第505回:「れいわ新選組」のすべてがわかる本、出ます。の巻(雨宮処凛)

 今年も残すところわずかだ。
 
 そんな年末恒例の儀式のひとつに「新語・流行語大賞」がある。さまざまな言葉がノミネートされたが、その中には「れいわ新選組/れいわ旋風」という言葉もあった。残念ながらトップ10入りはしなかったものの、夏の参院選は大きなうねりを生み出したことは確かだ。
 
 そうして当選した重度障害を持つ二人の議員は現在、著しい活躍を遂げている。
 
 12月3日、私は初めて舩後靖彦議員の国会での委員会質問を傍聴することができた。教職員給与特別措置法(給特法)改正をめぐる文教科学委員会で、自動音声を読み上げ、また秘書の代読で堂々と質問をする舩後議員の姿を見て、「本当にここまで来たんだ」と涙が出そうになった。そんな質問の途中、「速記を止めてください」という議長の声が委員会室に響いた。萩生田光一大臣などとのやりとりから、舩後議員がその場で疑問に思ったことを文章化する作業が始まったのだ。
 
 「舩後議員が質問の準備をしております。議員の皆様は着席のまま、お待ちください」
 
 その声に、議員席も傍聴席も静まり返る。舩後議員は、目の前にかざされた透明文字盤を一文字ずつ示し、瞬きで合図する。介助者や秘書が、それを一文字ずつ拾って文章に組み立てていく。最初に見た時は、「なんと荘厳なコミュニケーション!」と、人間の「伝えたい」という欲求に震えるほど感動した。舩後さんが議員になったことによって、この光景を日本中の人が目にした意味は本当に大きい。
 
 そうして約5分後、文章が整った。国会という権力の中枢に、真空地帯ができたかのような、そんな5分間だった。「合理的配慮」が言葉だけでなく、こうして日々、国会で展開される意味の大きさに胸が震えた。
 
 一方、木村英子さんも大活躍している。
 
 11月5日、国土交通委員会の初質問で車椅子用トイレの狭さについて質問したところ、赤羽一嘉国交大臣は参考基準の見直しを省内に指示。また、12月3日には、新幹線のバリアフリー化について質問。パラリンピックを控えているのに新幹線に車椅子用のスペースがほとんどなく、予約が前日までしかできない現状を訴えた。これに対しても、赤羽国交大臣の対応は早く、新幹線のバリアフリー対策の見直しに向け、今月中にJR各社を集めた検討会を設置する考えを示した。
 
 重度障害のある二人の議員の誕生によって、今、この国ではこれまで国会で議論の俎上にすら上ってこなかったことが議論され、現実をどんどん変えているのだ。
 
 そんな二人はれいわ新選組の「特定枠」として当選したわけだが、二人を当選させた票には、れいわ新選組の全候補者たちへの熱い思いが込められていることも忘れてはならない。史上最高の票を取りながら落選となった山本太郎代表はもちろんだが、「アベンジャーズ」とも言われた10人の候補者たちはすごい勢いで選挙戦を駆け抜けた。
 
 ということで、そんなれいわ新選組の完全ガイドとも言える本が12月13日、出版される。
 
 『#あなたを幸せにしたいんだ 山本太郎とれいわ新選組』(集英社)である。
 
 この本には、れいわメンバー全員のインタビューとベストスピーチが掲載されている。で、私は本書において、木村元彦さんとともにライターをつとめ、れいわメンバーへのインタビューをして執筆したのだが、もう本当に、全員のインタビューが面白くて仕方ない。れいわに出会うまでのそれぞれの人生がまったく違っていて、だけどみんなそれぞれに切実な問題の当事者で、出会うべくして山本太郎に出会い、そうして夏の選挙でれいわ新選組に集いし者たち。なんだかすべてが映画みたいな実話なのだ。
 
 その上、本書で注目してほしいのは、れいわメンバーの若かりし日の写真だ。
 
 いやー、笑った! これはぜひみんなに見てもらって、この写真ネタだけで語り合う会とかやりたいくらいだ。
 
 ということで、本書ではさまざまな「新事実」が明らかになっている。
 
 舩後靖彦議員が出馬を決めた、山本太郎からのある言葉。
 
 木村英子議員が経験した心中未遂や議員になる前の障害者運動の日々。
 
 野原善正氏が創価学会に入った理由。
 
 蓮池透氏が山本太郎に「ほれ直した」ある瞬間。
 
 安冨歩氏が語る「子どもを守る」という言葉と自身の経験。
 
 三井義文氏の経験した、コンビニオーナーの数々の理不尽。
 
 辻村千尋氏が今に至るまでと、自然保護の現場を回った選挙。
 
 大西恒樹氏の料理の腕前がプロ級だということ。
 
 渡辺照子氏のホームレス時代、そしてシングルマザーの苦悩。
 
 読み直して改めて驚くのは、山本太郎氏の滅茶苦茶なスケジュール感だ。
 
 出馬の声をかけている時期が、ほぼ全員ギリギリ。最後の渡辺照子氏こと、てるちゃんに至っては、選挙が始まる前々日の夜に打診されている。だいたい明後日から選挙っていう日の夜に「出馬しませんか?」と電話する政治家がいるだろうか? しかもそんな電話を受けて「出ます」という人などいるだろうか? が、いるのである。もう何もかもが常識はずれで、しかしだからこそ、あんなに多彩なメンバーが集まり、あんなに面白い選挙ができ、そして「れいわ新選組」という劇団とか楽団みたいな政党になったのだろう。
 
 今、政治を見ていると、「桜を見る会」についての対応なんかに呆れ果てて、諦めてしまいそうな時もある。
 
 しかし、政治って本当はワクワクするものなんだ、と当事者揃いのれいわ新選組を見ていると、改めて気づかされる。
 
 ぜひ、手にとってみてほしい一冊だ。
 

『#あなたを幸せにしたいんだ 山本太郎とれいわ新選組』(集英社)
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雨宮処凛
あまみや・かりん:1975年北海道生まれ。作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。若者の「生きづらさ」などについての著作を発表する一方、イラクや北朝鮮への渡航を重ねる。現在は新自由主義のもと、不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組み、取材、執筆、運動中。『反撃カルチャープレカリアートの豊かな世界』(角川文芸出版)、『雨宮処凛の「生存革命」日記』(集英社)、『プレカリアートの憂鬱』(講談社)、『自己責任社会の歩き方 生きるに値する世界のために』(七つ森書館)など、著書多数。2007年に『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。「反貧困ネットワーク」副代表、「週刊金曜日」編集委員、、フリーター全般労働組合組合員、「こわれ者の祭典」名誉会長、09年末より厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員。