第338回:File24 ぼくの「記事ファイル」から①(鈴木耕)

「言葉の海へ」鈴木耕

 今週と来週は、ぼくの2024年1年間の新聞や雑誌の記事の切り抜きファイルから、関心を持った出来事をピックアップする。ぼくがどんなことに関心を持ったか、衝撃を受けたか、自分の気持ちの揺れが見えてくるのが、このファイルだ。
 さっそく、タイトルを拾っていこう。

〈1月〉

◎能登震度7 55人死亡(朝日新聞3日付)
 M7.6 200棟以上火災 3.2万人以上避難

 新聞ではこれが第1報だった。なにしろ地震発生は元日の午後4時10分。1日の朝刊には間に合わず夕刊はなし、翌2日は休刊日。そのため3日付の記事となったのだ。ここからが大混乱。自衛隊は現地になかなか入れず、いち早く現地入りした山本太郎・れいわ新選組代表は、邪魔だのパフォーマンスだの現地のカレーを食っただのと、異常なバッシングの対象となった。しかもれいわ以外の全政党党首が作業着姿で国会内に集まって「現地入りは控えよう」と談合、ほとんどアホ。その間にも被害は拡がり、死者負傷者は増えるばかり。政治の無策が典型的に表れた大災害だった。
 なお、志賀原発の被害状況も注目された。さらに、かつて珠洲市民が原発建設を拒否したことも改めて話題になった。

◎日航機炎上 海保機と衝突(朝日3日付)
 羽田空港 乗員乗客全79人脱出 海保5人死亡 機長重傷

 この事故は2日。1日、2日と続いた大地震や大事故。なんとも暗い年を予感させる幕開けだった。

◎議員側 計8000万円プール(東京新聞3日付)
 安倍派裏金6億円規模か

 いよいよ自民党裏金問題が火を噴き始める。これ以降、続々と裏金疑惑議員が発覚して、国民の怒りがふつふつと……。

◎ガザ 死者2万2000人超(朝日7日付)
 戦闘3カ月 国連次長「絶望の場所」

 イスラエル軍の爆撃はとどまるところを知らず、特に女性や子どもの被害が続々と。まさにジェノサイド(集団虐殺)の様相を呈す。この後、国連職員やジャーナリストの死亡も多く伝えられ始める。

◎安倍派 池田議員を逮捕(毎日新聞8日付)
 裏金4800万円不記載
 規正法違反容疑 大野・谷川両氏も立件へ

 さすがに自民党に甘いといわれる検察も、ついに動かざるを得なくなった。だが、ここらあたりでおしまい。もっと大物へは手が届かないまま、秘書や会計責任者の起訴でお茶を濁す。なにしろ検事総長があの人だからなあ……。

◎松本人志さん活動停止(朝日9日付)
 性加害報道受け「裁判に注力」

 ふ~ん? 勝手になさい……と思うだけ。

◎辺野古 軟弱地盤側で着工(朝日11日付)
 沖縄知事反発「乱暴で粗雑」
 代執行から13日 対話なく前倒し

◎大浦湾側着工 「やめて」市民絶叫(沖縄タイムス11日付)
 「不意打ち」着工に怒り 海上で必死の抗議
 首相 工事推進に全力「丁寧な説明続ける」
 国、協議応ぜず強行 辺野古新基地 石材を投入
 知事「乱暴で粗雑な対応」 国の姿勢糾弾 対話訴え

 異常なスピード、そして異様な執着。県民の必死の抗議も無視。沖縄屈指の多様性の海として知られる大浦湾に土砂投入へ。暴虐の海! そして首相のいつものコメント「丁寧な説明続ける」……。

◎陸幕副長ら靖国集団参拝(東京12日付)
 数十人、通達違反の可能性 時間休に公用車使用

 南西諸島への自衛隊配備の急進展と、それに伴う大っぴらな軍国思想の復活……ともいうべき現象が起き始めている。なお、海上自衛隊の今野司令官らも、昨年6月に靖国神社へ集団参拝していたことも、後に明らかになった。

◎検証・能登地震 志賀原発トラブル続出(毎日13日付)➩他紙も記事多数
 断層、揺れ 想定超え 再稼働審査長期化へ
 変圧器破損 油大量流出 一部電源途絶 情報二転三転

 とにかく、志賀原発に関する北陸電力の対応はすべて情報隠蔽だった。小出しにする事故情報はその度に変わり、報道陣への取材公開も、北陸電社員がべったり付き添って撮影方向まで指定する始末。改めて原発の闇を感じさせた。

◎トマホーク2540億円で購入(東京19日付)
 防衛省 最大400発、米と契約

 もはやなりふり構わぬ米国兵器の爆買い。これも安倍政治のツケ。そして防衛費増税の論議も始まる。

◎萩生田氏側に裏金2728万円(朝日23日付)
 5人衆 釈明次々
 「把握せず」「秘書任せ」お詫びの相手は安倍氏

 例によって「秘書が、秘書が」の大安売り。そして3000万円以下は不問にするというおかしな線引きで幕?

