第127回:コロナ襲来は一過性の災難ではなく、時代の変わり目だった! 〜コロナ時代の到来!(松本哉)

 いや〜、新型コロナやばすぎる!!!!!!! もうだめだ、ついにこの世の終わりがやって来る!!!!!!!!!
 ……などと思ってたのも束の間、だんだん慣れてきた。ちょっとした疫病だったら大ダメージくらって、また後からなんとか挽回するっていう感じなのかもしれないけど、ここまですごいことになってくると、もう様子が少し違う。すでに社会や生活の価値観や様式が変化するところまで来始めている。そう、もはや一過性の災難などと考えるのではなく、時代の変わり目だと考えた方がいい。なるほど! ということは、今までの価値観でのように、収入がなくなってヤバいとか、月末の支払いができないとか、別に悩まなくてもいいことなのかもしれない。そうか、実は大したことじゃないのかも!!
 確かに、ないものはない。払えないものは払えない。個人的な話でも、いま自分の店を3店舗全部閉めてるので、ほっといたら月に百数十万円ずつは消えていく計算。当然そんな金は手元にない。これ、普通に考えたら一大事だけど、なぜか別にそんな気もしない。確かに世の中全てが通常運転で、自分だけ事業に失敗して大赤字だったら、そりゃ悩むけど、今回に限っては別に自分のせいじゃないし、世の中全体が大変なことになっている。なんだ、じゃあ大丈夫だ! よーし、全部コロナのせいにしちまえ〜。それに、よくよく考えてみたら、なんとかして三度三度の飯を食べて、意地でも1日一回寝れば、人間死なない。なんだ、簡単じゃねーか〜。

 前回の連載では、世界恐慌時にはこうしよう、という計画を練ってみた。今回は、世界恐慌突入の前に、早くもコロナによって激変し始めている世の中の価値観の様子を探り、なんだか楽しくなってるポイントや、どうも隙ができそうなところなどを、ちょっと考えてみよう。いよいよ、始まってきた。これは楽しみ!

ロクに働かなくてもよくなった!

 コロナ後の激変として面白いのが、実は世の中のほとんどの仕事は不要不急だったことがバレたこと。これは面白い。これまでは、せっせと働くことが美学みたいな謎の価値観があった。「高度成長期じゃあるまいし、そんなの意味ないだろ!」と、みんな薄々気付いてはいたけど、それがコロナでついに暴かれた。もちろん、社会が成り立つ上で必須の仕事はたくさんあるけど、それ以外のものは、あったほうがいいけど無くてもなんとかなるもの。まあ、そういう余計なものこそが文化であり社会の醍醐味なので、社会には必要なものなんだけど、それがバレたのが面白い。世の中の仕事なんて、全く意味のないものとか、余裕を持って適当にやればいいものがあふれているにもかかわらず、「国民一丸となって全力で働こう!」なんて、そんなバカな話はない。やるべきことだけやってあとは適当にやればいいのだ。
 現に、コロナが深刻化してから、真っ先に「働くな」とのお達しがきた。当然、自宅で一人で仕事ができるような人や、社会を回すためにどうしてもやらなきゃいけない仕事は別だろうけど、それ以外に関しては「店を閉めろ」「満員電車に乗るな」「無理して会社に行くな」という。これはすごい。そんなこと、今まで言われたことなかった! 画期的すぎる!
 現に、多くの店も閉まっており、街の人々と会っても、仕事をしていないことが前提みたいになってきた。これまでだったら「最近どうですか?」と聞くと、決まって仕事の話が返ってきたが、最近はみんな「こんな植物を育て始めた」とか「これを機にキッチンの改造をしている」とか、仕事と関係ない、本当に自分がやりたいことの話をし始めている! 今まで忙しかった人たちがみんなヒマ人になっているし、しかもみんなやたら楽しそうだ。しかも「お金? ないよ!」「商売? 未来はないね! 考えたってしょうがないよ」とケロっとして答える。おおー、なんだかいい時代になってきた!
 朝から晩まで仕事してるのが素晴らしいみたいな、アホみたいな文化がこれを機に消滅し始めており、個々人の人生の中の「仕事」の割合が少しずつ低下してきている。よーし、順調にみんなで味をしめていきましょ〜。

家賃値下げが続出!!!!

