第388回:当世三駄目初春揃踏(とうせいさんだめはつはるそろいぶみ)(鈴木耕)

「言葉の海へ」鈴木耕

壱之駄目 間茶土不叶恋之嘆節(まちゃどかなわぬこいのなげきぶし)

 驚きましたな、間茶土(マチャド)とか申すこのお女中。なんと、ノーベル飴ならぬ「ノーベル平和賞メダル」を、ひたすら崇拝申し上げる征夷大将軍・虎無不(トランプ)様に贈呈致したとの風の便りあり。
 それにしてもこのメダル、♬ 吹けば飛ぶよな将棋の駒~よりももっと軽かったとは、さすがの某(それがし)も知らなんだ。いやはや、選考委員の諸士諸嬢も驚天動地、「我等の役目はなんだったのか、嗚呼、虚しい」と嘆いているとかいないとか。
 各藩々主らも、将軍様の乱暴狼藉には眉をひそめるばかり。恐れながらと意見具申などしようものなら、すぐに幕府への献上金の倍増どころか、場合によっては領地召し上げの御沙汰も下る。気に入らなければ、幕府軍を差し向けて城下に侵入、城主夫妻を捕縛の上、座敷牢へ押し込め、さらに不快ならば切腹を申し付けられる有様。これでは恐ろしくて、他藩の藩主が援けてくれるわけもない。
 むろん、将軍様の取り巻きどもに諫める忠臣など天眼鏡で探したところで見当たらぬ。将軍様のおっしゃる通りと、金髪碧眼の御殿女中までしゃしゃり出る始末。なぜか将軍様の周りには、似たような金髪碧眼のおなごどもしか集まらぬ。将軍様の好みを知った茶坊主たちの差配なのであろう。
 ところで、間茶土なる“民主派の投資”(むろん“闘士”の誤変換だが、こちらの方が似合いそう)、自国の領土の燃える水を献上品として差し出して、おまけにノーベルメダルまでオマケして、なんとかわたくしめを部鼠鰓(ベネズエラ)の当主にして下されと、ちぎれんばかりに尻尾を振ってはみたけれど、将軍様は「まあメダルは嬉しいが、お主は領主の玉じゃないのう」とつれない素振り。
 しかし、間茶土のこれほど浅ましい図は、近来稀に見る。いくら領主の座が欲しいとはいえ、せっかくもらった黄金勲章を、ただただ暴れるだけの男に献上してしまう。まったくもって卑しき駄目っぷり。
 情けなくって屁も出ねえ。
 年の初めっから腹の立つこと夥しいぜ!
 せめて選考委員会員の面々、「ノーベル平和賞剥奪」くらいの意地を見せられぬものか。泉下の脳鈴(のうべる)さんも哭いておるぞよ。

弐之駄目 二度失敗三度敗戦大阪之夢(にどまけてさんどやぶれよおおさかのゆめ)

 これほどの自分都合の馬鹿選挙も見たことがない。大阪府知事と大阪市長が突然の辞表提出。まあ、維新といえば醜聞まみれの寄せ集め。何があってもおかしくはないが、ここまでくると妄執我執ぽんぽこ狸の穴もぐり。
 意図は見え見え、あの「国民健康保険料逃れ」の、身を切る改革どころか身を肥えさせる脱法醜聞をとにかく覆い隠すための“忍法まやかしの術”。いかに伊賀の里が近いとはいえ、そんな忍法、いったい何流の直伝なのやら。
 大問題になった「国保逃れ」、吉村洋文お頭も横山英幸副頭も、いったん忍法雲隠れ。脱法組員6名を除名し、その後ろに隠れて「えーい、どろ~ん」と印を結ぶが、むろん頭隠して尻隠さずの生兵法、そんなにうまくいくはずもない。隠せばよけいに顕るる、の譬えどおり、民の声は日増しにお頭たちの耳を撃つ。
 腹黒い国保逃れの術を使った維新組の連中、調べるとなんと数百名にも及ぶという。全員を除名してしまえば、あとは枯れ木の荒れ野原。
 これではもはや逃げは効かぬと、ついに抜いたのが伝家の宝刀ならぬ、錆びついてイワシの頭も切れない鈍ら刀。それが3度目の「大阪都構想」なるボロボロ破れの古証文。すでに2度にわたって否決された「都構想」。いくら何でも身勝手が過ぎよう。奉行所だって「お主らの頭の螺子は抜け落ちたのかーぁ」と呆れ顔。
 そこで瓦版(毎日新聞)が皮肉まじりに書いたのが「勝つまでじゃんけん」。なるほど、そりゃあ、じゃんけんも続ければ、いつかは勝てるかも。
 「高市作り笑い解散」に便乗しての、どさくさまぎれの大坂冬の陣。これでもし、大阪方が勝利でもしようものなら、もう大阪は独立して「浪花吉本改悪連合」でも結成したらよろしかろう。
 豊臣兄弟だとて、見向きもせぬだろうが。

参之駄目 偽笑凍月選挙之番狂(つくりわらいいてつくつきのばんくるわせ)

