受験、就活、キャリア、政治への関心……みんなの国ではどうなっているの? 日・韓・台・中の女子学生座談会!

「多文化共生」という言葉をよく聞くようになりました。しかし、その一方で私たちは一番近くにある国のこと、そして日本に暮らす外国人の方たちのことさえ、あまり知る機会がありません。そこで今回、アジア女性の交流活動を行うNGO「WANPーWoman the Asia Network of Peaceー」にもご協力いただき、東京で暮らす日本、韓国、台湾、中国をルーツにもつ大学生や大学院生4人による座談会を開催。受験や就職、若者の政治への関心など身近なテーマをもとに、それぞれが育った国の事情や日本との違いについて話し合いました。

参加メンバー ※仮名の方も含みます
 
Ayaさん(22歳)…母親は台湾人、父親は日本人。台湾生まれで、幼稚園の頃からずっと日本で育つ。私立大学4年生。食に関する比較文化を専攻。台湾にも1年間の留学経験があり、日中の翻訳や国際交流活動にもかかわる。
Suninさん(31歳)…韓国出身。2012年に来日、関西の大学で修士修了後、日本の商社に3年間勤務。昨年10月からは公立大学研究科で社会福祉学を専攻。日本で働く外国人ケアワーカーのQWL(労働生活の質)をテーマに調査研究。
Tingtingさん(23歳)…中国出身。来日2年目。国立大学4年。国際社会科学を専攻し、中国における#MeToo運動を研究。今春卒業後は、日本で就職予定。
Chifanさん(24歳)…台湾出身。来日2年目。美術系大学院の研究生。今春から修士1年に。東京・下町で活動するNPOのアートプロジェクトにも参加。

 

●留学生として苦労することは?

――今日はさまざまなルーツをもつ大学生・大学院生4人に集まっていただきました。まずは韓国、中国、台湾からの留学生の皆さんに伺ってみたいのですが、日本で生活するなかで困ったことなどはありますか?

Chifan 私は日本語がかなり話せるので、地域のお年寄りの方たちからも「すごい日本語がしゃべれる台湾人」として受け入れられて、とても仲良くしてもらっています。でも、留学生のなかには、不動産屋さんで物件を探すのに苦労している人がたくさんいます。「外国人? 学生? それは、ちょっと……」という反応ですね。たいていの大家さんは外国人を敬遠します。さらに、収入の少ない学生だと、最初から相手にされないことが多いんです。

Tingting そうそう。不動産屋さんは外国人にとても厳しいですよね。私が友達といっしょに部屋探しをしたときも「外国人はちょっと……」と言われてびっくりしました。「日本の習慣がわからないからトラブルをおこすのではないか」「めんどうくさい」という大家さんの気持ちも理解できなくはありませんが、外国人というだけで入居を断られるのはとても困ります。

Chifan 私の場合は、アルバイトをしている弁当屋のオーナーから不動産屋さんを紹介してもらって部屋を見つけることができましたが、それまでの部屋探しは結構つらかったです。

Sunin 日本では部屋を借りるときに保証人が必要ですよね。日本で勤めていたときは、会社が保証人になってくれましたが、留学生が日本で保証人を探すのは大変です。しかも女性ひとりとなると、部屋探しはさらに難しくなります。

――留学生ではなくても、日本の保証人制度が部屋探しの壁になることは多そうですよね。

Aya 外国人には日本のルールが通じないとか、コミュニケーションが難しいという思い込みがあるんじゃないでしょうか。暗黙のルールみたいなものも多いですし……。若い人はもう少し理解があると思いますが、とくに年配の方にそういう傾向があるのではないかと感じます。

Chifan 私は行政手続きも自分でやりますが、英語ができても日本語が不得意な留学生たちは苦労しています。たとえば引っ越しのときも、転出の手続きとか保険や税金など、手続きが本当に煩雑!

Tingting 私の場合は大学がいろいろとサポートしてくれました。留学生対象に説明会があって、銀行の人が出向いて口座開設の手続きなども教えてくれたので、とても助かりました。

●日本独特の「就活」とそれぞれの働き方

――AyaさんもTingtingさんも卒業後は日本の企業への就職がきまっているそうですね。日本とほかの国では就職活動(就活)や働き方などに違いはあるのでしょうか? とくに日本の就活は独特なのかなと想像しますが……。

Tingting そうですね、日本の就活ルールはちょっと難しいです。就活を始めるときに、留学生向けのセミナーがあって、日本の企業で働いている中国人の先輩からお話を聞きました。そこで「面接の部屋に入るときは、ノックを3回してから」といったことを教わりました。

