第136回:新作戦! 居酒屋の座敷持参作戦!〜コロナ禍でも街で飲み歩く方法(松本哉)

 いや〜、コロナもいい加減飽きたな〜。
 チキショー、飲みに行きたい! でも、居酒屋もバーも夜はほとんど開いてない。ヤケクソで開けてる店もあるけど、そういうところはどこも超満員で、このコロナ禍の中でなかなかそこに分け入っていくのも勇気がいる…。テイクアウトという手もあるので、おつまみを買って持ち帰って家で飲むのもアリだけど、それだったら自分で作っちゃったり、スーパーで簡単な出来合いのものを買って帰った方が安かったりする。…それに、何が飽きたっていつも家でチビチビ飲むようなしみったれた感じがもう嫌なんだよね。そう、飲みに行きたいっていうのは、いつもとは違うところで、パーっと開放感がある感じが欲しいってこと。うーん、政府もバカすぎてコロナも永久に続きそうな感じだし、どうにかなんないかね、これ。
 …ところが、酒飲みの執念というのは恐ろしいもんで、飲み歩くなと言われて、ハイそうですかなんて行くわけがない。かといって、感染覚悟で飲み歩くようなヤケクソ作戦以外の、何かいい手はないものだろうか…。そうだそうだ、我々酒飲みはもう我慢ならん!!!!!

 …と、そこでひらめいたのが、客席持参作戦! 飲食店の店内で飲むのが感染防止対策上よくないっていうのは、不特定の人たちが同じ室内で飲んで盛り上がっちゃうから、それはわからないでもない。なるほど、じゃあ客席がダメだっていうなら、レジ袋みたいにこっちが持っていけばいいんじゃないか? マイ客席。それに、店とそれぞれのお客さんの客席が全部分離してれば感染防止も万全だ! そう、自前の座敷とともに街に繰り出し、テイクアウト店を活用しまくり飲み歩く! そうしたら不特定多数の人と接することもないし、外で飲んでる感じにはなる。これは新しい!! よし、これだ!!! やってみよう!

必殺! 謎の移動座敷の作りかた

 そこで、まずうちの店の営業車として活躍するはずだった軽バンを、勇気を振り絞って居酒屋座敷号へ改装することを決意! そう、その車を完全に居酒屋の座敷のような仕様にしてしまおう! どうだ参ったか、これが完成したら各地に飲みに行っちゃうぞ〜。ということで、まずはその御座敷カーの仕様を少し紹介してみよう。そう、人は街に出て酒を飲みたい執念があれば、なんでもできるのだ!

 さて、まずは軽バンの荷台部分に畳を敷いてみた。テーブル席もよかったけど、狭い車内を有効に活用するにはやはり座敷席がベスト。そこに簡単なテーブルを設置し、ひとまず最低限の居酒屋の座敷が完成〜!
 しかし、ここからが酒飲みの執念の本領発揮。酒飲みというのはアル中と違って、酒を摂取できればいいというのではない。いかにいい雰囲気で飲めるかが重要なのだ! ということで、これだけじゃまだまだ居酒屋感が足りない。車の室内灯で飲むのも味気ないので、まずは景気の良さを演出しようと、電飾を車内に張り巡らせる。これはクリスマスツリーについてそうな電飾で、普通に点灯したり点滅したり8パターンも選べるので、ムーディーな照明からパチンコ屋のようなアホみたいに派手な明かりまで、その日の飲み方に合わせて選び放題だ。ビアガーデンのような雰囲気が全開で、これは楽しくなってくる。

居酒屋の座敷! まだまだ改良の余地がありそうだ!

