第125回:【緊急作戦】武漢-東京共同企画! 武漢救援イベントを開催!!(松本哉)

 武漢発の新型コロナウイルスが世界を震撼させている。近年はアジア地下文化圏のネットワーク作りを進めていることもあり、武漢にも大量に友人がいるので、すぐにその現地からも連絡がたくさん来て、いろいろリアル情報を教えてくれた。

 まず、これは報道でもあるが、武漢などいくつかの都市は中国政府によって完全封鎖され、空港から駅、地下鉄、バスまで全て止まり、人が集まる劇場やショッピングモールなどの施設は軒並み閉鎖。自家用車も勝手に動かしてはならず、武漢市内の全てのタクシーも政府の管轄下に置かれて、市民の物資調達などのための輸送手段としてすべて無料運行されているという。そして武漢市の市境もすべて封鎖され、武漢からの出入りは基本的にはできない。また、出られたとしても中国国内旅行も禁じられているので、他の都市への移動も困難だ。移動は徒歩か自転車、電動自転車などに限られるので遠出は難しいとのこと。2020年、いきなり大変なことになってきた!

武漢の新スペース复印info前の庭にて。右下のボウズ頭が今回企画の武漢側の一人で子杰氏

 日本でニュースを見ているだけだと、現地は本当にとんでもないことになっている様子だけが伝わってくる。しかし、ニュースっていうのは結構怪しいことがよくある。政府が情報をコントロールすることも多々あるし、マスコミもだいぶ情報を選んで報道する。これは中国に限らず、日本でもどこの国でも同様だ。ということで、武漢封鎖の直後にはまず東京の高円寺で、武漢や中国各地をネットで中継して交流会を開催。くだらない話もしつつ、いろいろと情報を教えてもらった。というか、情報よりも、まず武漢のやつらが呑気に鍋食べてたり酒飲んだり笑ったりしてたのが一番ホッとした。
 さて、それで武漢からの情報によると、春節だったこともあるが、店舗もほとんど閉まっており街はスーパーや薬局以外はほとんど開いていない状態で、街の人もまばらでゴーストタウンのような状態。まさに完全封鎖で、戦時下のような状況で、もう家にいるしかない状態とのこと。ただ、幸いにも現時点では食糧や飲料水など物資は豊富で、生活自体で困ることはないという。ただ、街にも出られず仕事もできない状態で、今後どうなるかが分からないのが不安だとのことだった。ちなみに、日本同様、マスクは店頭でもネットでも売り切れ続出だという。

みすぼらしい人にはなりたくない

 しかし、いざ騒ぎになってみると、世間はみんな自分のことばかり。例によってマスクを買い占めて高額で転売する人も続出するし、中国人来るな来るなの大合唱だし、武漢から帰ってきた日本人に対してもまるで病原菌みたいな扱い。全くひどい話。まあもちろん、これだけニュースでやってたら感染の可能性なんかを考えて心配になるのは当然だし、このタイミングで中国人の団体観光客とかに遭遇したらビビるのも無理はないけどね…。現に、この前台湾人たちと近所の居酒屋に行って中国語で話していると、隣の日本人客たちが大慌てでマスクをして会計して帰っちゃった。おーい、中国語話す人が全員肺炎なわけじゃないぞ! 過敏すぎる(笑)。

去年武漢に行った時の写真。自家製ビールを武漢の町中で配りまくるという謎のイベントの準備中

 各国の対応も冷たい。みんな中国人や武漢のある湖北省滞在者を入国拒否したり追い返したりしてる。ロシアに至っては感染が確認されたら国外退去という完全に自分のことしか考えてない制度を整備中とのこと。フィリピンも武漢から飛んできた飛行機をそのまま乗客丸ごと武漢に送り返したし、北朝鮮なんかは即座に国境を閉鎖して鎖国に突入するというビビりっぷり。まあ、北朝鮮などの貧乏な国は疫病なんか流行ったら国が傾きかねないのでしょうがないかもしれない。ただ日本やアメリカ、ヨーロッパなど、多少余裕あるところが「来るな来るな」じゃ、ちょっとみっともない。
 国内の中国人を敬遠する動きもそうだし、各国の水際作戦もそうだけど、どうも愛情や人情が欠けている。「自分さえ大丈夫ならあとは知らねー」はヒドい。もちろん中国政府だってウイルス拡散の初期には状況を甘く見て情報チョロまかしたりと信用ならないが、一般の武漢人たちは別に悪くない。隣国でたくさんの人たちが謎の奇病で苦しんでるというのに「俺知らねー」はさすがに人としてヒドい。これは国内だろうとアメリカだろうと中国だろうと関係なく、みんなで力を合わせて何とかしていかないといけない。東日本大震災の時だって世界中の人たちがメッセージをくれたり募金してくれたり手伝いに来たりして、みんなが助けてくれた。そう、例えば自分の家が火事で燃えた時に仲間に助けてもらったのに、誰かが病気になった時に「オマエ感染るから家から出るな。近づくな」じゃかわいそうだ。それ言ってもいいけど、同時に差し入れや見舞いの電話でも一本入れてあげるのが普通じゃないだろうか。

