第126回:ついに到来! 楽しい世界恐慌の生き方(松本哉)

 さあ、世界同時株大暴落でいよいよ世界恐慌が近づいてまいりました。いや〜、楽しくなってきましたね〜。巷では、やれ金融政策はどうしたほうがいいとか、恐慌回避の手立てがどうのこうのとおおわらわの大パニックになってるが、我々底辺中の底辺、庶民中の庶民にとってはそんな議論したってしょうがない。金もうけ至上主義社会を作り上げた奴らの身から出たサビ。こっちを巻き込まずに自分らでちゃんと処理してもらいたいし、我々が頭をひねってやる筋合いはない。ま、強いて考えるならば百姓一揆や米騒動を起こすか起こさないかの二択ぐらい。…と、いうわけで、お金大好きな人たちが慌てふためく間に、こっちはこっちで万一に備えて世界恐慌をのんびり暮らす準備に入りたい。ということで、今回は我々貧乏人が世界恐慌を楽しく生きる作戦を考えてみましょう〜。
 あ、「っていうか、自分貧乏人じゃないし」とか言ってるそこのキミ。仕事をやめて数ヶ月したら段々首が締まって来て将来が心配になってくるようであればそれは立派な貧乏人だ。「金持ち」とは一生金の心配がない世にもまれなごく一部の人たちのことである。ということで、いくら高級車に乗っていい服を着て、頑張ってみたところで、ほとんどの人は貧乏人なのでもはや観念するしかない。そもそも金持ちはマガ9なんて読むわけはない。そう、キミは貧乏人だ!!! 安心せよ!

新型コロナが教えてくれたマヌケ社会

 さてさて、世を騒がせている新型コロナウイルスだけど、その感染予防策として学校が休みになり、自宅勤務にする職場も増えて来た。人の多く集まるところにも行かないように呼びかけられているので、大規模なショッピングモールに出かける人も減り、中止になる大規模イベントも続出しているので、結果家にいるか、出かけても近所にちょっとっていう程度の人たちが膨大に出現。
 まず、かなり恵まれている部類の、幸いにも給料が支払われ続けながら家にいる人たちに着目したい。真っ先に「あれ? 職場いかなくても大丈夫じゃん」ということに気付く。テレワークなどで済ませられることが実はたくさんあり、いままで満員電車に乗って意味不明の朝礼とかやってたのは何だったんだ、ってことに気付いてくる。仕事さえこなせるなら、音楽かけながらでもラーメン食べながらでもいいし、普段着で仕事してもいい。お偉方とのテレビ会議の時も画面に映る上半身だけスーツ着てればいいし、暑かったら背中に穴が空いててもいいし、技術次第ではCGでスーツ着ててもいい。そうなると、会社でやってる半分ぐらいのことが無駄なんじゃないかって気になってくる。
 そして、チビッコたち。学校に行かなくていいので、もう遊び放題だ。家にいろと言ってもガキンチョどもがそんな聞き分けがいいわけがない。いかに家から脱出するかとか、行っちゃいけないところに忍び込んだりと、悪知恵を総結集して傍若無人な遊びをしまくるに違いない。いろんなものを見聞きして、学校で教える「道徳」以外の価値観に遭遇しまくり、「そんな謎のきれいごとだけで世の中回るわけねえじゃねえか」ということを学んでいき、道徳を自分で考えて学んでいく。学校以外のところにも学ぶべきことが山ほどあるということにチビッコがついに気付いてしまう。これはすごい! 最高の教育。
 さらに、それをキッカケとして時間に余裕ができてくると、そもそもそんなに金稼がなくても楽しいことできるんじゃないか? ということにみんなが段々気付いてくるし、仕事にしても何がやるべきことで何が無駄なことかわかってくる。それに、もしこんな生活が長引けば、いざ新型コロナが収束して、さあ今まで通りに社会を戻しましょうとなっても、時すでに遅し。真面目に働けない人が増産されているのだ。もちろんそれはみんながダメ人間になるという意味ではない。無駄なものに付き合いきれない人が増殖し、もっと適当でいいんじゃないか? そもそも仕事仕事、金、金の人生はヤバいんじゃないか? いや、24時間仕事人間とかムリだし、もう満員電車とか無理、という人々が急増する。そう、ついに味をしめた人々によるのんびりしたマヌケ社会到来の予感!
 とは言え、いいことばかりではない。雇われの身ならまだいいが、観光、飲食、ライブハウスや劇場など今回モロに影響をくらう人たちもたくさんいる。または余裕のない企業で働いてたらいきなりクビになるかもしれない。自分もそうだけど自営業も超大変で、もはや努力や商才、能力などに関係なくダメなものはダメという状態になる。これはヤバい。…しかし、そもそも個人店や自由業を営む人たちまでもがサラリーマンのように休まずにあくせく金を稼ぎ続けなきゃいけなかったこれまでの社会もどうかしてる。ヤバい時はちゃんと休んで、収入は減ってもとりあえずは生き延びられて、やり過ごしてから後で挽回するぐらいのことができるような余裕のある社会がいい。どうするかはこのあと考えるが、そういう社会到来までにはどうしてもまだ時間がかかる。いまダメージを食らってる自営業や自由業は死にそうなので、生き抜くのが精一杯。…そこで! ここはひとつ、真っ先に大量に増殖する、企業の奴隷から解放されたマヌケ会社員たちが時代の先陣の風穴を開けてくれることに期待しよう! 彼らが前衛としてふざけた生き方を展開する間に、徐々に社会のあり方が変わっていけばいい。