Aya 私は就活中に、留学生や外国からの応募者と一緒に面接を受けることがあったのですが、日本の面接では「座っていい」と言われるまで学生は座りません。でも、留学生や外国人学生はそういうルールが分からなくて先に座ろうとしちゃうので、日本の学生が「まだ、座っちゃダメだよ」と教えてあげたりしていました。

Sunin すごくアナログなところも残っていますよね。履歴書をペンで手書きしないといけない会社もあります。失敗して何枚も書き直しました(笑)。韓国の場合はすべてパソコンで入力します。でも、そういう日本のアナログなところが好きだという人もいます。

Tingting ずいぶん細かいなあと思うルールもあって、ここに力を注ぐ必要があるのかな? って思うこともあったり……。

Aya それは、日本の学生も同じように思っていますよ(笑)。

Chifan 台湾の場合、理系の大学だと日本と同じように在学中に内定をもらうことが多いですが、文系の場合は卒業してから「自分が何にむいているのか」を考えて、しばらくしてから就活を始めるケースも少なくないんです。その間はアルバイトや実家暮らしをしています。
 日本は就活期間がすごく長いし、個人ではなく団体での面接がほとんどですよね。でも、台湾では履歴書をサイトから送ると、その数時間後には「明日面接に来てください」という電話が来て、翌日に面接して「じゃあ、明日から出社できますか?」と聞かれるくらい、すごくフットワークの早い採用もあるんです。

Sunin それはアルバイトの採用ではなくて?

Chifan ちゃんとした社員の採用試験ですよ。大手企業はちょっと事情が違いますけど、台湾では仕事は比較的見つけやすいと思います。

Sunin 台湾に行ってみたくなりますね(笑)。私は日本での社会人経験がありますが、韓国で就職したことはありません。韓国人の友達のあいだでは日本で働きたいという人も多い。日本のほうが、残業が少なくて自分の時間をもてるし、人間関係もいい、という声を聞きます。韓国の場合は年俸制で、大手企業と中小の給料の差が大きく、みんなが大手企業を目指すので競争がとても厳しいです。

Tingting 中国では、大学の専攻に沿った仕事にしか就くことができません。たとえば、金融の仕事に就きたかったら、大学入試のときからその仕事にあった専攻を選ばないとダメなんです。でも日本では文系・理系に分かれているくらいで、大学の専攻にかかわらず、もっと広い範囲でいろいろ就職先が選べますよね。
 私は「日本の会社は残業が多くて大変」というイメージをもっていたのですが、中国で大手通信機器メーカーに勤める友人の話を聞くと、いまは競争が厳しくなっているので中国のほうが残業も多く、大変なように感じました。

●結婚しない女性が増えている?

Sunin 韓国の場合、男性のほうが長く働き続けることができるので、女性より給料はいいです。だって韓国では多くの女性が、結婚して子どもができたら退職しないといけないですから。

Chifan ええっ!? 台湾では辞めないですよ。子どもがいても女性もバリバリ働いています。

Sunin そうなんですか。私は長く日本にいるので最近の韓国事情を知りませんが、産休や育児休暇など制度は一応あるものの、出産後に女性が働き続けるのは難しく、辞めざるを得ない人が多いのが現実かなと思います。私の友人で仕事をしている女性は、ほとんどが結婚していません。結婚は「しなくてはならないもの」ではなく、選択肢の一つになってきています。子どもを産んだら仕事を続けられないと思うと考えてしまいますね。

Tingting 中国では、女性が結婚・出産しても仕事はやめません。共働きでないと生活が成り立たないですから。ですから、結婚すると女性は仕事と家庭という「二重の負担を負う」と言われています。親が育児を手伝ってくれることはあっても、夫が家事や育児を分担してくれることは少ない。だから、私自身は結婚したくありません。仕事と家事と育児を全部やれるような能力も、自信もないからです。

――もし夫が家事や育児もちゃんとやってくれるとしたら、どうですか?

Tingting うーん。でも、夫が自分の時間を犠牲にして家事をしてくれるとしたら、それは相手に申し訳ない気がします……。

Chifan 台湾も人によって考え方はいろいろですが、私は共働きの家庭で育ったので、それがいいと思っています。私の両親の場合は、母親の仕事のほうが忙しかったので、高校時代のお弁当はいつも父が作ってくれていました。台湾にも家事をしない男性はいますが、女性は結婚しても大体は働いていますよ。

Aya うちも親が共働き。平日は母のほうが早く帰るので食事の支度などは母がやっていますが、週末の掃除は父がやるなど分担していますね、お弁当も母が出張などで忙しいときには父が作ってくれていました。
 私は、自分が結婚する相手が専業主夫になるのもありだと思っています。「男だから」「女だから」というのでなく、家事も仕事も得意なほうがやればいいし、それぞれの事情で分担すればいいと思う。共働きなのに男だから家のことはやらない、という人とはいっしょには暮らせません。

●猛勉強して一流大学へ

――みなさんからそれぞれ互いに聞いてみたいことはありますか?

