選で、安倍政権が全面支援した渡具知武豊氏が、辺野古反対の現市長稲嶺進氏を破って当選。渡具知氏は選挙期間中「辺野古のへの字も言わない」という戦術に徹した。政府は名護市に在日米軍再編交付金30億円支給を決定。カネで頬っぺたをひっぱたく安倍政権のやり方。
2月5日
 佐賀県神埼市の住宅地に、目達原駐屯地所属の陸自ヘリが墜落。民家が炎上、陸自隊員1名が死亡。住民の小学5年の女児が負傷。
2月7日
 東京地裁は東京電力に対し、南相馬市の住民ら318人へ、総額11億円の賠償を命じた。だが110億円の損害賠償の求めの1割に過ぎず、原告側は控訴を検討。
2月8日
 産経新聞が「沖縄米兵の救出報道 おわびと削除」との記事を配信。産経が沖縄タイムスなどの米海兵隊員の事故報道を批判したが、その根拠がSNS上のフェイクだったことを認めたもの。産経の報道姿勢が問われている。
2月9日
 財務省は森友学園に関する新たな文書20件、計300ページをやっと国会へ提出。後から後から隠蔽文書が出てくる。隠蔽官庁。
2月14日
 安倍首相、働き方改革法案を巡り、裁量労働制についての国会での答弁を撤回、謝罪。労働時間に関する厚労省のデータがいい加減だったことを認めた。しかし、責任は厚労省に押しつけ。いつもの「自分は悪くない」駄々っ子ぶり。しかしその後も、労働時間に関するデータの異常が続々発覚。28日には、ついに安倍首相が「裁量労働制の対象拡大を法案から全面削除」を表明。
2月15日
 政府は統合リゾート(IR)法案でのカジノについて、週3回、月10回までに入場を制限するとの案を出したが、自民党のPTはもっと緩和しろとの大合唱。貧すればバクチか。
2月20日
 米軍の青森県三沢基地の米軍機F16が離陸後まもなく出火、燃料タンクを小川原湖に投棄した。
 同日。俳人・金子兜太さんが98歳で死去。アベ政治を許さない」との金子さんの書は、最も多くコピーされたものとして有名になった。
2月23日
 米国務省が、在イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムへ5月に移転させると発表。パレスチナとイスラエルの緊張関係の火に油を注ぐことに。トランプ大統領のユダヤ寄りの姿勢は中間選挙目当てらしい。
3月1日
 東京MXテレビは、沖縄の米軍基地反対運動に関するフェイクニュースを垂れ流したとして批判を浴びていた「ニュース女子」を、3月末で終了すると発表した。この番組、悪意と憎悪に満ちたヘイト番組というしかなく、ぼくも見たがほとんどまともに取材した形跡もないひどいものだった。
3月2日
 黒田東彦日銀総裁は、衆院議院運営委員会の所信聴取で「2%の物価上昇目標については19年度に達成できる可能性」と強気の発言を繰り返したが、5年かけても達成できなかったことについては苦し紛れの言い訳に終始。
 同日。東京都世田谷区が性的少数者(LGBT)や外国人への差別を禁じる「多様性を認め合い男女参画と多文化共生を推進する条例」を区議会で採択。
 同日。東京地検特捜部が、リニア中央新幹線工事をめぐる入札で、大手ゼネコン4社(大成建設、大林組、清水建設、鹿島)が不正な談合をしたとして、大成と鹿島の幹部2人を逮捕。
3月9日
 森友学園問題で、佐川宣寿国税庁長官に麻生財務相が減給処分。佐川氏は辞任。やっとというより、何を今さらの感。それにしても上司の麻生氏は何の責任も取らず。結局は全責任を佐川氏にかぶせて幕引き。安倍政権の無責任体質。
3月13日
 トランプ米大統領がティラーソン国務長官を解任。後任にはCIA長官のポンペオ氏。どんどん極右化する米政権。
 同日。沖縄県が辺野古の米軍新基地工事差し止めを求めた訴訟で、那覇地裁は、県の訴えを却下。どこまでも権力に従順な司法。
3月14日
 関西電力は大飯原発(福井)3号機を再稼働
3月15日
 前文科省事務次官の前川喜平氏の講演を巡り、文科省が実施した名古屋市の中学に対し講演録音を提供するよう要求。中学側は拒否。自民党議員が文科相に照会したもの。言論の自由も表現の自由も知ったこっちゃない、らしい。