地下文化シーンから見た景気循環の歴史

 さて、世界恐慌に話を戻そう。歴史上、世界恐慌状態になるとロクなことがなかった。世界大戦が始まったり、大量の首切りや倒産、自殺者急増などなど。金もうけの連中が勝手にマネーゲームをしまくってて、それが何かのキッカケで破綻するのが大恐慌。金持ち連中が少なくなった金を奪い合うだけならまだしも、決まっていつもそのツケをこちら(貧乏人)に払わせて、やつらだけ生き延びようとする。しかも腹立つことに意外とそれが成功しちゃったりしてて、なんだかんだと金持ち連中は生きながらえてきている。コンチキショー!
 金持ちたちが破綻して、その痛手をドサクサに紛れて庶民にぶん投げてくるのが、これまでのお決まりのパターン。毎回毎回同じ手を使われて、それがまんまと成功しているのは、我々貧乏人が奴隷化しすぎていたのが原因だ。よし、やっぱり離脱しよ、こんな所。これ以上巻き添え食ったらたまったもんじゃない〜!!!

 さて、ここで少し金持ち大パニックの歴史をおさらいしてみよう。
 近年だとまず1990年代初頭のバブル崩壊。ここで金持ち連中は大ピンチに陥ったが、結局はいままで正社員として面倒を見て来た人たちを大量に減らし、パートやバイト、契約社員などに移行するという技を使い、奴隷をさらにワンランク下の奴隷にする形で金持ちたち本体を守った。非正規化する奴隷中の奴隷、そして辛うじて社員として残った奴隷、さらにその中で頑張って出世するけど働き詰めの人生には変わりない優秀な奴隷という、金持ちと奴隷しかいない時代。ま、この時はまだ高度成長が終わって日も浅く、豊かな日本を享受していた頃なのでわからないでもない。
 そして、2000年前後にも株が大暴落したことがあったが、ここでもまんまと作戦通りに安易な首切りが横行した。しかし、ここでアンダーグラウンドシーンに火がついた。それまでの地下文化シーンは「サブカルチャー」として、ある程度の豊かさを享受しつつメインカルチャーとは違った文化が築かれてる感じだったけど、ここへ来て「もう勝手にやるしかねえ」と、金持ちの巻き添えになることを回避する離脱志向が強まり、「カウンターカルチャー」化が進んだ。
 そしてそれが実を結んでくるのが2000年代半ば以降で、日本各地に続々と謎のスペースができ始めた。自分らのコミュニティーを作り独自の小さい経済圏や遊び場を作って「会社辞めても死なないよ〜」というのを実行に移し始めた。とは言っても実際は仕事無くなったら死にそうになるんだけど、まあそこを目指し始めたことはでかい。
 そしてやって来るのが2000年代末のリーマンショック!! この時も当然、金持ち連中は貧乏人をいけにえにする作戦で、世の中には無数の屍が転がった。ただ、これがキッカケなのか、この頃からはさらに多くの離脱組が増える。これまでの「金持ち中心社会ふざけんな! 勝手にやってやる」的な反骨精神全開な独立系スペースだけじゃなく、普通に金&金&金の価値観に飽き飽きした人たちが続々と増えて来た時代。山とか田舎とかに自分で小屋を立てて生活するのが流行って来たり、シェアハウスはじめモノを共有していろんなものを安くあげることも流行りだした。小さい店を開いてゆっくり生活する人も続出するなど、カジュアル脱資本主義が増えまくった。
 で、ここに来て今回のコロナショック! 今回も金持ち連中の手は明らか。貧乏人を切り捨てて延命を図ろうとする。これは今回の政府のコロナ対策を見てても一目瞭然。消費税を下げるとかベーシックインカム(全員に一律で金を配る)みたいな貧乏人救済策は意地でもやらず、かわりに固定資産税を安くするとか、潰れそうな企業の支援とかばかりで、「本当の貧乏人は悪いけど死んでもらう」という感じだ。まあ自民党は金持ちの代弁者の政党なので、当然と言えば当然かもね。よーし、そっちがその気ならこっちもやっちゃうよ〜。
 よし、諸君! アホらしい金持ち中心社会からの離脱をさらに進めよう。株大暴落の度にあいつらのケツぬぐいはもう飽き飽きだ〜! 「てめえのケツはてめえで拭え!」と言い放ってやろう!

