ぼくのカミさんは大相撲のファンである。けっこう熱心にテレビで取り組みを見ている。そして、顔のいいのはどの力士で、押しが激しいのはあの力士、まわしを取ったら強いのは誰だとか、それなりのことを言う。そのカミさんが嘆いている。
「最近は、みんな“小粒”になっちゃったわねえ。ちょっとつまんない」
確かに、ぼくもつき合って、たまに一緒にテレビ観戦するけれど、これといった力士が見当たらない。今場所も、千秋楽まで4敗の力士が何人もいて、結局は優勝決定戦で貴景勝が熱海富士を破って優勝した。でも4敗で優勝なんて、どうにもしまらない。
なんだかみんな小粒、絶対的な強者がいない。だから面白くない。相撲そのものも、がっぷり組み合って技の掛け合い、というような相撲本来の面白さを満喫させてくれるような取り組みをあまり見かけない。
ただ体だけが肥え太った力士たちが、ぶつかり合って押し合いへし合い。ちょっと体をかわされるとばったりと土俵に腹這いになったり、おっとっとと土俵を割ってしまうような相撲が多いような気がする(すみません、素人の勝手な感想です)。
かつては栃錦、若乃花という大横綱が国技館を沸かせたし、「巨人大鵬卵焼き」とまでいわれた大横綱もいた。その後だって千代の富士、白鵬、朝青龍などカッコよくて強い力士がいて、全勝同士で千秋楽決戦などという、ワクワクする活躍を見せてくれたものだ。彼らはみんな、けっこうしまった体つきをしており、妙にブクブクと太った最近の力士とは感じが違っていたと思う。
ぼくは熱心な相撲ファンではなかったが、それでもそれくらいは知っている。
しかし、その朝青龍はなぜか「横綱としての品格に欠ける」などと素行を批判され、ついには追放みたいな形で角界を去った。その後の白鵬だって「品格がどーのこーの」と散々叩かれた。「けっ、何が品格か!」とぼくは思ったものだ。さんざんモンゴル力士に助けられてきたくせに…である。
結局、日本人じゃないから……というのがバッシングの底にあったのは間違いない。だから日本人横綱待望論が繰り返し沸きあがる。でも、そんな力士はなかなか出てこない。今だってモンゴル出身力士がいなければ、大相撲なんか継続できないじゃないか。
小物ゾロゾロ改造内閣
大相撲だけじゃない、日本という国そのものも“小粒”になったなあと思う。だいたい、政治家たちにしてからが“小物”ばっかり。
岸田改造内閣が発足した。発足当初、岸田首相は「5人の女性閣僚、11人の新閣僚など、清新の気に溢れる陣容となった」と鼻高々だった。しかしその鼻は、すぐにへし折られてしまった。
まず問題になったのは、統一教会問題担当の盛山正仁文部科学相だ。この人は2022年6月、教会関連団体の会合に出席して挨拶していたことが判明している。たった1年前のことである。また、彼は母校である灘中学校の歴史教科書採択に関して、当時の校長に圧力ともとれる問い合わせをした事実もある。
つまり、いわゆる歴史修正主義的な考えを持っている人物で、統一教会との親和性もありそうだ。とても教育政策の責任者たる文科相の器ではない。
統一教会との接点を指摘された大臣は、盛山氏を含め4人いる。鈴木淳司総務相、木原稔防衛相、伊藤信太郎環境相だ。4人とも「関係は断った。いまでは何の関係もない」と釈明しているが、選挙になればまた“お手伝い”と称する教会員が事務所に出入りすることになるのではないか。
この中で、木原防衛相はかなり危ない。彼は大臣就任後の最初の訪問地として、9月24日に沖縄に出かけたが、にもかかわらず玉城沖縄県知事との面会をスルーして帰京してしまった。喫緊の課題である辺野古基地問題について、当事者のトップである県知事に会おうともしない防衛相とはいかなる存在か。
さらにこの人、かつて党青年局長だった際に、自身が代表を務める勉強会に招いた百田尚樹氏が「沖縄の2紙は潰さなあかん」などと語ったことで物議をかもし、青年局長を更迭された過去がある。また、沖縄全戦没者追悼式で安倍元首相にヤジが飛びかったことに「明らかな動員、沖縄県によるもの」などと根拠不明の発言で批判を浴びた。沖縄に対しなんの愛情も持っていないのは明らかだ。そんな人物を防衛相に任命する岸田首相の識見を疑わざるを得ない。
女性蔑視があからさま
「女性ならではの視点で……」などという時代錯誤の発言で批判を浴びた岸田首相だが、その「女性ならでは」の目玉だったはずの加藤鮎子こども政策担当相に、早くも金銭疑惑が発覚。パーティー券をめぐる政治資金規正法違反で刑事告発されたのだ。
これはすぐに「収支報告書訂正」をして難を逃れようとしたのだが、他にも実母との間での不明朗な金の流れなども発覚した。
どこが「清新」で「女性ならではの視点」なのだろう?
