第529回:感染拡大の中、3度目の「いのちとくらしを守る」ホットライン、開催。の巻(雨宮処凛)

 新型コロナ感染の拡大が止まらない。

 7月31日、東京都の新規感染者は463人、8月1日にはそれを上回る472人と過去最高を更新。8月2日には292人、3日には258人となったが、7日連続で200人超。こうなると、何人くらいになれば「少ない」と思っていたのかもわからなくなってくるが、5月後半頃の都内の新規感染者が日によっては一桁だったことを思うと危機感が募る。

 感染拡大を受け、沖縄では独自の緊急事態宣言を発出。8月1日から15日まで、不要不急の外出自粛が呼びかけられ、那覇市内の飲食店は夜10時までの時間短縮が要請され、松山地域の接待を伴う施設にも休業が要請されるなどしている。

 東京都でも、飲食店とカラオケ店に対して8月3日から31日まで、夜10時までの時短営業を要請。応じた店舗には協力金20万円が支払われるという。

 一方、感染者がやはり急激に増えている大阪でも、一部エリアの店舗に対して休業や夜8時までの時間短縮営業を要請。8月6日から20日までで、時間短縮に応じた店舗には一日あたり2万円の支援金が出るという。また、連日100人を超える感染者が出ている愛知県でも、名古屋市の一部地区の飲食店、カラオケ店に対し、休業や午後8時までの時間短縮を要請。期間は5日から24日まで。要請に応じた店には最大20万円の協力金が支給される。そんな愛知県の隣の岐阜県では、独自の「第2波非常事態宣言」が発出された。

 「客の戻りは半分以下だけど、このまま感染者が減っていけばなんとかなるかもしれない」

 6月から7月はじめにかけて、飲食店の人々がそう口にするのを耳にしてきた。同時に、久々に夜に外出したら街の風景が一変していることに、この2ヶ月ほど驚かされてもきた。よく行っていた飲食店が潰れ、内装工事をしている光景を何度見ただろう。その中でなんとか生き残ってきた飲食店などに対して、またしてもこの試練。そして今、再び多くの人が失業や家賃滞納、ホームレス化の危機に晒されている。

 そんなふうに感染が拡大し続ける7月31日、厚生労働省で記者会見をした。8月8日に、3度目になる「コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守るなんでも電話相談会」を開催するからだ。

 会見に参加したのは、つくろい東京ファンドの稲葉剛氏、反貧困ネットワークの瀬戸大作氏、反貧困ネットワーク埼玉の猪股正氏、ホームレス総合相談ネットワークの後関一博氏、そして私。

 3月頃からコロナによる生活困窮者支援を続ける稲葉氏と瀬戸氏からは、ここ最近の相談傾向について語られた。緊急事態宣言の出ていた4〜5月の野戦病院状態と比較して、6月からは相談件数は少し落ち着いてきたものの、感染が拡大し始めたこの2週間ほど、再び相談が増える傾向にあるという。

 その中には、「2度目の相談」の人もいる。4月などに一度相談をしてきた人が、再び相談メールをしてくるパターンだ。東京都が確保していたホテルから出て仕事についたものの、再び仕事がなくなり相談してくる人もいれば、一度目の相談の際、支援者から「生活保護」を提示されても「自力で頑張る」と答えた人たちもいる。「国のお世話になる」のではなく、特別定額給付金10万円や社会福祉協議会の貸付金などでなんとか繋ぎつつ、仕事を見つけるという人たちだ。しかし、貸付金を借りたり給付金を支給されたりしても、結局は滞納していた家賃の支払いや生活費に消えてしまい、コロナ禍の中、仕事も見つからない。そんな人が、第二波と言われる中、どうにもならなくなって連絡してくるのだ。

 このように「2度目の相談者」が見られるのが「第二波」の特徴かもしれない。ちなみに職種として多いのは、感染者数の増加にモロに影響を受ける飲食業や風俗店など。「新型コロナ災害緊急アクション」に寄せられる緊急相談を見ていても、そのような職種の人や「2度目の連絡の人」をちらほら見かける。

 この日の会見では瀬戸氏から、そんな「新型コロナ災害緊急アクション」の支援について、具体的な話もなされた。これまでこの活動を支える「緊急ささえあい基金」には多くの寄付金が集まり、現在までに約600世帯、1000人以上に現金給付がなされてきたことなどだ。緊急ささえあい基金に寄せられた寄付金は、直接給付によって多くの命を救っている。その中には、この国の公的なセーフティネットになかなかひっかかれない外国人も多くいる。一刻も早い支援がなければ餓死の危険性に晒されている人たちだ。そんな状況を思うと、外国人を救う公的な仕組みが必要だと切に思う。