これは約20年前の2000年ごろの株大暴落の際に作ったステッカー。これをむやみに街中に貼りまくった。著作権とかないので、いま勝手にプリントして街に貼りまくってもOKですよ〜。ちなみに画力の進歩はゼロ

必殺! 金もうけ至上主義社会からの離脱作戦

 じゃ、世界恐慌に備えて我々は何をやるか。どう離脱するか。金持ちとどう距離を置くか。ちょっと一例をあげてみたい。もちろんこれは正解例かはわからないので、みんなで試行錯誤して離脱作戦を考えよう。

1.ふざけた店やスペースを開く
 これはもう基本中の基本。カフェ、BAR、雑貨屋、イベントスペースなど何でもいいけど、利益追求以外の何かに重点を置いたスペースをやる(あ、金もうけを完全に忘れるとすぐ潰れるので注意。持続も結構大事なこと)。こういう場所は変な利害関係のない人のつながりができるので、助け合いにつながる。もし自分で場所を作るのが難しければ面白いスペースに遊びにいくだけでいい。とにかく世の中大混乱になったときに唯一役立つのは、利害関係ではない人のつながりだけだということをお忘れなく。そして、その多くの店やスペース同士がゆるくつながっていけば、その地下文化圏の体力はどんどん強くなる。
 今回のコロナでもこういうスペースで大打撃を受けているところはたくさんあるはずだ(うちの店もそのひとつだ)。コロナもいつ収束するのかわからないが、もし終わったら絶対瀕死の状態のところも多いと思うので、ぜひ遊びに行ってお金を落としてあげて欲しい。また、今回のコロナで家賃の下がるところは増えるはずなので、今のうちに準備を進めて収束後に一挙に店を開くのもいい。ともかく、そのシーンがもっと大きくなれば耐久力も増すはずだ。ま、この辺は数年前に『世界マヌケ反乱の手引書』という本でいろいろ書いたので興味があればぜひ〜。

2.むやみに集まる
 これも大事。イベントを企画したりするのでもいいけど、もっと簡単に飲み会や花見でもいいし、みんなで遊びに行くとか。もっと言うと、路上で立ち話でもいい。もっと小さい話だと最近連絡してない人に適当に理由つけて「最近どう?」とメッセージを送って情報交換しとくだけでもいい。いざ世の中大混乱になっても「あ、そういえばあの人ならあれができるはずだ!」などと役立つかもしれないし「あいつ死んでないか!?」と助けてあげることもできる。
 それに世界恐慌時に金もうけの人たちが大わらわのときに、ヒマ人たちが平日昼間からむやみに集まってお茶とか飲みながらゲラゲラ笑いながら集まってたら、金持ちたちはかなりビビるに違いない。ましてや、たとえ痩せ我慢でも「金も仕事もなくても意外となんとかなるもんだなあ」なんて呑気な話題でも聞かせてやれば、彼らの精神的ショックは計り知れない。これは勝てる!!

