在留資格で命の線引きをさせない~仮放免者などへの高額医療費支援を求める記者会見~(中村)

 名古屋出入国在留管理局で収容中に体調不良を訴えて、今年3月に33歳で亡くなったスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんのことが報道でも大きく取り上げられた。ウィシュマさんだけではなく、収容施設の内外で在留資格のない人たちが十分な医療を受けられない状況は深刻だ。6月4日に「外国人の生活困窮者(仮放免者等)の高額医療費等の支援を求める記者会見」が弁護士や支援団体関係者などによって行われた。

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 「仮放免者は働くことが許可されず、公的支援も利用できない。単純に考えて生きていけない」――そう話すのは、生活困窮者、特に外国籍の方たちへの検診、要治療者のフォローなどを行うNPO法人「北関東医療相談会」(通称:アミーゴス)の大澤優真さん。

 在留資格がないが帰国もできない状況にある外国籍の人たちが、出入国在留管理局の収容施設内で適切な医療を受けられない状況は、以前にマガジン9の織田朝日さんへのインタビューでも取り上げているが、「仮放免」となって収容を解かれた人たちも、非常に厳しい生活状況に置かれている。仮放免者は就労が許されないため生活費を稼ぐことができず、かといって生活保護のような公的支援を利用することもできない。健康保険にも加入できないため、病気やケガをしても医療費が払えず治療を受けられない人が多い。さらに、このコロナ禍が追い打ちをかけて、親族やコミュニティによるサポートも難しい状況になっているという。

 支援団体を通じて、低所得者など経済的な理由で医療を受けられない人を対象に、無料または低額な料金で診療を行う「無料低額診療事業」を行う病院を利用するケースもあるが、このコロナ禍で無料低額診療の利用者が増加。日本人の患者が優先されて、外国籍や在留資格のない人は「お断り」という病院も増えてきているという。「なかには、保険のない外国人がくると200%、場合によっては300%の治療費を請求する病院もある」と話すのは、長年支援活動を行ってきたアミーゴス事務局長の長澤正隆さんだ。

 「4月にクルド人の健康相談会を埼玉県川口市内でやりました。その時、はじめて虫歯の相談もやったが本当にすごかった。子どもが10人くらいのうち、6、7人は歯がぼろぼろ。大人のなかは歯の根っこがないくらいひどい状態の人もいた。治療費を払えないので、大人も子どもも痛いのを我慢しているんです」(長澤さん)

 アミーゴスが受けた最近の相談者のなかには、進行性のがんにかかっているがお金がないために治療を受けられずにいる女性もいる。46歳、2児の母親だ。

〇仮放免中で子ども2人と暮らす46歳女性からの相談

 2007年に来日。2015年10月から仮放免。体調不良をうったえて、支援者が診てくれる病院を探したが、何件も断られる。ようやく診断がついたときには、右卵巣がん、腹膜播腫のステージ3だった。転移も認められて進行がんの状態だが、お金がないために治療ができない。今後、緊急搬送、緊急手術が必要になる可能性も高い。保険なしで手術した場合は、300~800万円ほどの治療費がかかる見込み。

 彼女の支援をしている弁護士の高橋済さんは、体調不良を訴える彼女の確定診断をしてくれる病院を見つけるまでに、10件以上の医療機関にあたらなくてはならなかったという。

 「手術しないと助からないといわれているが、お金がなくて治療できない。お子さんが見かねて、がんセンターに行き『お母さんをどうにかしてほしい』と訴えていました。子どもの気持ちを考えると、居ても立っても居られない」(高橋さん)

 今年1月に在留特別許可の申請(※)をしているが、まだ審査にも時間がかかり見通しが立たない。働くことができないため収入がなく、2人の子どもを抱えて家賃の支払いさえできていない状況だ。

※人道的配慮から法務大臣の裁量で在留資格を認める措置

 このほかにも、手術により胆のう摘出が必要な仮放免の男性、糖尿病が急激に悪化して入院中だが、治療に3カ月以上かかるとされる仮放免の男性などの相談事例が報告された。どのケースも治療費に数百万円が必要と見込まれ、支援団体ではカバーできないため、現在、治療費をカンパで募集中だ(末尾に掲載)。

 「仮放免者はみな深刻に困窮しているという話をすると、『でも、結局はどうにかなるんでしょう?』と言われることが多い。でも、どうにもならないので寄付をお願いしています」と大澤さん。

 今年1月には、全身に転移したがんによって難民認定申請中だったアフリカ・カメルーン出身の42歳女性が亡くなっている。彼女は出入国在留管理局で二度目の収容中に体調が悪化。収容施設では十分な医療措置を受けられず、支援者が強く訴えて仮放免となった。その後、地元の病院でがんと診断。支援者や病院の支えで治療を受けていたが、家賃も払えない状態となり、病状が悪化するなかで一時はホームレス状態にも陥ったという。

 また、2017年12月に肝臓の免疫不全によって死亡したブラジル人の非正規滞在者のケースでは、病院で高額な治療費がかかると言われ、冬の寒い時期に「ここはホテルじゃないから早く帰れ」と追い返されたという。彼女は、そこから2週間後に亡くなった。

 こうした状況が起こる原因を、「国あるいは入管の、外国人には人権がない、何をしても自由だというような意識にあるのではないか」と大澤さんは話す。

 また、弁護士の高橋さんは会見で、「こうした会見をさせていただくと、もともとの在留資格や収容の理由などを質問されるのですが、そもそも仮に犯罪歴があるとか、経済的な問題があったかどうかが命の重さに関係するのかという思いがある。在留資格の有無は、治療を受けられない、生きられないという理由にはならないということを伝えたい」と訴えた。

 問題の解決には、在留資格を出すべき人に出すことだ、と高橋さんたちは話す。また、仮放免になったときに健康保険などに入れる仕組みも早急に必要だ。在留資格がないまま日本で暮らす人たちのなかには、日本で生まれ育った子どもたちもいる。

 「これ以上、犠牲者を増やしてはいけません。今回の会見は仮放免者の命を助けるための会見でもあるし、同時に、仮放免者のおかれている状況を理解してもらうための第一歩だと思っています」(大澤さん)

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仮放免者など外国人の生活困窮者の高額医療費等のためのカンパを募っています

NPO法人北関東医療相談会
https://npo-amigos.org/

ゆうちょ銀行 当座預金
加入者名:アミーゴ・北関東医療相談会
口座番号:00150-9-374623
※通信欄に必ず「仮放免者への寄付」と記入してください