第117回:「コロナ」に関するもろもろのこと(鈴木耕)

「言葉の海へ」鈴木耕

 最初は冗談めかして言っていた「#コロナウツ」だが、どうもほんとうに、日本全国ウツ状態になってきたようだ。そういうぼくも例外ではない。気分が落ち込んでいるし、毎晩見る夢がなんとも暗い……。
 だが、落ち込んでばかりもいられない。きちんと現状を把握して、どう新型コロナウイルスと向き合っていけばいいのか、見極めなければならない。
 ということで、今回のこのコラムでは、新聞やテレビ、それにぼくの友人知己のジャーナリストや研究者などからの情報をもとに、現時点で分かっていることを列挙していこうと思う。気づいたものから上げていく。順不同である。

◎感染者数・死者数は連日、最大値を記録

 日本は本格的にパンデミック(感染爆発)期に突入したようだ。
 4月27日現在、感染者数は約1万4500人、死者数は385人。だがこれは氷山の一角だろう。なぜなら、日本におけるPCR検査数が圧倒的に少ないからだ。例えば1月25日~4月25日の東京の検査数はたった9827件、そのうち陽性者数は3850人。陽性率はなんと40%にも上る。

◎米ニューヨーク州の状況

 ニューヨーク州では、すでに判明した感染者数だけで27万人を超えている。陽性率は約10%だというから、検査数は270万人に及ぶ。ニューヨーク州の人口は約1900万人。東京は、人口は約1400万人だが、3カ月で検査数はたった約1万件。この検査数の圧倒的な違い。東京は、いつ爆発してもおかしくない。

◎ニューヨーク州で抗体検査

 PCR検査とは別だが、この抗体検査で陽性反応は13.9%だったという。したがって、約270万人の感染者がいる可能性がある。現在判明している州全体の感染者数は約27万人だから、ほぼ10倍の感染者がいたと思われる。
 東京の人口は約1300万人。感染者数は4000人ほどだが、実はどれくらい潜在的感染者がいるかは分からない。

◎慶応大学病院の調査

 入院予定者のPCR検査を実施したところ、67人中4人がウィルス感染者であることが判明。つまり、6%の感染率。これもかなり高い。検査数を増やせば感染者数も増える。

◎変死体の感染者

 警察庁の発表によると、この約1カ月で、変死者15体から陽性反応とのこと。ホームレスや独居者がほとんど。だがこれは判明した分だけで、検査されていない変死者も多いというから、弱者への蔓延は一般よりも厳しいと思われる。

◎自宅待機患者の死

 埼玉県で、軽症と言われて自宅待機の方の死亡が報告。大野埼玉県知事は「強く責任を感じる」として、軽症者の自宅待機を改め、すべての感染者をホテルや公共施設へ収容することに決めたと発表。世田谷区でも単身赴任者の死が報告されている。軽症患者が、あっという間に急変、死に至ることもあるということ。

◎医療崩壊の危機

 病院そのものがクラスターとなって、感染者を蔓延させる状況になってしまっている。とくに、東京の永寿総合病院や慶応病院など。病院がクラスターになるとすれば、病人も怖くて病院へ行けない。それこそが医療体制の崩壊である。

◎東京都、連日の「百合子劇場」

 小池百合子東京都知事が目立ちまくっている。矢継ぎ早に記者会見を開いて、横文字を連発。「ステイホーム週間」が最近のキャッチフレーズ。ただし、それは「東京オリンピック延期決定」が決まった翌日からの現象。オリンピックについてはほとんど言及せず。そうとうにズルい。

◎政府の専門家会議に疑義

 当初、専門家会議尾見茂副座長などは「4日間発熱が続いたら検査を受けるように。それまでは自宅待機してほしい」と言っていたが、その後、会議メンバーの釜萢敏氏は「そういう意味で言ったのではない。4日間高熱が続くなら検査を受けてくださいという意味だった」と釈明。批判を浴びる。
 ぼくには、この専門家会議の面々が原発爆発後の「原発ムラの専門家」と重なって見えて仕方がない。

◎記者会見避ける安倍首相

 各知事や自治体首長が頻繁に記者会見を開くのに、安倍首相会見は非常に少ないし、開催してもほとんど質問を受け付けず、一方的な“演説”だのみですぐに退席する。なぜ不安を抱える国民に丁寧に説明しようとしないのか。
 この批判に対し、安倍サポーターは「首相は他の会議や打ち合わせに忙しいから、会見に時間を割いてはいられない」との擁護論。しかし「首相動静欄」をみると、ほとんど連日7時前後には帰宅している。逃げているとしか思えない。
 ドイツのメルケル首相や韓国の文在寅大統領などを、少しは見習ったらどうか?