ライブハウス武漢PRISON前にて。同じく今回企画の重要人物でメタルバンドをやるOZZYさん(左)。カッコつけてるけど話すとかなりマヌケ

 そして、こういう時に「国家」というのは途端に役に立たなくなる。国を動かしてる人々は、すぐ選挙や支持率などを考え出すし、なにより経済や株価のことをやたら意識するので、普通に人として何をすべきかということができなくなる。これはどんな政治体制でも大差なく頼りにならない。そう、これはやはり我々個々人がひと肌脱ぐしかないのだ。あまりけちくさいところを見せるわけにはいかないし、「俺知らねー」みたいな、そんなみすぼらしい人間にはなりたくない。

武漢加油! 香港加油!

 ちょっと別の話だけど、武漢封鎖が始まった頃、武漢市内で「武漢加油(武漢がんばれ)!」と同時刻に窓から叫ぶ動きが広がった。ネットで広がり、決まった時間に一斉に開始するので武漢の街中に「武漢加油!」の声が響き渡る。本当にデモみたいな感じ。動きが広がるとすぐに政府は「感染が拡大する可能性もあって危険だから、すぐに中止せよ」と、大慌てで禁止した。感染が拡大するというのも確かにあるかもしれないけど、民衆運動っぽい雰囲気に政府がビビったというのも少なからずありそうだ。
 現に「武漢加油!」と叫ぶ人たちの心境としては、自分たちの街への愛情や思い入れがあり、困難な状況を乗り越えて今まで通りの武漢を守りたいという気持ちがあるはず。それは、去年の6月から始まった香港の民衆運動と同じ心境のはずだ。ただ、香港の運動は多くの違った考えの人たちが同居して戦っている。中には単なる中国嫌いの差別主義者もいたり、「アメリカ最高・西側諸国最高・弱肉強食無問題・共産主義死ね」の新自由主義者もいたりする。でも、そういう香港人たちもこの運動に関しては、元はと言えば「自分たちの慣れ親しんだ風景や生活や文化を守りたい」という事が根底にある。

なんと、2009年に始めて武漢に行った時にひどい落書きをした写真。高円寺武漢の連帯と適当に描いたが、まさか11年後に本当に連帯する時が来るとは!

 それは、日本でも同じで、例えば自分自身が暮らす街、高円寺の再開発をして欲しくないという気持ちも全く同じだ。そう考えた時に、本来は世界中普遍的な問題のはずの感覚が、謎のナショナリズムや排他主義になったり、弱い立場の人を蹴落とす状況に陥ったりしないためにも、ちゃんと世界各国の同じ感覚の人たちで手を組んでいく事が大事だ。そう、それぞれの場所の独特な面白いローカル感をみんなで守る事。超単純な事だし、そこには国境も人種もヘッタクレもない。中国各地を訪れている時、その辺の若者とかにコッソリ香港のこととか聞いてみると、「気持ちの上では応援してるよ。でも『中国人』を嫌うのはやめてほしい。俺らも同じ仲間だ」という感覚の人がすごい多い。
 武漢加油! 香港加油! 高円寺加油! 全部同時にやっていく事が大事だ。国はひとまず放っておこう。我々末端の大バカなやつらがみんなで結託しよう。

