第716回:「米が高くて買えない」「体重が15キロ減った」「ベンチで1ヶ月ホームレス生活」「80代だが介護職員として働いている」〜電話相談に寄せられた悲鳴。の巻(雨宮処凛)

 「無職、所持金数千円。住まいがなく、深夜営業の店などで夜を明かしている。身分証明書、銀行口座、保険証もない。うつ病、発達障害などがあり、男性が怖い」(40代女性)

 「一人暮らし。アルバイト。奨学金の返済ができず、利息が増えて総額700万円近くになっている。毎月3万円の返済だが生活が苦しく支払っていけるか不安」(40代男性)

 「約1ヶ月駅のベンチでホームレス生活をしている。片道の電車賃しかないが相談会場まで行っていいか。助けてもらいたい」(70代男性)

 「単身。収入は月額で年金4万円とパート収入5万円。物価の高騰で生活が苦しい。友人からコメと野菜をもらってなんとか生活。電気代を滞納して止められたこともある。以前友人の生活保護申請に同行した経験があるが、高圧的に水際作戦されるのを見て福祉事務所に相談しに行くのが怖い」(70代女性)

 「今も週3日1日3時間、介護職員として働いている。月4万円程度。年金は2ヶ月で15万円。生活が苦しい」(80代女性)

 「娘が母子家庭。手持ち金一万円なのに、生活保護申請できず、貸付を案内された」(性別・世代不明)

 「今年4月まで母の介護で仕事ができず、母の死後一人暮らし。仕事は日雇い紹介のアプリを使って採用されたところに行っているが、仕事が全くないときもあり生活が苦しい。今日食べるものもなく、体重も15キロ減り健康状態も悪い。生活保護の相談を電話で市役所にしてみたが『働けるでしょう』と言われ諦めている。生きていくのが嫌になった」(50代男性)

 「お米の値上がりで苦しい。いくら苦しくても生活保護は受けたくない。近所の人に必ず、知られるから。国はもっと庶民の生活実態を知るべき。まるで弱い者いじめのように感じる」(世代不明・男性)

 これらの言葉は、2024年12月21日に開催された「いのちと暮らしを守る なんでも相談会」に寄せられたものである。

 全国各地で弁護士や司法書士、支援者が隔月で電話を受ける無料相談会(一部会場では対面相談の実施)には、毎回悲鳴のような声が寄せられる。

 全国25都道府県・29会場で実施された相談会に、この1日で寄せられた相談は673件。対面相談が189件、電話相談が484件。食糧支援をしていた会場もあり、そこを訪れた人は881件。

 さて、そんな相談の中でもっとも多かったのは、「生活費問題」で実に347件にものぼる。

 また、相談者の中でもっとも多い月収は、確認できただけで「10万円以下」が118件。

 所持金については、やはり確認できただけで「ない」が最多で85件となった。

 隔月で開催されるこの相談会、私もずっと相談員をしてきたが、この2年ほどで目立つのはとにかく「物価が高い」というものだ。

 「米が高くて買えない」(60代男性)

 「食品や灯油の値上がりがひどい。現在1日1食で生活している」(50代男性)

 「生活が苦しく、スーパーの惣菜が割引になるのを待ってなんとか生きている」(性別不明・80代)

 「物価が高くて生活できない。フードパントリーの場所を教えてほしい」(60代女性)

 このような悲鳴の背景にあるのは、生鮮食品を含む消費者物価の総合指数が3年連続で上昇し続けている現実だ。賃金は上がらないのに物価だけが上がり続け、家計を圧迫している。

 そんな状況を受け、4月、エンゲル係数の上昇がニュースとなった。

 総務省の家計調査によると、昨年、二人以上の世帯で平均28.3%にまで上がったそうだ。これは1981年の28.8%以来、43年ぶりの水準になるという。

 その上、この4月からはまたまた4000品目以上が値上げ。

 電話相談には、精神的に追い詰められる人々の声も届いている。

 「できることなら早く死にたい。生きていても仕方ない」「死のうと思いロープも用意していた」などのドキッとするような言葉が相談票には書かれている。

 体調不良で退職し、保険証もないので病院にも行けておらず、貯金を切り崩しながら生活する60代女性は、「生活保護は受けられるか」と相談しつつ、以下のように語っている。

 「税金も払わず社会の役にも立っていない私が生活保護を受けてまで生きている必要があるのかと思う。でもお腹は空いてしまう」

 このような状況にある人に手を差し伸べるのが、政治の仕事ではないのか。

 しかし、政治がこの物価高騰に本気で取り組んでいるようにはどうしても見えない。

 3月末には25年度予算が成立したが、一般会計総額は過去最大の115兆円。

 税収も過去最高だというのに、庶民の生活は苦しくなるばかりだ。

 一方、防衛費はやはり過去最大の8兆円超え。

 自民党のサイトでは、予算成立について「豊かさと安心を国民に届ける令和7年度予算が成立」と報じられている。が、「豊かさ」を感じている人などこの国に果たして存在するのだろうか?

 「『誰一人取り残さない』というが、取り残されている。国はいい加減なこと言わないで」

 「国は生活に苦しんでいる国民の実態をもっと知るべき」

 「実効ある物価高騰対策を急いでほしい」

 電話相談に寄せられた声だ。

 さて、国はこの声にどう答えるのか。

 ということで、もうすぐゴールデンウィークがやってくる。

 JTBの調査によると、今年は「旅行に行かない」人が8割にも達するという。その理由としてもっとも多いのは「GWは混雑するから」で45.9%、次いで「GWは旅行費用が高いから」で34.6%、「家計に余裕がないので」が25.9%。

 確かに連休中はどこも高いが、ホテル代などは連休じゃなくてもトンデモない額になっている。ゴールデンウィークでなくたって旅行どころではないという人が多数派だろう。

 こんな状況を受け、連休直前(初日?)の4月26日(土)、「いのちと暮らしを守る なんでも相談会」が開催される。私も相談員をする予定だ。

 全国どこからでも無料で電話相談ができるので、ぜひ、気軽に電話してほしい。

 2025年4月26日(土)、10〜18時。電話番号は0120-157930 だ。

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雨宮処凛
あまみや・かりん:1975年、北海道生まれ。作家。反貧困ネットワーク世話人。フリーターなどを経て2000年、自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。06年からは貧困問題に取り組み、『生きさせろ! 難民化する若者たち』(07年、太田出版/ちくま文庫)は日本ジャーナリスト会議のJCJ賞を受賞。著書に『学校では教えてくれない生活保護』『難民・移民のわたしたち これからの「共生」ガイド』(河出書房新社)など50冊以上。24年に出版した『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(光文社新書)がベストセラーに。