2024年7月27日
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一枝通信

東日本大震災と福島第一原発事故の後、たびたび福島に通い、地元の人たちの声に耳を傾け続けてきた作家の渡辺一枝さん。そこで見聞きしたこと、感じたこと、そしてご自身の日常の中で考えたことなどを綴っていただきます。

第86回:2024年春・被災地ツアー報告──「物」が語りかけ、「ことば」が見せる情景(渡辺一枝)

双葉駅前のロータリーを回りながら、案内してくれる今野寿美雄さんは、オリンピックの聖火リレーがここを走ったことと、すぐ目の前の大きな建物は双葉町役場の仮設庁舎だということを説明してくれる。仮設とはいえ相当額の費用が費やされている…

第85回:2024年春・被災地ツアー報告「閣僚で、帰還困難区域に入ったことがある人はいるのでしょうか」(渡辺一枝)

東日本大震災から10年後の2021年から、福島被災地ツアーを始めた。今年4月5日~7日に6回目のツアーを行った。2泊3日で、1泊目は小高の双葉屋旅館、2泊目はいわきの古滝屋に宿泊。集合は福島駅、解散は郡山駅だ。ガイドと運転は、いつも今…

第84回:急ぎ足で能登半島・珠洲へ(渡辺一枝)

雑誌『たぁくらたぁ』の取材で、4月27日(土)28日(日)の1泊2日で、編集長の野池さんと能登半島の珠洲市へ行ってきた。金沢から現地までは、種市靖行さんが車で案内してくれるという。整形外科医の種市さんは、福島第一原発事故後に、郡山から…

第83回:「読む」という行為──点字絵本との出会いから(渡辺一枝)

目が不自由な人たちのために、点字本というものがあることは知っていた。「日本点字図書館」から、これまでに幾度か、拙著の点字訳についての諾否の問い合わせがあった。その度に「喜んで」と答えを返していた。「点字」も、また聴覚に不自由があ…

第82回:映画『サイレント フォールアウト』福島で上映(渡辺一枝)

もうすぐ春休みという小学3年生の3月のことだった。静岡県・焼津のマグロ漁船「第五福竜丸」が、漁場の海で放射能を浴びたことが大きなニュースになった。1954年3月1日に太平洋上のマーシャル諸島、ビキニ環礁で行われたアメリカの水爆実験に…

第81回:トークの会「福島の声を聞こう!」vol.45報告「帰りたくても、帰ることをとまどう地域もある」(渡辺一枝)

東京電力福島第一発電所の事故から、13年目の春を迎えます。漁業関係者との約束を果たさないまま、そして多くの市民の反対を無視し、また諸外国からの抗議にも耳を貸さずに、東電は汚染水を海洋放出し続けています。こうして汚染の被害は拡散され…

第80回:37年前、カナダでの思い出 (渡辺一枝)

思いがけないことが、思いがけず過ぎた日々を蘇らせてくれることがある。今日が、そんな日だった。友人がFacebookにチャップリンの映画『The Gold Rush(黄金狂時代)』のことを投稿しているのを見つけた。映画を観たかったので、記されていたUR…

第79回:「子ども脱被ばく裁判」傍聴記「国は子どもを守れないのですか?」(渡辺一枝)

新しい年が明けて、はや1月も終わろうとしています。新年早々の能登半島地震の報を受けて咄嗟に思ったのは、「原発は?」ということでした。13年前の福島を体験している私たち誰もが、きっとそうだったのではないでしょうか。とりあえず、原発事…

第78回:とりとめのないこと──私が裁判傍聴をする理由(渡辺一枝)

とりとめのないことだけれど、このところ胸につかえていることがある。ふとした拍子にその胸のつかえが湧き上がってきて、収まりが悪い。文章化したらつかえは取れるかしら、とりとめのなさが正体を表してくれるかしらなどと思い、綴ってみました…

第77回:「311子ども甲状腺がん裁判」傍聴記「何がいけなかったんだろうという後悔に苛まれ続けている」(渡辺一枝)

2月6日、東京地裁で、福島第一原発事故当時、福島県内に住んでいた子どもたちが被ばくにより甲状腺がんになったとして東京電力に損害賠償を求めた「311子ども甲状腺がん裁判」の第8回口頭弁論が開かれました。今回は裁判官が交代したので、弁論…