明けましておめでとうございます。
久々の穏やかな三が日、と思いきやトランプがベネズエラを空爆、大統領夫妻を実力で拉致……国際法も他国の主権も、何よりその国の国民の総意も完無視の暴挙に、天を仰ぎたくなります。この数年、明るい気持ちで迎えることのできたお正月のほうが少ない気がするのは気のせいでしょうか。
気を取り直して本題へ。編集部から教えてもらうまで気づきませんでしたが、今月でこの連載の開始から1周年となりました。毎回ネタ不足に困りながらもどうにか続けてきましたが、たまに思いがけない人から「読んでるよ」と声をかけていただくこともあり、励みになっています。ありがとうございます。
同時に、本屋開業へのスタートを切ってからも1年を経たことを意味します。ろくな事業計画もなく、走りながらなんとかそれらしい形を作ってきたのが実情ですが、まずは最初の年を終えられたことにホッとしています。
年末あれこれ
お店として初めて迎えた年末は忘年会での貸切も多く、慌ただしく過ぎていきましたが、最終日の28日は常連さん中心に単身のお客さんが入れ替わりに訪れてくださり、穏やかな一日でした。閉店時間近く、アニメ業界でフェミニズムを発信するZINE「コマ送り」のメンバーが納品に来てくれたので、仕事納め後の一杯に来ていた年長のお姉様方に紹介すると、にわかシスターフッドで世代を超えて意気投合。そんなところも、よりまし堂らしい最終日だったなと思います。
翌日は本屋の在庫棚卸しを1日かけて行いました。決算のために必要な作業ですが、当然初めてで、やり方もよくわかっていません。ネット検索しても独立系書店の棚卸しの方法などどこにも書いてないので、知っている本屋さんの先輩方に教えを乞いましたが、それもまた店によって全然違ったりします。逆に、それぞれの方法で(もちろんポイントは押さえてですが)いいとわかったので、とりあえず自力でできる形でやってみて、来年以降で改善していけばいいだろう、と自分を納得させました。
棚卸しをすることで、現在保有している在庫の数と価格帯が把握できます。POSレジ化してデータ管理をきちんとすれば、商品ごとの回転数なども正確に把握できるはずですが、そこまではできていません。幸か不幸か、あらゆる業務を一人でやっているので「これはよく売れるやつだな」「これはストックがあったはず」といったことは記憶頼りでもなんとかなっています。
連載の第16回で、開業から半年後の実績を書きました。そこから2カ月と少しなので大きく変化してはいませんが、年末時点で以下のようになっています。
・総売上数:約1600冊 → 約2200冊(+600冊)
・在庫点数:約1700冊(開業時から+400冊)
あと3カ月で1周年を迎えるわけですが、だいたいの数字は予測できてきました。その評価についてはまた回を改めて。
とりあえず今回は、よりまし堂で2025年に売れた本のランキングを発表します!
よりまし堂で2025年に売れた本・TOP10
*は岩下が企画・編集した本。単発のまとめ買いは除いています
第1位 『お寺に嫁いだ私がフェミニズムに出会って考えたこと』(森山りんこ著・地平社)* 54冊
第2位 『100年先の憲法へ――「虎に翼」が教えてくれたこと』(太田啓子著/太郎次郎社エディタス)* 46冊
第3位 『とびこえる教室――フェミニズムと出会った僕が子どもたちと考えた「ふつう」』(星野俊樹著/時事通信出版局) 38冊
第4位 『もしも君の町がガザだったら』(高橋真樹著/ポプラ社) 34冊
第5位 『どろぼうジャンボリ』(阿部結作/ほるぷ出版) 31冊
予想した通りではありますが、自分で編集を担当した本や、イベントを開催した著者の本がランキング上位を占めました。イベントでは1日で10〜20冊は売れますし、その前後でも多めに積んでアピールするので、おのずと売れも立ちやすくなります。
ただし、1位の『お寺に嫁いだ〜』はイベント開催なしにもかかわらず、売上トップを独走しています。もともと著者は小川さんともお友達で、近いコミュニティにいるので、来店するお客様に共通の知人が多いことも影響しているでしょう。もちろん内容にも自信があるので、著者を知らないお客様にもよくおすすめしています。
2位の『100年先の憲法へ』は弁護士の太田啓子さんの著書。ドラマ「虎に翼」があまりに面白かったので、それを素材に憲法のお話をまとめてもらいました。この2冊は、出版社は別々ですが装画のイラストレーターさんもデザイナーさんも同じで、ほぼ同じタイミングで出版されたので勝手に姉妹本のように思っています。