 次に、夏の車内はエンジンを切ると暑くなるので、換気をしたい。これも簡単で、USBで動かせるファンが1000円強で売っているので、それを入手し、板に加工して車の窓に設置。これは意外と簡単にできる。付けてみると意外とパワーがあるので、換気も万全。よっしゃ〜、これで灼熱の車内で飲まなくてもいいし、そもそもコロナ的にも換気は重要だ。おまけに、換気が万全だったら多少ならガスコンロなんかも使えるので、冬には酒を燗してみたり、鍋とかやっちゃったり、…なんてこともできるかもしれない。あ、とは言っても、煉炭自殺でお馴染みの車内なので、火をガンガン使うのはあまりお勧めはできないので、使うにしてもほどほどにしておいた方がいいと思う。
 さあ、徐々に快適になってきたところで、次はお酒の問題。そう、酒類の販売を中止しているところが多いいま、念のためお酒は持参しておかなければいけない。その都度コンビニで買ったりしてもいいんだけど、それじゃ居酒屋で飲んでる感が薄れちゃって、ちょっと興醒めだ。やはり座敷に座りながら「すいませーん、お酒おかわりお願いしまーす」「はいよ〜」と自問自答して即座におかわりを飲みたい。ということで酒類はひと通り準備しておきたいところだけど、ここで問題になってくるのがビール。せっかく居酒屋気分なのに、ぬるいビールじゃちょっとな〜。おまけにここ数年は地球温暖化のおかげで冷たいビールが異常にうまいこの昨今、数少ない温暖化の恩恵を逃してはバチが当たる! 冷たいビールはやはり必須だ。

意外と侮れないのが換気。これで酔い潰れて寝ちゃった後に熱中症で死ぬという間抜けな事態が避けられる!

 そこで、冷蔵庫作戦。まず、お手軽なところでは、車載用の簡易的な冷温庫みたいなものもよく売ってるんだけど、あれはあまりお勧めしない。威力が弱いため、冬はまあまあ冷えるんだけど、夏場なんかは冷やしても庫内の温度は8℃〜10℃程度が限界の場合が多い(本業がリサイクル屋なので、この辺は詳しい)。やはり通常の冷蔵庫と同じように5℃ぐらいまでビールを冷やすことは命よりも大事なことだ。となると、家庭用の1ドア冷蔵庫を積むってのもありうるけど、それだと大きさがでかい上に消費電力も少し大きい。ということで、ここは車載用冷蔵庫の登場だ。これは、家庭用冷蔵庫の半分以下の電力で動く上に、簡易的な冷温庫と違ってコンプレッサーが付いており威力が通常の冷蔵庫並みに強い。新品では安くても1万円ぐらいはしてしまうんだけど、ここは冷えたビールのためと腹を決め、断腸の思いで入手。もちろん中古で探せばもうちょっと安いのが簡単に見つかる。ともあれ冷たいビール作戦、まずは任務完了。
 さてさて。電飾やら換気扇やら冷蔵庫やらって話してるけど、電源はどうするんだって思うかもしれない。が、そこは心配ご無用。エンジンをかけながらっていうのもあまりよくないし落ち着かないので、ここは太陽光発電で昼のうちに蓄電しておくのがいい。ということで、車の屋根の上にソーラーパネルを設置して、そこから雨が車内に入らないようなルートで配線を引き、車内に用意したバッテリーに蓄電。具体的な話をすると、標準的な100Wクラスのパネルを設置したので、夏の晴れた日なら50〜60Wぐらいの発電力はある。で、車載冷蔵庫の方は35W~40W程度の消費電力の上に、しかもサーモスタットでオンオフを繰り返すので常時電気を使うわけではない。つまり、電力の消費より発電力の方がだいぶ上回っているので、昼に充電しておけば楽勝で一晩は冷蔵庫を使えるということ。ちなみにいま導入しているバッテリーの容量は500Wh程度なので、フル充電しておけば20時間以上は冷蔵庫が使える計算だ。当然、曇りの日などもあるけど、さすがに毎日毎日この居酒屋号が出動するわけでもないと思うので、電源は特に問題はなさそうだ。よし、これで我々は永遠の冷たいビールを手に入れたことになる!! やったー、もう死んでもいい!!! ちなみに照明関係などはLEDであれば消費電力などはたかが知れてるし、換気扇も電気は大して食わないので、特に気にしなくても大丈夫だ。

