アメリカ、イスラエルがイランを攻撃し、ハメネイ師が殺害されて1週間以上が経った。
ホルムズ海峡は封鎖され、世界情勢はこれまでにないほど緊迫している。トランプ大統領は作戦は成功と胸を張るが、多くの命が奪われ、戦火は拡大し続けている。いったいどうやってこれを収束させるのか、考えるほどに生きた心地がしない。
しかもこの戦争、人類史上初めてAIが高度な意思決定を含めて軍事作戦を主導した戦争であるという。
2月の衆院選で、SNSを見る時はファクトチェックと同時に「写真・動画がAIでないか確認する」という一手間が加わり面倒さを感じていた。が、それから1ヶ月も経たないうちにAIが戦争を主導する時代になっていたのである。技術革新はもはや人類の手に追えないレベルに進んでいる──。そんな現実にも驚愕している。
さて、渦中のトランプ大統領は昨年1月に就任してから「パリ協定」離脱やWHO脱退などで世界を驚かせ、反DEIやLGBTQの否定、気候変動完全スルーの姿勢を隠さないできた。就任から1年と3ヶ月、人権や民主主義に関わることが大きく後退してきたわけだが、イラン攻撃の決着の行方が見えない今、思い出すのはUSAID(国際開発局)への予算削減だ。話題になったので覚えている人も多いだろう。
私自身、この削減に対しては憤りを覚えつつも、どこか他人事感があったと思う。
それが「遠い世界の自分には関係ない話」ではなくなったのは、昨年6月、高遠菜穂子さんとあるイベントでご一緒した時のこと。
2004年、イラクで人質となった高遠さんは現在もイラク支援を続けており、彼女はイラクからのオンライン参加だった。
そこで聞いたことを、今でもはっきり覚えている。当時はちょうどUSAIDの予算削減後で、高遠さんは、それがイラクで支援をする周りのNGOなどに大打撃を与えていることを話してくれた。
ちなみにイラク戦争は03年3月に始まり、同年5月には大規模戦闘終了宣言が出されたわけだが、その後、泥沼状態が続き、そこからISが台頭してきたという経緯がある。そんなイラクで高遠さんは元子ども兵などの支援をしているのだが、USAID予算削減により、周囲のNGOは事務所が縮小・閉鎖したり職員が解雇されたりプロジェクトが止まったりと大変な状況であるということだった。
ISの子ども兵は拉致されるなどして集められ、思想を叩き込まれ戦闘訓練をさせられ自爆攻撃で命を落とす者も少なくない。運良く生き延び解放されても、当然、心に深い傷を負っている。
そんな元子ども兵には様々な治療やケアだけでなく職業訓練なども必要なわけで、イラク戦争から20年以上経っても地道な支援活動をしている人たちには本当に頭が下がる思いだ。特に日本はイラク戦争に対し、真っ先に支持を表明した国。私たちは決して無関係ではないはずだ。
が、支援する側、される側もろとも見捨てるような予算の削減を進めたトランプ大統領。しかもそれで苦しむのは、アメリカがおっぱじめた戦争で傷ついた人々だ。
そうして、現在。イラン攻撃後、戦火は拡大しているわけだが、今後、「イラク戦争後のような泥沼」にならない保証はどこにもない。なぜならイラクの大規模戦闘が終了した際、国際社会はまさかそれが長い地獄の始まりだなんて思いもしなかったではないか。
さて、そんな状況の中、3月9日未明に熊本にミサイルが搬入された。「反撃能力」の軸となるミサイル運用の前倒しだという。
その数日前の3月6日、高市総理はアメリカのAI企業「パランティア・テクノロジーズ」のピーター・ティール氏と面会。「影の大統領」とも言われる人物と「AIを使った戦争」の後、何を話したのか。
自分の生活に目を向けると、心配なのはやはり、今後の物価高だ。
3月7日、毎週土曜日に開催されている都庁下の食品配布には、実に905人が並んだという。久々の900人超えだが、この国際情勢によってガソリン価格をはじめとして、あらゆる物価がまた上がるのだろう。そうしたら、今でさえギリギリな人たちの生活はどうなるのか。というか、私自身も4年以上にわたる物価高騰に疲弊し、限界を感じている。
もう一つ、気になるのはアメリカ・イスラエルの暴挙に対して世界中で市民による抗議デモは起きているものの、真っ向から批判する国の姿が目立たないことだ。スペインは明確に反対を示しているものの、世界中の偉い人たち、もっと国際法違反とか声上げてもいいのでは? 関税や貿易を人質に取られてるから言えない感じ? なんらかの忖度が働いている系?
そう思って、最近読んだ『ニッポンの移民――増え続ける外国人とどう向き合うか』の一説を思い出した。著者であり、OECD移民政策会合メンバーである是川夕氏は、以下のように書いている。
「私は、2025年5月、第二次トランプ政権成立後、初回になるOECD移民政策会合に参加してきた。以前はこの会議は欧米諸国の人権を基調とした受け入れに関して議論をする場であった。しかし今回は一変し、表立って排外主義に与することはないものの、いかに受け入れ国にとって役に立つ人材に絞って受け入れるかという、より新自由主義的なトーンの議論が展開されていた。
それまでは前面に出てくることがなかった非正規移民(不法滞在外国人)に関する議論や、2022年以降、各国が受け入れてきたウクライナ避難民をいかに本国に戻すか、といった受け入れに抑制的な議論が中心的なテーマであった。また、米国政府や英国政府など、多くの加盟国が代表の参加を見合わせていたり、参加していてもほとんど発言を控えていた。
これはOECDに対する最大の資金拠出国である米国の意向を明らかに反映したものである。関係者によれば、移民以外のイシューにおいてもOECDの様々な文書において、例えば『ジェンダー平等』を『男女間の平等』に言い換えるなど、トランプ大統領が嫌う言葉を避ける『言葉狩り』が進んでいるとのことだった」
トランプ大統領の顔色を一人ひとりが少しずつうかがっていたら、知らない間にハンドルは大きく切られ、トンデモない場所に辿り着いていた――。
世界は今、そんな状況にあるのではないか。
そのような中、高市首相は3月19日にアメリカを訪問予定だ。固唾を飲んで、見守っている。



