第55回:2018年、ぼくのニュースファイルから その3(鈴木耕)

「言葉の海へ」鈴木耕

 今年の出来事の総まとめ、とは言いながら、これを書いているのは12月11日。だから今回は、2018年9月1日~12月11日のニュースファイルです。
 今回はとくに、水道法や入管・難民法などの、日本という国の行く先を決めてしまうような法律が、まともな審議もなしに、またも自公(+維新)の強行採決で成立してしまうという、もはや「民主国家」などという看板が恥ずかしくなるような国会の直後です。
 だから、出来事を拾う作業も気が重くなっているのですが…。

9月1日
 南スーダン派遣の自衛隊PKO部隊が、2016年7月にジュバでの武力衝突に遭遇。宿営地内で9カ所被弾、25発の弾頭が敷地内で見つかっていたと朝日新聞がスクープ。なかったはずの文書がまた。隠蔽官庁。
9月3日
 2017年度の企業の内部留保が446兆円に達したと、財務省が発表。溜め込んだ金は吐き出さない企業。溜息を吐く労働者…。
9月4日
 電源開発(Jパワー)は、建設中の大間原発(青森)の3度目の運転時期延期を発表。安全対策工事の遅れと、工事費の高騰によるもの。造りかけたものはやめられないという、最悪の泥沼。
9月6日
 北海道胆振地方で震度7の大地震。苫東厚真発電所が停止したため、全道295万戸すべてがブラックアウト。都市機能マヒ。死者は40人を超える。なお、この地震で、停止中の泊原発1~3号機の外部電源が喪失していたことが判明。もし運転中なら、福島事故の二の舞だったかも…。
9月9日
 沖縄県名護市議選で、移設容認派13、反対派13と拮抗。
9月10日
 自民党総裁選の論戦開始。安倍晋三氏と石破茂氏の一騎打ち。
9月12日
 ロシアのプーチン大統領が、ウラジオストクの当方経済フォーラムで突然、「前提条件なしの日ロ平和条約締結を」と発言。プーチン氏、領土帰属を先送りの意向。安倍首相は反応できず。安倍外交の最悪の成果
9月14日
 安倍首相は「年金受け取り年齢を、70歳を超えても選べるような制度改正を3年で断行したい」と発言。年とっても働けということか。
9月17日
 トランプ大統領が、中国への高関税措置第3弾を発表。中国からの輸入品約22兆円分に10%の関税を上乗せするというもの。
9月18日
 中国側も翌18日に、同程度の関税を米国からの輸入品に課すと応じた。もはや泥沼の貿易戦争の気配。

 同日。文在寅韓国大統領が、平壌を初訪問、金正恩委員長と会談。朝鮮半島の非核化について、寧辺核施設廃棄を金氏が表明。ここは雪解けだが安倍外交は蚊帳の外。

 同日。杉田水脈自民党衆院議員の『新潮45』寄稿文への批判を受けて、『新潮45』(10月号)で「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」との特集。これがのちに大きな批判を浴びることになる。右翼雑誌の断末魔。

9月20日
 自民党総裁選で安倍晋三氏が3選。だが、石破茂氏が地方票の45%を獲得。安倍一強体制に地方からの不満。

 同日。イージス・アショアの配備に、安倍首相の地元・山口県阿武町の花田憲彦町長が反対を表明。

9月25日
 杉田水脈自民党議員の寄稿文をめぐる『新潮45』の特集への批判を受け、新潮社は同誌の休刊(事実上の廃刊)を決定。

 同日。広島高裁は、伊方原発の運転差止めを認めた仮処分を取り消し、逆に運転を認める決定。その理由が「社会通念」だという。まさに世間知らずの裁判官の典型。

9月26日
 原子力規制委員会は、稼働から40年に達する東海第二原発に、新規制基準に適合との審査書を正式決定。規制委どころか推進委になったようだ。
9月27日
 三菱電機は、裁量労働制で3人が労災認定を受けていたことを公表。5人が精神障害や脳疾患で、2人は過労死自殺。三菱は今年3月、この制度を廃止。

 同日。大阪高裁は、朝鮮学校の高校無償化排除を違法とした一審の大阪地裁の判決を取り消し、朝鮮学校側に逆転敗訴を言い渡した。司法の自殺。

 同日。日米は新通商交渉入りに合意。だが、実質的なFTA(自由貿易協定)をTAG(物品貿易協定)と言い換えるなど、米側に完全屈服。日本政府と官僚どもの言葉の「言い換え」のごまかしがここにも。なお、この際の日米首脳会談で安倍首相は「今後も高性能の防衛装備品を米国から輸入する」とトランプ大統領に確約。まさに、安倍卑屈外交の典型。

