撤回すると死ぬ病?
毎朝、新聞を読むのがちょっとつらい。憂鬱である。
このところ、もっとも紙面を賑わせているのが高市早苗首相の「台湾有事」発言だろう。多くの人たちが感じているように、私も「なんで今ごろ、あんな危なっかしいことを言い出したのだろう?」と思う。言わなくてもいいことを口走って、周りに大きな迷惑をかける人がたまにはいるけれど、それが首相なんだから国民はたまらない。
“世界一の迷惑男”のトランプ大統領でさえ日米首脳電話会談で、高市首相に「あんまり中国を刺激しないように」と言ったと、米ウォールストリートジャーナル紙が報じた。慌てて木原稔官房長官が記者会見で「そういう報道がなされていますが、その事実はございません」と必死に言い繕った。
でもねえ、普通に考えて、電話会談でその時期にもっとも焦点になっている問題にトランプ氏がまったく触れなかったと考える方がおかしい。しかも、なかなかうまく進まない中国との関税交渉をまとめようとして焦っているトランプ氏にとっては、「ったくなんてバカなことを言ってくれたんだ、あの跳ねっ返りめ」と思うのが当然だろう。
ところが「撤回すると死ぬ病」に罹っているらしい高市首相は「聞かれたから答えたまでです」と開き直る。それを受けて高市ファンクラブの面々が「しつこく問い続けた立憲の岡田が悪い」と大騒ぎ。アホかと思う。
聞かれりゃ平気で失言しちゃうような人が、首相として適格なはずがない。とても外交なんか任せられない。案の定、中国を大激怒させた。
得意技は「開き直り」
しかも高市首相、11月26日の党首討論では、立憲の野田佳彦代表の質問に対して、またしても恐るべき答弁。毎日新聞(11月27日付)の記事。
党首討論
「高市節」鳴り潜め
台湾答弁 立憲に責任転嫁(略)「政治とカネ」の問題を巡って野田氏は、石破茂前首相が在任中に約束した、企業・団体献金を受ける政党支部に関する自民の調査について結果を回答する時期を尋ねた。
「調査をしているが、それを御党に示すという約束であるとは思っていない」。首相がはぐらかすと議場では「えー」とどよめきが起きた。首相は気にするそぶりもなく「そんなことよりも、ぜひ(衆院議員)定数の削減やりましょうよ」と野田氏に呼びかけた。(略)
いちばん聞かれたくない「政治とカネ」に触れられると、「アンタの党に答えると約束した覚えはない」と高市得意の“開き直り”。その上で、またもポロリ「そんなこと」と大失言。えっ、そんなこと? まさに絶句である。
「政治とカネ」の問題こそが、2度にわたる選挙での自民党敗北の最大原因だったではないか。自民党はそれを“真摯に反省”して解党的出直しを約束したはずだ。それが「そんなこと」なのか?
国会審議がどよめくのも当然だ。さすがに各メディアも一斉にこの「そんなこと」発言を批判的に報じた。かつて安倍元首相が反対派の聴衆を指さしながら「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と斬り捨てた選挙演説を彷彿とさせる言葉だった。
それでも“さなえファンクラブ”のみなさんは「高市さんは当たり前のことを言っただけだ」と擁護する。もうカルトだな。
公明党に逃げられた高市首相が、維新との連立でなんとか数合わせをしようとした時、維新側が突然持ち出したのが「政治とカネ問題よりも衆院議員定数削減」だった。それは高市首相にとっては渡りに船、溺れる者のワラだった。
維新流ごまかしの術に乗って、高市氏は「政治とカネ」をうやむやにしようとした。それなのに、自分自身の「そんなこと」という不用意な発言で、またしても「政治とカネ」を表面化させてしまった。
バカだねえ、自分で自分の足を引っ張ってりゃ世話ねえやな。
続々出てくる「政治とカネ」
この高市失言で、やや下火になっていた各紙の「政治とカネ」報道が甦った。
まず、毎日新聞(11月29日付)、見出しだけでも見ていこう。
パーティー収入 半減
24年政治資金報告書
裏金で派閥解散影響か
まあこれは、見出しを読むだけでおおよその記事内容は分かる。次いで同じ毎日新聞同日付。こちらは少し記事も引用しよう。
高市氏 宣伝費8000万円
24年総裁選 小泉氏は2000万円2024年の自民党総裁選を巡り、決選投票で敗れた高市早苗首相の政治団体が、宣伝のために8000万円超を支出していたことが、政治資金収支報告書から判明した。3位だった小泉進次郎防衛相側も、PR会社に約2000万円を支出するなどしており、多額の費用を投じた宣伝合戦が水面下で繰り広げられていた実態が浮かび上がる。(略)
記事ではその費用の内訳を詳しく紹介しているが、SNS関連に多額の出費をしていたことが目につく。国会議員票だけではなく、なんとか一般党員票をかき集めようとSNSに頼ったのだろう。
でも8000万円なんて大金を使って何を画策したか。あの“Dappi”みたいな連中を雇ったのか。SNSが選挙戦に与える影響を危惧する声が高まっているというのに、まったく懲りていない。
さらに同日付の毎日新聞は、ほかにも別面でカネに関わる記事を載せている。
藤田氏に5547万円支出
維新支部 24年「調査費」名目で日本維新の会の党支部が2024年1~11月に、「調査費」名目で当時の維新幹事長を務めていた藤田文武共同代表に5547万円を支出していたことが28日公開の政治資金収支報告書で分かった。調査研究費に区分されているが使途は明記されていない。維新は24年6月に使途公開義務のない政策活動費を今後支出しないとの方針を示している。(略)
