第135回:【災害警報】オリンピック東京上陸の可能性強まる。命を守る行動を(松本哉)

 さて〜、ついにやって来ます、東京オリンピック。気づいたらもはや開会式目前。誰もが「さすがにこの状況じゃ、中止じゃねーの?」と思う中、それでも政府やらIOCやらは大ブーイングの中で強行開催の様子。こりゃ、もう何かに取り憑かれてるね、完全に。そして、なかなか文句の言いにくい出場選手たちはほとんど捕虜みたいなもんで、むしろ気の毒なぐらい。その裏で謎の政治家やら金もうけの奴らやらが悪行三昧。う〜ん、これ映画とかドラマだったら完全に、エンディング近くに「やい! お前の悪事もこれまでだ!」と、バサッと斬られてめでたしめでたしの世界。
 ところが、なかなかそういう美しい話にならないのが現実社会の世知辛いところ。ここまでの執念を見せてくるオリンピックも珍しく、金とメンツのためには意地でもやるとばかりに断末魔の叫びを上げながら上陸するオリンピックは、むしろ完全にB級ホラー映画かパニック映画。かつては「平和の祭典」とか言ってたものの、そんなハリボテはすでに剥がれ落ち、もはや怨念の塊と化してゾンビの残骸のような正体を現して迫り来るオリンピック!!!! ギャー!!! 大変だ!! こりゃあ、とんでもないことになってきたぞ! よし、逃げろ逃げろ!
 ということで、備えあれば憂いなし。早速、万一オリンピックが襲来した際に、どうやってかわし、生き延びるかの一大作戦をみんなで考えよう。どんな災害が起きてもたくましく生き延びる術は必要なことだからね〜。
 実のところ、最近「素人の乱残党RADIO」というラジオ番組をやってて、このオリンピック対策の研究は、そのハガキコーナーでもちょうど募集し始めたところ。もしもっといい案がある人は、ハガキも待ってます。ま、それはさておき、オリンピックをかわしていく作戦、行ってみましょー。

「素人の乱残党RADIO」についてはこの動画をチェック!

作戦① 逃げる

 最も手っ取り早いのがオリンピック期間中、東京を脱出する作戦。もしコロナが早々に収束していて、盛大に行われるなんて感じだったら、一目散に逃げるのも正解だったかもしれない。集団疎開したり、ひたすら走って逃げて距離を稼いだり、地下シェルターに1〜2ヶ月籠って難を逃れるのもよさそうだ。開会式の数日前になったら逃げ遅れた人々が車に乗り込んで、東名や東北道などの下りが大渋滞でパニック状態になったらもう完全に映画の世界みたいで面白い。
 ただ、実際にはコロナも収束していないどころか全開で飛ばして来てるので、感染爆発中の東京から地方に一斉に散るというのは、ちょっと具合が悪い。いやー、そうなったらここは東京に踏みとどまるしかないのだが、迫り来るのは怨念のゾンビと化してるオリンピック。うーん、やっぱり逃げたい! チキショー、これまで不都合を地方に押し付けていい思いばかりしてきた東京についにバチが当たったのか!? 東京都民万事休す! 現時点では逃げる作戦、断念だ!! 他の手を考えよう!

作戦② テレビ作戦

 今回のオリンピックは基本的に無観客ということになり、会場自体は閑散としている状態になるとのこと。なるほど、とすると攻略すべきはテレビだ。テレビさえなければ、無観客無放送となり、オリンピックは無いのと同じことになる。よし、これだ!
 ということで、まずは東京タワーになんとか頼み込んで、タワーを電波妨害塔に改造。エッフェル塔やら奈良の大仏などにもどうにか協力してもらって、空白地には新たな妨害電波塔を建設。世界中のテレビがテレ東しか映らないようにして、オリンピック開催中はどのチャンネルを回しても墓地のCMとか知らない爺さんの登山などの番組ぐらいしか映らなくしてしまう。これでもう、オリンピックは死んだも同然。

