第164回:崩壊していく世界秩序の中で日本社会が生き延びる道はこれだ!(松本哉)

 またも空虚な選挙が終わり、我らが日本ではYouTube見過ぎの老人と余裕のない中年と友達のいない若者が増え過ぎたせいで特殊な自民党政権が増長。一方、アメリカではトランプの旦那が歳のせいか、ついに頭おかしくなっちゃって、ヤケクソの暴力の支配を始めた。くわばらくわばら。こうなってくると、さらにアメリカに金を搾り取られることがいよいよ確定。情けないことに、上納金の額が上がっても頭のおかしい親分には文句の一つ言えず、やむなく下っ端から厳しく取り立て始める情けない中ボスが日本の政権。つまり、割を食うのは全部我々だ。
 当然、無策の中ボスの支配する日本なので、これはやばい。今どき高度成長〜バブル期みたいなノリで「経済成長!」とか言い出すけど、すでに体力のない日本では現状との乖離でてんやわんやになること必至。おまけに少子化で大量の老人を抱えるにもかかわらず移民に厳しいというアベコベな策に出る。これ、大量のご隠居様を抱える個人商店なのに従業員を増やさず頑なに家族経営を続けて仕事もこなせず倒産するパターン。おまけにワンマン経営化を進めるために憲法改正して民衆の権利の大幅縮小を目論むわ、そんなてんやわんやの内情がお得意様にバレて円安で貧困化も進むわで、いよいよニッチもサッチも行かない感じ。おおー、どうすんだこれ、大パニックだ〜! 日本社会はもう没落一途で、バカな中ボスに滅ぼされる運命なのか〜!?

 まあ、待て。そう悲観するな諸君。我々にはまだ道はある。この滅亡寸前で死の商人や死神に包囲されている社会を乗り切るための奇策を少し挙げてみよう。ちなみに、中ボスはもう頼りにならないので、あのあたりはもう放っといて、我々自身で切り抜ける術を考えるのがいい。そう、自己防衛の術でありつつ、それ自体がこの日本社会の滅亡を回避することにもなってしまうという奇策を考えていきましょう〜。

職人になる

 今の日本社会、大企業を死ぬほど儲けさせればそのおこぼれが下々まで伝わって、なんとかなるだろという手法(=資本主義の基本的な考え方)をいまだに狙っているけど、これどう考えてももう無理だろ。そんなのがまかり通ったのってひと昔前の話。今どきこんな社会に巻き込まれたら死者続出は必至だ。これはやばい!! 極力関わらない方がいい。
 そうなってくると、手に職つけるのが一番いい。大工や左官でもいいし伝統工芸でもいいし料理人でも床屋でもなんでもいいし、鑑定の目利きみたいなのでもいい。もちろん手に職なんてそんな簡単なものじゃないから最初は見習いからやらなきゃいけないけど、どうせ働くなら技術を習得できる仕事に就くのが重要だ。これからはカオスな世の中が待ってるので、天災人災問わず、仮に焼け野原になってもすぐに食っていけるような「手に職」をつけておくことはとても重要だ。
 ちなみに自分はリサイクル屋をやってるわけだけど、これは特定の道を極めてる職人じゃないけど、工事や修理から掃除など全ジャンルにわたって広くやる仕事なので、応急処置の達人(あまりかっこよくない)。ただ、焼け野原になっても間違いなく食っていける。
 つまり、世の中めちゃくちゃになった時にも即応できるように、今のうちに何かの職人技を身につけておくのはおすすめだ。しかも、最近は職人のなり手がいないということで、後継いなくて困ってるところなんてたくさんある。見習いに入門しようもんなら喜ばれること必至だ。これは千載一遇のチャンス。やるしかない。
 そうやって日本中が職人だらけになって、巨大企業みたいなでかい仕事じゃなくて身近な地域での仕事ばかりやるようになったら、最高だ。数字の上での日本経済は停滞するかもしれないけど、そんなものは数字だからどうでもいいし、勝手に破綻してもらって構わない。本当に強い社会ってのは、いざとなっても人々の生活が潰れない社会だ。そもそも、どうせこっちは焼け野原想定だし。そうなれば、もうトランプの手下みたいな金もうけの下見のような奴らが来たとしても、次から次へとわけのわからない職人たちがゾロゾロ出てきて「バカヤロウ、こっちは町内の仕事で手一杯だから、テメエらの仕事なんかやるヒマはねえ! ええっ? 金積むだって? そういう問題じゃねえ! 金に目が眩んで町内の仕事断るなんてそんなみっともねえことしたら、町でうまい酒も飲めねえじゃねえか。テメエ、俺の顔に泥を塗ろうってのかい!?」なんて、資本家には通じない理屈で追い払ったりできる。これは奴らも恐ろしくなって逃げ出すに違いない。一石二鳥だ。