 どうやら、家賃を払わなくてもよくなってきた。これも朗報だ。いよいよ金が尽きた人なんかが続々と家賃交渉を始めており、それがどんどん成果をあげ始めている。やり方は人それぞれだけど、まずはお願いしてみるのがいい。「コロナで収入止まったんで、ちょっと遅れて払っていいですか」とか、「コロナ期間中だけ家賃少しまけてくれないか」などなど。借金まみれで首が回らない貧乏大家さんでない限り、ちょっと人の情けがあれば、何かはしてくれるはずだ。高円寺や知り合いの店なんかでも、当面の家賃半額にしてくれたとか、2割引にしてくれたとか、とりあえず今は払わなくていいからそのうち払ってとか、そんな話をよく聞く。うわ〜、世の中捨てたもんじゃないね。
 やはり、店にしろ家にしろ、大家さんが近くに住んでいて手渡しのところほどその成功率は高い。一番確率低いのは、最近よくありがちな管理会社に丸投げのところ。これは公務員みたいに「いや、うちは委託された業務をこなしているだけなので、そんなこと言われてもお答えしかねます」みたいな対応で門前払い。鬼! 悪魔! 人でなし! うーん、やっぱり昔ながらの社会の方が人は助け合えるね〜。
 ちなみに、政府も多くの人が家賃を払えなくなることを予想して、すでに全国の大家さんに対して「家賃無理っぽいやつら多いから融通利かせてやってくれ」との要請をしている。さらに、大家さん陣営に対しては、固定資産税の減免も発表されている。そう、大家さん陣営はすでに準備万端で、少しはその覚悟も決めている。そう、我々にも要求する理はあるのだ。
 よし、無理なものは無理! 払うのをやめよう! 日本中の家賃を払えない人が一斉に家賃を払わなければ、絶対に大丈夫になるし、何かが変わる。欧米などでは広範な家賃不払い運動が起きているし、中国などでも家賃下げろという運動があった。もちろん大家さんとの関係もあるので、変に敵対的になるのは良くないし、払わなければいいというわけではない。ちょっと無理してでも払ってあげたいようないい関係性の時は別だ。逆に、本人はたくさん金持ってるくせに、困ってる貧乏人には冷徹な血も涙もない大家さんだったら、それは対抗してもバチは当たらない。ここは人間社会、相手を見て考えるのがいい。ともかく、一番いけないのは、お金がないのに借金とかして家賃を払うこと。平時の時に、お金が尽きた理由が自分にあるならまだしも、こんな非常時(政府がすでに緊急事態って言ってる)なんだから遠慮はいらない。不払いの勇気がなければ1週間でも3日でもいい、滞納しよう。こりゃいよいよヤバいっていうギリギリまで頑張ってみよう。あなたの1日の家賃滞納が明日の世界を変える!!

ルールがいい加減になった!

 コロナのせいで、今まで「絶対にやらなきゃいけない」とされていたことができない状態になってきた。仕事にしろ家賃にしろ、いろいろ。コロナの威力は絶大で、とりあえずコロナのせいにしちゃえばどうにでもなる空気感になっている。
 うちのリサイクルショップでもそうだ。いま、店舗は閉めているんだけど、ある商品を見にきたいというお客さんがいた。で、約束の日時に店に行って、その人が来るのを待っていたけど一向に来ない。どうしたのかと思って連絡してみると、「いや〜、ちょっとコロナの関係もあって、後日改めて伺います」だって。コラー、それコロナ関係ないだろ〜。しかも一件や二件じゃなく、結構こんな調子の人多い。どうやらコロナのせいにしたらどうにでもなるっていう事になってきたらしい。おお、面白い事になってきた!
 ちなみに、いまアメリカから遊びに来ている友達がいるんだけど、来ている間にコロナ騒動が日本上陸して帰れなくなったという、マヌケなやつだ。観光で滞在できるのは90日までなので、もうすぐ期間が切れる。これはまずいと、イチかバチかで入管に相談に行ったら、コロナの影響もあるししょうがねえって事で、少し延長してくれそうだとのこと。おお、あのいちいちうるさい入管が! いいね〜、いろいろ緩くなってきて。
 そういえば、90年代に中国に行ったとき、遊んでたらうっかりビザが1週間ぐらい切れてて不法滞在状態になってて、ヤバいと思い、現地の役所に行って「すいません、不法滞在なんですけどどうしたらいいですか?」と恐る恐る聞いたら、「なんだ、お前日本から来たのか」と、何やらサラサラっとメモ書いてくれて、ニコッと笑って「おう、これで大丈夫だ!」みたいな感じ。適当だな〜(笑)。いい加減で最高、と感動したのを思い出した。またあれぐらいになってもらいたい。
 あるいは、仕事が自宅勤務になるなど、時間に余裕のある人が増えているので、みんなやたらと時間におおらかになっているのもいい。昔みたいに5分遅れると怒る人とか、そういう人も減っている。いいね、いいね! いろんなことが適当になり始めている! いや〜、これはコロナ後に期待!