9月30日
 沖縄県知事選で、辺野古新基地反対を全面に掲げた玉城デニー氏が、容認派の佐喜真淳氏を8万票もの大差で破り初当選。しかも今回は県知事選での最高得票。沖縄の民意がはっきりと示されたのだ!
10月1日
 米空軍CV22オスプレイ5機が、東京の横田基地に正式配備。
10月2日
 第4次安倍改造内閣が発足。ほとんど投げやりな在庫一掃内閣。柴山昌彦文科相は「教育勅語の教育利用は検討に値する」とさっそく問題発言。
10月5日
 今年のノーベル平和賞は、紛争下の性暴力被害者の救済に取り組んできたコンゴの医師ムクウェゲ氏と、性暴力を受けた体験を語る運動家ナディア・ムラド氏に与えられた。
10月7日
 加計学園の加計孝太郎理事長は記者会見で「安倍首相との会見は憶えていないし、記録にも残っていない」と発言。ウソの上塗り。
10月9日
 翁長雄志沖縄前知事の県民葬。安倍首相の追悼の辞を代読した菅官房長官に、会場から「嘘つけ!」「帰れ」などの怒号が飛び交った。
10月10日
 米国が昨年12月、5年ぶりに臨界前核実験を実施していたことが分かった。
10月11日
 大もめにもめた豊洲市場が開場した。不安は払拭できず。
10月12日
 沖縄県で相次ぐ米軍ヘリ事故について、米軍側は基地への立ち入りを拒否。事実上、事故の検証は不可能。日米地位協定が壁(朝日)。

 同日。玉城沖縄県知事が安倍首相と初の会談。安倍政権は融和ムード演出だが、中身はゼロ回答。

10月13日
 九州電力は、太陽光発電を一時的に停止する「出力制御」を実施。これは発電量が多すぎたときの、原発優先のための措置。国のエネルギー政策の大いなる矛盾。
10月15日
 安倍首相、来年10月の消費増税への対策に、ポイント還元や軽減税率などの検討を指示。何がなんだか分からぬメチャクチャな弥縫策。
10月16日
 福島原発事故をめぐり、業務上過失致死罪で強制起訴された旧東電経営陣3人の公判。武藤栄元副社長は謝罪はしたものの無罪を主張。勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長も同様の意向。
10月18日
 安倍内閣新閣僚の片山さつき地方創生相、宮腰光寛沖縄北方相、渡辺博道復興相、桜田義孝五輪担当相など疑惑噴出。ボロボロ内閣。とくに片山大臣はこののち、看板問題、政治資金報告書の度重なる訂正などで火だるま。

 同日。原子力規制委員会は東海第二原発の工事計画を正式に認可。

10月20日
 サウジアラビア政府は、サウジ人記者ジャマル・カショギ氏の死亡を初めて認め、総領事館内の事故だと発表。どこの政府もウソをつく。

 同日。トランプ大統領は、1987年に旧ソ連と米が結んだINF(中距離核戦力)全廃条約から離脱し、新型核兵器の開発に着手すると発表。軍需産業のためなら新冷戦時代も辞さないトランプ氏。ものすごくヤバイ!

10月21日
 沖縄県那覇市長選で、基地反対派の城間幹子氏が当選。
10月24日。

 2015年にシリアで拘束されたフリー・ジャーナリスト安田純平さん(44)の解放が確認された。今年最高のいいニュースだった!!
10月25日
 東北電力は、女川原発1号機(宮城)の廃炉を発表。老朽原発では経済性が見込まれないことが明らかに。
10月26日
 米軍辺野古新基地建設の賛否を問う「沖縄県民投票条例」が、沖縄県議会で可決成立。その後、投票は来年2月24日に行われることが決定。
10月29日
 米国からの超高額兵器の輸入増で、兵器ローン(いわゆる後年度負担の残高)が5兆円を突破。これは安倍政権下で急増したもの。トランプ氏に売り込みに唯々諾々と応じた安倍バラマキ外交の借金地獄(東京新聞)。