◎49年逃走容疑者か 聴取(朝日27日付)
 連続企業爆破事件で手配

 1970年代に起きた連続企業爆破事件で手配されていた「桐島聡」が、重篤な末期癌で病院に入院。「自分は桐島聡だ」と名乗ったという。49年間の逃走生活。そして同29日に死亡……。最後になって本名を明かしたその心境は?

◎朝鮮人追悼碑撤去始まる(東京30日付)
 群馬県が行政代執行

 こうして日本の負の歴史に蓋をしていく山本一太群馬県知事の歴史修正主義。あの関東大震災の際の朝鮮人虐殺をも認めない東京の小池都政もまた……。

◎「武力攻撃」沖縄12万人避難想定(朝日31日付)
 有事を懸念 政府など図上訓練
 最短6日で九州・山口へ 輸送や施設、課題山積
 政府、受け入れ県に計画促す

 いつの間にか、沖縄は戦場と化すのが政府の想定となってしまった。こうして次第に「台湾有事」が「日本有事」にすりかえられていく。

◎名張毒ぶどう酒 再審認めず(毎日31日付)
 最高裁・確定へ 初の反対意見も

 これもかなり「冤罪」の可能性が高いといわれていた事件。奥西勝・元死刑囚(2015年に89歳で獄死)の訴えを引き継いだ妹・岡美代子さんの願いも空しかった。

〈2月〉

◎安倍派95人分不記載(毎日1日付)
 5年で6.7億円 派閥が訂正 2政務官が辞任

 やはり本丸は安倍派だった。だが結局、小物議員の政務官辞任で幕引き。

◎米、イラク・シリア7施設空爆(朝日3日付夕刊)
 親イラン武装組織に報復開始

 危なっかしい火種に手を突っ込むバイデン政権。いつものことながら呆れるしかない。

◎懲りぬ杉田氏 動かぬ自民(東京4日付)
 今度は朝鮮人追悼「日本に必要ない」
 過去の群馬県に同調の投稿

 ほんとうに懲りないヘイト議員。だが、10月27日の衆院選では比例名簿に漏れ議員の職を失う。この人にだけは「ざまあみろ」と言ってもいいと思う。25年の参院選でよもや復活などしませんように……。

◎旧統一教会系から選挙支援(朝日6日付)
 盛山文科相 21年衆院選 関係者証言

 文科相と言えば、統一教会問題の担当大臣である。こんな人物がどうやって訴訟や解散命令などを出せるものか。もはや自民党は機能不全、きちんとした人材が払底していることの表れでしかない。盛山氏については、教団側と政策協定を結んでいたことなども次々に判明。デタラメ人事。

◎核燃サイクル立ち往生(朝日9日付)
 六ヶ所村の再処理工場 27回目の完成延期か
 使用済み核燃料1.9万トン行き場なく
 長期化する審査 広がるほころび

 着工から31年経った24年現在でも完成の見通し立たず。行き場のない使用済み核燃料は2万トンに迫る。廃炉費用を含めた総事業費は約14.7兆円に達するが、これも延期が続けばさらに増える。まさに金食い虫、永久工事の墓場。核燃料サイクルは完全に破綻したまま、誰も責任を取ろうとしない原子力ムラの外道たち。

◎再エネ 45万世帯分無駄に(朝日10日付)
 発電制御が急増 21年比3倍増

 余った電力をこれだけ捨てながら、原発再稼働をいうおかしさ。なお、この件に関しては、東京新聞(4月22日付)によれば、24年度の年間見通しでは、最終的に58万世帯分が無駄になる計算だという。

◎自民全議員「裏金アンケート」結果公表(東京14日付)
 85人計5.8億円 不記載
 18~22年 使途・経緯 解明遠く

 この記事にずらりと並んだ裏金議員の一覧表が添付されている。これを見ていると、自民党という組織がいかに腐りきっていたかが一目瞭然。

◎日本GDP 4位に転落(朝日16日付)
 円安響きドイツ下回る
 マイナス成長2四半期連続

 かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと浮かれていた時代があったとは、もはや信じられない。これがアベノミクス8年間の“成果”なのだ。

