第123回:韓国行きチケットが激安に! 東アジア地下文化交流が未曾有の活性化!!!(松本哉)

恐怖! 大阪人からの誘い

 ある時、大阪の友人から久々に連絡が来て、ソウルにでも飲みに行かないかという。旅行のお誘いかと思いきや、実はそうではなく本当に飲みの誘い。例の日韓政府の関係悪化のせいで飛行機のチケットが前代未聞の激安になっているとのこと! チケットを調べてみると、夏のお盆の時期にもかかわらず、東京からソウルの往復がなんと1万円強。同じ近場の台湾や中国、東南アジアなどはお盆真っ只中だと軒並み6万円以上にもかかわらず、韓国だけ激安! 片道5千円台って、ほとんど夜行バスぐらいの値段。う〜ん、なるほど。確かに大阪の友達が往復2万円以上する新幹線や、安いけど過酷な夜行バスで東京に来たり、逆にこっちが大阪に行ったりするよりも、韓国に行って会うのが一番合理的かもしれない。おおー、なんだかすごい世の中になって来たな〜。

 ということで早速チケットを入手し、ソウルで大阪人たちと待ち合わせ飲みに行くことに。で、もちろんせっかく韓国まで行くんだからってことで、ソウルの友達やら店やってる人、謎の活動をやってる人たちなんかに連絡してみると「おー、来た方がいいよ! 飲むしかないね」と歓迎してくれる。しかもタイミングがいいことに、ソウルの人たちが、今の香港で起きている逃亡犯条例反対をきっかけに始まった反政府デモを支援するためのライブ企画や上映会やデモなど、一週間イベントをやる期間中だとのこと。これは偶然。おおー、勢いで行ってみるもんだね〜。

ソウル到着と同時に飲み会に巻き込まれる。おおー、さすが韓国! ノリがやたらいい!!

ソウルで香港連帯デモに合流!!

 さて、ソウル入りした翌日の8月24日。香港支援デモがあるというので、デモ出発地のソウル中心部の光化門広場へ。地下鉄の光化門駅を降りて地上に出ると、すでにデモは始まっており、ものすごい人の海。数万人はいるだろうか、次から次へと人が流れていき、広大な広場は全て埋め尽くされている。そして至るところでやたらノリのいい音楽と共に、激しい演説の声が鳴り響いている。うわ〜、まさか韓国でこんなに香港のデモを支援する人がいたとは!!!!!! これはすごい!
 で、まったく聞き取れもしない韓国語の演説を聞きながら、「そうだそうだ! 香港人がんばれ!」と、完全に聞き取れてるフリをして頷きながら参加していたが、どうも様子がおかしい。よくよく自分の周りを見渡すとやたら老人ばかり。はて、韓国で香港デモを応援するのは高齢者が多いのだろうか。うーん、立派なご老人たちもいるもんだ。で、いよいよ数万人の香港連帯のデモ隊が光化門を出発!! その先頭には…、前大統領の朴槿恵(パク・クネ)の顔が描かれた巨大なのぼり旗!! おや!? あ、違う!!! 騙された! これ、韓国の右翼のデモだった! やべー、逃げろ! どうもおかしいと思ってたんだよ、まったく!
 ちなみに韓国右翼というのは、アメリカ大好き&北朝鮮大嫌い、資本主義大好き、軍事独裁政権の方が共産主義よりマシ、って人たち。みなさんもご存知の通り無能すぎて没落した朴槿恵氏だが、軍事独裁者の朴正煕の娘ということもあって韓国右翼たちからはいまだに応援されており、彼らはその朴槿恵を追い落とした現政権の文在寅大統領をあれこれ理由をつけて批判している。で、今回の数万人もそのデモ隊ということだ。やられた! 間違えた!

香港を救え〜! 違う! これは韓国右翼の超巨大デモ>

韓国右翼デモを脱出し、ついに香港連帯デモへ合流!

 右翼デモを離脱して光化門広場を歩くと、今度はその韓国右翼デモに対抗する勢力を発見! あった、あった。これが香港デモか! 早く言ってよ〜、右翼デモに参加しちゃったじゃん! 
 で、こちらは先ほどの右翼デモに対する批判の演説も繰り広げている。演説を分かったフリをして腕を組んで「そうだそうだ! 弱者をないがしろにする独裁者支持のやつらに香港の若者たちの怒りがわかるか! 香港がんばれ!! 右翼なんかいらない!」と、力強く頷いていると、どうもまた雰囲気がおかしい。まわりのみんなが手にしているのが「NO安倍」「NO JAPAN」のプラカード。そっちか!! 要らないのは俺か!? そう、こっちのデモは左派の方。
 ちなみに右派は日本に対しては割と寛容で、「アメリカの子分同士協力して、アメリカ親分を先頭に北朝鮮を滅ぼそう!」って人たちだから、韓国内では親日派という扱い。ということで、それに対して左派は右派に対して「おめーら、アメリカとか日本に手なずけられてんじゃねー」って意味を込めて「NO JAPAN」を出して対抗してる。ということで、この時のNO JAPANは、日本の悪事に対する批判もありつつも、右派に対抗する意味合いも大きい。
 ま、それは分かってはいつつも、安倍を筆頭に過去への反省の心がなさすぎるのも問題なので、日本から来た身としてはなかなか複雑な心境だ。すいませんね〜、うちの首相がアホすぎて…。一応言っとくけど韓国左派の人たちと話しても日本人憎しなんて人はまずいないので、この点はみなさん誤解のないように。要は「なんなんだ安倍は!」ってこと。

左派のデモを離脱し、ついに香港デモに合流成功!!