ボロボロの岸田内閣。女性閣僚は史上最多タイの5人だと誇って見せたのだが、その後に“女性蔑視”が大発覚。なんと、その大臣の補佐に当たるべき副大臣と政務官を54人も任命したのだが、なんとここに女性はゼロ! これも前代未聞である。
政務官や副大臣には「女性ならではの視点」は不必要だとみえる。まさに、アホらし屋の鐘がごぉ~んごぉ~ん……。
結局、11人の初入閣で「新しい息吹」を示そうとしたのだが、実はほとんどが派閥の順送り人事。さらには、自身の来年の総裁選に向けた布陣としか言えない改造だった。それが党役員人事で露呈した。
なんと、あの小渕優子氏を選挙対策委員長に抜擢したことで、逆に大炎上。小渕さん、情けないことに、就任直後の記者会見では涙ぐみながら、かつての政治資金収支報告書の偽造について釈明しなければならなかったのだ。それでも「ドリル優子」の汚名を払拭することはできなかった。
まず涙から始まる就任会見なんて、見たことも聞いたこともない。
この小渕優子氏を強力に推したのが、森喜朗元首相だという。なぜこんな人が、まだキングメーカー気取りでいられるのか不思議だ。安倍派が“小粒(小物)”ばかりで代表も決められず、仕方なく森喜朗氏に頼っているという情けない状況だからこその、森氏の暗躍なのだろう。政界に小物が跋扈するだけで、大物がまるで見当たらなくなったからだ。
首相がもっとも小物である
しかしそれも仕方ない。何しろ、日本のリーダーでなければならない首相自体が「小物感」丸出しの岸田文雄氏なのだから。
岸田首相は国連へ行った際に9月21日、「ニューヨーク経済クラブ」で講演。その中で「日本がともに歩む相手はアメリカ以外にはない」と言ってしまった。本音が出たということだろうが、もはや何をかいわんや。これでは外交もへったくれもない。とにかくアメリカ様にくっついていけばことは済む、と言ったのだ。自らアメリカのポチであることを表明しちゃったのだから、呆れ果てて言葉もない。
歴代首相の中でも、これほどあからさまに「小物感」を自ら出してくれた人は、さすがに見当たらない。
とにかくこの人は、首相の座にしがみつくことしか考えていない。人事を見ていればそれがよく分る。
副大臣と政務官の54人中、女性をひとりも任命しなかったことで、岸田首相は激しい批判を浴びた。すると今度は、幹事長を補佐する幹事長代理と副幹事長20人のうち、3割に当たる6人を女性にした。幹事長代理5名のうちの1名に稲田朋美氏、15人の副幹事長のうち5名に鈴木貴子氏、島尻安伊子氏、堀内詔子氏らを当てたのだ。
まったく、ちょいと批判されれば右往左往、女性が皆無じゃないかと言われれば、別の部署で女性を登用する。行き当たりばったりもここまで来ればエライ!
つまり、岸田首相自身がもっとも小物なのである。
大物面した超小物
矢田稚子前国民民主党参院議員を首相補佐官に登用したのも、みえみえの延命策だ。要するに、国民民主党との連立を視野に入れ始めた、ということ。自民党に異様なほど尻尾を振る玉木雄一郎国民民主党代表と、当然ながら話はできている。
それを見透かしたように、麻生太郎副総裁が大放言。まあ、麻生氏の放言妄言暴言はいつものことだけれど、今回はちょっと度が過ぎている。
何しろ、敵基地攻撃論などに難色を示した公明党に関し、山口公明党代表ら幹部3人を名指しして「彼らがガンだ」と言い放ったのだ。連立を組む友党幹部に対して「ガン」はないだろう。
むろん、公明党(創価学会)は猛反発。いったん収まったかに見えた東京選挙区でのぎくしゃくや、全国の選挙協力にも影響が出そうだ。
麻生氏の公明党嫌いは今に始まったことではないけれど、ここまでくると、もう放言では収まるまい。国民民主党との連立を見据えた麻生氏の「意図した放言」ではないか、との観測も出ている。
「麻生氏というのは、大物面をした超小物だ」と、知人のジャーナリストが言っていたけれど、なるほどなあ。“超小物”という言い方も妙なものだが、そういわれれば納得である。
けれど、そんな“超小物”の後ろ盾がなければ政権を維持できない岸田文雄氏とは、いったいどう形容すればいいのだろう。
日本中「小物ばかり社会」である。
かつては大物政治家もいた。
例えば石橋湛山氏などが現在の日本政界をみたら、きっと言うだろう。
「みんな小物ばかりじゃのう。情けない……」