第698回:れいわのTik Tok動画について。の巻(雨宮処凛)

 衆院選期間中、れいわ新選組の大石あきこさんがアップしたTik Tok動画が大きな批判を浴びた。

 山本太郎氏がタイ在住インフルエンサーの口調を真似たものであるが、インフルエンサーが話すのはカタコトの日本語。それを真似たことが差別であるとして批判を浴びたのだ。

 大石さんは11月1日、そのことに対するコメントをXにポストしたが、それがまた大きな議論を呼んでいる。

 このことについて、長年れいわを応援してきた人間として、書いておかなければならないと思い、この原稿を書く。

 まず、動画を見た時は驚いた。

 私自身、普段からTik Tokばかり見ている人間なので、タイ在住インフルエンサーのことはもちろん知っていた。そして多くの日本人が、彼女の真似をした口調の動画をアップしていることも知っていた。

 そのような文脈から、ああ、あれだなと思ったものの、これは問題になるだろうとも見た瞬間、思った。

 当然、問題になり、私もれいわのスタッフに一刻も早く動画の削除をした方がいいと伝えている。もちろん、多くの声があったのだろう、動画は削除された。

 が、その後も声明などはなく、なんらかの声明を出すべきでは、ということもスタッフに伝えていた。

 そうして1日、大石さんのコメントが出たわけだが、批判の声が散見される。

 コメントを要約すると、あれはオマージュであり、差別的意味合いはなかった、しかし公人がカタコトの真似をするのはよくなかったので重く受け止めてお詫びします、今後、気をつけますというもの。

 コメントを読んだ私の率直な感想としては、お詫びの言葉があったことにほっとしたものの、モヤモヤが残ったのも事実だ。

 「誤解を生んだ」「差別の意図はなかった」「悪意はなかった」というのはよく使われる言葉だが、多くの差別は、悪意も差別の意図もなく行われると思うからだ。

 と、なんだか偉そうなことを書いているが、では私自身、差別や人権の問題に対して敏感かと言えばまったく自信がない。

 もともと鬼畜系サブカル女だったし、20代前半では2年間、右翼団体にいた。そんな経験を除いても、意識の低さゆえ、多くの人を傷つけ、無意識に差別的なことをしでかしてきたし、今だってしていないなんてとても断言できない。

 恥多き人生を歩み、そんな自分の未熟さを知っているからこそ、学び、人の意見に耳を傾けようと思っている。

 特にこの数年、若い世代と話すと自分の意識の古さに本当に穴があったら入りたいを超え、穴を掘って自分を埋めてしまいたくなることの連続だ。

 そんな私だからこそ、こんな原稿を書くこと自体おこがましいのだが、私は私のやり方で、れいわを応援してきた身として、大石さんや山本太郎氏に自分の思いを伝えていきたいと思っている。

 あの二人がどれだけ頑張っているかを知っている身として、厳しい声も伝え、できればともに学び、ともにアップデートできたらと願っている。

 と、そんな思いからこの原稿を書かせて頂いた。

 あー、むっちゃボロクソ言われるんだろうなーと思いつつ。

※この原稿執筆後、あるテレビ番組でタイ在住インフルエンサーが今回の件について聞かれ、「たくさんの方が動画を見てまねをしてくれることはうれしい」と語っているが、本人がそう言っているからといってOKという問題ではまったくないということは、当たり前だが付け加えておきたい

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雨宮処凛
あまみや・かりん:作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。06年より格差・貧困問題に取り組む。07年に出版した『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版/ちくま文庫)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。近著に『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(光文社新書)、『学校では教えてくれない生活保護』(河出書房新社)、『祝祭の陰で 2020-2021 コロナ禍と五輪の列島を歩く』(岩波書店)。反貧困ネットワーク世話人。「週刊金曜日」編集委員。