作戦③ 酒作戦

 巷ではオリンピック成功のために酒を我慢させられてる。当然建前はコロナ感染防止ということだけど、そのコロナ対策も実際のところの目的はオリンピックだ。もちろんイベントの規制なども同じ。本来、コロナ対策なら協力もしたいところだけど、オリンピックのために我慢させられてるとなると、酒飲みたちは納得できないのでもう怒り心頭。居酒屋やBARなどから閉め出されて「なんでいつまでも路頭に迷わなきゃなんねーんだ!」「いったいどこへ行けばいいんだ!」などと口々に叫びながら街を徘徊する無数の酒飲みたち。
 そこで、酒作戦の登場。五輪会場内には酒やら金やらが山ほどあって、五輪でもうけてる偉いやつらとかが相当いい思いしてるらしいという噂を居酒屋街やガード下の赤ちょうちん、駅前広場などに流す。こちらはこちらで居場所を失ってゾンビと化している酒難民たちが「あっちに酒があるらしいぞ!」と、続々とオリンピック関連施設に千鳥足で向かい始める。そう、酒飲みたちの情報網はものすごいのだ。各地から続々と現れる居酒屋をつまみ出された人々! こちらの執念もすごい! 最初はオリンピック会場を遠巻きに囲んで様子を見ていた酒飲みたちも次第に「一杯でいいから飲ませろ!」「酒を隠してるのは分かってるんだ!」などと叫び出し、梅干しのタネを投げたり枝豆の皮をバラまいたりするなど暴動寸前に。オリンピック側も施設のでかいスピーカーなんかを使って「ここに酒はありません! ただちに家に帰りなさい」などと放送するが、すでに最近のオリンピック関連の言動からして、誰もが日本政府やIOCが本当のことを言うわけないと思ってるし、そもそも誰も信用していないので「ウソつけ!」「やっぱりあいつら酒を隠してるに違いない!」「酒よこせ!」と、いよいよ大騒動に。もう塀をよじ登るやつが出てくるわ、変装して忍び込もうとするやつがいたり、大混乱になるが、最終的には正門が酒飲みの群衆に突破されて会場乱入! 逃げまどうバッハ会長や森喜朗氏を発見し、「あいつだ!」「酒を隠してるのはあいつらしい!」などと追いかける群衆! 一夜にしてオリンピック会場に白旗が上がり陥落。平和な世の中がまた訪れる。

作戦④ 日本の伝統作戦

 東京オリンピック誘致のときに話題になったフレーズが「おもてなし」だった。ま、客人をもてなす文化と伝統でオリンピックを迎えようとでも言いたかったんだろう。なるほど、そういうことならやぶさかではない。とりあえずは、日本をうまく利用して金を搾り取ろうって言う魂胆で来日中の大会関係者たちを日本の伝統文化で大切にもてなして、「ああ、ワタシは今、日本に来ているんだなぁ」という実感を味わってもらえれば幸いだ。ただ、残念ながら誘致当初とはだいぶ状況が変わって来ている。当初は滝川クリステルの「おもてなし」だったが、今はどちらかというとヤクザの事務所に連れ込まれた敵対勢力の下っ端に対して「おい、もてなしてやれ」って言う方の、そっちのおもてなしだ。選手たちは今回は捕虜みたいな感じでかわいそうなので、おもてなしは是非、日本をカモだと思って押し寄せる五輪貴族の皆さんを対象にしていきたい。さあ、日本の伝統芸のオンパレードで歓迎しましょう〜。
 手始めに、来日した大会関係者には連日連夜、「おばあちゃん? たった今事故を起こしちゃって、どうしても今100万円がいるんだ! 今すぐ振り込んでもらっていいかな」などと電話が鳴りまくり、LINEを見るとバッハ会長あたりから「10000円のAppleのカードをコンビニで買ってもらっていいかな」と、カタコトの日本語のメッセージが届く。ふと競技会場の外を見ると、パンチパーマのお兄さんたちが列をなして口々に「券あるよ、券あるよ。余ってる券買うよ〜」とダフ屋をやってて、その脇には五輪のニセグッズを売るテキ屋が所狭しと出店している。「これが日本か!」とビビり始め、外は危険だと車での移動を強いられるが、時すでに遅し! 近年ニュースで話題のあおり運転で捕まったオッサンたちを全国から召集し、車間距離1mで追尾。これが日本名物あおり運転かと慌てて車を降りると、今度は三度笠をかぶった謎の侍に果たし状を突きつけられたり、親の敵討ちの子どもに付け狙われたり、振り返ると走り去る忍者の影。気味悪がって早く宿に帰って寝ようとしても、ベッド脇にあるのは聖書の代わりに四谷怪談。眠れなくなってテレビをつけたら屋形船で小判入り饅頭をもらった越後屋が斬られてたりして、オリンピックでの自分の立場とオーバーラップして嫌な気分になってすぐ消す。朝起きたら謎の和尚に呼ばれて座禅が始まるし、やっとありついた朝食のおかずは納豆とイナゴの佃煮。お盆の時には法事が始まり親戚のおじちゃんやおばちゃんに、やれ結婚はまだかとか、仕事は何やってるとか、なんだその髪型はとか、隣の金物屋の次男坊は東大に入ったとか、そんな話を延々と聞かされる。晩餐会に呼ばれノコノコ顔出したら、見知らぬオヤジに、努力して出世した話と、全共闘の話と、昔ケンカが強かった武勇伝をループで聞かされる。
 晩餐会も佳境に入ってくると賭場が開かれ、怖い人たちがゾロゾロ入ってきて賭けたくもない金をかけるハメになり、最初は何故か連続で勝って調子に乗り始めたら途中からなぜか自分だけ絶対に勝てなくなり、せっかく五輪利権で吸い上げた金を全部失い、最終的には時計やネクタイ、スーツ、革靴なども質に取られ、パンツ一丁で宿舎に戻る。そして最後には心細くなって「もういやだ! 早く帰りたい!」と、半ベソをかき始め、「もう二度と東京でオリンピックなんてやらねーぞ」と、金もうけを放棄して我先に泣きながら逃げ帰る五輪越後屋たち。めでたしめでたし。またいつでも来てね。

