番外編:山本太郎氏インタビューの後で(鈴木耕)

「言葉の海へ」鈴木耕

 先日、山本太郎さんのインタビューを、彼の国会の事務所で行った。
 とても楽しいインタビューだった。太郎さんも、こちらの眼をじっと見つめて真剣に言葉を選びながら答えてくれたし。もちろん、ぼくの考え方とは違う部分もあったけれど、そんなことはインタビューでは当たり前だ。気持ちのいい時間だったことは確かだ。
 超多忙を極める太郎さんとの内容に関する確認作業に手間取ったこともあり、インタビューを行ってから大分、時間が経った。その間に、「AERA」に山本太郎インタビューが掲載された。ぼくもさっそく読んでみた。そこで、やや違和感を覚える部分があった。そのことは、きちんと書いておく必要があると感じ、蛇足だとは思いながら、編集部に頼み込んで、こんな文章を書かせてもらうことにした。
 「AERA」の中で、自民党との関係について、太郎さんは次のように発言している。

 自民党が本気で減税すると言うならば、そちらに乗ります。何がなんでも野党陣営ということではない。我々の政策が実現できるなら、手をつなげるところはつなぎますよ。ステップ・バイ・ステップ、一歩ずつ前進するための一段階というとらえ方です。

 ――原発や憲法をめぐる立場が相いれなくてもですか。

 それとこれとは別の話です。全ての考え方が完璧に同じなんてことは、家族でも恋人同士でもあり得ないでしょう? 全て同じじゃなきゃダメという姿勢は、宗教かイデオロギーでしかない。私はこれまでも、与党が提出した法案の半分には賛成しています。

 ――減税をやるから、安倍政権の財務大臣をやってくれと言われたら、閣内に入りますか。

 引き受けますよ。いいじゃないですか、そんな大きな役職をもらえるなら。ただ、言いたいことは言いますし、財務省のスキャンダルをどんどん暴きます。だからすぐ罷免されるでしょうね。あ、でも副大臣や政務官じゃお断りです。

 まあ、財務大臣になってもすぐに罷免されるだろう…と言っているのだから、ここはジョークととらえてもいいと思う。
 それに、与野党の枠を超えて「手をつなげるところはつなぐ」というのはぼくも賛成だ。硬直した与野党対立の構図を越えて、いい政策なら賛成する。政治家として立派な見識だと思う。
 けれど、やはり「原発や憲法を巡る立場」について「それとこれは別の話です」というのには、ぼくとしてはいささか困ってしまう。「別の話」で済ませていいことではないと思うからだ。
 政治家として、絶対に譲れぬ一線があるのではないか。これまで太郎さんが訴え続けてきた「原発」や「憲法」についての主張に、いささか抵触するのではないか。

 「マガジン9」は、2005年に発足した当時は「マガジン9条」といっていた。創設当時のメンバーたちに「憲法9条の精神だけは譲れない」という暗黙の了解事項があったからだ。
 その後、さまざまな分野に踏み込むことが増え「条」をとって「マガジン9」と名乗るようになった。それでも【憲法の精神】についての考え方が柱になっていると、ぼくはいまも思っている。
 だから、経済政策で一致できるなら「憲法や原発」については棚上げにしてもいいと、ぼくは考えない。
 確かに太郎さんの言うように、すべての考え方が完璧に同じなんて、どんな似た考えの人同士だってあり得ない。同じ志の仲間同士であっても、いろんなことで意見が対立することはある。だが、一緒に行動し闘おうとするなら「最低限の同意事項」がなければならないと、ぼくは思う。
 それが「マガジン9」の場合は、【憲法】ではないか。「それとこれとは別の話」と、ぼくは思わない。
 少なくともぼくは、そう理解している。

 もし太郎さんが、「原発や憲法は別の話」とほんとうに考えているのなら、やはり「そこはぼくとは違う」と、インタビューをした者の責任として、はっきりと書き残しておかなければならないと思ったのだ。

鈴木耕
すずき こう: 1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレイボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。1999年「集英社新書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライターに。著書に『スクール・クライシス 少年Xたちの反乱』(角川文庫)、『目覚めたら、戦争』(コモンズ)、『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出版)、『反原発日記 原子炉に、風よ吹くな雨よ降るな 2011年3月11日〜5月11日』(マガジン9 ブックレット)、『原発から見えたこの国のかたち』(リベルタ出版)、最新刊に『私説 集英社放浪記』(河出書房新社)など。マガジン9では「言葉の海へ」を連載中。ツイッター@kou_1970でも日々発信中。