時間がかかり過ぎている「けじめ」
▼5月
11日 「戦争発言」@国後島ビザ無し訪問
13日 11日の発言を各メディアが報じる
14日 維新、丸山議員を除名処分
17日 立憲外6会派、辞職勧告決議案を提出
21日 自公、けん責決議案を提出
23日 文春、「戦争発言」以外の丸山議員の問題行動を報じる(他メディアも追随)
24日 丸山議員、弁明聴取が行われる予定だった議院運営委員会理事会を欠席(適応障害のため2カ月間休養必要との診断書提出)
30日 議運理事会、丸山議員に同行した政府職員(内閣府、外務省)から説明聴取
▼6月
03日 丸山議員、「弁明書」を議運理事会に提出
04日 自公、糾弾決議案の提出確認(※けん責決議案は取り下げ)
06日(?) 衆本会議、糾弾決議案を議決
丸山穂高衆議院議員(現在は無所属)の発言、行動が政治問題化して、1カ月近くが経ちます。この間、前記のような動きがありました。ニュース的にはトランプ大統領の来日(5月25~28日)、登戸殺傷事件(28日)の影に隠れてしまった面もありますが、衆議院として、議員個人として為すべき「けじめ」に、時間がかかりすぎている印象を受けます。
議員に非難すべき発言、行動があった場合、通常は遅くとも翌週くらいまでには、本人の謝罪ないし反省があり、議長による注意や、委員会(理事会)における陳謝が行われ、政治的には決着します。固有名詞を出して恐縮ですが、懲罰案件でしばしば名前が出る足立康史衆議院議員、山本太郎参議院議員も、各々の言い分はあるにせよ一旦それを呑み込んで、「けじめ」を迅速に受入れるという姿勢は一貫しています。しかし丸山議員の場合は、この点が大きく違います。自身のツイッターで反論するなど、絶対に譲らないという態度を前面に押し出したかと思いきや、“第二の問題発言”が露呈するや否や、診断書という大義名分を得て本会議を欠席する等、人前に出ない戦術に切り替え、ひたすら時間が経過するのを待っているものと解されます。
時間切れが狙われる
憲法58条2項によれば、衆参各院はその自律権の一環として「院内の秩序をみだした議員」を懲罰することができます(国会法122条により、懲罰の内容は、①公開議場における戒告、②公開議場における陳謝、③一定期間の登院停止、④除名の4種類とされています)。「院内」とは永田町の国会議事堂という場所的意味ではなく、議院としての活動範囲を指します。一般的に行われる委員派遣(地方視察)なども含まれます。
しかし、丸山議員が国後島においてビザ無し訪問団の一員として為した言動は、そもそも衆議院として構成された団体の行動中のものではないので、「院内の秩序をみだした」とはいえない(懲罰事犯ではない)という点では、異論はみられません。実はこれも、問題を難化させる要因です。
懲罰事犯に当たる案件であれば、仮に会期中に①~④のいずれとするか決することができなかったとしても自動的に次の会期に継続し、仕切り直すことができます(国会法68条但書)。しかし、懲罰事犯に当たらない案件(今回のような辞職勧告、糾弾の決議案)は会期末までに議決に至らなければ、会期不継続の原則(国会法68条本文)により「廃案」になってしまいます。丸山議員はこの点の違いを踏まえて、時間切れ「廃案」となることに望みを繋いでいるとも考えられます。
急ぐべき、衆議院の「けじめ」
自身の言動が問題視されるに及んで、ここまで悪あがきをする議員を見たことがありません。とはいえ、事態を傍観しているだけでは、本当に時間切れになってしまいかねないので、衆議院に対して会期中に必ず一定の結論を得られるよう、強く求めたいと思います。
丸山議員は最初の弁明で、「戦争遂行がいいかどうか、団長にその是非を問うただけだ」と述べていましたが、憲法9条1項は「日本国民」を主語としつつ、武力の行使等を永久に放棄(明確に禁止)しています。憲法尊重擁護義務(憲法99条)を負う議員が、9条1項に真っ向から反する発言をした点に対して、議院としての「けじめ」が無ければ、その信頼、権威を著しく失うことになってしまいます(いくら酩酊状態であったとはいえ、その後正当化する発言を繰り返していれば、大して斟酌すべき事情とも考えられません)。
議院としての「けじめ」を付けるためには、与党会派(自民、公明)側の迅速な判断が必要です。すでに、けん責決議案が取り下げられ、「糾弾決議案」が提出される方針が固まっているようですが、野党会派が提出している辞職勧告決議案と、できれば一本化する形で(全会一致で)議院としての意思を示すことが必要です。決して、今回の案件を野党分断などの政局的な目的で利用することは、あってはなりません。
会期は残り3週間余りとなりました。政府・与党は、会期内に成立を期すべき法律案の処理に目処がついたとすでに胡坐をかいているようですが、今回は「けん責」「糾弾」といった、過去に例の無い決議案が扱われ、今後の先例となり得る案件であることを肝に念じ、与野党会派間で十分な合意形成が図られることを願うばかりです。