第96回:安倍疑惑に、ぼくならこう迫る!(鈴木耕)

「言葉の海へ」鈴木耕

 安倍首相の「桜を見る会」が大スキャンダル化している。さすがの安倍首相も頬っかぶりはできず、ついに15日夜、記者団の“ぶら下がり”(こんなのは記者会見とは言えないが)に応じざるを得なくなった。
 だがそれも、たった20分間の茶番劇。例によって、テキトーにいい加減なことをまくし立てて幕引きにしようと思ったらしいが、そうは問屋が卸さない。ますます疑惑は深まるばかり。
 それにしても、記者たちの突っ込みの甘さには、見ているこちらはイライラする。安倍ペラペラ発言に、ぼくならこうツッコむのになあ…などと思ってしまう。
 そこで、安倍発言に、例えばぼくならこう迫る、を考えてみた。まあ「妄想新聞」とでも思って、気楽にお読みください。
 なお、〈安倍発言〉は、東京新聞(11月16日付)に依った。〈ぼく〉はもちろん、ぼくの頭の中の質問なので、事実とは関係ない。

妄想の質疑応答

安倍「桜を見る会の前日に行われた(首相講演会による前夜祭の夕食会)について、さまざま報道されたので事務所から詳細な報告を受けた」
ぼく「その報告書をお示しください。正式なものなら、開示しても問題ないと思われますが」

(首相は「口頭で受けたので報告書はない」、「収支がないので報告書はない」などと答える)

ぼく「さきほど、事務所から詳細な報告を受けた、とおっしゃったではないか。それなのに報告書はないというのか。それでは検証できない。疑惑は残ったままだがそれでよろしいか? 総理は『嫌がらせのような報道もされている』と別のところでおっしゃっていたが、それを払拭するためにも、これからでも調べるべきではないか」

(多分、首相は例によって答えにならない答えを述べ立てるだけ。ぼくだったら何度でも同じ質問をする)

安倍「夕食会を含め、旅費、宿泊費など全ての費用は参加者の自己負担で支払われている。安倍事務所や後援会としての収入、支出は一切ないことを確認した」
ぼく「そうであるなら、疑惑を払拭するためにはぜひとも詳しい明細書が必要になるはずではないか。なぜ調査しないのか」

(こういう質問に対しては、安倍首相は「ですからですね、まさにその、明細書がないという中においてですね、つまり明細書はないわけですから、まさにわたくしには一点の曇りもないわけでありまして、したがってですね、明確にその点においてはですね、明確にですよ、疑惑などというものはない、ということになるわけでございます」とまさにワケの分からないことをまくし立てるだけでしょう)

安倍「旅費、宿泊費は各参加者が旅行代理店に支払った」
ぼく「では、その旅行代理店から明細書を出させればいいではないか」
安倍「(事務所が)代理店にお願いして(桜を見る会のツアーを)やっていたのは知っている」
ぼく「ならば、その代理店に、早急に明細書を出すよう指示すればいいではないか」

(ここでまた、首相は「代理店とは面識がない」とか「そんな細かいことは事務所に任せてある」とはぐらかしにかかるだろう)

ぼく「旅行代理店にそんな明細は残っていないというのなら、その代理店は税法上の罪に問われることになるが、それでもいいのか」

(多分、それにも首相は答えられないだろうなあ)

安倍「夕食会の費用は会場の入り口の受付で、事務所職員が一人五千円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手渡した。受付終了後に、集金した全ての現金をその場でホテル側に渡すという形で、参加者からホテル側への支払いがなされた」
ぼく「それもおかしい。夕食会場の入り口には『安倍晋三後援会 桜を見る会 前夜祭』と書かれていたではないか。ならば、領収書は『後援会』名義であるはずだ。なぜホテル名義の領収書を使用したのか。ホテル側がそんなに簡単に領収書をあずけるとは思えない。事前に想定金額を、後援会側がホテル側に支払ったのではないか。となると当然、差額が発生するわけで、明らかに政治資金規正法に抵触する。もしくは、ホテル側に税法上の問題が出てくるはずだ」

(ぼくも仕事上、政治家のパーティーに何度か出たことはあるが、ホテル名義の領収書などをもらったことはない。これは安倍事務所がホテル側からむりやり領収書を出させたとしか考えられない)

安倍「夕食会の価格が安過ぎるのではないかとの指摘もある。大多数がホテルの宿泊者という事情を踏まえ、ホテル側が設定した価格との報告を受けている。毎年使っているとか、規模であるとか、宿泊をしているかをホテル側が総合的に勘案して決めることだと思う」
ぼく「では、いったい何名がこのホテルに宿泊したのかくらいは、ホテルから報告をさせてはいかがか。安倍後援会関係で850名もの人数が『桜を見る会』に参加したことは明らかになっている。大人数による「宿泊費割引」というのなら、きちんとホテル側から報告させればいいではないか」

