第604回:「女性の貧困」が放置されてきた背景に見え隠れする、自民党と統一教会のズブズブな関係。の巻(雨宮処凛)

 「40代女性。フリーランスで収入がなくなり母の年金で生活中。何か利用できる制度は?」

 「20代女性。単身。コロナの影響で仕事が減少し、3つの仕事をかけもちしているが、コロナ前に比べ約10万円月収が減り、生活に困窮」

 「70代女性。6月に解雇され、自分の葬儀費用として貯めていた貯金を崩しながら生活している。障害のある子どもと二人暮らし。この先の生活が不安」

 これらの言葉は、2020年4月から隔月で開催されている「コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守る なんでも電話相談会」に寄せられたものだ。この相談会では私も2年間にわたって相談員として電話を受けてきた。

 「女性不況」とも言われるコロナ禍は、特に非正規で働く女性たちの生活を破壊するものだということはこの連載でも書いてきた通りだ。

 何しろ、女性の非正規雇用率はコロナ以前から6割近く。また、非正規で働く人の平均年収は176万円だが、女性非正規に限ると153万円(2020年 国税庁)。月に13万円にも届かない計算である。これで一人暮らしだと貯金などまずできないわけだが、コロナ以前の19年の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、単身の貯金ゼロ世帯は38%にものぼる。20代では45.2%、30代では36.5%、40代は40.5%だ。

 ちなみにコロナはまずサービス業を直撃したわけだが、飲食・宿泊で働く人の64%が女性。そのほとんどが非正規だ。

 さて、ここまでのことを一言で言えば、この国のサービス業を支えていたのは低賃金の非正規女性たちで、その層がなんの保証もなく放り出されたのがコロナ禍だったのである。

 そんな苦境を示すように、20年の女性の自殺者は前年比で935人増え、15.4%増の7026人。

 また、21年2月には、女性の実質失業者が103万人にも上るという野村総研の試算が発表された。パート・アルバイトのうち、シフトが5割以上減り、休業手当も受け取っていない女性がそれだけいるというのだ。

 冒頭の電話相談に寄せられた言葉は、そんなコロナ禍で苦境に喘ぐ女性たちから寄せられたものである。紹介したのは、配偶者がいないと思われる女性たち。非正規女性には、パート主婦なども含まれることから「自分で生計立ててるわけじゃないんでしょ?」という声もある。が、非正規で働く女性は、数にして1413万人(21年労働力調査)。そのうち、夫がいる女性は6割弱。4割強は、単身やシングルマザーなど、自らの稼ぎで生活しなければならない人たちだ。数にして560万人を超える。

 冒頭の声も、一人暮らし、もしくは子どもや高齢の親と同居しているが、経済的に頼れる配偶者がいないと思われる点で共通している。

 そんな女性の貧困に対して、私はずっと声を上げてきたつもりだ。また、コロナ禍では「女性による女性のための相談会」などに参加して女性たちの相談に耳を傾け、生活保護申請や役所に同行するなどもしてきた。そしてそれを、政策提言などにつなげてきた。

 しかし、今に至るまで、「女性の貧困」はまったくもって全然一切改善していない。その兆しすら見えない状態だ。

 ただ、その背景に透けて見えるものには以前から気づいていた。

 それは「女はどうせ結婚するもの」という昭和の忘れ物的価値観、もっと言えば、「貧しい単身女性を支援などしたら結婚しなくなる」というような「おっさん社会」に根深く存在する男尊女卑的意識だった。

 そのことを示すように、この国には、単身女性に対する支援は皆無と言っていい。だからこそ、電話相談には以下のような声も寄せられる。

 「60代女性。解雇される。友人の自宅で居候、ネットカフェを転々とする。生活保護申請したが3回断られる」

 「70代女性。コロナにより仕事を失い、地元に帰ってきた。間借りしているが、住居が見つかりしだい出て行ってと言われている。市営住宅に当選したが、保証人を断られ、申し込み期限に間に合いそうにない」

 このように、60代、70代であってもネットカフェ暮らしや家のない生活を強いられる単身女性たちがいるわけである。ロスジェネ単身女性である私自身、これは自分たちの「未来の姿」ではないかと思ってしまう。彼女たちが結婚しなかったのか、したものの離婚したのかはわからない。が、配偶者や頼る子どもがいない単身女性の貧困リスクが高いことは各種データからも明らかなのに、この層を救う施策は今のところまったくない。