太陽光パネル。連結すれば増設も可能。ちなみに、屋根の上に荷台があるので、将来的には二階席も作ってみよう

 さあ、ほぼ完成も近づいてきたということだけど、電源に余力があるとなったら、ここはもう一ひねりしてみたい。そう、我々酒飲みにとって世界最強の心の安らぎは、やはりちょうちんだ。ちょうちんがあればその時点で祭り的な感じが醸し出され、居酒屋感も倍増し、ややこしいこともなんでもよくなるような、なんとも言えない雰囲気になってくる。そうだ、ちょうちんだ、ちょうちん! あれを付けよう!!! …と、偶然にも店にあった紅白のちょうちん(←リサイクル屋にはなんでもある)を天井に設置し、中にLED電球を入れて完成! すごい! これは居酒屋感が半端ない!!
 試しになかで座ってみると、こ、これは完全に居酒屋だ!!!! よっしゃー、ザマーミロ!!! まあ、まだまだ改装をしていきたいところもあるけど、ひとまずはこれで居酒屋の座敷の体は成してきた。よし!!!! あとは出動を待つのみ!!

新橋奇襲作戦!

 まずどこへ行こうかと思ったけど、この鬱屈したコロナの世界を全部吹き飛ばすぐらいのバカバカしい赤ちょうちん的な居酒屋の世界と言って、誰もが最初に思い浮かべるのが、やはり新橋。ということでこの居酒屋号、まずは手始めに試験運転で新橋を奇襲することに!!!
 そこで、呑んだくれ部隊に名乗りを挙げたのが、台湾から来ているユミちゃんとインドネシアから来てるRizkyくんだ。この二人は時間のある時にうちの店などを手伝ってくれたりしてるんだけど、せっかく海外から日本に来て住んでるのにこのコロナ禍で家でおとなしくしてろっていうのもちょっと酷なので、これはちょうどいい。よし、久しぶりに日本の赤ちょうちんを見せてやる!!! さあ、新橋に出撃だ〜!!
 まずは、いざと言うときのためにビールを冷蔵庫で冷やしておき、さらに派手な電飾と紅白のちょうちんを光らせ、まさに盆踊りか屋形船のような異様な姿となって、そのまま出陣! 高円寺から出発したので、新宿や皇居前、国会前、霞ヶ関などを脇目も振らず突っ切って、タクシーの運ちゃんなんかが「なんだあのふざけた車は!」と恐れをなすのを振り切って、そのまま新橋へ! で、新橋に到着してみると、これがまたビックリするのなんのって、街が異常に盛り上がっている。平日の夜11時ごろに現地に着いたにもかかわらず、飲んだくれサラリーマンたちがたくさんいる! 居酒屋も結構やってるところがたくさんあって、店内は鮨詰め状態のぎゅうぎゅう。路上にはいろんな客引きもいる。最初は、夜の新橋なんて今は誰もいないんじゃないかと思ってたけど、全く逆。なんか、久しく見てない懐かしい光景。ってことは他の街もみんなこんな感じなんだろうな〜。テレビでは「若者たちはいうことを聞かない!」と若者ばかりが叩かれがちだけど、日本社会では老若男女問わずいうこと聞いてない可能性が濃厚になってきた〜! ま、それはどうでもいいや。
 さて、そんな新橋の飲んだくれたちを目の当たりにしたら「うわ〜、楽しそう〜!」とも思うんだけど、ここは心を鬼にして感染防止対策のソーシャルディスタンスの徹底だ! まずは居酒屋座敷号を新橋の飲み屋街の中心部の駐車スペースに留め、その辺のテイクアウトやってる店で焼き鳥などつまみを買う。もちろん酒も仕入れる。で、適当に3人で飲み始める。すると…、これはやばい!!! 車内は完全に居酒屋の座敷と同じな上に、窓からはすぐそばの居酒屋の賑わってる様子が見えるし、路上の酔っ払いの叫んでる声とか、客引きの勧誘の声なども聞こえるという、この臨場感が半端じゃない。完全に外で飲んでる感じ。こりゃあ景気いいな〜! でも、よくよく考えたら、テイクアウトの買い物以外は誰とも会ってない。う〜ん、これはすごい。ただ、自分だけは運転があるのでノンアルコールビールにしといたんだけど、様子があまりに居酒屋感が強すぎて、その雰囲気に呑まれてノンアルコールでもビールに思えるぐらいの破壊力だった! なんだ〜、人と接しなくても開放感って味わえるのか〜! もっと早くからやってればよかった〜!!!! ということで、深夜2時ぐらいまで飲んで、そのまま最高に派手な屋形船みたいな車でまた都心部を疾走して高円寺まで無事に帰還。いや〜、ひとまずの試運転は大成功だ!!

