第574回:衆院選、終わる。の巻(雨宮処凛)

 衆院選が終わった。

 蓋を開けてみれば、維新が4倍近く議席を増やし、自民党は議席を減らしたものの、「絶対安定多数」を確保。

 一方、野党共闘はどうなったかと言えば、多くの候補者が涙を飲んで実現した一本化だったにもかかわらず、立憲民主党も、そして共闘に多大な協力をしてきた共産党も議席を減らす結果となった。

 無残、としか言いようがない気持ちである。そうして込み上げてくるのは、今回の衆院選を通して、ずっと抱いていた立憲民主党執行部への違和感だ。

 多くの候補者と政党が調整のために日々汗を流しているというのに、「野党共闘とはみなさんが言ってるだけで使ったことはない」などとわざわざ口にする枝野氏。

 そうして候補者の調整を巡ってゴタゴタが起きた東京8区の件。山本太郎氏の出馬表明を受けて地元が反発、3日後に8区からの立候補を取り下げたというアレだ。

 もちろん、地元で地道に準備してきた人は尊重されるべきだが、今回の総選挙、山本太郎氏がどこから出るにしても、その抜群の知名度と発信力を生かし、野党共闘のアイコンとしてガンガン衆院選を盛り上げるという手があったはずだ。そうしてメディアにどんどん取り上げさせれば、野党共闘全体に旋風が吹き、大逆転が起きる可能性だってあったのに、なぜ、山本氏に対して徹底した冷遇を続けたのか。

 多くの人が指摘していることだが、私自身もまったく同じ思いだ。なぜ、この絶好のチャンスを最大限に生かそうとしなかったのか、甚だ疑問である。

 さて、そんな選挙結果を受け、投開票日から2日後、枝野氏は辞任を表明。言いたいことは山ほどあるが、これだけのチャンスを生かせず、野党共闘に期待する人々のやる気を削いだ罪は大きいと思う。

 もうひとつ残念だったのは、女性議員が47人から45人に減ったこと。特に、辻元清美氏の落選は痛い。また、候補者として、ジェンダー問題に取り組む池内さおり氏や、無戸籍問題に詳しい井戸まさえ氏が当選できなかったことも残念でならない。多様性と言うのであれば、女性の数が1割なんてありえない話なのだ。

 そんな中、唯一と言っていいくらいの希望は、れいわ新選組の躍進だ。

 東京8区のゴタゴタの末、山本太郎氏は選挙区ではなく比例で出ることになったため、投票用紙に「山本太郎」と書くと無効、「れいわ」と書かないと一票にならない厳しい選挙となった。山本太郎氏が国会に戻れるかどうか。そんな不安でいっぱいだったものの、なんと3議席を獲得。「れいわ旋風」と言われた19年夏の参院選228万と並ぶ221万票を獲得した。

 今、私は、れいわ新選組の議員が2人から5人に増えたことに、心からほっとしている。

 なぜなら2019年の参院選の際、山本太郎氏とともに、現参院議員で難病・ALSの舩後靖彦氏を口説きに行ったという経緯があるからだ。

 人工呼吸器の音が響く舩後氏のベッドの横で、「国会で一緒に闘いませんか」と熱心に語りかける太郎氏を見て、「この人、ホントに空気読まないんだな……」とちょっと引き気味だったものの、それ以前にも立候補経験があった舩後氏は数日後には覚悟を決めた。それからすぐ、重度障害があり、車椅子の木村英子氏の立候補も決定。障害がある二人は「特定枠」で優先的に当選するというルールを聞いた時、「もし、舩後さんと木村さんだけ当選したら……」と不安が込み上げたのを忘れない。

 「もしそんなことが起きたら、『障害者国会置き去り事件だね』」なんて木村英子さんと冗談で話したこともある。

 しかし、19年の参院選、蓋を開けてみれば、山本太郎氏は、その年の参院選比例代表に立候補したすべての候補者で最高となる97万票を獲得したものの、落選。重度障害がある二人だけが国会に、という展開となった。

 一体、どうなるんだろう?

 どう考えても、到底不可能なチャレンジに思えた。

 しかし、2人の議員が生まれたことによって、国会はバリバリと音を立てて、具体的にバリアフリー化されていった。そうして有能な秘書やヘルパーの助けを借りて、2人はこの2年以上、多くの仕事を成し遂げた。

 文教科学委員会に所属する舩後さんは多くの国会質問をし、インクルーシブ教育の重要性を訴えている。コロナ禍では、自らも世界でただ一人の「全身麻痺ギタリスト」であることから、アーティストへの支援を巡り、重要な答弁も引き出した。

 木村英子さんは国土交通委員会に所属し、新幹線や多機能トイレなどの質問をしたことで、現実を変えている。木村さんの質問をきっかけとして、新幹線の車椅子スペースが見直され、現在、すでに車椅子スペースが増設された新幹線が走っている。それだけではない。多機能トイレや車椅子専用駐車場の設計基準も改正されたのだ。

 失礼を承知で言うと、私は二人の議員が国会で、ここまで重要な仕事をどんどん成し遂げていくなんて想像していなかった。しかし今、2人は自らの障害を強みとして議員活動を続けている。その姿は、「水を得た魚」のようだ。そういう意味では、れいわ新選組は、超高学歴エリート男性がほとんどの国会議員が最近こぞって口にする「多様性」という言葉を体現する存在だ。

 なんといっても党首は中卒。ALSの舩後さんは全身麻痺で人工呼吸器をつけていて、木村さんは車椅子で24時間介護が必要な身。そうして今回当選したたがや亮氏は飲食店経営者。大石あきこ氏は大阪府の元職員で、知事時代の橋下徹氏に抗議の声を上げた女性である。

 こんな形で、どんどんいろんな当事者が国会に増えていったら、少しはこの国も風通しが良くなるかもしれない。

 なんてことを考えていたら、次の参院選がもう楽しみになってきた。ここからまた、ワクワクする戦いが始まる。

*記事を読んで「いいな」と思ったら、ぜひカンパをお願いします!

       

雨宮処凛
あまみや・かりん:作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。06年より格差・貧困問題に取り組む。07年に出版した『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版/ちくま文庫)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。近著に『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(光文社新書)、『学校では教えてくれない生活保護』(河出書房新社)、『祝祭の陰で 2020-2021 コロナ禍と五輪の列島を歩く』(岩波書店)。反貧困ネットワーク世話人。「週刊金曜日」編集委員。