 さてさて、こちらのデモも離脱して、香港デモを探して光化門広場をさまよい歩いて、ついに発見〜!!! 「香港民衆がんばれ。国家暴力に反対」という内容の看板やプラカードなどを置いた群衆を発見。これだこれだ! 韓国右翼デモに引けを取らない勢いで、その数ざっと30〜40人!! これはなかなか見つからないはずだ。いや、でも韓国の人たちと一緒に香港支援デモをできるのは、なんかいいね。国境を超えた民衆が手を組んで、各国のロクでもない政府に文句を言うのは重要だからね〜。
 で、このソウルでの香港連帯イベント、ソウルに住む香港人たちとも協力して作られているだけあってか、すごいよく企画されている。例えば、香港現地の運動でも、右翼からリベラル、左翼までいろんな立場の人が混在して協力・牽制しつつなんとかうまいこと運動を作っているんだが、単なる反中国や排他的な香港至上主義に偏りすぎると、それはそれでまたよくない。そういうこともあってか、ソウルのデモではヨーロッパなどではよく使われている、反ファシズムの旗が出されていた。これ、ナチス反対っていう意味だけではなくて、もう少し広義に「強いものからの支配に反対」みたいな意味合いでも使われているシンボルマークだ。香港社会は、中国の北京政府からの管理強化で窮屈になってきている一方で、弱肉強食が半端ない超資本主義という、二重の苦しみがある。そこでその両方を拒否するって意味での反ファシズム旗でもあるんだろう。うん、なるほど。すごい!

こちらが香港連帯デモ。アジアの民衆が連帯して香港民衆とともに闘おうと演説中。たぶん

 ま、そんなことで、韓国人や香港人以外にも、飲み会の待ち合わせで合流した大阪人たちや高円寺から遊びに来た台湾人なども合流し、たまたまソウルにいた見ず知らずの中国人など、いろんな人が続々と集まり、いざデモ出発〜。

 で、何がすごいかって、このデモへの街の反応がすごい面白い!
 まず出発前に主催者が挨拶していると、例の韓国右翼デモが終わったのか、帰り際の人たちが興味津々で「なんだなんだ」と、集まってくる。右手にアメリカ星条旗、左手にイスラエルの旗を持ったおじいさんおばあさんたちが必死に香港のことを書いたボードを読みながら、反ファシズム旗を持った青年に「君たち、がんばれ!!」と、声援を送っている。この光景、ヨーロッパ人が見たら意味不明すぎて完全に腰を抜かす状態。いろんなことがアベコベになってきてカオスな感じがまたすごい。
 そして、デモが始まって街を歩いていても、反応がいろいろ。通りがかった市場の人たちが手を叩いて「がんばってー」と、たくさん応援してくれると思ったら、今度は通りがかりのおっちゃんが「香港に自由なんて要らない! ふざけんな!」みたいなこと言ってキレまくってたり(結局このオッサンなんで怒ってたんだか不明)、通りがかりの香港人ビジネスマンみたいな人が「一緒に闘おう! イエーイ!!」みたいに叫んでくるし、車道の車もクラクション鳴らして応援してくれる。と、思ったらショッピング街では富裕層っぽい家族連れの中国人観光客が「お前らふざけんじゃねー。糞食らえ!」みたいに中国語で罵声を浴びせてくる。いろんな立場や、いろんな考えが入り乱れまくってる。

韓国最強のプロテストミュージシャンのYamagata Tweaksterも例のマシンを出動!

 日本や韓国では、ひと昔前の、資本主義vs社会主義の構図が右と左の対立になっており、それがなんとなくそのまま引き継がれている感じ。ま、そういう国は多い。ところが香港ではそんな構図に、「強くなった中国」という新カテゴリーが加わり、先ほど書いたように、管理社会と弱肉強食という二方面からの抑圧状態になり、それが引き金でいろんなポジションが生まれて混沌に次ぐ混沌で、完全に新しいステージに突入している。強いて言えば、無数の貧乏人vsいろんな種類の強い奴ら、ってところか。
 ともかく、そんな謎の構造の香港はいま世界の最先端だ。昔みたいに「資本主義は敵だ!」とか「社会主義は悪だ!」などとだけ言っていればいい時代はとっくに過ぎ去っている。いまこそ、自治や自立っていうことが大事で、その小さいレベルから社会を作っていくことを考えていかないといけない時代になっている。強大な権力を持った奴らに任せておいたら、どんな体制になろうともロクな状況にはならないってことが、だんだん明らかになってきている。これは日本や韓国の社会もいずれそうなるはずだ。
 それが、今回の香港のデモを通して日本や韓国の社会に一石投じられてカオス感が増してる感じがいい! 

