第290回:自民城、炎上落城(鈴木耕)

「言葉の海へ」鈴木耕

“安倍組”崩壊近し

 沈没船から逃げ出すネズミ……という感じがしてもおかしくない状況だが、このネズミたちは、自民船は沈まないと思い込んで(信じ込んで)いるようだ。自民船はヨレヨレながらも漂い続けるかもしれないが、しかしメインマスト(アベノマスト)には大きなひびが入って折れかけている。もう船としての機能は失われた。
 “安倍組”は完全に統制が効かなくなっている。なにしろ、親分が死んで小頭たちが自分のことで精一杯、子分どもの面倒を見ている余裕がないのだから、統制なんかいきわたるわけもない。そうなるともうメチャクチャ。これだけバレちゃえば、もう“みかじめ料”も入ってこないだろうしねえ。
 さっさとゲロしてしまって検察のお赦しを願おうというつもりか、どうせ副大臣はクビなんだからとケツをまくったのか、こんな方もいらっしゃる。そしてそれが連鎖し始めたというのだ。朝日新聞(12月15日付)。

宮沢氏の「告白」大きな波紋
「安倍派、崩壊していく音が聞こえる」
「派閥から収支報告書に記載しなくてもよいと指示があった」
「派閥の方から『しゃべるな』と」

 安倍派の宮沢博行前防衛副大臣の13日の「告白」は大きな波紋を広げた。同派若手は「安倍派が崩壊していく音が聞こえる。宮沢さんみたい人がちらほら出てボロボロになる」と語った。
 「予言」通り、14日に内閣副大臣を辞任した堀井学衆院議員も5年間で1千万円を超える裏金を作り、秘書が事務所経費として使っていた可能性を朝日新聞の取材に明らかにした。「副大臣職を降り、一議員として説明責任が課せられているので、話した」と語った。(略)

 なんだか笑っちゃうしかないな。
 この宮沢氏、防衛副大臣だった11月29日には米軍のオスプレイ墜落事故に関し「最後の最後までパイロットが頑張っていらっしゃったので、不時着水」とわけの分からない説明をなさった方だ。それが今度はペラペラと派閥の内情暴露。おかげで、安倍派のデタラメ運営ぶりが明らかになったのだから拾い物だったけどね。
 続いたのが堀井学さん。「一議員としての説明責任」だと言う。この言い訳も不思議だ。副大臣という要職にあったら、もっと責任が重いはずなんだけどな。
 話はまるで変わるけれど、この人、スピードスケート選手だった頃は、頭をきれいに剃り上げていたはずだったよね。今回突然、ふさふさ髪での登場、驚いた。
 でもさ、スポーツ界で栄光を極めた人が、この人といい橋本聖子さんといい、古狸の政治家どもにうまく使われているみたいで、なんだかみじめな感じがする。そういえば、橋本さんもキックバックの裏金をずいぶんたくさん手に入れていたとか。
 「正々堂々のスポーツマンシップ」なんてものは、スポーツをやめた途端に失くなっちゃうのかねえ、悲しいもんだ。

多士済々の“安倍組”

 “安倍組”の中でもすっごく面白かったのは谷川弥一衆院議員。
 記者にキックバック資金について問われると、やおらペーパーを取り出して読み始め、更に問われると「頭悪いね、だから言ってるでしょ、言った通りだよ」と逆ギレ。まことに見事な対応というしかない。
 頭悪いのはどっちですか、とはあまりに図星だから、さすがに記者も問い直すことはできなかったようだが、なんともひどい対応。ぼくは「さすが安倍組員だ!」と拍手喝采をしてしまったよ。
 なにしろこの谷川議員、国会質疑で質問に立ったのはいいけれど、聞くことはまるで無内容。で、時間を持て余したものだから、なんと「般若心経」を唱え始めたという剛の者。さらにこの人、政治活動費に「花代(芸者遊びの料金)」を計上したことがバレ、それを問われたら「長崎の芸術文化だから」と開き直ったという過去まで暴露されてしまった。いったい何のために国会議員になったのやら。
 長崎3区の有権者のみなさん、凄まじい方を選んでくれましたね。ちょっと恥ずかしくはないですか?