◎アベノマスクの大不評

 「#アベノマスク」がトレンド入りするなど、超話題の「#あごだし布マスク」だが、配達直後から、異物混入や汚れなどで悪評フンプン。製造各社は未配達マスクについては回収して再検品をするという。
 福島みずほ社民党党首の質問書に対し、アベノマスクの受注元は興和、伊藤忠商事、マツオカコーポレーションのほか1社の4社で、費用は466億円だったはずだが、政府はなぜか91億円で済むと回答。あとの375億円はどこへ消えた? 
 そして、4社のはずなのに、あとの1社の社名は公表拒否、疑惑がもたれていたが、やっと「ユースビオ」なる会社だと判明、と思っていたら、5社目が出てきた。「横井定」という知らない会社。なんか小出しにしている感じ。さて、これらはどんな会社か? 
 マスクの下から利権が漏れる……。
 

◎会見でキレる安倍首相

 いつものことだが、真っ当な批判にもすぐに激高するのが安倍首相。会見で、朝日新聞記者の質問に対し「御社でも高額マスクを販売しているではないか」と反論。これはどうも、右翼評論家のツイートを見ての発言らしい。だがすぐに、このマスクは大阪府泉大津市の繊維メーカーが採算度外視で作った超高性能マスクであることが判明。ツイッターでは「安倍またも炎上」と大恥。はしなくも、安倍首相の情報源の一部がネット右翼であることがバレてしまった。

◎一律10万円給付

 「2割の世帯に30万円」との安倍内閣の対策は大不評。仕方なく、一律10万円給付に変更。だが、これに麻生太郎氏が「手を挙げたものに給付」と余計な一言。結局、「自己申告制」はそのまま。予算組み替え行わなければならない事態に陥った。もはや朝令暮改の域を超えている。

◎東京オリンピックの行方

 森喜朗東京オリンピック組織委員会会長は「再延期は絶対にない。安倍総理の決意だ」と語る。老醜無惨。
 IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長と安倍首相が電話会談。延期によって生じる追加予算は日本側の負担ということで安倍首相と合意、とIOC側が発表。それに対し日本側はその合意はないと反論。IOCはHPからその部分を削除。

◎マスメディアからも中止の声

 東京オリンピックに関して、マスメディアは軒並みスポンサーになっているので、まともな批判もできなかったが、朝日新聞が28日のコラム「取材考記」で後藤太輔記者が「スポーツを文化にするために、五輪を中止し、苦しい人支えて」という記事を掲載。政府のコロナ対策のあまりの無能ぶりに、メディアの風向きも変わるか?

◎臨時交付金の方針転換

 政府は地方自治体への「臨時交付金」を休業した事業者への協力金や支援金に充てることを認める、と従来の方針を転換。自治体の使途の自由を認めた。

◎政府予算

 政府が発表した組みかえ予算に批判続出。医療体制整備費に6695億円、コロナ禍が収束した後での旅行費援助等のGoToキャンペーンに1兆6794億円。それこそ「不要不急」ではないかとの批判。

◎各地方自治体の動き

 政府の検査態勢の遅れ等に、各地方自治体が独自に対策を練るケースが出始めた。ドライブスルー検査(新潟市、江戸川区、新宿区、世田谷区など)や、ウォークスルー検査(江東区)。さらに、東北6県と新潟県では共同で、他県からの流入車をSAでチェックするなどの方策を取り始め、地域でウィルスを防御する体制を作っている。

◎長崎でまたもクルーズ船から……

 長崎港に停泊、三菱重工業造船所で修理中のイタリア船籍の大型クルーズ船「コスタ・アトランチカ号」で、乗員623人中148人の集団感染が発生(26日現在)。

◎岡江久美子さん死去

 4月23日、俳優の岡江久美子さんが新型コロナによる肺炎で死去。63歳だった。

◎アメリカの追加予算

 トランプ大統領が4500億ドル(約52兆円)の、コロナ対策費を追加。前回表明分と合わせ、総計3兆ドル(約350兆円)。一方で、経済活動再開を求める声も高まり、州によっては商店や企業が活動再開し始めるところも現れた。

◎トランプ大統領の無知

 ツイッターで「消毒液が予防に効き目があるなら、それを直接注射したらいいんじゃないか」と会見で発言。あまりの無知に炎上。翌日、CNN記者の質問に「お前のところのようなフェイクニュースを流すマスコミへの皮肉だった」と釈明、さらに炎上。

◎営業パチンコ店を公表

 大阪府の吉村知事は、自粛要請に従わず営業を続けているパチンコ店6店を公表。兵庫県や東京都も追随の構え。ただし、東京都では28日現在、営業中の店はゼロとのこと。だが、大阪などでは公表された店には、いっそう客が押し掛ける状況にもなっている。

鈴木耕
すずき こう: 1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレイボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。1999年「集英社新書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライターに。著書に『スクール・クライシス 少年Xたちの反乱』(角川文庫)、『目覚めたら、戦争』(コモンズ)、『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出版)、『反原発日記 原子炉に、風よ吹くな雨よ降るな 2011年3月11日〜5月11日』(マガジン9 ブックレット)、『原発から見えたこの国のかたち』(リベルタ出版)、最新刊に『私説 集英社放浪記』(河出書房新社)など。マガジン9では「言葉の海へ」を連載中。ツイッター@kou_1970でも日々発信中。