第594回:高円寺「やっぱり再開発いらないパレード」。の巻(雨宮処凛)

 あなたの好きな街はどこですか?

 そう問われたら、あなたはなんと答えるだろう。

 自分の住む街が大好きという人もいるだろうし、今は住んでいないけれど生まれた地元という人もいるだろう。いつか住みたいという憧れの街がある人もいるだろうし、まだ訪れたことのない国のここに住みたい、という希望を持つ人もいるかもれない。

 さて、私が好きなのは、ズバリ高円寺だ。

 中央線の街。平日昼間の飲酒率が高い街。商店街のマスコットキャラクターの名前が「サイケデリーさん」という街。街全体が居酒屋のような、そんなおおらかでめちゃくちゃでいろんな国の人々が雑多に入り乱れるカオスタウン・高円寺。輝かなくてもいい街。サンダル履きで道端でチューハイ飲んでても誰も変な目で見ない街。

 そんな高円寺に再開発の話があるということは以前から知っていた。

 この話を高円寺を知る人にすると、みんなが口を揃えて言う。

 「高円寺からカオスをとったら何も残らない!」「普通の綺麗な街にしてどうするんだ!」

 2018年には、再開発に反対して「高円寺再開発反対パレード」が開催されている(詳しくはこちらで。ちなみにイベントについてはこちら)。

 あれから、3年。コロナ禍でなかなかデモができない期間を経て、5月15日、満を持して「やっぱり高円寺再開発いらないパレード」が開催された。

 久々の、3時間近くにわたる祝祭的なデモ。

 今もまだ、余韻の中にいる。

 一言でいうと、めちゃくちゃ楽しかった。

 デモ隊の先頭には、高円寺を体現するようなバンド「ねたのよい」などがライヴを繰り広げるバンドカー。

 2台目には、4月23日の西荻窪の再開発反対デモで初めて投入された高円寺の最終兵器・「移動式居酒屋」の呑んべえ号が「ビール400円」「赤ワイン400円」「ウーロンハイ400円」などの「お品書き」をはためかせ、大量の酔っ払いを引き連れて歩く。ああ、デモ隊に居酒屋がある安心感。

 3台目はDJカー。そして4台目はラグジュアリーカーと続く。

パレードスタート!  バンドカーのトップバッターは「ねたのよい」

DJカー!

ラグジュアリーカー!

 デモ隊には、色とりどりの髪のパンクスもいれば、「高円寺むげん堂」的な人々、着物姿の外国人などまさに「雑多な高円寺」そのままの人々。デモ前スピーチでは、中国から来ている真っ赤な髪のパンクス女子がスピーチしたかと思えば、商店街の「斉藤電気サービス」のおじさんもスピーチするという地元密着ぶりだ。

 特筆すべきは、この日、東京各地で再開発に晒される地域の人々も参加していたということ。
 「せんべろの聖地」である立石をはじめとして、板橋や石神井、練馬などなど再開発や道路建設に「待った」をかける人々も参加。各地の連帯が確認されたのだった。

 しかも立石の名称は「のんべえの聖地を守る会」。小さな店が密集する飲み屋街を再開発から守りたいという高円寺ののんべえたちの掲げる理念とまったく同じだ。さらにこの日は、高円寺のように駅前に飲み屋が密集する西荻窪でも再開発反対デモが開催。昭和にタイムスリップしたような飲み屋街は世界遺産レベルだと思うのだが、そこにタワマンとかを建てようなんて愚の骨頂。とにかく、あらゆる場所で住民の思いを無視して似たような話が進行しつつあることが確認できたのだった。

各地の連帯

 再開発したい側は、「防災」などと口にする。しかし、真の防災は「地域の人々の顔が見えること」だと思う。

 実際、3・11の時など、高円寺では「あそこのおばあちゃん、一人暮らしだけど大丈夫か」などと商店街の人が様子を見に行ったりする姿が多く見られたという。そんなふうに当たり前に助け合うコミュニティが色濃く残っているのである。若者も多いけれど、高齢者も安心して暮らせる街だと地元の人々も口を揃える。

 そして昨今、世の中では孤独死の増加などを受けて、「コミュニティの再生」に力を入れる行政の姿があるわけだが、現在再開発に晒されている多くの場所には、濃密なコミュニティが存在するわけである。それをなぜ、わざわざ潰そうとするのか。多くの自治体が再生させようとやっきになっているものがせっかくある場所を、一度失われてしまうと取り戻すには膨大な時間がかかるものを、なぜ、破壊するのか。

 それは再開発をしたい人々は、そこに住む人ではないからだろう。「再開発」でぼろ儲けしたい人々だからだろう。だからこそ、そこに根ざし、人生をかけてお店をやっていたりする膨大な人々の声を無視するような再開発はやっぱり、どう考えてもおかしいと思うのだ。

 さて、そんな再開発問題を抱える杉並区は、6月に区長選を迎える。

 この日のデモには、杉並区長選予定候補者の岸本聡子さんも参加。デモ後のイベントにも登場し、地域の人々と意見交換をしていたのだった。

 「たかが一地域のローカルな問題」と思う人もいるかもしれない。が、この問題は、世界各国で起きている「ジェントリフィケーション」の問題でもある。コロナ禍でもう2年以上海外に行けていないが、日本でも海外でも、再開発され、似たような街並みになった地域に魅力を感じない人は多いのではないだろうか。

 寛容で、ゆるくて、いろんな人を受け入れる街。「移動式居酒屋」がある光景に違和感がない街。そしてそんな街だからこそ世界中の人に愛されている高円寺。実際、この日のパレードには、台湾からも応援のメッセージが寄せられた。

 区長選の行方も含め、注目していてほしい。

移動式居酒屋の前で「ねたのよい」のでぃさん、まるちゃんと

全世界統一行動!

デモのあとのイベントにて。一番左が岸本さん。

4月の西荻パレードでの移動式居酒屋

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雨宮処凛
あまみや・かりん:作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。06年より格差・貧困問題に取り組む。07年に出版した『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版/ちくま文庫)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。近著に『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(光文社新書)、『学校では教えてくれない生活保護』(河出書房新社)、『祝祭の陰で 2020-2021 コロナ禍と五輪の列島を歩く』(岩波書店)。反貧困ネットワーク世話人。「週刊金曜日」編集委員。