 会見では、私もここ最近の話をした。

 例えば緊急事態宣言が出された4月頃に支援し、現在は生活保護を利用してアパート暮らしをする人に話を聞くと、日雇い派遣などの仕事はもっとも仕事がなかった4月5月よりは増えたという。が、今回の感染拡大を受け、再び仕事が減る、もしくはシフトに入りづらくなることが予測される。なぜなら、第一波の際、日雇いの仕事が減ったのは、イベントなどの仕事がすべて流れたこともあるが、飲食店などの休業により働く先を失った人が日雇い派遣に殺到したという理由もあるからだ。

 そして今、同じことが起きている。感染者が拡大し始めた7月後半頃から、都内では飲食店への客足は急激に遠のいている。そうして3日から始まった営業時間短縮の要請。そうなると、働く場をなくした人々、その日の稼ぎでギリギリの生活をする人々は、また日雇いの工場の現場などに殺到するだろう。そうすれば再びあぶれる人が出る、というわけである。

 この国には、感染者が増えるたびに、生活そのものが破綻する層が一定数、存在する。第一波でそのことは嫌というほどわかったはずなのに、各自治体はわずかな協力金を店に支給するだけで、働く人への補償はまたしても置き去りだ。店だって20日間も時短営業して、地域によっては午後8時に店を閉めてたった20万じゃ「焼け石に水」のところが多数で、とても従業員への補償などできないだろう。そんな中、国が進めているのは「Go To トラベル」。無策を通り越して、もはや不条理劇場だ。

 そうして困窮し、路上などに放り出された人たちを支援するために、また民間がボランティアでフル稼働するのだろうか? 感染者が増えるたびにそんなことを繰り返していたら、社会は脆弱になるばかりだ。なぜ、コロナを機に、最低限、失業くらいではホームレス化しないセーフティネットの分厚い社会にシフトしようとか、そんな議論にならないのか。このように、ただただ場当たり的なことを思いつきでやっているようにしか見えないから、不安は募るのだ。

 ちなみに7月なかば、取材で沖縄を訪れたのだが、着いてそうそう言葉を失った。常に観光客でごった返す国際通りには人の姿はほとんどなく、シャッターを閉める店も多かったからだ。タクシーの運転手さんに話を聞くと、売り上げは昨年の10分の1、すでに廃業を決めた土産物屋や飲食店も多くあるという。「少なくとも持続化給付金があと3回はないと沖縄はとても持たない」。運転手さんはそう言った。

 観光が大きな資源である場所ほど大打撃を受けている。そんな沖縄が再び緊急事態宣言の中にあることは前述した通りだが、全国の観光地の惨状はいかほどのものだろう。「だからGo To トラベル」と国は言いたいのだろうが、それで感染が拡大してしまってはどうにもならないではないか。

 そんな中、政府は飲食店でクラスターが発生し、感染経路の追跡困難な場合には店舗名を公表すると7月28日、打ち出した。「夜の街」という呼称といい、どこまで飲食店を痛めつければいいのだろうか。

 思えば、コロナ感染が拡大し始めた頃にはライヴハウスが責められ、そのあとにはパチンコ屋やパチンコ屋に行く人が槍玉に上げられた。誰かを「悪者」にするコロナ対策は、社会の分断を生むだけに止まらず、場合によっては困窮者も生み出す。困窮者支援という形でその尻拭いの末端にいるからこそ、「悪者扱い」はやめてほしいと思うのだ。

 ということで、8日のホットライン、全国から無料でかけられるので生活に困っている人はぜひ、電話してほしい。そして周りで困っていそうな人に、ぜひこの情報を届けてほしい。

「コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守るなんでも電話相談会」(無料・全国いっせい)
【日時】8月8日(土) 10:00〜22:00
【電話番号】0120-157-930(フリーダイヤル)
詳しくはこちら→https://saitamasogo.jp/archives/87006

雨宮処凛
あまみや・かりん:1975年北海道生まれ。作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。若者の「生きづらさ」などについての著作を発表する一方、イラクや北朝鮮への渡航を重ねる。現在は新自由主義のもと、不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組み、取材、執筆、運動中。『反撃カルチャープレカリアートの豊かな世界』(角川文芸出版)、『雨宮処凛の「生存革命」日記』(集英社)、『プレカリアートの憂鬱』(講談社)、『自己責任社会の歩き方 生きるに値する世界のために』(七つ森書館)など、著書多数。2007年に『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。「反貧困ネットワーク」副代表、「週刊金曜日」編集委員、、フリーター全般労働組合組合員、「こわれ者の祭典」名誉会長、09年末より厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員。