第749回:とうとう今週末、投開票。の巻(雨宮処凛)

撮影・井上治

 今週末、衆議院選挙が投開票日を迎える。

 と書いている現時点で、私の手元には投票所入場券も届いておらず、急な選挙ゆえか、街には選挙特有の騒々しさもみられない。各政党の主張はと言えば、どこも消費税減税。高市政権の支持率の高さになんとか乗っかろうとする他党の姿勢含め、なんともシラけた選挙である。

 しかもそもそも解散、選挙となった理由が「高市早苗が内閣総理大臣でいいのか、国民の皆様に決めて頂く」というもの。そう言えば聞こえはいいものの、ぶっちゃけると「ほんとにほんとに私でいいの?」ということで、それは私自身がもっともメンド臭くて手首とか切ってばっかいた10代の頃にやたらと吐いては人が遠ざかっていった台詞。そんな「試し行動」っぽいことで衆議院解散とかして800億円とか使って選挙していいもんなの? と驚きつつ、心の中で「メンヘラ解散」と呼んでいる。

 また、冬の期間はアスファルトなど数ヶ月単位で目にしない豪雪地帯出身の身としては、この時期の選挙に「殺す気?」という言葉しか出てこないわけだが(まず掲示板とかどうやって設置するの?)、それでも泣いても笑っても、この週末に結果が出るわけである。

 私がやはり注目したいのは、昨年の「日本人ファースト」以降、忘却の彼方に島流しとなったロスジェネ対策だ。

 この1月、私は51歳の誕生日を迎えたのだが、子どもの頃に想定していた人生とのあまりの落差に時々愕然とする。

 別に今が嫌とかでは全然ないのだが、小さな頃は本当に当たり前に、ごくごく自然に20代で結婚し、20代で母親になるものとばかり思っていた。が、そのような道を自分も歩んでいないばかりか、周りを見渡しても、20歳から50歳の今まで一度も正社員になったことがない、一度も年収が300万円に達したことがない、一度もボーナスをもらったことがない、一度も海外旅行に行ったことがない、もちろん未婚で子などいない等々の話には枚挙に暇がない。

 そんなロスジェネも親の介護がリアルな年齢となり、自らの老後も迫っているわけだが、いまだ非正規や私のようなフリーランスだとローンも組めず、社会的信用がないゆえ賃貸物件の審査にも落ちるという「半人前」の扱いを受け続けているのである。20代からずーっとだ。

 私はこの20年、政権与党が90年代から積極的にロスジェネを見捨て、放置してきたことを訴え続け、無視され続けてきた。

 そしてその間、貧困はより深刻化し続けてきたわけだが、一昨年、「闇バイト強盗」が急増したあたりからこの国の貧困のフェーズは完全に変わったと思っている。

 それまで、いくら貧困が蔓延してもこのような事件は起きていなかった。同世代が所持金ゼロ円、3日食べていなくておにぎりを万引きなんて話はあっても、組織的な犯罪とは無縁だった。しかし、一昨年夏以降、生活に困窮した層がSNSで「高額報酬」などに惹かれて闇バイトに応募、強盗事件や強盗殺人事件を起こすということが相次いでいる。そしてその手の事件は「トクリュウ」などとも呼ばれ、現在も頻発しているのはご存知の通りだ。

 闇バイト以前も、困窮者を「食い物」にするような貧困ビジネスはこの国に存在した。が、ついに犯罪組織によって「加害側」にされるようになってしまったのだ。

 私はここまで貧困を放置してきたこの国の政治に大きな怒りがある。特に政権与党には何をやらかしてくれたんだという憤りが強い。

 一方、昨年以降吹き荒れる排外的な空気にも抗いたい。だからこそ、選挙に行く。

 そう思いつつ、昨今の選挙にはほとほと疲れ果ててもいる。

 SNSに溢れるデマ。敵を貶めるためなら手段を選ばないような攻撃的な言葉。誰かの犬笛で出るかもしれない死者。そして切り抜き動画などで儲ける人々。いつからか、選挙はSNS上で血で血を洗い、荒稼ぎし、バズったもん勝ちの無法地帯になりつつある。

 しかも今回の選挙では、SNSで見かけた言説がデマかどうか確認する以前に、回ってきた写真や動画がAIでないかを確認するところから始めなければならない。いったい、どんな時代になったんだと気が遠くなる。

 そういう意味では、ある種、陰謀論みたいなものが流行る土台ができているとも思う。

 なぜなら、ある極端な言説が一人歩きを始めても、昭和や平成なら、「まさかこんなことが起きるはずはない」「いくらなんでもこんなことをする人はいない」という共通認識が社会、そして人々の間にあったからだ。

 しかし、バズったもん勝ち、閲覧数さえ稼げればなんでもアリの今、選挙という場でも「荒唐無稽」としか思えないことが次々と起こるようになっている。

 私にとってはそれはNHK党の議席獲得であり、へずまりゅう氏や河合ゆうすけ氏の当選などだ。荒唐無稽なことが頻発する社会は、おそらく陰謀論に弱い。そしてSNSでは常に怒りや不安が強い言葉や表現で煽られる。ショート動画がそれに拍車をかける。

 時間と脳汁を奪い合うようなSNS選挙、そろそろ規制がなされるべきだと思うがどうだろう。

 ということで、今週末、日本の行く末が方向づけられる。

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雨宮処凛
あまみや・かりん:1975年、北海道生まれ。作家。反貧困ネットワーク世話人。フリーターなどを経て2000年、自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。06年からは貧困問題に取り組み、『生きさせろ! 難民化する若者たち』(07年、太田出版/ちくま文庫)は日本ジャーナリスト会議のJCJ賞を受賞。著書に『学校では教えてくれない生活保護』『難民・移民のわたしたち これからの「共生」ガイド』(河出書房新社)など50冊以上。24年に出版した『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(光文社新書)がベストセラーに。