第551回:女性による女性のための相談会、開催します!の巻(雨宮処凛)

 女性の実質的失業者、103万人。

 野村総研が推計した数字である。

 女性のパート・アルバイトで、仕事が半分以下に減り、休業手当も支払われていない層が2月時点でそれだけいるというのだ。昨年12月の推計では90万人だったのが、10万人も増加したことになる。

 新型コロナウイルス感染拡大が始まって早や一年。女性の苦境はこの連載でも書いてきた通りだ。コロナ禍で大打撃を受けた飲食、宿泊という業種では、もともと働く人の約7割が女性だったこと。それ以外のサービス業を支える中心も女性で、多くが非正規だったこと。そんな女性たちがコロナ禍でなんの保障もないままに放り出されてきた。製造業派遣の中高年男性を派遣切りが襲ったリーマンショックとの一番の違いは、支援団体や電話相談にSOSをしてくる女性の多さだ。

 この一年、現場を見ていても、これまでにない規模で女性のホームレス化が起きていることに衝撃を受けるばかりだ。貧困問題に関わって15年になるが、これまで私が出会ってきた女性ホームレスの多くは、DVや虐待など、様々な事情を抱えていた。精神疾患などを抱える人も少なくなかった。そんな様々な要因が重なってホームレス化に至っていたのだが、この一年で出会ったホームレス女性の中には、これまでにないタイプの人が多かった。

 それは、失業のみを原因としてホームレス化した女性。そのようなケースに、これまで私は会ったことがなかった。少なくとも、派遣村があった12年前、困窮した女性の多くは家族福祉に吸収されていたのだと思う。仕事を紹介してもらう、寮にいさせてもらうなどの企業福祉もあっただろう。友人に頼った人もいるはずだ。また、風俗関係の仕事に吸収されていたというデータも一部あるようだ。

 が、今回。コロナ禍で風俗産業も干上がり、頼れたはずの友人も経済的な苦境にある人が多いのだろう。しかし、何より痛感するのは、この十数年で多くの家族がセーフティネットとしての機能を失ったことだ。それなのに企業はより冷酷になり、守ってなどくれない。女性のホームレス化は、この社会が「女性を守る」余力も失った証拠に他ならない。

 そんな女性の困窮は、年末年始の相談会にも現れた。

 コロナ相談村のことは、この連載でも触れてきたが、最終的な統計では相談者は344人。うち女性は62人。派遣村の時は1%以下だった女性は18%にまで増えたのだ。しかも、相談村を訪れた女性のうち、29%がすでに住まいのない状態。ネットカフェや野宿だ。また、42%が収入ゼロで、所持金1000円以下の人が21%。

 相談村では、女性たちのニーズも浮き彫りとなった。

 例えば夫や子どもなどとともに来た女性は、どうしても自分のことより家族を優先させてしまう傾向がある。よって、女性の「困りごと」が聞き出せなかったり、衣類が欲しいと思っていた女性が、男性支援者には言い出せなかったりすることもある。また、「女性の法律家に相談したい」という声もあった。DV被害などを経験していれば、相手が男性というだけで萎縮することもある。それ以外にも、生理用品などの必需品がなく困っていても、男性には言い出しづらいという問題もある。

 コロナ以前から様々な相談会を経験してきたが、中にはカップルで来る人もいる。そのような場合、相談に入ると、男性ばかりが話して女性は一言も話さない、なんてこともある。しかし、何も言わないからと言って相談がないわけでは決してない。彼氏・夫の前だからこそ話せないことは山ほどあるし、DVに悩んでいることだって少なくない。中には自分は望まないのに相手に連れ回され、ホームレス生活を余儀なくされているケースもある。

 だからこそ、このような場合はそれぞれ一人ずつ話を聞くことが重要だ。が、これまでそういった前提もしっかり共有されていなかった。

 ということで年明けから会議を重ね、スタッフが全員女性のみの相談会をしようということになった。以下、詳細だ。

「女性による女性のための相談会」

3月13日(土)午前10時から午後5時
3月14日(日)午前10時から午後5時
場所:新宿区立大久保公園

 カフェスペースもあるので、お茶を飲みながら話もできる。相談は、生活、住まい、家族、妊娠、出産、育児の不安などなどに対応。英語やスペイン語、フランス語、タガログ語など多言語対応もしている。

 また、野菜や果物などのマルシェ(市場)もあり、衣類や生理用品、マスクなども配布。託児もあるので、相談中は子どもを預けることができる。もちろんすべて無料だ。

 相談会に先駆け、3月2日には、相談会のメンバーで小池百合子東京都知事に要請書を直接手渡した。DV被害者などへの配慮や、都が借り上げているビジネスホテルの柔軟な提供などを訴え、「ぜひ相談会に来てほしい」と伝えた。

3月2日、小池百合子東京都知事に要請書を提出!

 コロナ禍で初の試みとなる女性相談会。

 これが女性たちの助け合いのモデルケースになり、全国で同じような相談会が開催されたら。きっとそこから、新しいニーズや新しい支援が生まれていくはずだ。

 小さなことでもいい。今困っていなくても、先のことを考えると不安だから情報がほしい、ということでも大歓迎だ。あなたの困りごとをぜひ、相談してみてほしい。弁護士、支援者、労働組合関係者などの女性たちが相談に乗る(もちろん無料)。公的制度につなげる必要がある場合は、同行支援もできる。

 ぜひ、あなたの声を届けてほしい。

3月1日、相談会の記者会見。実行委員のみなさんと

       

雨宮処凛
あまみや・かりん:作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。格差・貧困問題、脱原発運動にも取り組む。07年に出版した『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版/ちくま文庫)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。近著に『ロスジェネのすべて』(あけび書房)、『相模原事件裁判傍聴記 「役に立ちたい」と「障害者ヘイト」のあいだ』(太田出版)。「反貧困ネットワーク」世話人、「週刊金曜日」編集委員、フリーター全般労働組合組合員。