 同日。ドイツのメルケル首相が、与党キリスト教民主同盟(CDU)の党首を辞任。ふたつの州議会選挙での歴史的敗北の責任をとったもの。

10月30日
 石井啓一国交相(公明党)が、沖縄県による辺野古埋め立て承認撤回処分の効力を一時停止すると発表。これを受け、岩屋防衛相は工事再開を表明。同じ政府内で裁定をするという、究極のゴマカシ! 法も何もあったものじゃない。

 同日。韓国最高裁は、戦時中に日本で働かされた韓国人元徴用工4人が損害賠償を求めた訴訟で、新日鉄住金の上告を棄却、原告一人当たり1億ウォン(約1千万円)を支払うよう命じた。

11月1日
 山下貴司法相は、入管難民法改正案では「受け入れる外国人材の人数に上限を設ける考えはない」と説明。法案の中身がまるで決まっていないデタラメさ。

 同日。政府は強引に辺野古埋め立て工事を再開。

 同日。国連総会で日本提出の「核兵器廃絶決議案」が賛成多数で採択。だが、昨年採択された核兵器禁止条約には触れず。日本のどっちつかずの態度を、条約推進国も核保有国も批判。

11月4日
 防衛省が「無人潜水機」を開発へ。(東京新聞)
11月6日
 米中間選挙。上院ではトランプ共和党が過半数を占めたものの、下院では民主党が過半数を上回り、上下院ねじれ。
11月7日
 米ロサンジェルス郊外で銃乱射事件、12人が死亡。銃社会の悲劇繰り返す。

 日本原電の和智信隆副社長が、東海第二原発周辺6市村との協定について「協定書には『拒否権』という言葉はどこにもない」と発言。周辺自治体が猛反発。のちに、和智副社長は謝罪に追い込まれたが…。

11月8日
 野党が「技能実習生」の実態調査で合同ヒアリング開始。パワハラとイジメ、時給300円、長時間労働などの実態が浮かぶ。それでも入管難民法案の成立を急ぐ政府へ不信。
11月9日
 防衛省が2基で約4500億円と上方訂正したイージス・アショアの費用だが、総額では6000億円超の可能性(東京新聞)。いい加減な数字の羅列。
11月14日
 安倍首相がシンガポールでプーチン大統領と会談。北方領土の歯舞色丹の2島先行返還による平和条約交渉加速で一致したという。4島一括返還から転換。さらに、この2島には米軍基地は置かないと安倍氏が確約。米との意見擦り合わせはなかったようだ。完全にプーチン氏に手玉に取られている安倍。どこが「外交の安倍」なのか?

 同日。経産省は、新たな小型原発の開発を進め、2040年ごろまでに実用化を目指すと、非公開の会議で決めたという。まったく懲りない面々!

 同日。陸上自衛隊の滋賀県饗庭野演習場から実弾が国道に着弾。停車中の乗用車に破片が被弾、窓ガラスなどが割れた。恐ろしい話。

11月16日
 出入国管理法の重要なデータである「失踪外国人技能実習生の調査データ」に多数の誤り。デタラメデータで審議入りは不当と野党反発。当たり前だ。

 同日。安倍首相「北方4島返還方針に変わりはない」と会見で弁明。相変わらず、ウソばっかり!

11月18日
 パプアニューギニアで開催のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)は結局、首脳宣言を出せずに閉幕。米中の対立がおさまらず。
11月19日
 カルロス・ゴーン日産自動車会長を、東京地検特捜部が金融商品取引法違反で逮捕。日産側のルノーに対する反乱とも伝えられるが…。
11月21日
 韓国の女性家族省が、日韓慰安婦問題の合意で日本政府の10億円の拠出金で設立された「和解・癒し財団」の解散を決めた。またしても、日韓の火種。

 同日。入管難民法改正案が審議入り。だが、次々と技能実習生の失踪者の原因などの政府資料のデタラメが発覚。

11月22日
 安倍首相、来年10月の消費増税で「ポイント還元5%を9カ月間」との意向表明。2%増税に5%還元では実質3%の減税。何がなんだか分からない。

 同日。水道事業の「公設民営」を進めるコンセッション方式という水道法改正案が審議入り。命の水を企業に売り払う、稀代の悪法! なお、同じような漁業法の改悪も自民公明がゴリ押し。

 同日。東北大学などの調査チームが「福島事故原発周辺40キロ圏内の猿の血液中で赤血球などの血液細胞が減少」「事故後の胎児は頭の大きさが小さく体全体の成長にも遅れが見られた」と発表。人間への影響は…?

