2024年4月20日
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小林美穂子

小林美穂子
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1968年生まれ。一般社団法人「つくろい東京ファンド」メンバー。支援を受けた人たちの居場所兼就労の場として設立された「カフェ潮の路」のコーディネーター(女将)。幼少期をアフリカ、インドネシアで過ごし、長じてニュージーランド、マレーシアで就労。ホテル業(NZ、マレーシア)→事務機器営業(マレーシア)→工業系通訳(栃木)→学生(上海)を経て、生活困窮者支援という、ちょっと変わった経歴の持ち主。空気は読まない。共著に『コロナ禍の東京を駆ける 緊急事態宣言下の困窮者支援日記』(岩波書店)。

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第35回:いかなる「違い」をも乗り越えて、ともに音楽を楽しむ吉日(小林美穂子)

今から30年近く前、完璧な青空を見上げて「crystal clear‼」と表現したら、キウイっ子に「“クリスタルクリア”は空の表現には向かないかな」と指摘されたのに、今になってもよく晴れた澄み切った空を見上げると頭に浮かぶのはその形容詞だ。2024年3…

第34回:「所定の申請書でないと受け付けられません」。昭和の水際作戦が生きるまち(小林美穂子)

2024年1月19日、私はつくろい東京ファンドの同僚たちと、埼玉県・幸手駅前のベンチに座り、コンビニで買ってきたピザサンド(完熟トマトのマルゲリータ)の小ささを嘆きながらムシャムシャ食べていた。東京から幸手市までの道のりは遠い。何度も…

第33回:絶望之為虚妄,正与希望相同(絶望は虚妄だ 希望がそうであるように)by魯迅(小林美穂子)

街にはクリスマスソングが流れ、人々がチキンやらお節の予約に慌て出す季節がやってきた。あと一週間ほどで2023年が暮れようとしている。カフェ潮の路の常連の若者は、12月に入ると「ねぇねぇ、骨付きフライドチキンが食べたいんだよ~」などとつ…

第32回:第4回難民・移民フェス 食べて、笑って、綱引いて(小林美穂子)

11月4日、良く晴れた土曜日、東京都杉並区浜田山の柏の宮公園で4回目になる難民・移民フェスが開かれた。私が参加するのは3回目となるこのフェス、回を追うごとにその規模は膨らみ、前回、練馬区の平成つつじ公園で開かれた際には立錐の余地…

第31回:扶養照会、録音データから読み解く大阪市城東区の冷酷(小林美穂子)

9月のある日、大阪府大阪市に住む女性からつくろい東京ファンドにメールが届いた。女性は生活困窮して城東区に生活保護の申請をした際、これまでに何度か金銭的援助を受けていたことから関係が悪化してしまった親に扶養照会をしないで欲しいと職…

第30回:出所後の行き場がない。刑余者のやり直しを阻む社会的制裁(小林美穂子)

去年の話になるが、刑務所から満期出所したAさんの福祉事務所同行をした。当時、コロナ禍の余韻で生活困窮して家を失う人の相談が相次いでいた。つくろい東京ファンドのシェルターは常に満室。特にこの1、2年は出口のない仮放免者や、私達につな…

第29回:37℃の炎暑の中で高齢者が働く姿にこの国の末路を見る(小林美穂子)

7月、梅雨明けも待たずに不意打ちのように本気の夏がやってきた。いきなり強烈なパンチを連日浴びせられた私は、ファイティングポーズをとることすらできずにリングに沈んだ。秒殺である。食欲減退、睡眠不足、下痢、倦怠感という典型的な夏バ…

第28回:増え続ける空き家と部屋を借りられない人々の不安と苦悩(小林美穂子)

マガジン9読者の皆さん、お久しぶりです。「明日できることは明日やる」をモットーに、やらなきゃならないことも先送りして呑気に構えていたら、いよいよ仕事が積もりに積もってしまい、にっちもさっちもいかなくなって恐慌をきたし、2カ月ほど…

第27回:必勝しゃもじでひっぱたいて公助を起こしたい、そんな春(小林美穂子)

コロナ禍も3年が過ぎ、今年も桜が満開になった。我が家の猫たちは、いつの間にかアンカ入り猫ハウスに入らなくなり、人間も湯たんぽを押し入れに仕舞った。玉ねぎのように重ねていた洋服も薄くなっていく。季節は日々移ろい、一日として同じ日は…

第26回:遺体長期安置や遺骨の行方――身寄りなき人の意思は尊重されるか?(小林美穂子)

2023年1月15日、灰色の雲に覆われた午後、私たちはつくろい東京ファンドの同僚たちと東京都江戸川区にある瑞江葬儀所にいた。昨年1月に亡くなった和木さん(仮名)を荼毘に付すためだ。引き取り手不在のその方のご遺骨は光照院(台東区)にある…