作戦⑤ 常套手段! なかったことにする

 自民党政権の最近の流行として、いろんなものがなかったことになるという新しい技を開発している。南京大虐殺や従軍慰安婦がないことにされてきたり、最近でも森友学園や加計学園、桜を見る会などの問題で、いろんな証拠が突然消されたりする。自民党議員の悪質なヤジとかも分からないってことになり、最終的には「あったかどうかは分からない」とお茶を濁して終わるという新作戦。そう来るなら、こちらも対抗してオリンピックはなかったということにしてみよう。
 とりあえず、みんなでオリンピックを完全無視して日常生活を送る。謎のオリンピック休日も普通に出勤し、閉会式までの間、オリンピックをないものとして日常を過ごす。そしてオリンピック後には「実際に行われたかは定かではない」「あったという証拠はない」という噂がまことしやかに街に流れる。最近はみんなネット上の噂をウラも取らずに鵜呑みにするので、みんなまんまと信じる。そして、常日頃から意味不明の陰謀論を吹聴してる人々を捕まえて「実はオリンピックが世界を牛耳ってるらしい」と適当なことを吹き込んでおき、彼らの宣伝力によってオリンピックがフリーメーソンぐらいのポジションになってきて、いよいよ人心が遠のき、誰もがオリンピックの話を避けるようになる。一方、現代日本のマスコミは責任を取りたくない一心で両論併記で逃げる流行なので、読む意味がなくなりマスコミも滅亡して、いよいよオリンピックの存在の有無を確認する手立てもなくなる。
 長い年月を経たある時、国会などで「2020年前後に、何も行われてないにもかかわらず莫大な国家予算が何かに使われた形跡がある」と問題が浮上。さらにはコロナで鎖国中なのにドサクサに紛れて自民党の手引きで数万人の人物が入国した形跡も発覚。自民党は必死に「それは東京オリンピックだ!」と弁解するが、その時にはすでにオリンピックなどというものを知る者はいない。そう、今の日本の若者が731部隊を知らなかったり、中国の若者が天安門事件を知らないのと同じ現象だ。そして、結果的には自民党の使い込みということに落ち着き、選挙では自民党は3議席ぐらいになってしまう。で、金もうけができなくなったオリンピックは失意の中、未来永劫、再び開催されることはなかった。
 いや、待てよ。でも何もかもがないものになってしまう社会というのは結構こわい社会になりそうなので、やっぱりこの作戦はやめておこう。チッ、命拾いしたな、自民党の諸君。