 いやいや、でもこんなのは漫談みたいなもんで笑っていれば済むけれど、西村康稔前経産相は、小賢しいだけにやることも狡猾だ。
 なんと、架空パーティで荒稼ぎときたもんだ。これは「週刊文春」が報じたもので、なんともエグイ荒稼ぎ。企業等に2万円のパーティ券をたくさん売りつけ、実際には10人ほどの経産省職員を集めてホテルの小さな部屋で会合を開催。つまり、政治資金パーティを開催したふりをして売りつけたパー券代をフトコロに入れちゃった、というもの。それで、数百万円の利益(!)が出たというのだから、ほとんど詐欺商法。
 でも「そうじゃない、実態はある」と言いたかったのか、12月19日に政治資金パーティを開催しようとした。だって、すでにパー券は売ってしまっているのだから「架空じゃない本物のパーティを開いたよ」という証拠を作らなきゃホントに詐欺になっちまう。で、19日にホテルで開催しようと思ったのだが、前日に「モーニングショー」で田崎史郎氏にばらされちゃったものだから、マスメディアの取材殺到を恐れてか、急遽中止ということにしたらしい。なんともみっともない。「あの方は金集めに熱心な方だから」というスシロー氏のコメントには笑ったけどね。
 まあ普通の政治資金集めパーティでも、2万円のパーティ券で実費は会場費込みで5千円ぐらいに節約して、あとの1万5千円分はぼろ儲け、というのが実態なのだから同じようなものだ。その上、20枚買わされた企業から1、2名しか実際に会場参加しないケースもあるというから、そりゃあ儲かるよ。
 それにしたって、やってもいないパーティをでっちあげる新手法には、さすがに驚く。お利口な頭脳をそんなことに使っていたのか、西村さん。

 辞任した鈴木淳司前総務相もなかなか。
 この人、国会でキックバック資金の有無を問われ「それはない」と断言していた。ところが、実際は60万円ほどのキックバックを受けていたことが判明。それを問われると「まあ、キックバックというのは政治の世界では文化みたいなものというか……」と発言しちゃった。いよっ、文化大臣! とパチパチ拍手。
 芸者遊び代を「長崎の芸術文化だから」と言い訳した谷川議員もすごいけれど、鈴木さんの「文化的裏金作り」もそれに勝るとも劣らない。ぼくと同じ鈴木姓だけに、よけいに腹が立つのです。

岸田首相、起死回生策?

 こんな連中ばかりなのだから、岸田内閣の支持率もまたすごいことになってきた。岸田さんもかわいそうと言えば言えるけれど、まあ、身から出た錆か。だってやることがメチャクチャだものね。直近(12月中旬)調査の数字を見てみる。

岸田内閣支持 不支持
朝日新聞 23% 66%
毎日新聞 16% 79%
読売新聞 25% 63%
日経新聞 23.3% 65.4%
産経新聞 22.5% 71.9%
共同通信 22.3% 65.4%
時事通信 17.1 58.2%
NHK 23% 58%
ANN 21.3% 60.4%

 ね、もう末期症状を通り越して瀕死状態ですよね。頼みの綱(?)の読売や産経の調査でもこんな有様。しかも深刻なのは、自民党の支持率も激減していること。ほとんどが20%台にまで落ち込んでいる。
 「青木の法則」というのをご存じでしょう。内閣支持率+自民党支持率が50%を割り込んだらその政権はもたない、というもの。かつて「参院自民党のドン」と呼ばれた青木幹雄氏が唱えた説だが、これらの調査ではほぼ50%を割り込んでいる。とくに毎日新聞などでは、合計が33%ともはや昏睡状態。
 19日、検察はついに“安倍組”と“二階組”の家宅捜査に入った。この2派の悪質性が高いとの判断だというが、なに、他の組だって同じような?
 こうなりゃ、岸田内閣の起死回生策を考えてあげよう、という親切なぼく。

政治資金規正法の抜本改革
マイナ保険証の取り下げ
インボイス制度中止
大阪万博中止
防衛費(軍事費)43兆円増の凍結
企業減税の見直しと富裕層増税
消費税減税
GX(原発復活)取りやめ
核燃サイクル見直しと再処理工場工事撤退
辺野古新基地工事の中止
日米地位協定の見直し
防衛装備品移転(兵器輸出)中止
子育て、教育投資の拡充
最低賃金即時1500円に
派遣労働者を正規社員に
介護福祉関連従事者の最低2万円の賃上げ

 この半分、いや3分の1でも着手するだけで、けっこう持ち直すかもよ、岸田さん。
 こんな中「さあ、政権交代だ!」と、野党が気勢を上げて天下取りに撃って出てもよさそうなものだが、どうもなあ。どなたかがツイート(X)していたが「次期首相が泉健太氏、というのがイメージできない」。ふむ、ぼくもそうだ。
 おーい、誰か出てこーい。

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鈴木耕
すずき こう: 1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレイボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。1999年「集英社新書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライターに。著書に『スクール・クライシス 少年Xたちの反乱』(角川文庫)、『目覚めたら、戦争』(コモンズ)、『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出版)、『反原発日記 原子炉に、風よ吹くな雨よ降るな 2011年3月11日〜5月11日』(マガジン9 ブックレット)、『原発から見えたこの国のかたち』(リベルタ出版)、最新刊に『私説 集英社放浪記』(河出書房新社)など。マガジン9では「言葉の海へ」を連載中。ツイッター@kou_1970でも日々発信中。