11月24日
 2025年の万国博が大阪に決定。20年東京五輪後に100ヵ国に240億円の支援を約束、カネで万博を買い取った。なんでもカネのニッポン国!
11月26日
 中国の科学者が、ゲノム編集で双子を誕生させたという。不気味な科学…。

 同日。米トランプ大統領、メキシコ国境に集結した移民を目指す集団(キャラバン)を防止するため「国境の全面封鎖も」とツイート。

11月28日
 米製高額兵器の輸入増で兵器ローンの支払いが急増。そのため防衛省は、国内の兵器産業関連企業62社に2~4年の支払いの延期を要請していることが判明した(東京新聞の調査報道の成果)。
11月29日
 沖縄の玉城知事は「辺野古埋め立て承認撤回の停止は違法」として、総務省の第三者機関である「国地方係争処理委員会」へ審査を申し出た。国側は14日から土砂投入の意向変えず。安倍強行政治!
11月30日
 秋篠宮53歳の誕生日に「大嘗祭の国費支出は適当か」と問題提起の発言。「宮内庁長官は聞く耳持たなかった」とも。政教分離の問題も浮上。
12月1日
 フランス全土で、燃料税値上げ反対デモが13万人超、パリでは放火も。マクロン大統領の「庶民に冷たい政策」への反感。支持率25%。デモを受け、仏政府は4日に、燃料増税凍結を発表。デモに負けた(いや、デモが勝った!)。

 同日。カナダで、中国通信機器大手ファーウェイCFO孟晩舟が逮捕。米国の要請によるものという。またも米中間の軋轢拡大。

12月4日
 政府と三菱重工業が進めてきたトルコへの原発輸出は断念する方向。建設費が5兆円と、当初の倍以上と試算されたことを受けたもの。アベノミクスの失敗例がここにも。原発は割に合わない。
12月5日
 防衛大綱で、空自はステルス戦闘機F35を100機、米から購入する方針。その他、海自護衛艦「いずも」を空母に改修することも明記する方向。だが「空母」を「多用途運用護衛艦」とまたもごまかしの言い換え。公明党の要請? 軍事強化の勢い止まらず。
12月6日
 高知県沖で米軍のFA18戦闘攻撃機と空中給油機KC130が訓練中に接触して墜落。乗員7人のうち1名救助1名死亡、他は行方不明。最近、米軍機の事故がとても目立つ。

 同日。改正水道法が衆院本会議で可決、成立。「民営化」で破綻した海外の例をまったく考慮しない自公与党は、もしもの時にどう責任をとるのか!

12月8日
 まったく内容が決まっていない改正入管法が、未明の参院本会議で可決、成立。外国人技能実習生の69人の死亡例など、政府はまったく斟酌しないままの強行採決。この国の国会は崩壊したといっていい。

 同日。フランス全土でまたも大規模デモ。燃料税問題から、反マクロンへ焦点は移った。高校生も参加でデモ拡大。この日、700人以上が拘束された。マクロン大統領は「燃料税の値上げ停止、最低賃金の引き上げ、残業代やボーナスへの非課税」などを発表せざるを得なくなった。デモの力が示された!

12月10日
 カルロス・ゴーン氏、再逮捕。

 同日。衆院憲法審査会で国民投票での「テレビのCM規制」について、民間放送連盟からヒアリング。民放連側は「CM規制には反対」を表明。カネになるなら国の未来など知ったことか、ということらしい。堕ち行く先は地獄!

 同日。官民ファンド「産業革新投資機構」の田中正明社長ら民間出身取締役9人は全員、辞任を発表。経産省は11日、来年度の機構関連の予算を撤回した。経産省のやり方は「ゾンビ企業の延命策」との厳しい批判も。

 

せめて写真だけでも美しい風景を。ぼくの散歩コース野川公園の中にある小道。

野川公園の「野川」です………。

もう水仙が咲いていた……。

ゆく秋を惜しむような、紅葉の最後の輝き……。

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鈴木耕
すずき こう: 1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレイボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。1999年「集英社新書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライターに。著書に『スクール・クライシス 少年Xたちの反乱』(角川文庫)、『目覚めたら、戦争』(コモンズ)、『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出版)、『反原発日記 原子炉に、風よ吹くな雨よ降るな 2011年3月11日〜5月11日』(マガジン9 ブックレット)、『原発から見えたこの国のかたち』(リベルタ出版)、最新刊に『私説 集英社放浪記』(河出書房新社)など。マガジン9では「言葉の海へ」を連載中。ツイッター@kou_1970でも日々発信中。