2024年10月30日
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家なき人のとなりで見る社会

小林美穂子さんが活動する一般社団法人「つくろい東京ファンド」では、生活に困窮した人たちに住まいをまず確保したうえで、居場所づくりを含めた生活を支える活動を続けています。この連載では、小林さんが日々SNSなどに綴ってきた記録などをもとに、「家なき人のとなり」にいながら見えてきた景色、考えてきたことを伝えていただきます。

第42回:あなたの町は何色? 市民の手で福祉行政を修復するために。正しい生活保護率増減マップの歩き方(小林美穂子)

9月17日、生活保護の現場職員(現/元ケースワーカー含む)や研究者らで作られる有志の市民団体「生活保護情報グループ」が2012年~2021年までの生活保護率増減マップをネット上で公表した。国内970地域を対象にしたマップは、過去10年間の各…

第41回:死ねというのか。包丁を手に、震えながら泣いた日(小林美穂子)

2023年12月、群馬県桐生市在住のNさん(48歳)の呂律が回らなくなり、嘔吐が続いた。胃薬で紛らせようとしたが吐き気はおさまらず、異常を感じて救急車を呼んだ。脳梗塞と診断され、治療、リハビリを経て今年2月末に退院した。入院中にソーシ…

第40回:令和の米騒動 ~主食すら満足に供給できない国で~(小林美穂子)

残りわずかになっていた我が家の米がついに尽きた。災害用に買ってあったパックご飯が7食分あるが、それが終われば自宅での米食は諦めるしかない。思えば7月頃からスーパーの米は減っていた。いつも買っていた最安値のブランドがなくなり、…

第39回:40℃に迫る猛暑下でエアコンのない生活をする人たちがいる不公正(小林美穂子)

今年の梅雨は短かった。その代わりに、火の玉みたいな凄まじい猛暑が突進してきて、体温を超える暑さは爆音のような雷を呼び、豪雨は木々の枝を落とし、あちこちで川を氾濫させている。年々、熾烈さを更新していく、そんな夏。つくろい東京ファン…

第38回:寅さんが生きられなくなった世の中で。白い浴衣姿の「その人」のこと(小林美穂子)

「その人」の名前を私は知らない。遠い親戚だと両親から聞いていた。私が小学生の頃、その人は2度、我が家にやってきた。その人がやってくると、父は私と弟を寝室に引っ込めた。母は台所でつまみを作り続け、父がその人の相手をしていた。夜遅…

第37回:「公金だという認識はなかった」桐生市の生活保護問題を検証する第三者委員会に行ってきた(小林美穂子)

5月24日、早朝4時半に私は起きた。重い身体に鞭打って身支度を整え、朝ごはんをむりやりお腹に詰め込み、ベーグルの形に丸まって寝ている猫に顔を埋めてエネルギーチャージして家を出た。「第2回桐生市生活保護業務の適正化に関する第三者委員会…

第36回:桐生市がもたらした心の肌荒れとヒビ、あかぎれ、癒すのは……(小林美穂子)

群馬県桐生市の「桐生市生活保護違法事件」の調査団((団長:井上英夫 金沢大学名誉教授・日本高齢期運動サポートセンター代表理事)として、4月4日、5日と2日間に渡り「桐生市の生活保護行政をよくする市民集会・シンポジウム」などに参加して…

第35回:いかなる「違い」をも乗り越えて、ともに音楽を楽しむ吉日(小林美穂子)

今から30年近く前、完璧な青空を見上げて「crystal clear‼」と表現したら、キウイっ子に「“クリスタルクリア”は空の表現には向かないかな」と指摘されたのに、今になってもよく晴れた澄み切った空を見上げると頭に浮かぶのはその形容詞だ。2024年3…

第34回:「所定の申請書でないと受け付けられません」。昭和の水際作戦が生きるまち(小林美穂子)

2024年1月19日、私はつくろい東京ファンドの同僚たちと、埼玉県・幸手駅前のベンチに座り、コンビニで買ってきたピザサンド(完熟トマトのマルゲリータ)の小ささを嘆きながらムシャムシャ食べていた。東京から幸手市までの道のりは遠い。何度も…

第33回:絶望之為虚妄,正与希望相同(絶望は虚妄だ 希望がそうであるように)by魯迅(小林美穂子)

街にはクリスマスソングが流れ、人々がチキンやらお節の予約に慌て出す季節がやってきた。あと一週間ほどで2023年が暮れようとしている。カフェ潮の路の常連の若者は、12月に入ると「ねぇねぇ、骨付きフライドチキンが食べたいんだよ~」などとつ…