◎大阪府・市 万博費836億円超(毎日16日付)
 新年度関連予算案 収支不足に

 もう誰も「大阪“維新”万博」が成功するだろうとは思っていない。この後も、メタンガス爆発、災害避難計画の不備、会場への連絡道や地下鉄等の不足、まったく売れない前売り券等々、問題山積。

◎ナワリヌイ氏 獄中で死亡(朝日17日付)
 当局発表 ロシア反政権派指導者

 ああ無惨! というより、やっぱり独裁政権の怖さを思い知らされた出来事。

◎ガザ停戦決議 米また拒否権(朝日21日付夕刊)
 国連安保理 4度目、失望の声

 停戦を望むと口先では言うが、「停戦決議」が何度出ても、拒否権行使のアメリカ。イスラエルは米が後ろ盾でいる限り、暴虐ジェノサイドを止めようとしない。結局アメリカは、ガザの女性や子どもたち殺害の共犯者だ。

〈3月〉

◎ガザ死者 3万人超す(朝日1日付)
 食料求める人々に発砲 保健省「104人死亡」

 非道にもほどがある。支援物資の食料を求めて押し寄せた人々に対して銃撃するイスラエル。鬼畜である。

◎戦闘機輸出 自公合意へ(毎日7日付)
 共同開発品 事前審査が条件

 こうして公明党は、自民党の武器輸出の隠れ蓑になってあげる。なにが平和の党なものか。下駄の雪どころか、靴底の犬のフンだろう。

◎伊方原発差し止め認めず「具体的な危険なし」(東京8日付)
 福島事故13年 再稼働続く恐れ 今年2基 避難計画なお課題

 「原発司法」と「沖縄司法」は、2大“忖度”司法である。ヒラメ裁判官(上しか見ていない)たちの生息地。

◎オスプレイ停止解除(朝日9日付)
 日米「部品不具合 構造問題なし」
 オスプレイ「安全運用」残る疑問(朝日10日付)
 事故原因の詳細あかされず

 23年11月に屋久島沖で墜落したオスプレイについて、「特定の部品の不具合」と言いながら、それがどの部分かを特定せず、米軍は飛行再開に踏み切った。日本側は唯々諾々とそれに従うのみ。パイロットの不安は増す。

◎日銀、異次元緩和を転換(朝日20日付)
 マイナス金利解除、長短金利操作撤廃、ETF購入終了
 植田総裁「緩和的環境は継続」

 どうも奥歯にものが挟まったような、隔靴搔痒感がぬぐえない。この後も物価高騰は止まらず景気への影響も分からないまま。アベノミクス転換に二の足を踏んでいる気配も……。

◎陸海空 崩れた避難計画(朝日21日付)
 原発周辺が孤立 線量に欠測 屋内退避の整備支援 内閣府

 結局、ほとんど救援の手が及ばないまま取り残されている能登。ことに、原発事故があった場合の避難路は、まったく機能しないことが今回の地震で明らかになった。それでも原発推進を言う人たちは、人間の命をどう考えているのだろうか?

◎大川原化工機事件 勾留中がん判明し死去(朝日22日付)
 国の責任認めぬ判決
 刑務所・拘置所「医療崩壊の危機」過去に指摘

 公安警察による典型的なでっち上げの「冤罪事件」だったこの事件、勾留中にがんが判明、それでも釈放されず死亡した方に対する国の責任はないという、東京地裁・男沢聡子裁判長の冷酷な判決。凄まじい法匪。

◎陸自ミサイル連隊 沖縄本島に初設置(朝日22日付)
 「長射程」配備も視野 「説明ない」地元反発

 あれよあれよといううちに、ついに沖縄本島うるま市にもミサイル配備や基地増強の自衛隊。県民の不安も反対もまったく歯牙にもかけなくなった。平和な島に軍靴の足音。あの戦争を忘れた連中。

◎モスクワ乱射 133人死亡(朝日24日付)
 テロで捜査 11人拘束 コンサート会場 火災も発生
 ISが犯行声明

 世界中で「銃乱射」が止まらない。不穏な情勢がそのまま人間の心理を突き動かしているのかも……。

◎ガザ停戦 初の安保理決議(朝日27日付)
 米、拒否権使わず「拘束力ない」
 イスラエル反発 高官訪米中止

 米国の態度があやふやで、拘束力のない決議には拒否権を使わず、そうでない場合には拒否権乱発。ダブルスタンダードというしかない。それに対してさえもイスラエル反発。もはやイスラエルの狂気は米国さえも手に負えない?