税金をチョロまかしてみる

 今の日本社会は未曾有の重税社会になってる。しかも、軍事費だったりアメリカへの貢物とか、あるいは役に立たない国際イベント(オリンピックとか)とか、くだらない天下り団体に使う金だののおかげで死ぬほど税金が高い。
 ただ、そういう悪政が極まった時には歯向かってもいいという抵抗権ってのを、世の人々は先祖代々の授かり物として元々持っている。その辺は遠慮なく反乱起こすなり暴れ出してみるなりしてもいい。ただ、いくら人間が元から持っている自然な権利として刃向かってもいいとしても、その国の悪い政府の法律によって裁かれてしまうのがなかなか微妙なところ。ということで、ここはもう反乱とリスクの天秤だ。ド派手な大反乱をしでかそうっていうのもありかもしれないが、今のご時世なかなかそうも踏み切れない悩ましさもある。
 そこで、この期に及んでは、釣り銭ちょろまかしたり税金ごまかしたりして時の支配者に痛打を与えるという作戦! セコい! 例えば国の機関などで極力現金払いにして、小銭たくさん出したり新札旧札混ぜたり中途半端に2000円札を切り悪い枚数で出したり、ややこしいことして役人が数えてる最中に果敢に「ここ36番地ですよね。じゃあ17番地はどっちになりますか?」みたいな数字が出てくる世間話をしまくって敵の混乱を引き起こし、向こうがイライラしてきたところに外貨が混じってたりして「あっ、それ違いますね。それは引いて代わりに50円足して」みたいな小技を使い、限界まで混乱させた絶妙なタイミングで、生き馬の目を抜く神業で30円ぐらいチョロまかして、強大な国家権力に血反吐を吐くような大打撃を与えてやるしかない!! でもたいてい、すぐにバレて「あ、あと30円ですね」と、真顔で見破られる感じ。これだ! この死と隣り合わせの地獄の攻防戦だ! 仮に成功できなかったとしても、みんながみんな虎視眈々と機会を窺ってる不気味なオーラがあれば、これはもう勝ったも同然。悪政と重税に苦しむ人民の怒りの決起の30円チョロまかし未遂の闘いの神出鬼没の波状攻撃。一度負けてもいつかはチャンスがある。倒れても倒れても立ち上がる不屈の精神で果敢にいくしかない!! これはもはや政権を揺るがす打撃を与えられるに違いない。
 ま、言いたいのは「こっちは別に従順じゃねえからな」という雰囲気を常に出すことが重要ってことだ。諸君の健闘を祈る。

本を読む

 これはすごい。ありとあらゆる情報がネットで手に入り、AIに聞けばなんでも答えてくれるようなこのご時世に本! 過激派にも程がある。しかも、ネットでチャチャっと情報得るのと違って、本って1から10までご丁寧に書いてあるので、それを読むのって、やたらと時間がかかる。生産性ないにも程がある(経済や業務的な効率って意味で)。これはすごい。小説に至っては架空の話だ。どうなってんだ。
 しかも本のすごいのは、政府や産業界が入る隙がないこと。ネットと違ってターゲットを絞ったタイムリーな広告も入れにくいし個人情報を抜いたりもできない。本を読み始めたら、その世界に入ってしまうから悪政にとっては民衆を取り込むことができず、マイナスでしかない。しかもSNSのショート動画みたいに短絡的な刷り込みとかできないのでこれはタチが悪い。
 まあ、もちろん本といってもロクでもない本もたくさんあるから一概には言えないんだけど、最低な本(人を蹴落として金儲ける本とか、外国人差別を煽って気を紛らす本とか、歴史を自分の都合のいいようにリライトした本とか、統一教会の洗脳の本とか)ばかり読んでると、友達減ったりするからできればやめた方がいい。
 それに、AIはなんでも知ってるように思うかもしれないけど、結局はネット上のものを片っ端から調べて知ったかぶりしてるだけの小せえ野郎なので、意外と口ほどにもない。例えばネット上に情報が少ない1990年代以前のことにはやたら弱いし、地元のローカル情報なんてストリートの若者や近所のバアさんの方がよほど詳しい。なので、特に昔の本なんか読んでみると、ネット上ではとても知り得ない情報が山ほど載ってたりする。さらには、こういう本で得た無駄な知識が口づてでさらに広がったりするし、こういう状態こそが、カオスになった世の中で裏技を編み出す源泉だったりもするのだ。
 もちろん、将来的には国会図書館にある本や巷で出回ってるZINEなんかも全部AIに学習させたりするかもしれない。でも、使えるのは最初のうちだけで、どうせすぐに国の統治に都合悪いような裏技情報にはアクセスできないようにされてしまうに決まってる。そうなってくると、やはり紙の本が最強だったりする。
 さあ、そうとなったら先手必勝! 駅前の広場のベンチなんかで、例えば百科事典とか読み始めたら最高だ。あの、昔あったような全50巻ぐらいある巨大な本ね。これはいかつい。国内外の悪の支配者なんかが見ても「さては、こいつはそう簡単に世論の誘導とかには乗らねえな!?」と震え上がるに違いない。ザマーミロ! 次は新聞とか求人情報誌とか隅から隅まで読んじゃうぞ! どうだ、恐れ入ったか!