2/15(土)、武漢PANDEMIC × 東京PRISON

 さあ、そこでやってまいりました、いつもの悪ノリから始まる謎のイベント! 新型肺炎の騒ぎ以来ずっと連絡を取り合っている武漢の人たちと協力しあって、武漢支援BARを東京で開催することに!!!! そもそも武漢は何度も遊びに行って、友達の運営するスペースやレコード屋、ライブハウスなどいろんな繋がりがある。高円寺界隈の人の中にも遊びに行った人は多いし、面白すぎて一時的に武漢に住んだ人もいるぐらい。いま、武漢のことを全く知らない世界中の人たちが武漢を悪の都市みたいにボロクソに言ってるのを聞いて「チキショー」と思う日々。
 しかしちょっと待てよ。いままで北京や上海の影に隠れて無名都市の名をほしいままにしてきた武漢が、ここまで世界中で注目された事があっただろうか。いや、ない! 初めてだ!! よし、これは絶好のチャンス! ということで、まずはイベント当日、武漢がいかに面白い街かも紹介できたらと思っている。うまくいくかは分からないけど、武漢名物の熱乾麺にも挑戦してみたい。そして当日は武漢現地でも「東京PRISON」という小さなイベントを開催することに(武漢では大きなイベントが禁止されているため、小さな集まりになるはず)。なぜ東京PRISONかというと、武漢の武漢PRISONというライブハウスの界隈の人々が一緒に企画してるので、そのノリで東京PRISONだし、「まあ東京も監獄みたいなところだろ?」って感じ。いいね〜、その通り東京も窮屈な監獄みたいな街だからちょうどいいね! で、対抗してこちらのBARの名前は「武漢PANDEMIC」。もちろん新型肺炎が武漢発でパンデミック(感染爆発)状態になってるからだけど、さすがに悪ノリかなと思って武漢サイドに聞いてみると、武漢人たち大爆笑で「それいいね、最高だ! そうしよう」だって。いや〜、苦境でもノリのいいやつら最高だな〜!  

こちらは今回の武漢封鎖直後に現地と中継してるとき。全然楽しそうじゃねーか!!!

 ま、無理やりこじつけて言うとすれば、良くも悪くもついに注目された武漢の面白さをみんなに爆発的に知らせちゃおうと言う観光大使みたいな役割か。ということで、迅速な勢いで決まったこの日中同時開催企画「武漢PANDEMIC × 東京PRISON」。
 当然、店内の壁には武漢現地とネットで中継し、武漢人たちと交流しながら進める予定。この企画が決まってから、武漢人たちは「こんな時にうちらの事を気にかけてくれて本当にありがとう!」と大喜び。いや〜、いいね! というか、今後何かで東京がヤバくなったら助けてもらうからね〜。
 さて、ではどう武漢を支援するか。マスクを送った方がいいんじゃないかとかいろいろ考えたんだけど、世界中でマスクの値段が高騰しているいま、微々たる量を買うのもあまり得策ではない。それに武漢現地でも当面使う分ぐらいの備蓄はあるらしいし。ま、それは生産が追いついてから追々考えるとして、まずはなんでもいいから退屈しのぎみたいな物でも送ってみようということに。それに現地の運送状況も不安定だと思うので、まず第一便で届くかどうかを確認するために意味不明のものを詰め込んで武漢に発送してみようということに。
 そして、運送状況が確認されてから、この武漢PANDEMICのイベント後に、その収益を使って第二便を送る予定。いま武漢では店も開けず大きなイベントも出来ずに何もできない状態だから、後々金銭面でも厳しくなってくると思うので、募金も集まれば届けたい。武漢でも音楽シーンやアートシーン、個人の面白い店舗やスペースなどのオルタナティブ文化圏はすごい大きいので、焼け石に水かもしれないけど、せめてみんなの飲み代ぐらいにして楽しく過ごしてもらえたら、こっちにとっても最高だ。それに病気の場合は、震災や戦争被害などと違って、物資もあるし家も壊れてない。一番大事なのは世界から見放されるんじゃないかという不安感からの解放。よーし、そう来たらうちらの一番の得意分野だ。一緒に遊べばいいのだ!
 ちなみに、一般的に物資や募金の受付もあるけど、これも結局は末端の一般の武漢市民までは届きにくいのが現状だという。確かに、日本でも震災や原発事故の際にたくさんの救援物資が送られたが、全く現地で行き渡らなかったなんてことは多々あった。せっかくの義援金も全く意味不明の使われ方をしたりもした。よし、やっぱりここは直接支援の体制をどこまで作れるかが大事だね。見ず知らずの街だったら直接支援の回路を作るのは難しいけど、武漢だったら任せろ〜!!

 ということで! 武漢地下文化圏を救うための緊急企画!「武漢PANDEMIC × 東京PRISON」みなさん、是非遊びにきてね〜!! 武漢人と飲みながら武漢を救おう!!

2/15(土)

武漢PANDEMIC × 東京PRISON

日本時間21:00(中国時間20:00)開始
高円寺「なんとかBAR」
杉並区高円寺北3-4-12
※義援金やくだらない支援物資も当日募集します!

参考
前回行われた高円寺−武漢交流会の呼びかけとその報告
https://matsumoto-hajime.com/blog/archives/682
https://matsumoto-hajime.com/blog/archives/695

       

松本哉
まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、『世界マヌケ反乱の手引書:ふざけた場所の作り方』(筑摩書房)編著に『素人の乱』(河出書房新社)。