ユミちゃん(左)とRizkyくん(右)。完全に屋形船に乗る観光客

飲んだくれの諸君! 自前の座敷を用意せよ!!!!

 とりあえず、このお試しの作戦では車を使って自前の座敷を用意してやってみたけど、やりようによってはいろんなパターンが考えられる。
 まず車体も、別に車じゃなくてリヤカーを改造して建築物を作って屋形船風の座敷作ってもいいし、それを自転車や原チャリで牽いたら行動範囲も広がる。財力さえあれば大型バスやトレーラーなんかを改造してもめちゃくちゃ面白いと思うけど、それだったら結局は大人数の大宴会になってしまい、今のコロナ禍中のコンセプトには合わないので、今のところはやはり軽自動車以下ぐらいのサイズがちょうどいい。やっぱりイメージとしては、屋形船で越後屋と悪代官が悪だくみをしてるあれぐらいのサイズ感が理想だ。
 そして、今回の試験出動では運転手がノンアルコールにしたけど、実のところ飲んだっていいのだ。運転はできなくなるけど、せっかく座敷に改造してるんだから、そのまま座敷で寝ちゃって、翌日起きてから帰ればいい。または、家までの距離にもよるけど、そのまま運転代行を呼ぶっていう手もある。運転代行はちょっと高いけど、2〜3人で飲みに行くと考えたら割り勘したら結局一緒かもしれない。それに運転代行屋さんなんてコロナ禍で大打撃で死にそうだろうから、わずかな助けにもなれば幸いだ。
 ともかく、みんなが自前の座敷を用意することに成功したら、どんどん街に繰り出すことができるようになる。

屋台の時代が来る!

 この自前の座敷を持参するという人が増えたら、飲む側だけではなく居酒屋側にも異変をきたしてくるかもしれない。例えば、近い将来の居酒屋の周辺には毎晩、無数の謎の御座敷カーやらテーブル席カー、お茶の間カーやら、二人がけソファーを積んだリヤカーとかが続々と集まって来て、それぞれ飲み始める。そうすると、居酒屋で超密状態で若干の不安が頭をよぎりながら飲んでる人たちも、「あれ、羨ましいなあ」「あっちは安全そうだ!」ってなってきて、みんな続々と謎の移動式の座敷を製造するようになる。また、もし川沿いにある飲み屋だったら、その周りには夜な夜な座敷仕様に改造されたイカダとか手漕ぎボートとか白鳥の足漕ぎボートとかが集結してくるかもしれない。いやー、楽しそう!!!
 こうなってくると店側としても、みんなが各々自分の座敷を持ってくるので、もう店なんていらなくなってくる。要は厨房だけあればよくて、あとは注文があった車やリヤカーやイカダに料理やお酒を運んで行って届ければいい。つまるところ、屋台と駐車駐輪スペースがあればそれで十分だ。川なんてそれこそ屋形船スタイルで、店側は船の上で調理する厨房船で営業して、客のイカダや手漕ぎボートはその厨房船めがけて漕いで集まって来てドッキングして飲む感じ。完全に国際宇宙ステーションスタイル。やべー、絶対楽しい!

 とまあ、そんな未来の妄想はこの辺にしといて、ひとまずの仮完成を見た謎の居酒屋座敷カー。徐々に改良を重ねながら、進化を遂げていきたい。もしロックダウンなんかになっても、ビクともしない。そうなったら暗黒の街を眺めながらサファリパークのように居酒屋号を出動させて、いろんなところで飲んだくれちゃおうかな〜。

誰がどう見ても焼き鳥。これが新橋の焼き鳥か!!! 懐かしい!

ちなみに、この原稿を書いている最中にも新アイテムをゲット。居酒屋の暖簾。そして、座椅子をやめて座布団に変更。次は壁と天井をもう少し居酒屋風に変えたいな〜

       

松本哉
まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、『世界マヌケ反乱の手引書:ふざけた場所の作り方』(筑摩書房)編著に『素人の乱』(河出書房新社)。