Aya アジアの友達に話を聞くと、ものすごく大学受験に向けて勉強したと言います。いい大学に入るために朝から晩まで勉強して、部活とか習い事とかをする時間はほとんどなかったと聞きました。みなさんはどうだったのでしょうか?

Tingting たしかに、習い事をする時間はなかったですね。私は中国の農村部出身ですが、とにかく名門大学に入ることだけが唯一の道でした。都会の人なら海外留学という道もあるのかもしれませんが、私は中国の大学に進学するしか選択肢はなかったので、高校3年間は寮生活。ほとんどキャンパスから出ない軍隊みたいな毎日でした。とくに3年生の時は朝6時から授業に出て、夜中12時に寮に帰り、さらに2時間くらい自習していました。

Chifan 私は小中高と公立に通いましたが、高校は進学校だったので勉強は厳しかったです。朝8時から夕方5時半くらいまでが学校で、そのあとクラスメイトと夕飯を食べてから図書館で夜11時過ぎまで自習というのが当たり前でした。でも、Tingtingさんほど厳しい感じではなかったかも……。週1回は部活の日があったし、友達としゃべったりして、それなりに楽しかったです。

Sunin 韓国は、すごく教育に力を入れている国です。どの親も教育熱心で、受験競争も厳しい。徹底した学歴社会で、どこの大学を出たかでその後の人生が決まると言ってもいいくらいです。
 私の場合は、7歳の頃から家庭教師の先生がついて勉強していましたし、ピアノとか水泳とかいろいろな習い事もしました。親は子どもの才能を発掘しようと必死だったのでしょうね。残念ながら、どの才能もなかったみたいですけれど(笑)。中学からは習い事ではなく、ずっと塾でした。夏休みには朝8時頃から夜11時まで塾に行っていました。確かその塾代が月7万円くらいだったように記憶しています。

Chifan 高いですね!

Sunin 平日は、学校が終わったら図書館に集まって夜11時くらいまで自習。その出欠もチェックされます。もちろん土日も一日中勉強。だから、大学に入ってやっと自由になれるんです。ただ、最近では、大学1年生のときから図書館にこもって就活準備を始める人も少なくないと聞いています。

Chifan いい高校に入って、いい大学に入って、いい企業に……終わりが見えませんね。

Sunin 韓国では、企業に入っても一番を目指して競争し合います。その点、日本はそこまでみんなが「一番を目指す」という感じではないように思いますが……。

Aya 2000年前半に出たSMAPの『世界に一つだけの花』という歌が流行りましたが、段々と競争より「自分らしさが大事」と言われるようになっていった気がします。学校の成績を廊下に貼り出すことがなくなった代わりに、「自分は何をしたいのか」「自分は何者なのか」を問われるようになった感じがある。でも、大学受験や就職はやっぱり競争ですよね。
 「ブラック企業」という言葉も広がって、いい大学を出て大手企業に就職したからといって必ずしも幸せにはなれるわけではない。そういう話を友達ともよくします。初めからやりたいことがはっきり見つかっているなら、専門学校とかに行ってプロを目指すほうがいい。やりたいことを仕事にできている人のほうが尊敬できます。
 なんとなく勉強して大学に入って、なんとなく就活をしてきたけど、韓国に比べると「いい企業に入れば幸せだ」という価値観も弱くて、ちょっとブレているんです。

Sunin 韓国では名門大学、大企業という道が絶対で、それ以外の生き方はないという考えが強い。でも、大学へ行かなくても、いろいろな生き方が認められるというのは、いいことだと思います。

●アジアの#MeToo事情

――Tingtingさんは、中国の#MeToo運動について研究されているのですね。

Tingting はい。性被害を受けた女性たちが声を上げる#MeToo運動は、2017年アメリカのハリウッドから起こった運動で中国にも波及しました。中国では、アメリカのようなエンターテイメント業界からの動きではなく、大学やNGOで働く女性たちが受けた被害についてSNS上で告発するという形で始まり、フェミニスト団体がそれを支持することで、一般の女性たちの間にも広まりました。中国ではLINEやTwitterは使えないのですが、中国版のSNSがあるんです。
 去年の夏頃は、そうしたSNSを中心に運動が広がって、とても盛り上がっていたのですが、運動が広がるのを恐れた政府が、#MeToo運動を発信するSNSアカウントを凍結したり投稿を削除したりしたために、今では沈静化してしまいました。フェミニスト団体も活動を制限されてしまい、被害者が声をあげても支援が得にくい状況です。