つまり維新では、遣い道のはっきりしないカネが5500万円以上も当時の幹事長へ渡っていたわけだ。しかも、「24年6月に使途公開義務のない政策活動費を今後支出しないとの方針を決めていた」にもかかわらず、同年11月まで支出を続けたのである。
なるほど、これでは維新が「政治とカネ」問題には触れたくないのも当然だ。だからそれを回避するために、代わりに突然「衆院議員定数削減」を持ち出して「身を切る改革」などとイキって見せたのだろう。
「裏金問題」を隠したい高市自民党にとっても都合のいい話だった。だから、あっという間に「議員定数削減」が連立協議の“一丁目一番地”に躍り出たのだ。
同日の毎日記事は、他にもカネ関連でいろんなことを書いている。これも見出しだけを挙げておこう。
高市氏個人献金55%増の7488万円
24年・総裁選影響か林総務相の資金管理団体
寄付金100万円を不記載麻生派3氏 寄付不記載
いやはや、出てくるわ出てくるわ。むろん、他紙もカネにまつわる記事を掲げる。朝日新聞(11月29日付)。
高市氏代表の支部 上限超え献金受領
昨年 都内企業から1千万円高市早苗首相が代表に就く自民党支部が、2024年に企業から政治資金規正法の上限を超える献金を受けていたことがわかった。
この支部は「自民党奈良県第二選挙区支部」。(略)
もう引用しているだけで、キイボードを叩く指が汚れそうだ。
東京新聞(11月27日付)も、薄汚いカネの流れを報じている。
秘書企業に2200万円支出
自民北村氏側、チラシ印刷 16~23年自民党の北村経夫参院議員=山口選挙区=が代表を務める複数の政治団体が2016~23年、政策秘書が代表の企業2社にチラシ印刷代や切手代などとして少なくとも2234万円を支出していたことが、政治資金収支報告書で分かった。
同様の問題は、日本維新の会の藤田文武共同代表の団体で判明したばかり。政治資金規正法などに抵触しないものの、秘書側に多額の政治資金を支出する「身内びいき」が政党を問わず常態化している可能性がある。北村氏は旧安倍派裏金事件に関わったとして幹事長注意を受けている。(略)
この北村氏は、裏金事件の際にも名前が挙がった人物。自民党の中でも、旧安倍派が最大の裏金議員を輩出していたけれど、やっぱり同じ名前が出てくる。
同紙によれば他にも、寺田稔氏が妻へ、秋葉賢也氏が妻と母親へ、加藤鮎子氏が母親へなど、同じように「身内」への政治資金支出を行っていたと指摘している。
もはやこうなれば「政治は単なる儲かる商売」でしかない。親族や秘書などが寄ってたかって政治資金を食い物にする。カネが足りなくなるのは当然だ。
同じ穴のムジナがここにも
自民党はどうしても「企業・団体献金」規制をやりたくない。だが維新だって同じ穴のムジナ。その維新に新たな疑惑が登場。東京新聞(12月1日付)。
維新、金村議員秘書企業に支出
政党交付金から67万円日本維新の会が2022~23年、同党所属の金村龍那衆院議員=比例南関東=の公設第1秘書が役員を務める神奈川県逗子市のコンサルタント会社に「運転業務委託料」などとして計約67万円を支出していたことが、政治資金収支報告書で分かった。政党交付金使途等報告書によると、税金が原資の政党交付金が充てられた。
これは、藤田共同代表のケースとまったく同じだ。つまり、維新ではこういうカネの使い方(裏金作り)が日常化していたということなのだろう。とくにタチが悪いのは、これが「政党交付金」という我々の税金で行われていたということだ。
連立を組むだけあって、自民党も維新の会も、カネに関しては、まあ同じような汚さだったわけだ。
ここまで読んでくれた人の中に、もしもネット右翼諸士がおられたら(多分いないと思うけど)、その方は多分「なんだ、みんな“反日オールドメディア”ばかりじゃねえか」とお怒りかもしれない。
いやいや、“愛国メディア”の産経新聞だって、さすがにほうっておくわけにはいかなかったのか、11月29日にこんな記事を配信していたよ。
上野賢一郎厚労省の資金管理団体が
スナックに政治資金31万円支出
歌手ファンクラブにも上野賢一郎厚生労働相の資金管理団体「うえの賢一郎・政経フォーラム」(滋賀県彦根市)が2023~24年、東京・赤坂のスナックに「打ち合わせ飲食代」として計31万4300円を政治資金から支出していたことが29日、今月公開の政治資金収支報告書で分かった。地元・滋賀出身の女性演歌歌手のファンクラブ会費として計2万8600円も支出していた。
上野氏の事務所は共同通信の取材に「情報交換、意見交換に係る経費で、政治目的に従った適正な支出だ」と書面で回答した。(略)
これが天下の厚労大臣なんだぜ。でも、いくらなんでも「演歌歌手ファンクラブ会費」まで政治資金で賄っちゃうというのは度が過ぎやしませんか。ねっ、ねっ!(オレンジ色の政党党首の口真似です・笑)
もうこうなりゃ何があってもおかしくない。誰かさんじゃないけれど、そのうち「ラブホテル代」だって「政治目的打ち合わせ費」でOKになっちゃうかもな。何を打ち合せするんだか知らないが。
高市首相は就任早々、外交問題で大失態をしでかしたけれど、カネにまつわる問題でも周辺に続々と薄汚い事実が噴出してくる。
この内閣、あまり長続きはしそうもない。
もし高市内閣が息を永らえるならば、逆にその時は日本が永眠ということに……。
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