◎次期戦闘機 輸出解禁(朝日27日付)
 政府決定 安保政策を転換
 裏金問題や戦争機輸出譲歩 目立つ自民追従(東京28日付)
 公明 甘い政権ブレーキ、維新の連立揺さぶりに焦り?

 あっさりと「防衛装備(武器)移転(輸出)3原則」をひっくり返した岸田政権。このデタラメな「防衛装備移転」という言葉にも腹が立つが、公明党の腑抜けぶりにはもう手の打ちようもない。

◎有事拠点16空港・港湾指定へ(東京28日付)
 自衛隊使用 攻撃目標となる恐れ
 防衛費膨張へ拍車(東京29日付)
 兵器ローン契約上限10年恒久化 改正法成立
 予算の半分返済に 新年度3.9兆円

 どんどん軍事拠点を増やしている自衛隊。それに呼応して在日米軍の機能強化も着々。もはや日本列島は有事対応の軍事列島と化している。しかも軍事予算は天井知らず。日本をどうする気か?

〈4月〉

◎能登半島地震3カ月 7860戸断水続く(東京1日付)
 「人間的な生活送れない」

 これが日本国の災害対策の現状。ボランティアは邪魔だから行くなとほざきまくった連中は、これには口をつぐんだまま。

◎塩谷・世耕氏に離党勧告へ(朝日3日付)
 下村・西村氏 党員資格1年停止 裏金 松野・高木氏は半年停止が軸
 自民裏金 39人処分(朝日5日付)
 世耕氏離党 近く塩谷氏も

 裏金問題、さすがに自民党も放ってはおけず。世論の動向をみながら恐る恐る……。これがやがて衆院選に大きな影響を与えることになる。

◎「大東亜戦争」陸自連隊投稿 防衛省が釈明(朝日10日付)
 研究者ら「世間と常識のずれ」 「総括し、議論を」

 陸上自衛隊大宮駐屯地が部隊のX公式アカウントで「大東亜戦争」という用語を使い問題化した。後に削除。その歴史認識が次第に戦前化する恐れ。

◎沖縄陸自訓練場 整備断念(毎日12日付)
 地元理解得られず 防衛相表明
 知事「隠密裏に進め不信感」

 沖縄県うるま市のゴルフ場跡に整備予定だった陸上自衛隊の訓練場が、住民の一致した反対によって断念に追い込まれた。住民側の久々の勝利。

◎韓国与党大敗 首相ら辞意(朝日12日付)
 総選挙 尹氏、国政刷新を表明

 これが12月の尹大統領による「非常戒厳」の布石となった……。

◎柏崎刈羽 燃料装荷を開始(朝日16日付)
 国・東電 前のめり
 東電 地元合意待たず 国「岸田政権で再稼働」

 だが地元新潟の花角英世知事の慎重姿勢は変わらず、合意なしの核燃料装荷には疑問を呈す。東電は岸田頼みだが、新潟県民の目はかなり厳しい。なお、この装荷作業はトラブル続き。ほんとうに危険な再稼働、東電の拙速はひどすぎる。

◎愛知知事リコール巡る署名偽造(東京20日付)
 事務局長に有罪判決

 憶えていますか、この事件。百田尚樹氏や河村たかし氏らが主導した大村秀章愛知県知事へのリコール署名。その署名の多くが偽物だった。やった連中は逃げまくった……。

◎ガザ抗議 米大学で学生ら108人逮捕(朝日21日付)
 芝生占拠 不法侵入の疑い

 イスラエルによるガザでのジェノサイドに抗議する米大学生たち。あのベトナム反戦映画『いちご白書』を彷彿とさせる。日本でも早稲田や東大などで同じような動きが……。

◎海自ヘリ2機墜落 衝突か(朝日22日付)
 伊豆諸島沖 1人死亡、7人不明
 深夜に「対潜水艦戦」訓練

 普通のへリコプターでさえ、訓練内容によってはこんな痛ましい事故も起きる。ましてやオスプレイの場合、機体に構造的欠陥がある可能性も指摘されているのに、飛行を止めない。