3.家賃値引き交渉
 今回のコロナ騒ぎの中、中国ですごかったのが、家賃の値引き交渉。経済が停止状態になってから真っ先に音を上げたのが小さい店や事業所の店主やオーナーたち。「こんなんで家賃払えるわけねえだろ!」と、みんな続々と大家さんに要求を始めた。武漢の知り合いの店なんかでもだいぶ負けてもらったりと、結構成功している。ショッピングモールのような、大家さんが共通の場合は店主たちが団結してみんなで集まって「今月の家賃をタダにしろ!!!」と、デモみたいな事になって家賃を負けさせたりしてた。う〜ん、中国人民力すごい! 日本だったら「大家さんも大変なんだから、そんなこと言うのはよくない」みたいなこと言う人がいかにも出そうだけど、これは奴隷化が進みすぎてる証拠。生活もできないのに我慢する必要はない。それに大家さんだってよほどの大資本家でもない限りは貧乏人の一種なので、大家さんは大家さんで団結して「こんな状態じゃ店子は家賃払えるわけないんだから、今年の税金をタダにしろ! あと食えないから食い物をよこせ!」などと政府や金持ちに文句言ったほうがいい。もちろん大家さんにしろ政府にしろ無理なものは無理なので、失敗する可能性もあるが、それはそれでしょうがない。ともかく我慢が美徳みたいなのだけはやめておこう。余裕の時はそれでもいいけど、緊急時にそんなことやってたら死んじゃうので。
 余談だけど、うちの今やってるゲストハウスも去年のものすごい台風で雨漏りしたことがあった。で、大家さん防水工事とかもやってくれたんだけど、それ以外に「雨漏りなんかしたら評判も悪くなるし、実際客泊められなかったし、こんなんじゃ家賃払えませんよ〜」と交渉したら「しょうがねえな〜、じゃあ一ヶ月分はいらねえ!」と、交渉に成功! うわ〜、助かった。ありがとう大家さん、また次もお願いします! さあ、皆さんもやってみましょう〜。

4.真面目に働かない
 世界恐慌状態になると、給料がちゃんと出るんだか出ないんだかわからない状態もありうる。すごいいい職場で信頼関係とかもあるんだったら、みんなで頑張って業績を回復するのもいい。しかし、完全な悪徳ブラック企業みたいな所だったら協力する筋合いはない。ここはひとつ偉大なる先人たちに学んでみたい。
 江戸時代の町人たちが1日に数時間しか働いてなかったのは有名な話。しかも江戸の居酒屋は朝から日没ごろまでが営業時間だったようで、仕事の合間に酒を飲むのは日常茶飯事で、普通にキュッと一杯やって「さあ一仕事やるか!」みたいな感じだったという。まあこれは仕事ちゃんとやってるからまだいい。
 幕末になって開国するとヨーロッパの大商人が日本に進出してくるが、特に現場仕事などでは日本人を雇って働かせる。これがどうにもこうにも真面目に働かず、ちょっと目を離したら勝手に帰っちゃったり、いつのまにか酒を飲み始めてたり、平気で嘘ついたり、欧米人の雇主が頭を抱えていたという。で、困り果てて人手を集める日本人手配師に「頼むから仕事中に酒を飲まない人を探せないか」と頼んだら、「そんな日本人を見つけるのは難しい」と言われたとのこと。
 「勤勉な日本人」というイメージは、明治の富国強兵政策以来、列強と肩を並べようとして戦争に突入していく流れで強引に作られたイメージ。役立たずとか大ウソつきが公然と愛されてる落語が江戸時代にできているのをみてもそれは明らかだ。そう、我々はちゃんと伝統を守り、いにしえから伝わるDNAを受け継ぎ、真面目に働かなくてもいいのだ。頑張るべき時には頑張るのはいいけど、普段はのんびりほどほどに働き、ほどほどの成果を挙げて、それで社会が回るならそれが一番豊かだ。ましてや、世界恐慌で会社がブラック企業化して従業員をこき使いまくりはじめたら、こちらも対抗してすぐに江戸時代に戻ってのんびりやるのがいい。
 今はまだ難しいかもしれないけど、地下文化コミュニティーが育って、いきなり野垂れ死ぬようなことがなく、いざとなったらその地下文化経済圏で食いつないでいけるような社会であれば、何も怖くはない。