図らずも自分の手掛けた本が2トップに。編集者と本屋の二足のわらじで一番の役得は、自分の担当書をいい場所で好きなだけ平積みできることです。結果として、こうして数多くの読者に手渡すことができて満足です。
3位〜5位は僕の担当書ではありませんが、著者とのご縁でイベントを開催させてもらい、いずれも盛況でした。本そのものの力ももちろん大きいですが、著者を直接知っているからこそ自信を持っておすすめでき、売りがいもあります。
続く6位から10位はこのようになりました。
第7位 『本当にやる!できる!必ずやる!――アイスランドの「女性の休日」』(リンダ・オウラヴスドッティル作/ゆぎ書房) 20冊
第8位 『私のからだは私のもの』(平井美津子著/高文研) 19冊
第9位 『これからの男の子たちへ――「男らしさ」から自由になるためのレッスン』(太田啓子著/大月書店)* 17冊
第9位 『遺骨と祈り』(安田菜津紀著/産業編集センター) 17冊
第9位 『それでも不安なあなたのためのクルドの話』(小倉美保著/ぶなのもり) 17冊
第10位 『〈公正(フェアネス)〉を乗りこなす――正義の反対は別の正義か』(朱喜哲著/太郎次郎社エディタス) 13冊
第10位 『子どもでいられなかったわたしたちへ――ヤングケアラー「その後」を生きる』(高岡里衣著/子どもの未来社)* 13冊
第10位 『ヘイトをのりこえる教室――ともに生きるためのレッスン』(風巻浩・金迅野著/大月書店)* 13冊
安田菜津紀さんの『遺骨と祈り』と朱喜哲さんの『〈公正〉を乗りこなす』も、開店当初からコンスタントに売れている本です。お二人とも、オープンから間もない頃にわざわざお店を訪れてくださって、とても嬉しかったのが思い出されます。
惜しくも10位以内には入りませんでしたが、茨木のり子『ハングルへの旅』(朝日文庫)、ハン・ガン『涙の箱』(評論社)もよく動きました。韓国文化や韓国文学への関心は通奏低音のようにあるのを感じます。
7月の参院選の後、立て続けに売れたのが『となりの陰謀論』(講談社現代新書)と『父さんはどうしてヒトラーに投票したの?』(解放出版社)。世相や人々の関心がダイレクトに反映するのも、それを予想して仕掛けることができるのも、本屋業の面白さだと実感しました。
以上、2025年に売れた本ランキングでした。
元日から満席でのスタート
明けてお正月、僕は帰省もあり3日までお休みをもらいましたが、キッチン担当の小川さんは「帰省する先もないし、家にいてもネトフリ見るだけになるから」と元日からの営業を早々に決定。しかも「年越し(た後の)沖縄そば」と題して、沖縄そばを出すことに。なにそれ僕も食べたい!
小川さんは「自分が寂しくないように、誰かに付き合ってほしくて」と言っていましたが、帰省先がない人や実家に居たくない人、親戚づきあいや家族のお世話に疲れた人の息抜きの場になれば……という思いもあったようです。
蓋を開けてみれば、元日からまさかの満席! 限定15食の沖縄そばは早い時間に売り切れ、ご提供できなかったお客様も出るほどでした(ごめんなさい!)。2日以降も満席が続き、本を買ってくれる方も多かったようです。お正月にこうした場を求める人はあんがい多いのですね。一方で、飲食店がどこもお休みのせいか、初詣帰りに寄れるところがなくてGoogleマップを見て来ました……風の家族連れも多かったようです。来店いただけるのはありがたいですが、小さな店ゆえすぐ満席になってしまい、顔見知りのお客さんが入りづらい感じになってしまったかもしれません。お店のキャパが小さいので、なかなか難しいところです。
ともあれ、厳しい世相のもとでも幸先のいいスタートを切れたことは嬉しいことです。今年も焦らずマイペースに、地に足をつけながら「よりまし」な一歩を重ねていけたらと思います。
読者の皆さんにとっても、今年一年がよい年になりますように。
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「推し」や「推し活」という言葉が市民権を得て久しい。日々に潤いや活力を与えてくれる「推し」を生きる支えとする人もいる一方で、商業主義やSNS上での過熱がもたらす歪みも潜む。「推し」ムーブメントを仕組む側と、それに巻き込まれながら、仕組まれた枠を踏み越え「運動」を発展させる側。相互作用の末、誰もが意図せざるアクターとなってゆく過程は実にリアル。随所で「あるある」と思ってしまう描写とストーリーテリングの巧みさに唸り続けた。