畑を耕す

 いまコメが高すぎる。それどころかなんでも高い。死んじゃう。というわけで、土のあるところに住んでる人や、都会に興味ない人なんかは畑を耕し始めるのがいい。別に専業農家にならなくてもいいので、空いてる土地にいろんな食べ物を植えて育ててみるのとかどうだろ。都会だってプランターや隙だらけの空き地で植えたりもできる。
 かつての日本は、いろんな産業が有名で特に製造業なんかブイブイ言わせて作りまくって輸出しまくっていた。ところが、没落の一途を辿るいま、だんだん売るものがなくなってきていて、特段これといった産業もなくなってきている。それを無理にまた無駄な税金を投入してわけのわからない産業を掘り起こして経済を盛り上げようとするけど、それ無意味。やんなくていいよ、余計なこと。そんな不自然に盛り上がったところでどっかで無理が来るんだから、ここはのんびりと、地の果ての島国らしくどっしり構えておけばいい。なんかやることが生まれた時にはまた急成長するのもありかもしれないけど、無理にやる必要はない。今のところは一旦休憩でのんびり大根とか芋でも植えるのがいい。
 それに、これからは先の見えない時代。もし政府が機能停止になった時は我々もほったらかされることになるので、芋ぐらい植えといて損はない。機敏な即戦力は重要だ。日本の民衆を食い物にしようとする諸外国の資本家たちも「おい! 日本のやつら芋植え始めてるぞ! あいつら自力で生きて行こうってのか!?」と、震え上がるに違いない。魔除けにもなる。

江戸っ子になる

 つまり、宵越しの銭を持たない。そう、昨今の円安とか物価高とか見てても分かる通り、日本円がゆっくりと紙屑同然になりつつある。これ下手にタンス預金なんかしてたらあっという間に半額ぐらいになっちゃいそう。投資するとかもあるのかもしれないけど、なんか嫌いなんだよね、そういうの。空虚な経済の下支えしてそうで。
 よっしゃ、ってなわけで全部きれいサッパリ使い果たすのが美しい。人間、計画したら負け。ややもすると見る見るセコい人間になってくので気をつけよう。ともかく、計画性のない人が一人でも増えることはいいことだ。さあ、詐欺師も逃げ散る裸一貫の一文無しで所得税も住民税もゼロ! 悪い奴らにやる銭はビタ一文なし。さあ今日も悪人どもを兵糧攻めだとばかりに、最後の1円までキッチリ使い果たして気持ちよく寝る。いや〜、今日も清々しいねえ〜。