かつて、ソウル再開発に抵抗してインディーミュージシャンやアーティストたちと共に闘いの拠点と化した食堂「トゥリバン」にて。店長のユ・チェリムさん(右)と、偶然店内に居合わせて「あー、素人の乱知ってますよ!」と話しかけてきたお客さん(中央)

激安! 転がり込んできた日韓マヌケ文化交流の時代が到来!

 さてさて、デモに行ったからその話が長くなったけど、本題はそれじゃない。そう、大事なのはチケットが安い話。そのおかげで、大した用事もないのに、またこうしてソウルの街を意味もなくウロつくことができていることだ。ということで、ここぞとばかりに、知り合いの店に行ったり、しばらく会ってないソウルの友達や、高円寺のゲストハウスに来てくれた人に会ったりした。理由はともあれ飛行機代が激安になっているということは、遊びに行くには千載一遇のチャンス。冒頭にも書いたけど、東京ーソウルの往復で1万円強。地方都市になるともっと安い。少し前に調べてみたら札幌ーソウル往復はなんと7千円ちょっとのチケットまで! なんだこれ〜、片道4千円しないって、どういうことなんだ〜!!! 九州の福岡なんかはより韓国に近いので、こちらも激安。…ってことは、例えば札幌の人が福岡に行く時は、場合によっては直接福岡に行ったり東京や関西経由で行ったりするより、ソウル経由が一番安いという、とんでもない事態に!!! うわー、なんだこりゃー!

こちらも再開発に抵抗して公園を解放区にしてる「京義線共有地」という場所。真ん中に香港支援のメッセージが大きく書いてあった!

 日本も韓国も、政府のプロパガンダや広告代理店の操作によってコロっと世論が変わる国。徐々に状況が変化するよりも、激変したほうが経済やら商売やらが混乱するので、謎のいい話が転がり込んでくることは多い。政府間や大企業などの金持ち連中が大パニックになってても、よくよく考えてみたら、実は我々貧乏人にとっては知ったこっちゃない話だ。当然それは日本だけじゃなくて、韓国をウロウロしてる大マヌケで面白いことやりまくってる連中にとってもそれは同じだ。となったら、ここはひとつ、なぜか転がり込んできた激安航空券を利用しまくって、日韓間を行き来しまくって、変わった店やってる人とか、いいミュージシャンとかアーティストとか、面白いことやってる奴らが遊びまくっておくに越したことはない。いやー、このいいタイミングを逃すなかれ!
 そんなことで、謎の飛行機激安時代到来のおかげで日韓地下文化交流がやたら活発になって来ている。ただ、激安なのは状況が激変した時だけなので、どうせすぐにチケット代は元に戻ってしまうはず。ここ数カ月が勝負だ。まあ、今後もし中国あたりと揉めることがあったら中国地下文化との交流が楽になるし、何かでアメリカと喧嘩になっても今度はアメリカの大バカ文化圏との交流を活発化させることができる。いや〜、こりゃ永久に楽しいね。

東大門デザインプラザ(DDP)という、屋上のスペース。ここはめちゃくちゃ気持ちのいいスペース。香港連帯のドキュメンタリー上映に大遅刻し、みんなが帰った後に到着。しまった!

告知

 と、いうわけで、ソウル滞在中に早速決まったのが、ブルースギタリストのハ・ホンジンの来日。さらに、ソウルのインディーズ文化の集まる重要スポットの「一杯のルルララ」の店長と話していると、「東京行きたい行きたい!」ってことになって、その場で即東京行きを決断! すごい、行動力が半端じゃない!! 店長はハ・ホンジンとも友達なので、せっかくなので時期を合わせて遊びに来るとのこと。もちろん高円寺の「なんとかBAR」で「一杯のルルララ高円寺店」の臨時開催! おおー、これはすごいことになって来た!!! みなさん、この一連の企画、絶対面白いのでお見逃しなく!!!!

9/17㈫〜19㈭

一杯のルルララ高円寺店

@高円寺「なんとかBAR」
東京都杉並区高円寺北3-4-12


9/27㈮

ハ・ホンジン来日公演
〜Bluesman in Koenji 2019〜

@喜楽 MUSIC WAREHOUSE
東京都杉並区高円寺南4ー9-6 矢島ビル3階

無類のビール好きの名店「一杯のルルララ」店長(右)。飲みながら「高円寺行きたいな〜」と、すぐに東京行きを決断。すごい!

松本哉
まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、『世界マヌケ反乱の手引書:ふざけた場所の作り方』(筑摩書房)編著に『素人の乱』(河出書房新社)。