第145回:日本開国ついに迫る! 国際マヌケ交流再開への準備と大阪WHYフェスティバル決行!(松本哉)

 

 謎の奇病=新型コロナの登場から早くも3年が経とうとしており、すなわち鎖国状態も3年近くが経とうとしている。ただ、最近はさすがに国境を徐々に開いていこうということになっていて、各国ではすでに自由に出入りできるところが多くなってきて、日本もいよいよ今月から一般観光客も受け入れていくという。ま、コロナはひとつ置いといて、とりあえずついに開国! いやー、待ってました〜!! また大マヌケな有象無象たちが国境を跨いでウロチョロする時代が再来すると思うだけで楽しくなってくる! さあ、開国となったら、こっちもオチオチしてられないので、準備に取り掛からねばならない!!!

韓国無目的訪問で、アンダーグラウンドの胎動を知る!

 ちなみに、日本より一足先に開国に踏み切ったのはお隣の韓国。韓国は9月上旬から大幅に観光での入国制限を緩めることに踏み切った。
 …ってわけで、早速行って参りました、韓国。何があるって、特に何の目的もない。動物園でも刑務所でもそうだけど、閉じ込められてる人たちってちょっとでも隙を見つけたら、みんな一目散に抜け出して野山に走って逃げていく、自分もそんな感じ。韓国が国境を開くっていうニュースを見た瞬間にチケットを見てみたら楽勝で買えたので、とりあえずその勢いでそのまま韓国へ。さっさと成田空港に行って、久々に乗る飛行機が離陸する瞬間に「ザマーみやがれ、べらぼうめ〜。こんな狭っ苦しいところにいつまでもいられるかってんだ〜」って感じが湧き上がってくる。いやー、気持ちいい! もし来世で動物園の猿にでもなったら絶対に脱走しよ。

 そして、いざ到着すると、これがまたヤバい。「久々の外国だ〜」なんて気分に浸ってるヒマなどなく、「韓国に来てしまったー」とかSNSに投稿した瞬間、続々と韓国のアンダーグラウンド文化圏のヤバい友達たちから「おい!!! お前いまソウルにいるのか!?」とか「今晩何やってる?」などと連絡が死ぬほど来まくる。これはいつものパターンだ〜!! 完全に3年前まで各国に遊びに行っていた時と同じ現実が蘇る。
 問題は、会う人会う人、全員が3年ぶりなので、「うわー、久しぶりだー!!」というテンションで全員と会うので、もう死ぬしかない。とりあえず飲むしかねえ! しかも、お決まりの「最近どう?」って会話から3年分の話が始まるので、みんな色々ありすぎていよいよ帰れない。ただ、その人個人のやってることから韓国の社会情勢まで、いろいろ3年分の話が洪水のように押し寄せるので、すごい新情報満載で面白いし、ためになる。逆にこっちも3年分の日本での話がある。当然、向こうにとっても、久々のよそ者が珍しくて楽しい感じだと思う。みんな「いや〜、やっと海外から人が遊びに来るようになった〜。やっぱこういうのがいいねー」と喜んでる。うーん、わかる! その感覚!!

 ともかく、今回の訪韓は本来は何の意味もなく、正月の年始の挨拶回りみたいなもんで「どうもどうも、今後もよろしくお願いします」ってぐらいのもの。で、とりあえずいろんな人に会いまくったり、友達がやってる店なんかを回ったりして「よう、またちょくちょく来るからなー」って感じでウロチョロしてた。そこで思ったのが、みんな口を揃えて「いやー、早く日本に遊びに行きたい〜!」と、とんでもなく来たがってて、ものすごく楽しみにしてること。もちろん日本だけじゃなくて、友達のいる国にはどこにでも行きたいんだろうけど、ともかく自分が成田空港から離陸時に思った感覚と同じように、「同じところにずっといて、もう飽きたー」って感覚だろう。いや〜、これ日本開国のあかつきにはみんな大挙して押し寄せそうな予感!!! いやー、こりゃ楽しくなってくるぞ〜。