新幹線廃止

 当然、そうなってくると移動もゆっくりがいい。よくよく考えてみれば、朝は東京で昼は大阪なんてそんなバカげた話はない。そんな言葉も違う別の街になんで瞬間移動しなきゃいけないんだ。よほどの用事の時は仕方ないとして、普段はバスや各駅停車とか車で下道で行ったりすることを心がけると、これはなかなか世界が変わってくる。
 自分も基本的には国内移動は飛行機や新幹線はほとんど乗らないで、軽自動車で寄り道しながら一般道で行くことが多い。なので、先日も鳥取のイベントに誘われた時などは「鳥取か〜、じゃあ片道3日はかかるか〜」という計算で、店を10日ほど休んで遊びに行ってきた。慣れれば結構そういうもんだと思うようになってきて面白い。飛行機使えば別に一泊二日でも行けるところだけど、その概念がなければ、逆にいろんなところに寄れる大旅行っぽくて、出発前なんかはワクワクしてきていい。
 で、肝心なのはそれだけ余裕を持った生活リズムができるかということ。自分も自営業で店やってるだけに、なかなか大変なんだけど、なんとか徐々に余裕持った働き方にはしてきている。雇われ人だとしても、有給はきっちり取れるようにはした方がいいし、シフト制の仕事をうまく活用したり、うまくフリーランスの仕事に移行したり、オンラインでできることは遠隔でやるようにしたりと、いろいろやってみよう。
 日々慌ただしい仕事に追われるスタイルっていうのは思考が鈍りがちになるし、そもそも人から収奪してやろうなんていう悪い奴らからの格好の餌食になりがちだ。そういう我々民衆側の余裕のなさが、悪い政治家やら金持ち連中に付け入る隙を与えて、ひどい世の中を招いている面もある。迫り来る死の商人たちにも「ダメダメ、こいつらこんな小せえ島国のくせに鳥取行くのに3日もかかるとか言い出してるし、仕事にならねえよ。ここには近寄らねえ方がいいよ」ぐらいに思わせとく方がいい。
 そうこうしてると、新幹線も廃線になったりして、いよいよのんびり化が進み、金持ち大パニックに。めでたしめでたし。

個人事業主になりまくる

 働き方とか時間の余裕ってこともあるんだけど、何より発言の自由が得られる。本来は思想信条の自由とか言論の自由ってのはあるはずなんだけど、何かと見えない制約で難しいのがこのせせこましい日本の社会。個人事業主だって完全に自由ってわけじゃないんだけど、どいつもこいつも一国一城の主なので、会社員に比べたら結構みんな好き放題言ったりやったりしてる。思想的なことも言い放題だし、宗教にかぶれてるやつもいればさまざま。それに言うこと聞かないやつも多く、急にへそ曲げて帰っちゃったり、ダメだって言ってんのにやるやつとか続出して、権力者からしたらとにかく面倒くさい。
 これから世界の秩序がカオスになってくるので、従順な奴隷じゃ振り回されるだけで酷い目に遭う。やはりここはカオスにはカオスをってことで、いうこと聞かないチビッコだらけの遠足みたいな感じで、収拾つかない駄々っ子の山になるのがよくて、そうしたら必ずどこかに隙が生まれる。その隙が裏技の原動力であり民衆の希望になる。そうすればこの日本社会、当分は平和なカオスとして生きながらえるに違いない。全員とは言わないが、個人事業主の比率をグッと上がるのは民衆の基礎体力向上になるので絶対にいい。

 さて諸君、もう薄々分かってきたとは思うが、崩壊していく世界秩序のなかでこの社会を維持していくには、のんびりと好き勝手にやる人が一人でも増えることが大事だと思う。安定期と違って、寄らば大樹の陰とばかりに大きなものにすがって生きようとすると、いざという時に路頭に迷うことになるので危険。秩序混沌期には大樹の影には近寄らないこと。そして、今のうちにのんびりとしたマヌケな自由生活をどれだけ世にはびこらせるかが重要。
 そして、重要なのは、この日本の社会が生きながらえるためには、日本だけじゃどうにもこうにもならないってこと。アメリカにしろヨーロッパにしろ、アジア近隣のあたりにしろ、ロクでもない各地の政府の足元で、あの手この手で芋掘ったり30円チョロまかしたり電話帳読んだりしてる奴らがいるので、そいつらとうまいこと行ったり来たりしたり、裏ワザ情報を交換したりして助け合っていければ完璧。悪い国同士はすぐ結託したり喧嘩したりするので、こっちもうまいことスルッと潜り抜けてやっていきたい。そうすれば、人々の耐久力は相当上がってしまう。
 ま、こうやってみんなが統制からいかにすり抜けるか。これがキモですね〜。さあ、思い立ったが吉日。ケロッとしたバカな顔で街に繰り出してみよう! 今のうちにコッソリと隙を見つけまくって、イザって時の引き出し増やしまくっとこう。よし、善は急げ!!

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松本哉
まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲! タダで生きる方法 増補版』(ちくま文庫)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、『世界マヌケ反乱の手引書:ふざけた場所の作り方 増補版』(ちくま文庫)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。