作戦⑥ 東京遷都

 東京オリンピック。今となってはとんだ貧乏クジを引いてしまった花の都、大東京。生まれも育ちも東京の東京人としては、ここはなんとしてもオリンピック禍から東京を守りたい。IOCという国際ぼったくり組織に狙われ、金で飼われた自民党や都知事がそれを内から手引きし、それに乗じて世界から東京を目指して触手が伸びてくる。うーん、何か手はないものだろうか。
 そうだ、東京が逃げればいいんだ! ということで、すぐに東京を聞いたこともない無人島に遷都し、旧東京は新江戸シティとか適当に改称。で、「オリンピックの諸君、残念だったな。そっちはすでに東京ではない。東京はこっちだ。来れるもんなら来てみやがれ!」と、挑発する。するとオリンピックたちは「しまった! 先を越された! あっちだ!」と追いかけてくる。次々に遷都を繰り返し、無名の田園や山岳地帯の地下壕など、どんどん東京を移し、逃げ続ける。ただ、オリンピック側も金の亡者と化しているので、バッハやスガ氏、森元首相などが血相を変えてものすごい執念で追跡してくるに違いない。いよいよ逃げきれなくなりそうになったら、最後の手段で北方領土に東京遷都を発表し、オリンピックたちはそれを追って大挙して北方領土に向かう。当然ロシアは怒る。プーチン大統領あたりに「ウチのとこにちょっかい出して、東京オリンピックだあ? ケンカ売ってんのか、オイ」と凄まれる。そのまま竹島、尖閣など、領土問題を抱える微妙なところに続々と遷都してオリンピックもそれを追って次々とややこしいことに巻き込まれる。さらにはインドのカシミール地方やエルサレム、タリバン支配地域などにも東京遷都して、いよいよオリンピックは平和を乱す世界の敵に。世界の強豪たちに囲まれ「オイ、どう始末つけるんだ」と問い詰められ、小さくなるオリンピック。苦し紛れに「悪いのは東京だ! 俺たちじゃねえ! コイツらがチョロチョロ逃げ回りやがるから……」と弁解し始め、確かに東京側もギロッと睨まれるが、そこは得意の人情噺。「悪の一党に追われて着の身着のまま逃げ回り、ほうほうの体で諸国を流れたまで。別になんの悪気もござんせん。あっしらの望みはただ、この粗末な人生をそっと暮らしてえってだけなんで」と、涙無くして語れない話をとうとうと語り、流石のプーチンの目にも光るものが。
 結果は推して知るべし。謎の国際組織オリンピックと、それにゴマをする政府や東京都を牛耳るものどもが結託し、嫌がる民を無視して集金イベントを強行し、ましてや平和の祭典の風上にも置けない悪行の数々。とても許されることじゃねえ。……と、成敗されるオリンピック。

 さて、何くだらねえこと言ってやがると思うかもしれないけど、侮ってはいけない。くだらない目論見はとても重要。
 そもそも今、この時点で「オリンピック最高!」と全肯定してる人って、ほとんどいないと思う。反対派はもちろんのこと、オリンピックを推進してるやつらの中にだって、みんな何かしらやましい気持ちはあるはずだ。にもかかわらず開催してしまうという、現代日本社会の狂気! ただ、ここで無力感を感じる必要は一切ない。いろんな強権的なものがひっくり返るのって、実は一瞬でコロッといってしまうものだ。なので、もし「強いものに逆らっても無駄だ」なんて思ってる人がいるとしたら、その気持ちが社会にとって最大の害悪だ。自民党にしても何にしても、あいつら放っといたら何し始めるか分からない。なので、我々一般民衆の側が、基本的に常に強権的な権力者たちを小バカにしたり「突然裏切っちゃうかもしれないよ」というオーラを出したりして、反乱起こす直前みたいなスタンスでいることは超重要。そうして、コロッといっちゃうポイントに常に近づけておくのが重要。さー、そうなったら、オリンピック到来の悪夢の中、くだらない目論見をしながらうまいことかわしていくしかないね〜。もう、オリンピック利権のやつらがうまいこと金をふんだくって逃げ帰るのを指を咥えて見てるのはもうたくさんだ! やいやい、作戦開始だ!!

〈おまけ〉
 さあ、おまけで言っとくけど、冒頭で紹介した素人の乱残党RADIOでは、「オリンピックのかわし方」のハガキも募集している。ラジオなので上のような長い文だと読みきれないので、Twitterぐらいの感覚で書いてくれればこちらも助かります。ま、詳細はこちらを参照〜。

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松本哉
まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、『世界マヌケ反乱の手引書:ふざけた場所の作り方』(筑摩書房)編著に『素人の乱』(河出書房新社)。