2025年12月11日
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一枝通信

東日本大震災と福島第一原発事故の後、たびたび福島に通い、地元の人たちの声に耳を傾け続けてきた作家の渡辺一枝さん。そこで見聞きしたこと、感じたこと、そしてご自身の日常の中で考えたことなどを綴っていただきます。

第97回:福島歴史とエネルギーツアー報告(3)〜常磐炭鉱を訪ねて〜(渡辺一枝)

宿泊した「滝のや」当主の塩田さんはとても気さくで、話好きの方だった。昨夜も細やかな気遣いを見せながら「これはみなさんに差し上げますので、お持ち帰りください」と言って、ツアー参加者全員に、写真家の星賢孝氏による奥会津・只見線の写…

第96回:福島歴史とエネルギーツアー報告(2)〜常磐炭鉱を訪ねて〜(渡辺一枝)

8時の朝食までは、各自自由に過ごした。5時から入浴可能なので早起きして温泉に入るのも、温泉神社に散歩に行くのも、館内の「原子力災害考証館」は7時から開館しているのでその見学も、1階のブックカフェのようなラウンジで過ごすのも、時間ギ…

第95回 福島歴史とエネルギーツアー報告(1)〜常磐炭鉱を訪ねて〜(渡辺一枝)

10月31日~11月2日の2泊3日で、「紅葉を見に行こうよう!」と称して、福島県内の発電の歴史を学ぶツアーを行いました。その報告です。私は2011年8月から福島に通い、東京電力の原発事故がもたらした影響を見聞してきましたが、私が見たことを他…

第94回:原発事故をめぐる5つの裁判傍聴記「私たちの生活を、もうこれ以上壊さないでほしい」(渡辺一枝)

9月は1日に東京地裁、2日に大阪高裁、17日は東京地裁、18日も東京地裁、19日は仙台高裁と立て続けに裁判傍聴に通った。どの裁判も東京電力福島第一原発事故由来の裁判だ。9月中に私が傍聴したものだけでも5件あり、この他にも福岡、大阪、金沢…

第93回:「シネマ・チュプキ・タバタ」へ(渡辺一枝)

TVでは、防水ジャケットに防水ズボン、雨傘を差したアナウンサーが、なぜか少し嬉しそうな顔をして台風接近の報を伝えていた。「何もこんな日に出かけなくても」と不服げに言う夫の声には耳塞いで、傘を差して家を出た。駅までの道は通勤の人たち…

第92回:8月の記憶と『よみがえる声』(渡辺一枝)

雨が降らず大地が乾きっぱなしと思っていたら、ラジオの天気予報が明日は雨と報じていた。翌朝目覚めたら予報通りに外は小糠のような雨で、郵便受けにはビニール袋に包まれた朝刊が入っていた。販売店のこんな気配りを嬉しく思い、でも同時に、破…

第91回:大鹿村へ──ウーテさんとの出会い(渡辺一枝)

長野県の下伊那郡にある大鹿村へ行ってきた。村に住む友人スマ子さんに呼ばれてのことだった。スマ子さんからの招きは、彼女が主催している「森のこかげでどんじゃらホイっ!」祭りで、私に「戦争」の話をして欲しいということだった。祭りは数年前か…

第90回:惠子さんとの旅──南相馬・小高「あちこちに、見えない墓標が立っている」(渡辺一枝)

6月19日~21日の3日間、福島県南相馬市から避難して、滋賀県大津市で暮らす青田惠子さんをお誘いして被災地ツアーとほぼ同じコースを巡りました。惠子さんの布絵に惹かれて、「青田惠子 布絵展」を催したのは2022年の秋でした。いつも「トークの…

第89回:トークの会「福島の声を聞こう!」vol.46報告(後編)「社会の過ちから私たちは何を学び、どう生かしてきただろうか」(渡辺一枝)

2022年7月27日の行政協議の時のことだ。私たち(TEAMママベク)が「いわき市の財産として私たちの土壌のデータを、未来に生かしてください。国に権利を主張してください。市民に知らせてください」と発言したのに対して、除染対策課の担当者…

第88回:トークの会「福島の声を聞こう!」vol.46報告(前編)「『科学的知見』は、本当に子どもを守るためのものなのでしょうか」(渡辺一枝)

2012年3月から続けてきた「トークの会 福島の声を聞こう!」、6月23日に開催した会で46回目になりました。今回のゲストスピーカーは、福島県いわき市の千葉由美さんです。由美さんのお話、その活動の中身と共に活動のあり方もとても示唆に富み…