第577回:年末年始の相談会準備、始まる。の巻(雨宮処凛)

 今年も残すところあと1ヶ月だ。

 その大半が緊急事態宣言下で、季節の思い出がない一年。第5波の中、多くの人が自宅に放置され、命を奪われたコロナ禍2年目。炊き出しや相談会の現場にも発熱した人が訪れ、支援者たちが対応に追われた夏。そんな2021年がそろそろ終わる。

 困窮者支援の現場はどうなっているかと言えば、昨年の4月以降、微増に過ぎなかった生活保護申請件数が、8月には前年同月比で10%増だったことが最近報じられた。4ヶ月連続で増加しているという。

 電話相談の相談員をしていても、困窮は極まってきていると感じる。

 例えば昨年8月、電話相談に電話をかけてくる人の貯金の平均額は200万円を超えていた。しかし、今年6月には貯金の平均額は28万円になっている。中央値で見ると昨年8月は16万円。今年の6月、8月には、0円。

 また、今年8月に電話をくれた中で、預貯金額について回答があった226人のうち、54.9%の124人が預貯金・手持ち金が0円。10万円までの人が全体の71%を占めていた。

 国の貸付金などを借りてなんとかやりくりしてきたものの借りられる上限まで借り切ってしまい、万策尽きたという声も増えている。

 「夫はタクシー運転手。もともと30万円くらいの収入が減少。自身はパートで二人合わせても20万円くらいにしかならない。緊急小口、総合支援資金は借り入れ済み。生活が大変で何か利用できるものはないか」

 このような声からは、この2年近く、貯金を切り崩しつつなんとか生活してきたものの、それも尽きそうになって途方に暮れている状況が見えてくる。なかには節約のため、ずーっと一日一食の生活を続け、コロナ禍で10キロ近く痩せた人もいる。生活保護の利用を勧めても、「それだけは嫌」と決して首を縦に振らない人もいる。どれほど困窮していても、このような人は「生活保護の利用者が増えた」という数字にも入らないし、どこのデータにも現れない。そうしてひっそりと困窮を極めている人は、この国にどれほどいるのだろう。

 ここに来て「過去最高」となっているのが炊き出しに並ぶ人の数だ。

 11月20日、新宿で毎週土曜に開催されている「もやい」と「新宿ごはんプラス」による食品配布には、過去最高の408人が並んだという。

 11月27日には、池袋の「TENOHASI」の炊き出しに、やはり過去最高となる471人が並んだ。

 どちらもコロナ禍以前から時々手伝いに行っていたが、新宿ではコロナ前は80人ほど。多くが「常連」で、近隣で野宿する中高年男性が中心だった。一方、池袋はコロナ前は150人ほど。やはり中高年男性がメインだった。

 それが今、そのような炊き出しに若い女性や高齢の女性、家族連れが並ぶ光景は珍しくなくなった。もちろん、野宿の人もいるが、住まいはあってもシフト減や失業で生活費に事欠き、食費を浮かせるために並ぶ人が多いという。

 このような光景を見ると、炊き出しが、コロナ禍を通して「住まいはあるものの、貧困ライン以下の生活を強いられる層」の生活に組み込まれたことをひしひしと感じる。

 一方、「新型コロナ災害緊急アクション」に届くSOSメールは相変わらず深刻だ。所持金0円、寝場所がない、食べ物もない。寒くなってきたので野宿がキツい、等々、若い世代からの悲鳴が多い。

 そんななか、年末年始がやってくる。

 この年末年始も前回のように、様々な支援団体が相談会などを準備している。

 いろいろあるが、まずお知らせしたいのは、年末年始の休みが始まる前に開催される「女性による女性のための相談会」だ。

 詳細は以下。

【日時】
12月25日(土) 11:00〜16:30
12月26日(日) 10:00〜16:00(受付終了)
【場所】
新宿区立大久保公園(新宿区歌舞伎町2-43

 仕事のこと、お金のことをはじめとして、「そろそろ家賃が払えなくなりそう」「残金がわずか」「コロナで夫が失業してからDVに悩んでいる」「子育てのことで不安がある」「もしかしたら妊娠したかも……」等々、なんでも相談してほしい。

 これまで同様、スタッフは全員女性。また、野菜や生理用品などを持ち帰れるマルシェも用意され、無料Wi-Fiもある上、託児スペースも準備される。

 もちろん私も相談員として入るが、この2年弱、さまざまな相談会で話を聞くなかで気付かされたのは、女性の相談は「生活相談」「労働相談」という形で明確に分類できるものが少ないということだ。例えば以下は、今年6月、電話相談に寄せられた女性からのものである。

 「コロナでシフトを減らされ、休業手当はあるが月5万円。夫は一切生活費を渡さない。昨年暴力を振るわれて警察を呼んでから食事は作らなくなった。作っても食べない。家に居場所がなくパートのない日でも家を出て車で過ごす。別居にも踏み切れない」

 このような、収入減とDV、家にもいられないが経済的理由から別居も難しい、というような、複合的な要素が絡んだ相談が少なくないのだ。よって、まずは問題をひとつひとつ解きほぐすところから始まる。

 もちろん、住まいがなかったり、住まいはあるものの残金が残りわずかといった場合は制度の説明をし、本人が希望すれば生活保護申請に同行したりもする。今年の「仕事納め」は12月28日。土日の相談会で生活保護申請など役所への同行が必要となれば、役所が閉まる前の月曜、火曜にギリギリ駆け込みで申請することもできる。

 一方、昨年末から今年にかけて、同じ大久保公園では「コロナ被害相談村」が開催されたが、この年末年始も相談会が開催予定だ。それ以外にも年末年始は大人食堂や各種炊き出しが準備されている。詳細はまたこれからお知らせしたい。

 前回の年末年始、東京都では住まいのない人を対象にビジネスホテルが無料で提供されたが、この年末年始も同じ支援が行われる予定だという。

 緊急事態は解除され、不気味なほど感染者は減り、街は活気を取り戻しつつある。が、長引く失業やシフト減で苦しむ人たちはたくさんいる。そうして寒さが厳しくなる中、路上生活に限界を感じる人も増えている。また、外国人の困窮は一層深刻になっていると聞く。

 この年末年始も現場にはりつく予定なので、日程など、ぜひ私のTwitter(@karin_amamiya)などでチェックしてほしい。そうして困っている人がいたら、「こんなのがあるみたいだよ」と、情報を伝えてあげてほしい。

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雨宮処凛
あまみや・かりん:作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。06年より格差・貧困問題に取り組む。07年に出版した『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版/ちくま文庫)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。近著に『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(光文社新書)、『学校では教えてくれない生活保護』(河出書房新社)、『祝祭の陰で 2020-2021 コロナ禍と五輪の列島を歩く』(岩波書店)。反貧困ネットワーク世話人。「週刊金曜日」編集委員。