3月19日
 建設中の青森・大間原発(電源開発)について対岸の函館市の住民が起こした建設差し止め訴訟で、函館地裁は住民側の請求を却下。まったく日本の司法はどこを向いているのだろうか。
3月22日
 韓国の李明博元大統領が、収賄などの疑いで逮捕。日本より、よほどきちんとしている。
 同日。福島県の避難指示区域の住民らの損害賠償訴訟に、福島地裁いわき支部は213人に総額6億1千万円の支払いを東電に命令。請求額は130億円だったが。
3月23日
 アメリカは鉄鋼とアルミ製品への新たな関税措置を発動。鉄鋼関税に関しては日本も除外されていない。中国は報復計画を発表。米中貿易戦争は本格化。
 同日。九州電力玄海原発(佐賀)3号機を再稼働。周辺4自治体の反対は無視。離島避難計画もずさんなまま。
3月25日
 北朝鮮の金正恩委員長が、25日から28日まで訪中、習近平主席と会談。北朝鮮の核放棄の本気度が試されている。
3月27日
 衆参両院の予算委員会で、佐川宣寿元財務省理財局長の証人喚問。佐川氏は「刑事訴追のおそれがある」という理由で完全に証言拒否。もはや国会は茶番劇のステージでしかない。
 同日。四国電力伊方原発(愛媛)2号機の廃炉を決定。事故対策費が負担で採算見通せず。
 同日。陸上自衛隊は離島防衛を名目に「水陸機動団」発足。長崎の相浦駐屯地に配備。これは米海兵隊のような殴り込み部隊。米の物まねの兵力増強。
3月28日
 日本原子力研究開発機構の高速増殖炉もんじゅを、30年間かけて廃炉にする計画を、原子力規制委が了承。約3750億円の廃炉費用を見込む。このドブに捨てた金の責任は誰も取らないまま。
3月29日
 東京都の「改正迷惑防止条例」が都議会で可決。「みだりにうろつくこと」までが規制対象。市民運動や報道取材までが対象になりかねない。
 同日。麻生太郎財務相はまたも「日本の報道機関はTPPより森友が重要だと考えている程度のレベル」と暴言。止まらない暴言妄言。それでも居座る。
 同日。日本原電の東海第二原発(茨城)の周辺30キロの自治体6市村は原電と再稼働同意に事前了解をとることを明記した新協定を締結。立地自治体では初の協定で、他原発に波及の可能性もある。
3月30日
 野村不動産の裁量労働制の違法適用について追及した報道各社に対し、厚労省東京労働局の勝田智明局長が「なんならみなさんのところへ行って是正勧告してあげてもいいんだけど」と恫喝。官僚の驕り、極まる。
3月31日
 23日に再稼働したばかりの玄海原発3号機が、事故により発送電停止。
4月2日
 防衛省は過去の答弁では「存在しない」としてきたイラク派遣の際の陸自の日報が見つかったと発表。約1万4千ページにも及ぶ。なお6日には、空自でも不明日報発見と、小野寺防衛相が公表。ここにも隠蔽体質の蔓延。なおこの日報には「戦闘」の文字もあった。
 同日。自民公明はカジノの設置数の上限を3カ所とすることで合意した。あれほど反対していた公明党、いつものように豹変。酷い党。
4月3日
 米軍は、空軍のCV22オスプレイ5機を、横田基地に配備したと発表。首都圏の空は日常的にオスプレイの危険にさらされることになった。
 同日。全米の保守系地方テレビが、一斉に同じ内容の「フェイクニュース批判」の文言を読み上げた。トランプ擁護。不気味な動き。
 同日。米通商代表部は知的財産の侵害などを理由に、中国製品約1300品目に25%の関税率を上乗せする案を提示。約5.3兆円に及ぶ。本格的貿易戦争。
4月5日
 東京電力と東北電力が、日本原電に計1700億円もの資金援助計画。まったく発電してない日本原電が黒字経営の不思議。福島事故の賠償金も国から援助されている東電が資金提供していいのか?
4月9日
 南スーダンの国連平和活動(PKO)での日報も新たに見つかった。