(せめて宿泊人数くらいは明らかにできるだろう。それもしないとすれば、ホテル側にも問題がある、ということになる。安倍サイドは、最終的にはホテル側に責任を押し付けて逃げようとするのだろうか)

安倍「政治資金規正法では、収支が発生して初めて(政治資金収支報告書に)記載義務が生じる。収支は発生していない。政治資金規正法上の違反にはまったく当たらない」
ぼく「しかし、後援会関係者の宿泊人数や『前夜祭』への参加人数が明白ではない以上、ホテル側へ支払った金額と実際に後援会が受け取った金額には差額が出ているはず。それが収支ではないか」

(細かいところを突いていけばキリがないが、疑惑はどんどん出てくる。なお、18日午前、安倍首相は再度、記者団のぶら下がりに応じ、「この夕食会に関する領収書や明細書はない」と説明した。→この部分については朝日新聞18日夕刊に依る)

ぼく「仮に、後援会には残っていないとしても、ホテル側に明細書や領収書が残っていなはずがない。もしないのなら、このホテルはデタラメ経営と言われても仕方がない。首相はなぜ出すように要請しないのか。それとも、ホテル側に責任を押し付けるつもりか」

(多分、安倍首相は言を左右してホテル・ニューオータニのせいにして、自分に責任はないというだろう。それなら…)

ぼく「総理はかつて、森友学園疑惑の際に、『仮に私や妻や、私の事務所が関わっていたとすれば、総理大臣も議員も辞めます』とおっしゃった。今回も、それは変わらないのか。安倍事務所が全面的に関わっているではないか」

(今回は、これに関してはどう答えるのだろう?)

安倍「事務所の者が受け付けに当たることには問題がない」
ぼく「それはその通り。ではなぜ、領収書が後援会名義ではなくホテル名義なのか。事務所が取り仕切ったのなら、領収書がホテル名義なのは理屈に合わない。それとも、このホテルは領収書を他人任せにするほどいい加減だと安倍総理はおっしゃるのか」

(ここはとても大事な点。安倍首相がどう言い逃れようと、ホテルの領収書を使って安倍後援会が適当な処理をしたとしか思えない。それでも言い逃れるようなら、ぼくはこう迫る)

ぼく「ホテルに資料を出すように要請するのは無理だとおっしゃるなら、私たち記者団は、ホテル・ニューオータニに記者会見を開くよう要求するつもりだが、それでもよろしいか」

(さすがにこう詰め寄られれば、安倍首相も何らかの手を打たなければならなくなる。するとホテル側へ官邸サイドから圧力がかかる…か?)

安倍「政府としては、国会から求められれば、説明責任を果たすのは当然だ」
ぼく「それは当然だ。ではなぜ、自民党に対して『私が委員会に出席して、説明責任を果たしたい』と言わないのか。

(多分、安倍「それは国会がお決めになること。国会からの要請があれば私はいつでも出席する。国会の決定事項なのだから、私はとやかく言うことではない」という答えで逃げるだろう。ならばこう詰め寄ろう)

ぼく「安倍さんは政府の最高責任者の総理大臣ではあるけれど、同時に自民党総裁でもある。もし、積極的に国会審議に自ら応じる気があるのなら、自民党の国会対策委員会に『私は出席して説明責任を果たしたい。出席する』と言えば済むことではないか。それをしないということは、疚しいところが山積みだからではないか」

(うーん、安倍“自民党総裁”は、これでも「国会がお決めになること」の決まり文句で逃げようとするのだろうか)

 とまあ、こんなところか。
 それにしてもひどい党だ。二階俊博自民党幹事長は、この件では記者に向かって「何か問題でもあるのか」と恫喝まがいの開き直り。さらに菅義偉官房長官も「私の関係の招待者は数十名ほど。詳しい人数は分からない」などと言って恥じる様子もない。
 有力議員たちはみんな、この「桜を見る会」を、自分たちの選挙運動に利用していたことが明らかになったのだ。

 あの環境活動家(という呼び方がしっくりこないのだけれど)のグレタ・トゥーンベリさんが言ったように、ぼくも彼らに投げつけよう。
 よくそんなことが出来るものだっ!

鈴木耕
すずき こう: 1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレイボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。1999年「集英社新書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライターに。著書に『スクール・クライシス 少年Xたちの反乱』(角川文庫)、『目覚めたら、戦争』(コモンズ)、『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出版)、『反原発日記 原子炉に、風よ吹くな雨よ降るな 2011年3月11日〜5月11日』(マガジン9 ブックレット)、『原発から見えたこの国のかたち』(リベルタ出版)、最新刊に『私説 集英社放浪記』(河出書房新社)など。マガジン9では「言葉の海へ」を連載中。ツイッター@kou_1970でも日々発信中。