12年ぶりの再会! 韓国ソウル、Shiva Pubにて

 そうだ、久々の韓国でちょっと面白かったことがあった。
 今回、ソウルの友達たちが「みんながよく行くいい店があるよ」ということで、「Shiva Pub」という飲み屋に連れて行ってくれた。韓国は再開発のペースが日本より早く、せっかく面白い店があってもどんどん変わっていってしまうことが多い。そんな中でこの店はもう15年ぐらいはやってるようで、一昔前のソウルのカウンターカルチャー系の店の感じが残ってて貴重な場所だとのこと。実際、店にも社会運動系の本なんかが置いてあったり、面白いライブやイベントなどもたまにやってるとのこと。日本もそうだけど、ただオシャレなだけで中身なしみたいな店があふれる中で、こういう店って大事だよな〜。
 …なんて思ってみんなと飲んでたら、そこの店長がやってきて「松本哉か!」という。そうだというと「12年前にソガン大学鍋集会で一緒に飲んだことあるよ!」と言ってくる。なに〜!!! あ、あの時にいたのか〜!!!!! と、まさかの再会!
 そう、確かに12年前、ソウルのソガン大学というところで鍋集会をやったことがある。ま、要は大学のキャンパスで突如鍋を始めて大宴会をやり、大パニックにして死ぬほど仲間を作るというもので、自分が大学時代によくやってた作戦を韓国でもやってみよう、って感じ。以前韓国で出版した本の中にもその話が書いてあり、それで韓国の人たちが「それ、韓国でもやりたい!」→「いいね、やろうやろう!」といういつもの安易な流れで、なぜか主催することになる。ただ、自分は完全に謎の外国人で、韓国語だってロクに使えない。にもかかわらず、みんなに乗せられてメチャクチャな韓国語と落書きみたいなイラストのチラシを大量に印刷してソウル各地にばら撒きまくる。そして、空港でレンタルした携帯電話の番号を勝手にデカデカとチラシに書いて宣伝したので、死ぬほど電話がかかってくる! そんな感じで強引に大宴会を決行し、見ず知らずのたくさんの人たちと死ぬほど飲みまくる。いやー、言葉の通じない海外でもやればできるのか〜、とビビったイベントだった。で、その参加者の中の一人の学生が「店をやって面白い場所を作りたい」みたいなことを言ってて、「それはいいね〜!」みたいな話をした。

 で、なんと! その時の大学生が、いま目の前にいる現在は重要スポット「Shiva Pub」の店長。店自体はもう少し古くからあるんだけど、初代店長から後を引き継いで店をやってるとのこと。いや〜、そんなことがあるのか〜! というか、学生や若者たちと話してて「何かやりたい!」という人は多いけど、なかなか実現に至らないことも多い。でもこの店長、学生の頃に話してた野望をそのままちゃんと実現して面白いスペースを運営してて、周りからも一目置かれる店を実現してる。すごい!!! 「すげーな〜」っていう尊敬の念もあるし、「あの時の若造がよくやったな〜」っていうバカスペース作りの先輩としての親心も湧いてきたり、とにかく感動した。

 近年は海外に友達を作りまくって地下文化繋がりを増やしまくってて、友達の友達が偶然繋がってたみたいな横の謎のネットワークでビビることも多いけど、「あの時のアイツが今こんなことを!」っていう時空を超えた縦の動きでビビるのが国際規模で起こってくるのはすごく新鮮。よく考えたら、いま高円寺でやってる自分がやってるスペースやイベントだって、15年以上前にヨーロッパや中国などに行ってヒントを得たことを活かしてやってることだってあるけど、その当時の人たちに突然会って説明したら向こうは相当ビビるはず。いや〜、みんな知らず知らずのうちに種を蒔いたり蒔かれたりして、時を超えて続々と面白いことが発生してくる。これが地下文化の面白いところで、刈っても刈っても生えてきて誰も止められないね、これはもう。

 まあ、そんなことで久々の海外は、久しぶりに国境をこえたアンダーグラウンドの蠢きを感じて最高な予感を味わいまくって帰ってきた。しかも、海外と言っても超近所のお隣の韓国。これはいよいよ世界中でとんでもないことになってるに違いない! しかも各国の奴らみんなコロナ鎖国の2〜3年間でヒマだったはずなので、無数の新作戦が生まれてるに違いない。いや〜、これは大変なことになってきそう〜〜〜。

ついに交流準備開始! 大阪でWHY Fes. Vol.2開催!!