 同日。野村不動産での裁量労働制の違法適用で東京労働局が特別指導したが、指導前に同不動産社員が過労死自殺していたことが判明。加藤勝信厚労相は労災認定を受けたことも、初めて認めた。
4月10日
 朝日新聞が「森友学園幹部が柳瀬唯夫首相秘書官と面会」との愛媛県の記録文書があるとのスクープ。朝日の執念か。
4月12日
 週刊新潮が、福田淳一財務相事務次官の女性記者に対するセクハラを報道。財務省は逆に報道各社の女性記者に調査への協力依頼。本末転倒! なお、多くの批判を浴びて、福田次官は4月18日に辞任。しかし、これでも麻生氏は責任をとらず。
4月13日
 米英仏は、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したとして、シリアに対しミサイル105発を発射
4月16日
 米山隆一新潟県知事が、突然辞意表明。買春問題を自ら認めた。
 同日。現職自衛官が国会前で、小西洋之民進党参院議員に「国民の敵だ」と罵声を浴びせたことが判明。なんだか政府関連のどこも、底が抜けてしまったような気配。自衛官が政治家を罵るなど、到底許されることではないが。
4月20日
 金正恩委員長は「弾道ミサイル試射中止」と「核実験場廃棄」を表明。
 同日。京都地検は、在特会の西村斉・元幹部を、拡声器等を使用して朝鮮学校へのヘイトスピーチを繰り返したとして、名誉棄損罪で在宅起訴。
4月24日
 伊藤忠商事が三菱重工業などと計画中のトルコの原発から撤退方針
4月25日
 国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」は、2018年世界報道自由度ランキングを発表。日本は67位(昨年は72位)。2010年は11位、12年は22位、15年に61位と毎年のように順位を下げている。ことに安倍政権下での報道自由度低下が著しい。
4月26日
 政府が改定するエネルギー基本計画の骨子では、2030年度の発電量で、原発比率を20〜22%、再生可能エネルギーを22〜24%とし、相変わらず原発を重要な基幹電源と位置付けている。
4月27日
 朝鮮半島の南北首脳会談が開催。文大統領と金委員長は「完全な非核化を通じて核なき朝鮮半島の実現を目指す」との板門店宣言を発表

 とりあえず、1月〜4月の主な出来事をぼくなりに、朝日、毎日、東京の各新聞記事からピックアップした。どうにも暗い(というより酷い)ニュースが多い。
 とくに政治では、スキャンダルばかりで書き起こすのもうんざりするし、安倍麻生コンビの暴言放言妄言は、数限りない。なぜこんな連中が政権の座にのさばり続けているのか、ぼくにはとんとその理由が分からない。
 みなさんは、2018年をどうとらえたでしょうか?

 気を取り直して、次回は5月〜8月編を。
 
 
 

ぼくのファイルの収用棚。ここからニュースをピックアップ。

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鈴木耕
すずき こう: 1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレイボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。1999年「集英社新書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライターに。著書に『スクール・クライシス 少年Xたちの反乱』(角川文庫)、『目覚めたら、戦争』(コモンズ)、『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出版)、『反原発日記 原子炉に、風よ吹くな雨よ降るな 2011年3月11日〜5月11日』(マガジン9 ブックレット)、『原発から見えたこの国のかたち』(リベルタ出版)、最新刊に『私説 集英社放浪記』(河出書房新社)など。マガジン9では「言葉の海へ」を連載中。ツイッター@kou_1970でも日々発信中。