 計算違いを嘆いておることだろう。
 ぴょんぴょん外交で、間茶土並みの愛想大盤振る舞いをして見せて、将軍様のお気に入りになり、中国なにするものぞ、我に続けば勝機あり、と台湾有事をぶち上げてもはや後戻りがきかないほど右へ振り切った高市・初の女子総統。
 右に倣えの「サナエ推し」大号令。倉独活和阿楠(くらうどわあくす)などによる仕掛けなのか、やんややんやの喝采鳴り響き、すっかりその気の唯我独尊。
 「わらわの判断ならば、反対する者などいるはずもない」とばかり、ある日突然の解散宣言。慌てふためき右往左往の各藩々主たち。
 だが実は、各藩に秘かに忍ばせていた草(電通間諜)たちの報告では、今ならば世はなべて高市総統にかたむき大勝利との読み。
 舞い上がったのが高市総統。
 やるなら今ぞ。民の竈など知っちゃいない。豪雪地帯の選挙ポスター掲示板が雪で見えなくても、受験季節で受験生たちが投票に来られなくても、そんなの関係ねえ(小島よしお)。若者の投票率が低くたって、あたしが勝てればそれでいいのよ。 ♬この世は私のためにある~(山本リンダ)。
 ぶつぶつ言う輩にはすべて「極左」のレッテルを貼り付けて貶め、作り笑い仮面が今日も行く! 倉独活和阿楠を使えば、そんな仕掛けは簡単至極。とまあ、ここまでは計算通りの成り行きだった。しめしめ。
 だがそうは烏賊のキン〇、思わぬ伏兵がひそんでいた。なんと突如、2族連合が立ち上がったのだ。自民城大揺れ。レレレ、話が違うやんけ。間諜たちからは、そんな報告は上がってきてなかったぞ。
 焦ったところで後の祭りのちゃんちゃんこ。自民幕府直轄の各藩々主、愚痴は言っても、もはや覆水盆に返らず。
 それはすべて高市総統の悪手から始まったのだ。長年のつき合いだった公明一族に何の仁義も切らず、西からやってきた柄の悪い維新組と苦し紛れの盃を交わしたところからおかしくなった。激怒の公明、あんな怪しげな連中と手を組んでの戦さ支度か、そんな危なっかしい高市組とはもうこれっきりと、盃を割って出ていってしまった……。
 それだけで済みゃなんとかなったろうが、高市総統が予想もしなかった立憲公明の合従連衡が成立。すべて高市が蒔いた種だが、いまさら嘆いたとてどうにもならぬ。
 どうしてくれんだよ! との自民直轄領主たちの怨嗟の声、列島に満つ。
 「なんじゃと。公明一族の矢玉なくしてどう戦えばいいのじゃ。わが方の弾だけではとても足りぬ」「しかも、公明の矢玉が立憲城へ続々と運び込まれ始めているではないか。わが方は、いったいどうすればいいんじゃゴレンジャー!」と、ほとんどの領主候補たちは、発狂寸前の惨状である。
 そこへ、「高市氏を推さなかった自民候補者のところには我らが勇士を擁立する!」とわけの分からぬ屁理屈並べて参政一派が参戦。いやはや、某(それがし)には何が何だか、まるで理解できませぬ。
 弱小ながら一国一城の主たち、共産、れいわ、社民の咆哮も聞こえてくるが、まだまだ民の耳には届いていなさそう。さて、彼らの連携という話は……?
 ところで高市総統の「解散会見」の異常さは、さすがに虎無不ゆずりのぶっ飛びよう。
 「今回の解散は、高市早苗が総理大臣でよいのかどうか、国民のみなさまの信を問う選挙であります」 なんじゃと!?
 それでは首相が替わるたびに「信を問う選挙」をしなければならないことになるではないか。日本国が「議院内閣制」であることを知らないのか忘れたのかすっとぼけておるのか? 議院内閣制を否定して大統領制に制度を改めるというのならともかく、こんな出鱈目な札入れ(選挙)は、道理に合わぬ。

駄目之肥溜番外編(だめのこえだめばんがいへん)

 ところで「中道改革連合」なる党名、某にはどうにもぴんと来ない。
 この流れ、戦さ備えの問題や原発なる災害招く大仕掛けの容認か否か、さらには辺野古米軍基地工事容認の気配などで、大いに揉めそうである。いったいどこが「中道」なのか、首を傾げることばかり。まさか「駄目之四」になることはあるまいな。
 高市総統の右に大きく触れた“戦争臭内閣”をなんとかひっくり返してくれるなら、多少の揺れは我慢すべきという見立てもあるけれど、それもどうかと思案投げ首……。
 某は少し時間をかけて考えたい。あ、でも、急な解散で、じっくり考えている時間がありそうもない……。

 それにしてもそれにしてもそれにしてもそれにしてもそれにしても(5回言う)、亜米利加の民たちは、あの凄まじき棍棒駄目駄目大統領のことをどう考えておるのやら。 某は、マジでそれを知りたいぞ。
 むろん、現代の「最大之駄目」が虎無不(トランプ)であることは間違いない。多分、これに関しては世界中の常識ある人々はみな頷いてくれることだろう。
 亜米利加人民よ、そろそろあの人物をなんとかしないと、そなたらが「世界の孤児」になってしまうは必定である。

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鈴木耕
すずき こう: 1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレイボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。1999年「集英社新書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライターに。著書に『スクール・クライシス 少年Xたちの反乱』(角川文庫)、『目覚めたら、戦争』(コモンズ)、『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出版)、『反原発日記 原子炉に、風よ吹くな雨よ降るな 2011年3月11日〜5月11日』(マガジン9 ブックレット)、『原発から見えたこの国のかたち』(リベルタ出版)、最新刊に『私説 集英社放浪記』(河出書房新社)など。マガジン9では「言葉の海へ」を連載中。ツイッター@kou_1970でも日々発信中。