 さあ、そんな韓国の雰囲気を味わってハッと我に返り、海外の様子を少し探ってみると、各国の奴らも同様に新たな動きを見せていて、ちょっと連絡しても「早く遊びに来い!」とか「すぐ日本に行く!」などと不穏なテンションの奴らばかり。これは間違いなく物凄いことが起こる前触れ。確かにコロナ鎖国中も、「これだけ閉じ込められたり行動を抑制されたら、後で反動がすごいことになるだろうな〜」とは思ってたけど、まんまとそうなりそうな予感。
 こりゃ大変だ!!!!!! 呑気にやってて大量の奇襲をくらったら心の準備ができないままテンヤワンヤになって対応不能に陥ること必至!!! やべえ〜、これはウカウカしてられねえ!!

 ということもあり、まずはウォーミングアップ作戦ということで大阪で無限の交流の準備に取り掛かるイベントを開催することになった。かつて2016年に「NO LIMIT 東京自治区」という各国地下文化圏のやつらとの交流イベントをやって以来、続々と海外の大バカな仲間たちと交流を続けてきた。そしてコロナ鎖国の中断を経て再開を前にして、肩を温めるイベントを開催しておくしかない。

 とりあえず、呼びかけ文がこちら。

WHY Fes. Vol.2!!!!!!!!!!!!!
謎の無限交流イベントが大阪にやって来る!!!

鎖国が始まって、はや3年。
そのおかげで“国境”の存在は増すばかりで、世界各地ではさまざまな軋轢や紛争も頻発し、どうにもこうにも窮屈になる一方の今日この頃。
ところが、いよいよその国境も徐々に開かれて、これからは少しづつ国を超えた人の交流も戻ってきそうな予感!! さあ、そうとなったら話は早い。やることはひとつ。

3年前まで、そんな“国境”の存在をぶち壊しにかかろうと、主にアジア圏を中心にアンダーグラウンド文化の交流を活発に行っていた、東京・高円寺や大阪などの大バカな奴らがついに動き出した!! そう、来たる開国と同時に一挙にアホみたいなテンションで国際交流を再開するための準備とウォーミングアップのような計画が急浮上! そんなことで、DJやライブのイベントから、展示やトークショーなど脈略のないイベントが頻発してしまう3日間!
海外からとんでもなく狂った地下文化圏の仲間たちが押し寄せて来たり、逆に日本から蜘蛛の子を散らすように一斉に海外に出て現地のアンダーグラウンド圏と交流しに行く、その直前の予行演習がついに始まった!!!!

諸君、遊ぶしかない!! 

 そう、こんな感じ。
 あ、ところで「WHY FESTIVAL」ってなに? そう、これにはまた深いわけがある。
 同じく、宣伝チラシから引用してみよう。

「WHY FESTIVAL」とは?

世界各地には金もうけや出世とは一切関係のないところで、とんでもなく面白いことをやりまくってるやつらが大量にいる。
やばいミュージシャン、とんでもない芸術家、わけのわからない店やスペースやイベントを運営してる人などなど… で、そういうやつらに共通してるのが、なんでも金や成り上がりに繋がってないと文句言われがちな社会に対抗して「自分たちのやりたいことを自分たちの手で自由にやる」という精神だ。そんな共通感覚もあってか、どこに行ってもわりとすぐに仲良くなってしまう。しかし、一方で国家レベルではすぐケンカしてたり金の奪い合いをしてたりと、バカバカしいにもほどがある?!! そんなやつらを相手にしてたらアホが移るので、こうなったら国を越えて各地の勝手なことやってるやつらで結託して遊びまくってしまうしかない。
そして、そういう遊びや結託は、誰が言い出すでもなく自然と湧き上がるもので、気付いたら「あれ? うちらなんでこんなことやってるんだっけ!?」と、ふと我に返ることもあるけど、それはもう後の祭り。すでに無限の連鎖は始まっているのだ。
それがWHY FESTIVAL。