5.失敗が許される社会
 世界経済が破綻しているんだから、世の中全員失敗してるようなもの。これは気が楽だ。「成功しないと落伍者だ!」みたいな強迫観念から解き放たれてるので、これはいい。
 瀕死の状態で藁をも掴む状態の金持ちに謎のプロジェクトの話を持ちかけたら、むこうもヤケになってて「ええい、もう一か八かだ」と、間違って乗ってくれるかもしれない。それでうまくいけばそれでいいし、大失敗しても「すいません、やっぱりダメでした! いや〜、不況ですね〜」とか言ってごまかせばなんとかなる。失敗前提なんだから逆に才能を活かせて成功するかもしれない。ただ、いくら普段は貧乏人を食い物にする金持ちとは言え、話に乗ってくれたんだったら、見所のある金持ちとして一応礼儀は尽くそう。ただ、ヤバくなりそうだったら早めに逃げよう。
 仕事だけじゃなく、遊びでも趣味でも失敗していいのはなかなか面白い。そんな世の中では失敗だらけで、何やっても「またダメでしたね〜」などと、ほとんど成功しない。その中で奇跡的に成功したりしたら感動もひとしおだし。それに、今は失敗を恐れて何もできなくなってるような日本社会で、面白くもなんともない。それだったら「さあ、今日もみんなで失敗しよう〜」という謎の明るさの方が、まぐれでいいことが起こりそうだ。

最新の研究によると、株価が暴落すると開き直ったマヌケなやつらが世にはびこり始めることが明らかになっている(たぶん)

離脱せよ! 恐慌時は金持ちと距離をとれ!

 さて、いい加減なことをたくさん述べてきたが、そもそも、よくよく考えてもらいたい。我々は、日々働いてモノやお金を作って、それで生活している。しかし、金持ちたちは謎の財産を取引しまくっており、数字上で資産が増えたり減ったりしていて、それが突然ゼロになったりして大パニックになった時に、なぜ我々がその余波を受けなきゃいけないのか。もちろん経済はいろんなところでつながっているので、いろんな余波がやってくるのは仕方がないとしても、どれだけその影響を受けずに済むかを考えておくのがいい。
 たとえば、すべてを金で解決するような生き方は命取りだ。昔はご近所付き合いとかも含めて助け合いでなんとか乗り切ってきたことも、今は金で解決することが増えた。遊びや健康、子育てから老後、いろんなものがお金と引き換えにサービスを受けることが多くなっている。これは危険だ。金が無くなったり、そのサービスが破綻した瞬間に大混乱になる。
 目指すべきは、たいして金を使わなくても生きていける社会。もちろんこれは貧相にみすぼらしく生きることではない。金をかけなくても済む豊かな社会だ。

 旧世代の人たちが作り上げてきた高度成長期でしか通用しないような金もうけ至上主義社会。そんな未来のないものからは一刻も早く離脱すべきだ。難しくない。具体的にあげてみよう。古いものを大事に使う、友達と一緒に遊ぶ、自分で物を作る、街をウロウロする、面白い情報を人に教えてあげたり教えてもらったりする、みんなでご飯を食べる、映画を見たり音楽を聞いたり本やマンガを読んだりする、大して意味のないことを長時間考えたりする、山に登ってみる、野良犬や野良猫や猿と友達になる、外国語を学んでみる、公園で昼寝をする、家の内装とか車とか自転車などを修理してみる、空き家を見つけたらタダで住んでいいかダメ元で聞いてみる、花がないのに花見をやる、コメ粒の数を数えたり髪の毛の本数を数えたり無意味なことをやってみる、老人に昔の話を聞いたりチビッコに遊び方を教えてもらったりする…。挙げたらキリがないが、まあそんな感じ。こういうことが第一歩で、そこからいろんなことが始まってくる。

 株価大暴落と世界恐慌の時代とは、金に物を言わせる力が弱まる時代。でも金持ち連中は強引に力技に出ようとするので、その餌食にならずに、いかにかわせるかがポイントだ。よし、そうなったら話は早い! 株大暴落と同時に、みんなで一斉に金持ち連中の世界から蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ散って、1ミリでも遠くに離れよう! 逃げ遅れて捕まったらボロ雑巾のようにこき使われる可能性も大。ヤバいヤバい! 逃げろ逃げろ!!! 一目散に逃げて、みんなで公園で昼寝したり昼間から花見したり自由な時間を一秒でも多く確保するしかない。瀕死の金持ち連中は血眼になって追いかけてくるはずなので、一秒でも早く逃げまくろう。大丈夫、安心せよ。奴らは背負ってるものが多いけど、こっちは身軽な大バカなので、絶対こっちの方が足は早い。
 いや〜、株価大暴落と世界大恐慌。楽しくなってきましたね〜。さあ、今回は負けないよ〜。めでたしめでたし。

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松本哉
まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、『世界マヌケ反乱の手引書:ふざけた場所の作り方』(筑摩書房)編著に『素人の乱』(河出書房新社)。