第105回:統一候補を決めるには「予備選挙」が必要だ(想田和弘)

 東京8区の野党統一候補の擁立をめぐって、立憲民主党とれいわ新選組の間に不協和音が生じている。

 この原稿が公開されるころには、あるいは決着がついているかもしれない。というより、行き違いがあるなら冷静にそれを正して、平和的に円満に決着していてほしい。

 そのことを強く望む。

 両党の支持者がお互いを非難したり責任を問うたりするような、刺々しい声も聞こえてくるが、基本的な事実がはっきりしないなか、どっちがいいとか悪いとか、決めつけない方がよいと思う。

 いや、基本的事実がはっきりして、どちらかに非があったとしても、その人や党をまるで「悪の権化」のごとく非難したり糾弾したりするのではなく、問題を冷静に話し合い、平和的に理性的に正していく方向で努力したいものである。

 共闘に亀裂が生じて一番喜ぶのは誰なのか。

 政権交代を望むなら、忘れないでいただきたい。

 とはいえ、こうした不協和音は、トップダウンで候補者を決める非民主的な“因習”を改めない限り、どうしても生じてしまうものでもある。

 僕は2014年の都知事選のころから、統一候補を選ぶための「予備選挙」の必要性を訴えてきた。なぜなら真に民主的な政治を目指すのであれば、候補者の選定も民主的なプロセスを経て行われるべきだと思うからだ。

 いずれにせよ、政党のトップが候補者の決定権を独占する構図は、どう考えても民主的とも、公平とも言えない。そして選定や決定のプロセスが民主的でも公平でもないからこそ、今回のようなゴタゴタが起きてしまうのだ。

 それは選挙へ向けての士気や機運を盛り下げてしまうので、戦略的にも非常によろしくない。逆に予備選を行なって陣営の議論を活発化させ、皆がその結果にある程度納得することができれば、本番の選挙に向かって良い流れを作ることができるのではないだろうか。

 この機会に、デモクラシーを大事に考える政治家や主権者のみなさんには、真剣に考えていただきたいと思う。

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想田和弘
想田和弘(そうだ かずひろ): 映画作家。1970年、栃木県足利市生まれ。東京大学文学部卒業。スクール・オブ・ビジュアル・アーツ卒業。93年からニューヨーク在住。BGM等を排した、自ら「観察映画」と呼ぶドキュメンタリーの方法を提唱・実践。監督作品に『選挙』『精神』『Peace』『演劇1』『演劇2』『選挙2』『牡蠣工場』『港町』『ザ・ビッグハウス』などがあり、海外映画祭などで受賞多数。最新作『精神0』はベルリン国際映画祭でエキュメニカル賞受賞。著書に『なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか』『観察する男』『熱狂なきファシズム』など多数。