 と、まあこんな感じ。ちなみに、なぜ「WHY Fes. Vol.2」なのかというと、実は1回目は2018年にインドネシアで行われたノーリミットジャカルタの名称がWHY FES。企画段階でジャカルタの人たちがたくさん手伝ってくれたんだけど、てんやわんやで準備してる最中に「あれ? ところでうちらなんでこんなことやってるんだっけ?」とジャカルタチームが気づいてしまい、WHY FESになった(笑)。当時も、めちゃくちゃいい名前だなー、と思っていた。

 そして今回。実のところを話すと、最初のキッカケは高円寺の「ねたのよい」というバンドのライブが大阪で決まり、メンバーののでぃ氏が「松本さ〜ん、せっかくだからそのタイミングでまたみんなが集まってやる祭りみたいなイベントやろうよ〜」とベロンベロンに酔っ払って言ってきた。「いいね〜、やろうやろう」と例によってノリに任せてると、なんだか知らないけどいつの間にか本気でやることになっていて、そのうちいろんな人から「松本さん、大阪の企画どうなってますか?」とか「手伝います!」「行きます!」みたいなことをやたら言われるようになってきた。えっ、俺!? 完全に寝耳に水で「ええっ、俺がまとめ役やるの!?」という感じ。こういう貧乏くじはもう慣れてるので、こうなった以上は腹を括るしかない。これは一大事だと、各方面の大阪の友達に連絡して「こういう感じの企画やりたいんだけど何かいい場所とかある〜?」と聞きまくってたら、いつも大阪に行った時に遊んでる大阪呑んべえチームが「これは一大事だ!」と、動き始めてくれて、完全に大阪が大混乱に!! 「どうしよう」→「これは一大事だ!」→「どうしよう」→「すわ一大事!」。この連鎖で、このはた迷惑なイベント企画が燎原の火のごとく広がっていく。そして、発端ののでぃ氏は何事もなかったかのように、高円寺で飲んだくれる日々!! そして、挙句の果てには「松本さん、イベントの趣旨を書いてください」と頼まれる。なに〜、趣旨!? それ俺が決めるの!? そう、この原稿でさっき書いてきた、もっともらしい大阪の理由はウソで、一晩頭を抱えて苦肉の策で無理やりこじつけたもの。もちろん、確かに韓国でもあんな感じだったし、各国の奴らの熱量も暖まりまくっててやばいことになってるのはその通りで、みんなを迎える準備が必須なのも確か。よし、じゃあこの謎に巻き込まれた大阪計画でウォーミングアップだ!!!!!! そんな感じ。要するに、自分も、大阪呑んべえチームも、東京チームも全員がWHY状態。のでぃ氏も「みんな準備で大変そうだなぁ」とWHY状態。どうなってるんだ!! いったいなにが起きてるんだ!!!

 しかし諸君、うろたえてはいけない。これは歴史が求める必然なのだ。いまこそウォーミングアップをしておく絶好の機会に違いない。たぶん。そう、人間、我に返ったら負け。コンチクショー、こうなったらヤケクソだ〜。ええい、どうにでもなりやがれ、やっちまえWHY FES!!!

 という訳でみなさん! 大阪で待ってます。勢いに任せた謎すぎる肩慣らしに集まるしかない! そして、そのままの勢いで世界マヌケ交流に再突入します!!!!

WHY FESTIVAL Vol.2 OSAKA
2022年10月21日(金)〜23日(日) 大阪市内にて
▼最新情報はこちらから!
http://musicadeira.com/whyfes2022/


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松本哉
まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、『世界マヌケ反乱の手引書:ふざけた場所の作り方』(筑摩書房)編著に『素人の乱』(河出書房新社)。