◎玄海町 核ごみ調査請願採択(東京26日付)
 町議会特別委 原発立地自治体で初
 国評価は「適さない地域」

 原発マネーはまるで麻薬、一度はまると抜け出せない。ついには最終処分地には適さないことを知りながら、カネ欲しさに調査を受け入れる。これが原発依存症の行き着く先……。

◎円安加速 155円台後半(毎日26日付)
 市場、日銀決定会合を注視

 円安が止まらず、輸入品の高騰に拍車。その結果が様々な物価上昇につながり、庶民は痛手だが、輸出企業は高笑い。

◎ガザ南部 病院に310人の遺体(朝日24日付)
 国連、調査訴え

 イスラエル軍が突入したガザ南部ハンユニスの病院で「集団墓地」発見。イスラエル軍の戦争犯罪の疑いが濃いとされる。

◎防衛費GDP比1.6%(東京27日付)
 24年度 政府、2%へ増額にらむ

 当然ながら「防衛増税」という言葉がちらつく。アメリカからの兵器爆買いを迫る圧力もあって……。

◎衆院補選 自民が全敗(朝日29日付)
 東京・島根・長崎 立憲3勝

 これが11月27日の衆院選での自民惨敗の予兆。

〈5月〉

◎オランダ軍 県内で訓練(沖縄タイムス2日付)
 北部訓練場 米軍の日程に参加
 識者「条約違反が常態化」

 この様子を米軍が隠すこともなくSNSで公開していた。これは日米安保条約でも認められていない違反行為。だがこの条約違反はたびたび起きている。まさに、日本がアメリカの植民地状態であることの証左。

◎患者側発言中、マイク切る(毎日5日付)
 水俣病懇談で環境省職員 怒号飛び一時紛糾

 伊藤信太郎環境相と患者たちとの懇談会が水俣市で行われた際の出来事。官僚の対応に患者側の怒り、その上、伊藤大臣も「認識していない」と言い逃れ。懇談会なるものが、自民党政府による単なるパフォーマンスであったことがバレた……。

◎報道の自由度 日本は70位(朝日5日付)
 G7最下位のまま

 記者クラブ制度や政府機関の発表ジャーナリズムという批判。マスメディアには届かないのか。これを報じる日本の記者たちの意見(本音)を聞いてみたい。

◎防衛費に建設国債1.2倍 前年度比(朝日7日付)
 増額の歯止め失う恐れ

 これは禁じ手のはず。戦時経済がこれを行って泥沼化していった反省がまるでない。そもそも防衛費と建設費は無関係。デタラメな政府。

◎世界の再エネ発電 初の30%超え(東京9日付)
 23年英調査 日本は24%どまり、風力増えず

 日本はどんどん世界の潮流から遅れていく。その上でなお、原発再稼働や新増設に舵を切るアホらしさ。

◎入管死 二審も国敗訴(朝日17日付)
 東京高裁 対応の違法性認める

 東日本入国管理センターに収容中に死亡したカメルーン人男性の母親が国に損害賠償を求めた訴訟。出入国在留管理局の不法性・残虐性が次々に明らかになる……。

◎リニア工事一時中断へ(東京17日付)
 JR東海 岐阜県内の水位低下で

 掘削工事などの現場で井戸の水位が下がるなどの影響。リニアはほんとうに必要なのかを、もう一度問い直す必要がある。

◎つばさの党代表ら3人逮捕(東京18日付)
 衆院補選 東京15区で妨害疑い

 この選挙あたりから、めちゃくちゃな選挙戦が展開され始めた。それが次第にエスカレートし、立花孝志氏らの異常な選挙戦へつながっていく。危険な兆候。

◎共同親権導入が成立(朝日18日付)
 民法改正「子の利益」のため協力 責務に

 これがほんとうに「子のため」になるのか。家庭内暴力(DV)の被害の継続など、多くの懸念が残されたまま。

◎ネタニヤフ氏 戦争犯罪容疑(朝日21日付)
 ICCが逮捕状請求 ハマス幹部も

 国際刑事裁判所(ICC)が発したもの。日本もICC加盟国なので、もしネタニヤフ氏が来日すれば、彼を逮捕しなければならない義務が生じる。なお所長は日本人の赤根智子氏。

◎万博子ども招待不人気?(毎日25日付)
 大阪 交野市小中学校参加ゼロ 移動のバス確保など懸念
 参加予定198校も不安の声

 大阪万博への不安、批判、非難などは高まる一方。

◎高浜3、4号機 60年運転へ(朝日30日付)
 規制委、延長すべて認可

 歯止めがなくなった「老朽原発の運転延長」。現場での機器やケーブルの経年劣化などを、規制委は完全に調査掌握できているのだろうか?