「高円寺なんとか文化会館」がついに開館!

 さて、いろんなものがいい加減になってきたり、余裕ができたりして、世の中に多くの隙ができようとしている。もちろん、いま各個人には経済的に深刻な状態もどんどん訪れてきているが、深く考えてもどうしようもないし、そこに大部分の時間を割かれるのも癪だ。じゃ、「ま、大したことないか」と考えるしかない。なるほど、そう考えたら実は悩みゼロなのかもしれない。こういう時は深く考えず、時代の推移を見守ろう。

 ということで、余裕ができた時間で、さっそく新しいことを始める事にしたので、最後にちょっとそれを紹介してみよう。ヒマはあるけど金はない(貧乏学生みたいだ!)、っていうことで、トークイベントの新スペースを作ることにした。と言っても、実店舗を構えて人を集めるなんて今は御法度な上に、財布の中にはどう探しても五円玉ぐらいしかでてこない。ま、順当に考えてネット上で何かやろうということに。
 しかし、ちょっと待て。ネット上でなんでもできるように急速に進歩したのがIT先進国の中国だけど、これは実は全然面白くなかった。すべてが管理される上に、できることの限界もみんなにわかっちゃう感じ。ビジネスの人たちからしたら、それはすごい良いんだろうけど、何か面白いことをやろうとしている地下文化圏のやつらからしたら、こんな可能性のない面白くないものはない。今や、中国の若いやつらが口を揃えて言うのは「ネットでわかるものに面白いものはない」ということ。なるほど、それは確かにすぐ飽きそうだ。
 まあ、普通に考えて、ネット上でトークイベントをやるとなったら、最近だったらZOOMなどを使って会議室を作り、その画面をそのまま配信するっていうのが一番オーソドックスだろう。ただ、そうすると、ネット上の中に浮いた感じのトークルームをパソコンやスマホの画面からみんなが覗いてる感じになる。それ、面白くないし、これまでずっと実際のスペースを作ることをやってきた自分として、そこまで魂を売るわけにはいかない。ローカル感や掘り出し物感は出したい。……では、現実社会で人に会えないとなったら、ネット上でいかに現実のスペースに近い感じを作るかだ。いや、むしろ実際の場所とネット上の中間ぐらいのことはできないか!?
 そこで考案されたのが、ミニチュアの実際の「場所」を作ること! その会場のステージ上に出演者が画面を通して出演する(ややこしいので写真を参照)。で、そのステージをカメラで撮影して生配信する。そうなると、会場はネット上ではなく、現実の場所だ。そこはすでに特定の場所なので、会場の雰囲気もあるし、他のところじゃなくてそこのステージに立つという意味合いも加味されてくる。そのうち、「憧れのあの舞台に立ちたい」とか「あの会場、オレどうも苦手だ」とかそういうのも出てきたら面白い。これは正真正銘の「場所」だ。

会場はこんな感じ。もはやオンライン企画とは言わせない!