Sunin 韓国では2016年に刊行されたチョ・ナムジュの『82年生まれ、キム・ジヨン』という小説が100万部を突破するベストセラーになりました。キム・ジヨンというひとりの平凡な女性が、生まれたときから学生時代、受験、就職、結婚、育児などの人生のさまざまな局面で感じてきた差別と、女性であるが故の生きづらさを淡々と描いた小説です。

Tingting その本は中国でも話題になりました。日本でもベストセラーになりましたよね。

Sunin 韓国では女性たちから絶大な共感を得たのですが、一部の男性からの反発もありました。映画化されたときも、主演女優がバッシングされるなど、世論は分かれました。
 #MeTooも、芸能界から声が上がって一時は大きな話題になり、いろんな分野に広がって、東南アジアなどからの移民女性たちも#MeTooに参加したりしていたんです。しかし、結局はニュースから消えていってしまいました。メディアが報道しなくなると人々の関心が薄れてしまう。それは、日本も韓国も同じです。

●若い人たちの政治への関心は?

――政治に対する若い人の関心はどうなのでしょうか。

Chifan 台湾では高校の社会科で政治のことも学ぶし、友達同士でも話題にもなります。特にいまは香港のデモが注目されていることもあり、SNS上に政治の話題や情報があふれています。「自分たちの未来は自分たちで守る」という意識が高く、選挙の投票率も高いです。
 2020年1月に総統選挙がありますが(※)、自分の一票で自分たちの生活が変わる、そのことがどれくらい大事なのかをみんな認識しています。海外にいる若者も、旧正月ではなくて今回の総統選挙にあわせて帰国して投票するという人は多いです。

※座談会が開催されたのは2019年12月

Aya 台湾に留学したときに、台湾では自分の一票が生活に直に結びついているという感覚が強いことを知って、日本より政治への関心が高いと感じました。日本では、普段はあまり政治や選挙の話はしないです。

Sunin 日本にいる韓国の友人をみても、選挙のときに韓国大使館での在外投票をする人は多いですよ。国民の投票で政権を担う政党が変わるので選挙はすごく大事。自分の一票で大統領さえ代えられますから。

Tingting 韓国では、デモも盛んですよね。

Aya 日本の学校では、いちおう社会科などで政治の仕組みなどは知識としては学びますが、先生は「中立」な立場でなければいけないので、リアルな政治の勉強はできません。友達同士で話すこともあまりない。
 これは個人的なイメージですけど、ネットを見るとちょっと過激な政治的発言をしている人ばかりが目立つので、政治について話すだけでカルトっぽい感じに見られてしまう気がします。オウム真理教事件の記憶があるからか、「思想がある人、信念を持って主張する人=怖い」みたいな。
 でも、普段から政治と距離があって、自分から積極的に求めていかないと選挙の情報が手に入らないのに、18歳で選挙権が付与されることになっても、「どうしよう……」ってなりますよね。

Tingting 中国の場合は全然状況が違います。一般市民には選挙権がありませんし、私は一度も投票をしたことがありません。それでも中国人の若者が集まると香港の話題になるし、政治に関心を持っている人は多い。投票の機会はありませんが、政府はSNSにオフィシャルなアカウントをもっていて、市民のいろいろな意見を聞いています。
 ただ、検閲に引っかかる「敏感ワード」というのがあって、その言葉を使った投稿はアップしても2時間くらいで見つかって削除されてしまいます。友人はSNSに書いた投稿がすぐに消されて、「あなたの文章は違法なので削除しました」と通告されたそうです。市民も検閲に対抗して「敏感ワード」に引っかからないように、たとえば「#MeToo」も漢字の当て字にしてハッシュタグをつけるなど、知恵を働かせながら発信しています。

――なるほど、市民もいろいろな手段で抵抗しているんですね!
さて、残念ながら、そろそろ座談会も終わりの時間になってしまいましたが……。

Aya これまで私は韓国の人と話す機会がなかったのですが、今日の座談会で皆さんとお話しすることができて嬉しかったです。また違うテーマで、いろいろ聞いてみたいと思いました。

Tingting 私もとても面白かったです。とくに台湾の選挙について興味があったので、今日は直接Chifanさんからお話を聞けたのもよかったです。

――本当に短い時間のなかにも発見がたくさんあり、もっと聞いてみたいことがたくさん出てきました。同じ国の出身でも、立場や状況が変われば見えることも違ってくるかもしれません。ぜひ、また機会をつくってこのような座談会を企画したいと思います。皆さん、どうもありがとうございました。

(構成/マガジン9編集部、協力/WANP)