 一方、この国は「離婚した女性」に対しても、あまりにも冷たい。

 例えばヨーロッパなどでは、夫が養育費を払わないと銀行口座が差し押さえられたり国が養育費を立て替えたりと「母子世帯の生活を守る」ことが何よりも優先されているが、日本では元夫から養育費が支払われているのは2割台。払わなくても口座を差し押さえられたりしないし未払いに対する国の補償もない。結果、母子世帯の貧困率が約半数という数字がキープされてしまっているわけである。

 このようなものを見るにつけ、なぜ、この国はこれほど「男とつがいにならない女」に罰を与えるようなことばかりするのかと思ってきた。それだけではない。子どもを産まない女にもいかに厳しいことか。

 ここ数年の自民党議員の発言を振り返るだけでも枚挙にいとまがない。

 例えば18年には、自民党の加藤寛治議員が「3人以上の子どもを産み育てて頂きたい」などと発言し、批判を受けてのちに撤回。

 19年にはやはり自民党の桜田義孝議員が「子どもを3人くらい産むようお願いしてもらいたい」と発言してやはり批判を浴びる。

 同じ19年には自民党の麻生太郎氏が「子どもを産まなかったほうが問題だ」と述べて発言を撤回。

 それ以外にも、遡れば「女性は産む機械」などこの手の発言の自民党クオリティには定評があるわけである。

 なぜ、こんなにも「家父長制」的なものにこだわるのか。そこにあてはまらない女にことごとく冷たく当たるのか。今までずっと疑問だった。が、安倍元首相銃撃事件からの1ヶ月で、その理由が明確にわかった。

 これだけ統一教会とズブズブなら、そりゃそうだろう。

 そう心から納得したというわけだ。

 さて、そんな銃撃事件と統一教会についての興味深い鼎談を読んだので紹介したい。『創』22年9月号の「安倍元首相銃撃事件の背景、そして国家と社会」という鼎談だ。

 ここではジャーナリストの金平茂紀氏とノンフィクションライターの吉岡忍氏、ジャーナリストの有田芳生氏が話しているのだが、その一部を引用しよう。統一教会と自民党の政策の多く――ジェンダーフリー反対や同性婚反対、選択的夫婦別姓反対など――が一致しているという有田氏の発言を受けての金平氏のものだ。

 「(前略)トランプを支持しているようなキリスト教原理主義右派と統一教会ってものすごく親和性があるんです。中絶反対もそうだし、LGBTQなんかもってのほかだというような点でもそうですね。家族とか幸せな家庭とか、そういう考え方が、今の寄る辺なき若者たち、希望が見えてこない若い世代に浸透しやすいんじゃないかと思います」

 これを受けて、吉岡氏は言う。

 「でも、それを壊したのがまさに新自由主義そのものだったわけじゃない。つまり保守政治家が作り出した社会そのものが、そういう幸せな家庭像を壊してきたわけですね。
 格差社会を作ったり、非正規雇用をこれだけ増やしてきたのはまさに自民党の政府だったし、もっと言えばアメリカの政府だったし、経済政策そのものがそれを壊してきたわけじゃないですか」

 本当に、まったくもってその通りだと思う。

 そんな自民党と統一教会にもっとも共通するのは、「家族が大事とか言いながらその家族をブチ壊してきた」ところだろう。

 長年、貧困問題に関わってきて最も腹立たしいのもこの点だった。

 なぜ、「家族」をことさらに強調する自民党が、あえて結婚できない人々を増やし、少子化を促進するような政策ばかりを進めるのか。合理的、論理的な理由がなくてずっと混乱していた。

 だけど、答えは簡単。

 なーんだ、カルトだったんだ、ということだ。

 しかし、それがこの国の政権与党だと思うと背筋がスッと寒くなる。

 ここから、何をどうしてどうやって立て直せるのだろう。そしてそれは可能なのだろうか? 考えるほどに、明るい展望はない。しかし、それぞれがそれぞれの立場から声をあげていくしかないのだと思う。

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雨宮処凛
あまみや・かりん:作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。06年より格差・貧困問題に取り組む。07年に出版した『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版/ちくま文庫)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。近著に『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(光文社新書)、『学校では教えてくれない生活保護』(河出書房新社)、『祝祭の陰で 2020-2021 コロナ禍と五輪の列島を歩く』(岩波書店)。反貧困ネットワーク世話人。「週刊金曜日」編集委員。