 その場所でのイベントをどう公開するかだって様々。ネットで無料配信してもいいし、本当のイベントみたいに入場料ということで視聴料を設定してちょっと秘密感出してもいい。イベントをネット上には公開せず、撮影したDVDやデータを通販で売るというアングラ感を演出することもできる。おお、これなら中国での急速なIT化で全部がつまらなくなった感じにも対抗できるのでは!?
 さて、そうと決まったら、製造に取り掛かる。うちはリサイクルショップなので、家具の廃材などを適当に使って製造を開始。店の前でノコギリで切ったり釘を打ったりニス塗ったりしてると、商店街の通りがかりのおばちゃんたちが「あれ、店長さんめずらしい。なに作ってるの?」と集まってくる。最近ずっと店を閉めてるから、いるだけで珍しいらしい。まあ、確かにオンラインイベントの準備には到底見えない。イベント会場を作ってるとか説明し始めると、長くなりそうなので、「いや〜、ちょっと棚を」とか適当なことを言ってごまかす。あるいは、まだコロナが来てることに気づいてないおばあちゃんなんかも歩いてきて「ちゃんと店開けないとダメよ」と怒られたりする。「いや、いま外は危ないですよ」というと「なんで!」との返事。ダメだ、コロナから説明しないと! また長くなる。さらには遠くから指差して「あっ、やっといた!」とか言って駆け寄ってきて「洗濯機を売りたいんですけど、今から来れませんか!?」と、ここぞとばかりに依頼してきたりもする。やばいやばい、なかなかステージができない!! というか、やっぱり人に会うと、早く店開けたくなるな〜。
 ともかく、幾多の難関を乗り越えてステージも完成!! しかも田舎の公民館とか場末の演芸場とかそういうローカル感全開のイメージで作製。会場にはパイプ椅子も並べて設営終了。どうだ、まいったか〜。っていうか、こんなの普段だったら忙しくて絶対やらない。コロナ時代のなせる技だね〜。とりあえずローカル感とダサさ全開の感じが重要なので、その会場名も「高円寺なんとか文化会館」と命名。

まさかコロナの自粛中にこんなものを作ることになるとは思わなかった!

 そして早速、このコロナ時代をどううまいこと生きるかっていうテーマのトークイベント開催を決定。その告知でも、「高円寺でネット上に新しいスペースがオープンした!」という触れ込み。「高円寺でネット上に」っていうのが既に矛盾してて意味がわからないが、まあその感じがいい。
 イベントでは、自分のほか、音楽ライターの二木信氏や、ファッションブランド「途中でやめる」の山下陽光氏、アート界からはキュレーターの池田佳穂氏を迎えて、ふざけた新時代の生き方の話を展開。面白いのは、普通のネット配信と違って、小型のステージがあって客席も並んでるから、本当に人前に立つ様な錯覚をしてきて、開始前には緊張感が走るのがすごいリアルイベントに似ている。
 さらに、イベントでは、ゲスト参加で高円寺のカフェSUB STOREから高場久美氏とAndhika Faisal氏、高円寺地元文化人の松本るきつら氏、さらにイギリス在住のライター、ブレイディみかこ氏も飛び入り参加で、それぞれの立場から、このコロナ時代について語ったり謎の作戦を練ったりして、かなりいいイベントだった。今からでも観られるので、試しにイベントに参加してる気分になって観てみてほしい。
 この会場、せっかくできたので、今後もこのスタイルでのとんでもない企画を連発する可能性が高いので、この高円寺なんとか文化会館をチェックすることをお勧め!

劇場に非常口は必須!

コロナ時代到来!

 さて、しかしなんだかんだ言って、現時点で新型コロナはまだまだ収まる気配すらない。これがいつ終わるのか、コロナと共存し続けることになるのか、今はよくわからない。しかし、コロナの焼け野原の中にも、とんでもない光明があるに違いない。今は病気で亡くなる人も世界中でたくさんいるし、大変なこともたくさん起きている。しかし、それと同時に、コロナは今までの無意味なしきたりや、くだらない予定調和をも破壊し続けている。これは不幸中の幸いで、せめてもの希望。
 コロナ収束後、また元の生活や旧来の価値観に戻る人も多いだろう。しかし、これまでの価値観の中には意味のないくだらないものが大量にあると、我々はすでに気付いてしまった。それに「こうしなきゃいけない」なんてのは、ほとんど幻想。一人でも多くの人が、この謎の呪縛から抜け出すことを願う。これは超いい機会だ。よ〜し、そうなったらみんなで勝手に生きてみよう〜。

 一応最後に。死んだり死なせたりしたら元も子もない。手を洗うことから人混みをつくらないなど、できることはいろいろやって、ともかくみんなで生き延びよう! 家賃より手洗い! 仕事に行くより人との距離!
 収束さえさせれば、必ず面白い世界がやってくる!
 
 

▼イベント「コロナ時代来たる! マヌケ地下文化の乱」

▼高円寺なんとか文化会館
https://www.facebook.com/102873808071992/

松本哉
まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、『世界マヌケ反乱の手引書:ふざけた場所の作り方』(筑摩書房)編著に『素人の乱』(河出書房新社)。