いよいよ「本屋とキッチン よりまし堂」がオープン日を迎えました。この数週間は準備に追われて、まとまったことを考える余裕がありませんでしたが、その雰囲気も含めてドキュメント的に日録で振り返らせてもらいます。
4/7㈪
内装工事で最後まで残っていた本棚が仕上がったので、棚板の高さを決めてはめ込む作業。手作りなので、微妙なズレなどは現場合わせで調整していく。ようやくこれで本が詰められる!
4/8㈫
編集者として企画・編集した2冊の見本が完成。それぞれの出版元に訪問して献本の発送などを打ち合わせ。もちろん自分のお店でも売ります。「虎に翼」ゆかりのお茶の水橋の上で記念撮影。
4/9㈬
午前中に取次から大量の本が届くので朝から待機……なのに、お昼を過ぎても配達が来ない! 13時を過ぎてようやく段ボールの山(11箱!)が到着。すぐに箱を開け、書目と点数が合っているかの検品作業。約600冊あるのでそれだけでひと仕事。床の上は梱包材や短冊(商品管理用の紙札)でいっぱいに。置く場所もないので、検品が済んだものはどんどん棚に入れていく。はっきりジャンル分けをしているわけではないけど、だいたいの関連性や読者のイメージで分類。ここは直感で。
本が入ると一気に本屋っぽくなる! そのせいか、店の前を通る人がいつも以上に覗き込んで声をかけてくれる。「本屋さん? いいわねえ」「ありがとう、頑張ってね」と言ってくれるお年寄りも。期待してもらえてありがたい。
4/10㈭
今日も編集仕事の打ち合わせ。の前に、追加の仕入れを発注しておく。初速でどのくらい売れるか予想もつかないけど、GWの間にスカスカした印象にはならないように。
4/11㈮
クラウドファンディングのリターン(返礼品)発送作業日。宛先にして200件以上、それぞれ梱包物も発送方法も違うので、とても二人では無理! と知り合いにヘルプをお願いし、わいわいとおしゃべりしながら作業。ローカル人脈に感謝感謝。
4/12㈯
クラファンで「継続サポート会員」になってくれた方を招いてのプレオープン会。……なのに、また木工作業があったので木屑は飛び散っているし、レジの設定も終わってなくてバタバタと準備。
お店っぽい外観が整ってきたせいか、今まで以上に外から覗き込む人が多数いらっしゃる。
レセプションは小ぢんまりながら親しい間柄の人中心の温かい雰囲気で。入居する建物のオーナーさんがご高齢なのに顔を出してくださり、同じ場所で肉屋さんをしていた頃の思い出を話してくださったのも嬉しかった。
4/13㈰
今日も盛りだくさんの日。
午前中は、ロシア出身のバリスタさんがコーヒーの指導に来てくださる。なぜロシア?は長くなるので今回は省くけれど、こんな経験もなかなかできない。
お昼は、小川さんの発案で互いの家族を招いての食事会。お店を出すなんて大きなわがままを受け入れてくれ、これからもきっと迷惑をかけるはず。家族の応援があってこそできるチャレンジだから、というのは全くその通り。合間に地元の知り合いが立ち寄ってくれたりもして、昨日に続き温かい気持ちに。
一方で、実際にお客さんが入った状態になると見えてくる不備もいろいろわかり、またタスクが増える。
4/14㈪
お菓子づくりの得意な友人が来てくれて、スイーツメニューについて打ち合わせ。いろんな人にスキルを提供してもらって、僕らは場を維持することが役割――というイメージが早くも形になりつつある! ローカル人脈にはどんどん頼るスタイルで。
4/15㈫
多摩地域のタウン紙「asacoco」の取材。ライターの石渡希和子さんは多摩地域の食べ歩きコーナーも持っている方で、ローカルの話題でいろいろ花が咲く。
4/16㈬・17㈭
やり残した作業を洗い出しては潰していく日々。
4/18㈮
懸案だった外の吊り看板、ようやく業者さんが来て設置。かろうじて開業日に間に合った……。内装の細かい補修も終わり、ようやくひと区切り。
スイーツメニューのクリームブリュレを届けてもらってみんなで試食。これが絶品! 自信をもって出せるメニューが増えて嬉しい。
4/19㈯
いよいよ開店前日。買い物ついでに家族もお店に来て、試食をかねてフードメニューのタイ風カレーをいただく。
夕方から一気に店内の掃除をして、一日ずっと厨房で働いていた小川さんと最後に缶ビールで乾杯。あとは明日を迎えるのみ!
……と思ったら帰宅後もLINEでメニュー表まわりのやりとりが続き、結局終わる頃には日付が変わっていた……。最後までバタバタ続きだなあ。
4/20㈰
ついにオープン日。知り合いが大勢来そうなので念のため通常より早く開店にしたのに、1時間経っても誰も来ない。来るのは生花を届けてくれる花屋さんばかり……。不安になったものの、お昼すぎからちらほら人が来はじめ、どんどん席が埋まる。ほっとするのも束の間、厨房が大忙しに。
来てくれた友人とゆっくり話す余裕もなく、僕もにわかホール係としてわたわた動き回る。厨房には小川さんの友達2人がヘルプで入ってくれているが、それでも一杯一杯の雰囲気。結局、夕方までほとんど人が途切れず、そのまま夜は知人友人で宴会モードに。
一日の体感としては、来店客のうち知り合いが7割くらい、地元の人が3割くらいの印象。お父さんと男の子が『マンガでわかる!小学生のくらしと日本国憲法』(木村草太監修、主婦と生活社)を買ってくれたり、ふらりと入ってきたご老人が『戦争は女の顔をしていない』(アレクシエーヴィチ著、岩波書店)を買っていったり。楽観は禁物とは思うが、南平というローカルな街にも潜在的な読者はいると感じることができた。
4/21(月)
昨日とは打って変わって客足は少なく、穏やかに回っていく。売上は昨日の10分の1未満だけど、これがデフォルトと考えたほうがよさそう。昨日みたいな日が続いたら体力的にも持たないしな……。
こんなふうにして、半年かけて準備してきたお店がやっと船出できました。まだまだ素人っぽいところはあると思いますが、とりあえず「いいお店ですね」「うちの地元にもあればいいのに」とお客さんから言ってもらえたのでまずはよかった。あとは継続のために、しぶとく頑張るのみです。
この連載を読んでくださっている皆さんにも感謝です。次回からは、ようやく真の「本屋になってみた日記」が始まります!
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(「今週のおすすめ本」はお休みします)