◎トランプ氏 有罪評決(毎日31日付)
 米大統領経験者 初 不倫口止め料 不正会計

 ここまでは米国司法もなんとか機能していた。だが、トランプ再選後は……?

〈6月〉

◎出生率1.20 過去最低(毎日6日付)
 23年 東京0.99 「1」下回る

 少子化止まらず。だが政府自民党の少子化対策は後手の連続。防衛費は大増額。それを少子化に回すべきだが、このままだと日本は消滅する。

◎捜査書類廃棄促す文書か 鹿児島県警(毎日9日付)
 「再審で組織にプラスない」
 県警本部長 隠蔽否定

 警察不祥事が続出。ことに鹿児島県警は自らに都合の悪い文書は廃棄しようとしていたなどの不祥事が続く。それも県警トップの命令。

◎核燃料の貯蔵施設 原発敷地内に計画次々(朝日9日付)
 電力各社、使用済みの満杯回避狙う
 「最終処分場」になる恐れも

 トイレなきマンションの住人が、ついに自分の部屋の隅に溜め込み式のトイレを建設へ。すぐに満杯になって汚物が溢れ出すのは分かっていても、見て見ぬふり。よくそんなことができるものだ。

◎規正法 七つの宿題 政治改革2024(朝日20日付)
 胸張る首相 実態解明は置き去り
 政治家の罰則曖昧 パーティー回数制限なし 政策活動費公開「10年後」
 資金移動 透明性に疑問 デジタル化後退の指摘 第三者機関具体性なし
 企業献金改革 また見送り

 この特集記事はよくまとまっていた。この「宿題」は、岸田首相から石破首相に代わってもまったく解決されていない。

◎オスプレイ安全性懸念も飛行!?(東京21日付)
 木更津、暫定配備が完了 嘉手納も再開
 米は「慎重」 大臣「問題ない」 住民ら「事故説明不十分」

 23年11月の屋久島沖での米軍オスプレイ墜落事故以後、詳しい事故原因の説明はないままの飛行再開に、基地周辺住民から強い批判の声が上がっているが、例によって木原防衛相はただ「問題ない」を繰り返すのみ。

◎沖縄「慰霊の日」県民憂慮(東京24日付)
 防衛力増強「まるで戦前」 政府は有事招かぬ外交努力を

 23日の「慰霊の日」を迎え、沖縄県民の間には、あまりに急速な自衛隊配備強化に不安の声が高まっている。まるで「戦前」だと……。

◎米兵保釈、身柄は嘉手納基地内で管理(沖縄タイムス27日付)
 少女誘拐・性的暴行の被告
 那覇地裁は理由明かさず

 この件について、政府や県警からは沖縄県に何の情報提供もなかった。事件は昨年12月に発生したが、県警は今年3月に起訴。それを民放が伝えたのが6月。それまで県警も政府も県に隠し続けていた。しかも保釈に関しては、裁判所もその理由を明かさない。国と警察と裁判所が一体となった事件隠し。住民の怒りは当然。

◎定年延長「黒川氏のため」(朝日28日付)
 安倍政権の検事長人事 大阪地裁判決
 国の不開示決定 取り消し

 閣議決定で黒川弘務氏の定年延長を決定したのは、結局、安倍政権が検察をも指揮下に置こうとした政治的な歪んだ決定だったと、さすがの裁判所も認定したのだ。

 これらは、ぼくが自分の記事ファイル帖から、今年の目についた記事の見出しをピックアップしたもので、1月~6月をまとめてみた。次回は7月~12月分。むろん、まだたくさんの重要記事があるけれど、とてもすべては網羅できない。
 あまり楽しい記事は目につかないけれど、それが2024年という年だったのである。さて、みなさんはどんな記事に目が止まりましたか?
 ではまた、来週。

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鈴木耕
すずき こう: 1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレイボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。1999年「集英社新書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライターに。著書に『スクール・クライシス 少年Xたちの反乱』(角川文庫)、『目覚めたら、戦争』(コモンズ)、『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出版)、『反原発日記 原子炉に、風よ吹くな雨よ降るな 2011年3月11日〜5月11日』(マガジン9 ブックレット)、『原発から見えたこの国のかたち』(リベルタ出版)、最新刊に『私説 集英社放浪記』(河出書房新社)など。マガジン9では「言葉の海へ」を連載中。ツイッター@kou_1970でも日々発信中。